Revolution Calling!俺と黒猫が異世界秩序改変に挑戦する話

猿型茄子

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Hold your hammers high!

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村に戻った俺達は、狩人衆に解体を頼んで村長宅に戻った。アーロフさんは解体をするらしい。狩った人特権で、レバーとハツだけ貰う事にした。
他のモツは、サイクロプスを誘き寄せる為のエサに使いたいとアーロフさんに
言っておいた。

村長宅の庭ではドルロフさんとワイルフさんが矢を作っている。俺が催涙弾の
試用の結果を伝えると、ドルロフさんが20個の卵催涙弾の取り付け金具を即座
に形成してくれた。卵催涙弾もしっかりホールドされている。
矢の柄もワイルフさんが魔樫の枝で特製してくれた様だ、ありがたい。

「アーロフさん、この催涙弾を撃つのを任せられる、弓巧者は何人位いますか?
あまり多くなくてもいいです。現在、催涙弾は20発しか無いので、一つ目巨人
一頭に6発中、3発をヤツらの鼻っ面に、命中させられる腕前の弓手を集められますか?」

「まず私でしょう。それとエイエラ。ベルザロフは左手を失っていますからな。
ただ西の残留組には優秀な弓手がいますぞ」

エーラも弓は上手かったんだね。ちょっと驚きだ。

「アーロフさん、俺はすぐに西の集落に向かいたいと思います。エーラを呼んで
貰えますか?」

「分かりました。すぐに手配しましょう」

アーロフさんは駆けて行った。

「使徒様、この矢をどうぞ。我等の積年の恨みを晴らしてくだされ」

俺はドルロフさんから卵催涙弾頭の矢を20本受領した。

「ありがとうございます。これはエーラから聞いた話なんですが、アイツは、
狩りで一番功績を立てた者は、とどめを刺したものではなく、とどめを刺させた者だと言っていました。それはドルロフさん、ワイルフさんの事だと思います。必ず勝って凱旋しますので、期待してお待ち下さい」

「ぐうぅう!ワシらは祝勝会の準備をして待っていますぞ!なあドルロフ!」

「....朗報をお待ちしております!使徒様」

ココエラさんがリリと一緒に大金棒を持って現れた。
「使徒様、西へ向かわれるのじゃな?」
「はい、勝算が見えましたので、これから西へ向かいます」

「ならば、これをベルザロフに渡して欲しいのですじゃ。アヤツは最愛の嫁を
一つ目巨人共に殺されておる。出来ればとどめをヤツに刺させてやってくれまいか?アヤツはあれ以来、闇の中を彷徨っているように思えるのですじゃ。
死に場所を求めて足掻いているヤツを見ているのは、この婆にはいささか辛いのですじゃよ」

ココエラさんが大金棒を俺に差し出した。ああ、俺もベルザロフさんが死にたがっているのはバシリスク戦から感じていたよ。だが死なせねーよ!すざけんな!

「....分かりました。必ずベルザロフさん本人が、この大金棒をココエラさんに返す事を約束しましょう」

「....感謝します。使徒様も無事に帰って来てくだされ」

「レイ兄ちゃん!必ず帰って来てくんろ!おっ父とおっ母や皆の仇を討ってくんろ!」
リリが拳を握りしめて涙を流している。可愛いヤツだ、ワシャワシャしてやろう。

「リリちゃん、大丈夫っすよ。今までの怪我もレイ様がヘタレだから大袈裟に
騒いでただけっす」
ロップが鼻をほじりながらアクビをしている。小憎らしいヤツだ。
グリグリウメボシしてやろう。

「レイ兄ちゃあああああん!やっぱりアタシが必要だったんだなあああ!」

ポンコツがダッシュでフライングラリアットをかまして来やがった。
俺はまだアバラが痛えんだよ!
俺がポンコツを受けとめて、ドウドウと宥めていると、たくさんのズタ袋を
持ったアーロフさんが疲れ顔でやって来た。

