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悪役未満令嬢はやりたいようにやることにした
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「ミラ」
「はっ!はい!!!」
「ちょっと考えてみたのだけど、彼らの態度や予想される目的からそんなに危なくなさそうだし、さっさと方を付けましょうか」
「いや、簡単に仰いますけどどうやって?私たちを拘束しているこの縄、魔封じが込められてる魔道具ですよ。貴人の捕縛とかに使うような」
そう、貴族は大体魔力が高くただの縄や手錠では魔法で簡単に解けるため、それ用の拘束道具には魔封じが施してある。
「でもこれモーントシュタイン製じゃないみたい」
「え?」
モーントシュタイン伯爵家、つまりイルーゼとアンゼル様の一族の持つ特殊な魔力。
それは《魔封じ》だ。
魔力は通常は血液やいわゆるオーラのように身体を循環していて、魔法という形にするには何というか、それを抽出して練って放出するという行程が要るのだけど、魔封じはそれを魔法として放出されることを読んで字の如く封じるもの。
もちろん魔封じできる強さは術者の魔力の強さに比例するからこそ、モーントシュタイン家当主は血の濃さより魔力が強い者が優先的に受け継ぐ決まりになっており、且つ宮廷魔導師団の中でも高い地位を持つ。
魔封じの魔力を魔道具に込められるのはモーントシュタインの者だけではないけど、その効果は推して知るべし。
まがい物とは言わないまでも全然違う。
これがモーントシュタイン製だったら私も何も出来なかったかもしれないけど・・・
ぐっと魔力を手首の縄に集中させると、緩んで解けストンと落ちた。
「えっ・・・すごい」
「モーントシュタイン製じゃないのと、これが麻縄だから。主に木属性、土属性が強いスマラクト家の者は魔封じされてても少しの植物くらいなら循環魔力だけで操れるの」
「格好良いです、リーゼ様」
「もしこれが鉄製の手錠だったら鉄を司るアイゼン家の貴女にやってもらってたわよ」
「全く自信ないので麻縄でよかったです」
「あらあら謙虚ねぇ」
「いえ、その・・・リーゼ様、当然ですけどブチキレしてらっしゃいますね?」
「ふふふ」
ふと、馬車が揺れて止まった。
「着いたようですわねぇ」
「キレると令嬢言葉になるんですね・・・」
ドアがガチャガチャと開けられる。
「出ろ、っうわっ!?」
私は麻縄を鞭のように変えてしならせ、ピシッと男たちを弾いた。
「もう少し静かに開けられませんの?」
「なっ!魔封じの縄で縛られていたはず?!」
「あんなものでわたくしを拘束できるとお思い?嘗められたものですわね」
エスコートしてくれる人がいないので、手近な木を操り手元に枝を寄せ、それを掴んで降りる。もちろん、根は階段のようにせり出させて優雅にね。
私に続きミラが降りたのを確認して枝と根を戻すと、男たちを射るように見つめた。
「嘗めていたわけではない」
男は三人。
そのうちリーダー格であろう最初に剣を突きつけた男が言った。
この男が一番の手練だ。
うちの御者が即刻ノックアウトされたのも仕方ない。
「そうですか・・・ところで、御者は殺してしまいましたか?」
「いや、気絶させて御者台から引きずり下ろしただけだ。その後で別の何かが起きていない限り軽傷だろう」
この男たちは私たちにも怪我は負わせていない。
まあ嘘ではないでしょう。
「それは良かったですわ。これで心置きなく八つ当たりと我儘と仕返しができます」
「は?」
「こんなところまでわたくしを駆り出したのです。少々、お遊びにお付き合いくださいな」
「・・・何だと?」
「貴方一人でも、三人まとめてでも構いませんわ。お手合わせ願います」
「巫山戯てんのか!」
「自分の状況わかってるのか?!」
私が少し魔力を某漫画の覇気のように飛ばすと、リーダーが目を瞠り後ろの二人が騒ぐのを制して、剣を握り直す。
「わかっていないのはお前たちだ・・・俺が相手をしよう」
「賢明ですわね。ミラ、馬車全体に結界を張ってその中にいなさい」
「は、はい・・・」
「お前たちも下がっていろ」
「でも!」
「何度も言わせるな」
じろりとリーダーが睨むと、二人は渋々といった感じで下がった。
二人が下がった方には小屋がある。
きっとここで一晩置いたら、魔道具か何かで不自然にならないように工夫して知らせるつもりだったのだろう。
「それでは、始めましょうか」
「ああ。いつでも来い」
