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私たちに足りないもの
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***
「・・・・・・え」
やっぱりそういう反応になると思ったー。
わかってたけど、ショックだわ。
「貴方が《視て》察した通り、私はいつか貴方が物語のように私を捨てるんじゃないかってずっと思ってた。そう思ってしまったのは、ウィルが好きだから」
「・・・ああ」
「わかってる。頭ではわかってても信じることが出来なかった私が悪いの。だからウィルも私を信じ切れなくて、訊く前に《視て》しまった」
「あの物語の内容を知って、リーゼが俺を信じられないのは当たり前のことだと納得した。仕方のないことだ。リーゼは悪くない」
「私たち、お互いに足りなかったわね。心に抱える不安を曝け出して分かり合うための努力が」
「・・・俺がリーゼへの想いを表現すればするほど、負担になってたんだな」
「負担なんてことない!・・・私が臆病だっただけ」
「それでも、もう知る前には戻れない・・・勝手に《視て》、ごめん・・・」
「・・・いいのよ、いずれ話さなきゃって思ってたから。ちょっと早すぎた気がしないでもないけど。まずミラがどんな子なのかとか、誰を好きかとか色々見極めてからーって思ってたところで貴方が《視て》くれて私の主観抜きの内容で理解してくれたと思うし・・・あ!本当は代償でここまで具合が悪くならない程度に概要を話して、それからウィルがわからなかった部分とかだけちょこっと《視て》もらうくらいにしようとは思ってたわよ!?」
「うん・・・」
気まずくて饒舌になる私をじっと見つめる六条光の瞳は、決意したようにそっと伏せられた。
「リーゼ・・・しばらく、会うのはよそう。また、学園で」
その言葉は、明確な拒絶だった。
少なくとも、私はそう感じた。
*****
「・・・成程、そうきましたか」
「しかも私の気持ちへの返事はスルーよ・・・きっとウィルの気持ちを疑いすぎて呆れられたんだわ」
ウィルと王宮で会ってから数日後。
私とミラは今、学園からそこそこ近い街のカフェにいる。
座席は殆どが半個室のようになっていて、防音と呼び出しの魔道具がしっかり配置された、会話の内容は漏れそうで漏れない絶妙な造りだ。
お忍びの貴族や商人の商談にも使われる店らしい。
ここでバイトをしているミラのお墨付きなので、“影”でもなければ会話を聞くことはできないだろうと思う。
その“影”も、恐らく今は私に付いてはいない。
代償を受け寝台から起き上がれないウィルは、いつも以上に警護が必要だから。
「今の殿下がリーゼ様を手放すとは思えませんけどね」
「そうかなぁ・・・ミラに代わる新しい存在に心を奪われたりするんじゃ・・・例えば2ndのヒロインとか」
「え、2ndあるんですか!?」
「わかんない。可能性の話よ、コンプリートした後すぐ死んだし」
「私もです」
「じゃあ2ndとかスピンオフが存在するかどうかは私たちには知りようがないわね」
「でも何か今思えば続編が出そうな気配ありませんでした?」
「確かに・・・何か誰かのルートで隣国の話とかちらっと出てきたりしたような」
「隣国といえば、今王女殿下がいらしてるんでしたっけ?」
「嫌なこと思い出させないでよ・・・」
「えっ」
「あの子、ウィルにべったりなのよ。昔から」
「無気力王子の状態の殿下にですか?」
「そう。王子様と結婚するのはお姫様の自分なんだーってずっとね。きっと今頃もウィルにくっついてるわよ」
「ちなみに御歳は?」
「今十一歳だったかな。五、六年くらい前から言ってるけど私とウィルが婚約してから酷くなった」
「それは・・・また・・・」
「まー自分で言うだけあって大変美少女よ。今でこそお子ちゃまだけど大人になってからの一桁の年齢差なんて大したことないしねえ」
「殿下は靡きませんよ」
「でも王女が2ndとかスピンオフのヒロインだったらとか、強制力があったりとかだったらわからないわ」
「うむぅ・・・」
「何ミラうむぅって・・・むむぅ」
「リーゼ様こそ」
二人して令嬢にあるまじき姿でうんうん唸ってたらイルーゼがお花摘みから帰ってきた。
「二人ともどうしたの?」
「謎が謎を呼び・・・」
「最早何がどうなるか予想もつかないわ・・・」
「あら、今二人が読んでいるのはミステリーなのね」
イルーゼにはとてもじゃないが乙女ゲームの話なんかするわけにいかないので、申し訳ないけど私たちは偶然同じ小説が好きで意気投合したと説明している。
そう言っておっとりと微笑むイルーゼだけが癒やしだった。
_______________
※イルーゼはリーゼロッテとミラが何らかの秘密を共有していることは気づいていますがそれに対して二人にマイナスな気持ちは持ってません。
彼女は転生者でもなく普通にこの世界で生まれ育った貴族令嬢なので、自分も当然二人に言えないこともありそれが普通と思ってるし、二人から自分を除け者にしようという気配とかは感じないからそれでいいと思ってます。
結論:仲良し三人組。