「使徒様、先程仕留めた黒熊の内臓と肉を持って来ました。それとこれをどうぞ」

俺は二つのダイアべア魔石をアーロフさんから受け取った。

「ありがとうございます。これから西の集落跡地へ向かいますが、アーロフさん
は準備の方は大丈夫ですか?」

アーロフさんはニヤリと笑った。
「いよいよですな。私は準備万端です。いざ、決戦の地へ!」

いつの間にかゴレロフさんもやって来ていた。

ひほはま使徒様はれはのへひねん我等の積年ふらひ恨みふくひるのは報いるのはひょうほのほひは今日この時だ!」

拳を突き上げて何か言っている。多分、村長らしく格好いい事を言っているのだろう。

「....ちょっと何言ってるのか分からないです」

その場にいた全員が爆笑している。ゴレロフさんだけが顔を真っ赤して憤慨して
いるが、ココエラさんに左レバーブローを入れられると大人しくなった。

「では、行きましょうか。西の集落は近いので二人を連れて行く事も出来るでしょう」

俺はアーロフさんを肩車して、エーラはお姫様抱っこだ。ロップはアーロフさん
にしがみ付いている。

「皆さん、では行って参ります。朗報を期待していて下さい」

「レイ兄ちゃん、オラ信じてるだよ!」

「使徒様、ご武運を。アーロフ、エイエラ。気を付けるのじゃぞ!」

「ガハハ!初回で上手く行かなくても、ワシらがいますぞ。無理そうなら、撤退
すればいいですぞ」

「....後方は我等にお任せくだされ」

「ほぴい」

....最後のゴレロフさんは何が言いたかったのだろう?多分噛んだのだろうな。


俺達は西の集落跡地に飛んだ。ほんの数分のフライトだ、

現在16時。集落に降り立つとベルザロフさんがやって来た。

「使徒様、アーロフにエイエラもか。この面子でやって来たという事は、ヤツら
を倒す算段が出来たと言う事ですな?」

俺は収納袋から大金棒を出して、ベルザロフさんに渡した。

「はい。ココエラさんからこれを預けられました。必ずココエラさんに、
ベルザロフさん自身が返してくださいね」

「....分かりましたよ。ココ婆様には何もかも見透かされてるようで、腹が立ちますな」

やっぱり、この人は死ぬ気でいたんだろう。させねーけどな!

その後、俺達は作戦を検討した。射手はアーロフさん、エーラ、そしてミルロフ
と言う狩人衆。なんでもアーロフさんに次ぐ弓名人らしい。
三人に6本の催涙弾頭の矢を渡した。三人がそれぞれ三頭のサイクロプスを担当する形になる。俺はカジキとダツで二頭のサイクロプスを潰す役だ。
催涙弾の残り二つは矢から外して俺が持つことにした。弓のトラブルとかがあった場合、俺が至近距離で投げつければいいだろう。

残り一頭は、俺とベルザロフさんを中心に自警団と肉弾戦で潰す。他の狩人衆は
弓で援護射撃だ。ベルザロフさんの隻腕が少々不安だったが、片手で大金棒を
振り回すのを見て杞憂だったと安心した。
ベルザロフさんの話だと、あれからサイクロプス共は何度かちょっかいを仕掛け
て来たが、アーロフさんの指揮の元、弓を射かけて撃退したらしい。

決戦は明日だ。集落の広場までダイアべアのワタを撒いて誘導する事になった。

さあ、晩飯は俺が振舞おうかね。今この集落にいるのは、狩人衆と自警団を合わ
せて33名。アーロフさんが結構な量の肉を持って来てくれたので、
足りるだろう。熊さんのレバー、ハツ、バラ肉の漢炒めだ!要はなんでもぶち込んで適当に炒める!