リーダーの男が構え、私が手をかざして木々を男へ向かって伸ばし闘いは幕を開けた。
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「ミラ」
「はっ!はい!!!」
「ちょっと考えてみたのだけど、彼らの態度や予想される目的からそんなに危なくなさそうだし、さっさと方を付けましょうか」
「いや、簡単に仰いますけどどうやって?私たちを拘束しているこの縄、魔封じが込められてる魔道具ですよ。貴人の捕縛とかに使うような」
そう、貴族は大体魔力が高くただの縄や手錠では魔法で簡単に解けるため、それ用の拘束道具には魔封じが施してある。
「でもこれモーントシュタイン製じゃないみたい」
「え?」
モーントシュタイン伯爵家、つまりイルーゼとアンゼル様の一族の持つ特殊な魔力。
それは《魔封じ》だ。
魔力は通常は血液やいわゆるオーラのように身体を循環していて、魔法という形にするには何というか、それを抽出して練って放出するという行程が要るのだけど、魔封じはそれを魔法として放出されることを読んで字の如く封じるもの。
もちろん魔封じできる強さは術者の魔力の強さに比例するからこそ、モーントシュタイン家当主は血の濃さより魔力が強い者が優先的に受け継ぐ決まりになっており、且つ宮廷魔導師団の中でも高い地位を持つ。
魔封じの魔力を魔道具に込められるのはモーントシュタインの者だけではないけど、その効果は推して知るべし。
まがい物とは言わないまでも全然違う。
これがモーントシュタイン製だったら私も何も出来なかったかもしれないけど・・・
ぐっと魔力を手首の縄に集中させると、緩んで解けストンと落ちた。
「えっ・・・すごい」
「モーントシュタイン製じゃないのと、これが麻縄だから。主に木属性、土属性が強いスマラクト家の者は魔封じされてても少しの植物くらいなら循環魔力だけで操れるの」
「格好良いです、リーゼ様」
「もしこれが鉄製の手錠だったら鉄を司るアイゼン家の貴女にやってもらってたわよ」
「全く自信ないので麻縄でよかったです」
「あらあら謙虚ねぇ」
「いえ、その・・・リーゼ様、当然ですけどブチキレしてらっしゃいますね?」
「ふふふ」
ふと、馬車が揺れて止まった。
「着いたようですわねぇ」
「キレると令嬢言葉になるんですね・・・」
ドアがガチャガチャと開けられる。
「出ろ、っうわっ!?」
私は麻縄を鞭のように変えてしならせ、ピシッと男たちを弾いた。
「もう少し静かに開けられませんの?」
「なっ!魔封じの縄で縛られていたはず?!」
「あんなものでわたくしを拘束できるとお思い?嘗められたものですわね」
エスコートしてくれる人がいないので、手近な木を操り手元に枝を寄せ、それを掴んで降りる。もちろん、根は階段のようにせり出させて優雅にね。
私に続きミラが降りたのを確認して枝と根を戻すと、男たちを射るように見つめた。
「嘗めていたわけではない」
男は三人。
そのうちリーダー格であろう最初に剣を突きつけた男が言った。
この男が一番の手練だ。
うちの御者が即刻ノックアウトされたのも仕方ない。
「そうですか・・・ところで、御者は殺してしまいましたか?」
「いや、気絶させて御者台から引きずり下ろしただけだ。その後で別の何かが起きていない限り軽傷だろう」
この男たちは私たちにも怪我は負わせていない。
まあ嘘ではないでしょう。
「それは良かったですわ。これで心置きなく八つ当たりと我儘と仕返しができます」
「は?」
「こんなところまでわたくしを駆り出したのです。少々、お遊びにお付き合いくださいな」
「・・・何だと?」
「貴方一人でも、三人まとめてでも構いませんわ。お手合わせ願います」
「巫山戯てんのか!」
「自分の状況わかってるのか?!」
私が少し魔力を某漫画の覇気のように飛ばすと、リーダーが目を瞠り後ろの二人が騒ぐのを制して、剣を握り直す。
「わかっていないのはお前たちだ・・・俺が相手をしよう」
「賢明ですわね。ミラ、馬車全体に結界を張ってその中にいなさい」
「は、はい・・・」
「お前たちも下がっていろ」
「でも!」
「何度も言わせるな」
じろりとリーダーが睨むと、二人は渋々といった感じで下がった。
二人が下がった方には小屋がある。
きっとここで一晩置いたら、魔道具か何かで不自然にならないように工夫して知らせるつもりだったのだろう。
「それでは、始めましょうか」
「ああ。いつでも来い」
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