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「・・・・・・え」
やっぱりそういう反応になると思ったー。
わかってたけど、ショックだわ。
「貴方が《視て》察した通り、私はいつか貴方が物語のように私を捨てるんじゃないかってずっと思ってた。そう思ってしまったのは、ウィルが好きだから」
「・・・ああ」
「わかってる。頭ではわかってても信じることが出来なかった私が悪いの。だからウィルも私を信じ切れなくて、訊く前に《視て》しまった」
「あの物語の内容を知って、リーゼが俺を信じられないのは当たり前のことだと納得した。仕方のないことだ。リーゼは悪くない」
「私たち、お互いに足りなかったわね。心に抱える不安を曝け出して分かり合うための努力が」
「・・・俺がリーゼへの想いを表現すればするほど、負担になってたんだな」
「負担なんてことない!・・・私が臆病だっただけ」
「それでも、もう知る前には戻れない・・・勝手に《視て》、ごめん・・・」
「・・・いいのよ、いずれ話さなきゃって思ってたから。ちょっと早すぎた気がしないでもないけど。まずミラがどんな子なのかとか、誰を好きかとか色々見極めてからーって思ってたところで貴方が《視て》くれて私の主観抜きの内容で理解してくれたと思うし・・・あ!本当は代償でここまで具合が悪くならない程度に概要を話して、それからウィルがわからなかった部分とかだけちょこっと《視て》もらうくらいにしようとは思ってたわよ!?」
「うん・・・」
気まずくて饒舌になる私をじっと見つめる六条光の瞳は、決意したようにそっと伏せられた。
「リーゼ・・・しばらく、会うのはよそう。また、学園で」
その言葉は、明確な拒絶だった。
少なくとも、私はそう感じた。
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「・・・成程、そうきましたか」
「しかも私の気持ちへの返事はスルーよ・・・きっとウィルの気持ちを疑いすぎて呆れられたんだわ」
ウィルと王宮で会ってから数日後。
私とミラは今、学園からそこそこ近い街のカフェにいる。
座席は殆どが半個室のようになっていて、防音と呼び出しの魔道具がしっかり配置された、会話の内容は漏れそうで漏れない絶妙な造りだ。
お忍びの貴族や商人の商談にも使われる店らしい。
ここでバイトをしているミラのお墨付きなので、“影”でもなければ会話を聞くことはできないだろうと思う。
その“影”も、恐らく今は私に付いてはいない。
代償を受け寝台から起き上がれないウィルは、いつも以上に警護が必要だから。
「今の殿下がリーゼ様を手放すとは思えませんけどね」
「そうかなぁ・・・ミラに代わる新しい存在に心を奪われたりするんじゃ・・・例えば2ndのヒロインとか」
「え、2ndあるんですか!?」
「わかんない。可能性の話よ、コンプリートした後すぐ死んだし」
「私もです」
「じゃあ2ndとかスピンオフが存在するかどうかは私たちには知りようがないわね」
「でも何か今思えば続編が出そうな気配ありませんでした?」
「確かに・・・何か誰かのルートで隣国の話とかちらっと出てきたりしたような」
「隣国といえば、今王女殿下がいらしてるんでしたっけ?」
「嫌なこと思い出させないでよ・・・」
「えっ」
「あの子、ウィルにべったりなのよ。昔から」
「無気力王子の状態の殿下にですか?」
「そう。王子様と結婚するのはお姫様の自分なんだーってずっとね。きっと今頃もウィルにくっついてるわよ」
「ちなみに御歳は?」
「今十一歳だったかな。五、六年くらい前から言ってるけど私とウィルが婚約してから酷くなった」
「それは・・・また・・・」
「まー自分で言うだけあって大変美少女よ。今でこそお子ちゃまだけど大人になってからの一桁の年齢差なんて大したことないしねえ」
「殿下は靡きませんよ」
「でも王女が2ndとかスピンオフのヒロインだったらとか、強制力があったりとかだったらわからないわ」
「うむぅ・・・」
「何ミラうむぅって・・・むむぅ」
「リーゼ様こそ」
二人して令嬢にあるまじき姿でうんうん唸ってたらイルーゼがお花摘みから帰ってきた。
「二人ともどうしたの?」
「謎が謎を呼び・・・」
「最早何がどうなるか予想もつかないわ・・・」
「あら、今二人が読んでいるのはミステリーなのね」
イルーゼにはとてもじゃないが乙女ゲームの話なんかするわけにいかないので、申し訳ないけど私たちは偶然同じ小説が好きで意気投合したと説明している。
そう言っておっとりと微笑むイルーゼだけが癒やしだった。
_______________
※イルーゼはリーゼロッテとミラが何らかの秘密を共有していることは気づいていますがそれに対して二人にマイナスな気持ちは持ってません。
彼女は転生者でもなく普通にこの世界で生まれ育った貴族令嬢なので、自分も当然二人に言えないこともありそれが普通と思ってるし、二人から自分を除け者にしようという気配とかは感じないからそれでいいと思ってます。
結論:仲良し三人組。
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