レバー、ハツ、バラ肉は塩コショウをして、しばらく置く。そして行者ニンニク
のグンドゥルック、干しポレポレ茸、干しメリン茸、干し牡蠣を水で戻した。
戻し水でスープも作ってみようか。30人前だから干し牡蠣以外は手持ちを殆ど
放出してしまったが、後悔はしてないよ。

晩餐会の時以来、中華鍋を収納袋に放り込んである。竈は残留部隊が簡易な物を組んでいたので使わせてもらおう。

具材を適当に切り分けて、熊さんの脂で適当に炒める、あくまで適当にだ。
それが漢料理。ノビルを採ってくればよかったな。
唐辛子と下ろしたショウガ、グリーンペッパーをを加えると、食欲を刺激する
芳香が立ち上った。腹ペコ小僧共が群がって来る。

「使徒様、美味そうな匂いがしますな」

「ベルザロフ、お前が料理に興味を示すのは珍しいな。以前、狩人は干し肉さえ
あれば充分だと豪語していなかったか?」

「アーロフ、何を言う。遠征ではまともな食い物など無いから仕方ないだろう。
美味い物が食えれば、それに越したことはない」

「アーロフ、ベルザロフさん!レイ兄ちゃんの料理は美味いんだぜ~」

同時進行で端材を使って乾物の戻し水を使って作った、塩スープを煮え立たせた。
寸胴鍋だから大丈夫だと思うが、炒め物は30人前だからしばらく作り続けなきゃならない。

「はいよ!お待ち!熱いうちに食べてください」

俺は初回分をベルザロフさん、アーロフさん、エーラとあと二人に給仕した。
あと6回炒めなきゃならないだろう。俺は食えるのだろうか?

「うおっ!使徒様!これは美味いですぞ(ガツガツ)」

「これは以前ご馳走になった海の幸、牡蠣ですな。相変わらず美味い!」

「アーロフ、アタシとレイ兄ちゃんが海で採って来た食べ物だぞ。味わって食えよな~」

残留部隊が涎を垂らして、列をなしているので、俺はヒーヒー言いながら炒め続けた。

約1時間後、やっと俺は飯にありつけた。ロップには昼にアーロフさんが釣った
茶鱒をバケツに入れて渡した。

俺が一人でもそもそ飯を食っていると、ベルザロフさんがやって来た。

「使徒様、美味い飯をありがとうございます。あんなに美味い飯は妻が亡くなって以来ですぞ」

「....奥様は、一つ目巨人にやられたとココエラさんから聞きました。
ご無念だったでしょう」

「....知っておいででしたか。ココ婆様も口軽ですな。亡き妻、ルシエラは俺の
幼馴染みで良い腕の狩人でした。遠征中のあの日、俺達は黒猪を狩って意気揚々
としていました。村からまだ近い狩場でしたからな。村に黒猪を丸ごと持ち返れると皆思っていたのです。村の衆の笑顔を思い浮かべて、俺達は黒猪を木に吊るして血抜きをしていたのです。暴虐が忍び寄っているとも気付かずに。
勿論見張りは立てていましたが、一つ目巨人に声を上げる事も出来ずに殺された
のでしょう。そして俺は背中に衝撃を受けて吹き飛ばされました。一つ目巨人が
投げた丸太を真面に食らったのでしょうな。俺が擦れ行く意識の中で最後に見た光景は、ルシエラがヤツらに連れ去られる光景でした。あれ以来、俺は自分を
責め続け、狩りに没頭する気狂いになりました。追い求めてもヤツらは神出鬼没
で遭遇する事が出来ない。それでも何度かヤツらを見かける事は出来たのですが、
猪突しようとする俺を、その都度ガエロフ兄貴に強制的に止められましたよ」

『バカヤロウ!アイツらは五頭もいるんだぞ!一頭はお前が刺し違えて倒せても、
ここにいる狩人達は全滅だ!仲間の事を考えろ!』

「そんな風に何度も叱られましたな。ルシエラも村と仲間の事を何より大事に思う女でした。だから俺はルシエラの意志を受け継いで。村の為に命を使おうと....」

「もういいです!ベルザロフさんの想いは分かりましたから!」

「....使徒様、何を泣いているのですかな?男が泣いていいのは身内や仲間が死んだ時だけですぞ」

「ベルザロフさん、俺は貴方を絶対に死なせませんよ。ぶっ生き返してやんよ!」

「ぶっ生き返す?意味が分かりませんぞ。使徒様はたまに変な事を言いますな。
はっはっは」

その後、アーロフさん、エーラ、ミルロフさんがやって来て、軽く酒宴になった。ミルロフさんはアーロフさんの従兄弟らしい。
結構チャラめの人だ。どうやらエーラに気があるらしいが、エーラは全く相手にしていない。ミルロフさん、こんなポンコツを嫁にすると苦労するのはアンタだぞ。
明日の作戦はアーロフさんが射手を務めるので、全体指揮はベルザロフさんが摂る事になった。

そして夜も深まり見回り班を残して、皆寝床に戻って行った。俺は寝ずに重力魔法の練習だがな!何かを掴みかけてる感じがするんだよ。俺は魔法訓練に没頭した。



そして、新しい朝が来た!希望の朝だ!喜びに胸を開いて、大空を仰ごう!
そう今日は決戦の日なのだ!

俺はラジオ体操をして万全の準備を整える。朝飯は黒芋をもそもそ食べた。
両手にはカジキとダツ。両腰にアハト・アハト一号二号を迷彩パンツに吊るした
カラビナに引っ掛けて装着する。普通に歩くと柄をズリズリ引きずってしまう。
結構邪魔だね。だがサイクロプス三連星との最初の遭遇では武器が無くて詰んだ
からな。かなり珍妙な見た目だがしょうがない。

「使徒様、準備は整っている様ですな。我等も準備万端ですぞ。
ここは使徒様から皆に一言お願いしたいですな」
アーロフさんの後ろには、完全武装の鬼人族が既に勢揃いしている。

えー、俺、そういうの苦手なんですけど。ベルザロフさんに視線を向けると
サッと顔を背けられた。仕方がない。

「あ~、皆さん星母神の使徒のレイです。
今まで皆さんは一つ目巨人共に蹂躙され続けてきました。妻子を攫われ、
両親を殺され、隣人を失い、同胞が死んでいくのを血涙を流して耐え忍んできた事でしょう。しかし!それは今日までの事です。今日、この日が雪辱の日です!
天の時、地の利、人の和は我らにあります!我等はあの汚らしいヤツらを、
我らの都合が良い時に誘き寄せ、我らの都合の良い場所で待ち伏せ、
我らの連携によってヤツらは屠られる事になるでしょう!
ここで我らが敗れる事になれば、本村までは目と鼻の先です。そうなれば、
本村に残してきた、皆さんの妻子、両親、同胞はあの汚らわしいヤツらによって、
殺戮の憂き目にあう事でしょう!ここが正念場です!我らは不退転の気概を持ってヤツらを駆逐するしかないのです。我らなら必ず出来ると信じています!
一つ目巨人は脅威である?本当にそうでしょうか?
あえて言おう!、ヤツらなど、カスであると!
さあ、皆起て!そして嵐よ起きよ!皆ハンマーを高く掲げるのだ! 
Hold your hammers high! Hail! Hail! Hail !and kill!
起てよ、同志諸君!志半ばで斃れた同胞の想いに報いる為に立ち上がれ!
彼らの名誉と流された血を思い出せ!あの壺はいい物だああああ」

俺は右手首を左手で握って高々と掲げた。これは真の漢達だけに許された神聖な
ポーズなのだ。はっ!どうも我を失っていた様だ。

うおおおお!防衛隊の怒号が響き渡った。なんか泣いてる人もいるぞ。
アーロフさんは首を捻っている。俺も途中から興奮して、いろんな人の文言が
混じってしまったようだ。

『うおおお!やってやるぜ!父ちゃんの仇を討ってやる!』
『使徒様!アンタに付いていくよ!』
『オレ、村に戻ったらアイツに結婚を申し込むんだ』
『駆逐してやる!駆逐してやるんだあああ』
『ほぴい』

なんか変なフラグを立てているヤツや、意味が分からないヤツが混じっているが、
俺は誰も死なせる気はない。

アーロフさんが手を叩きながらやって来た。
「使徒様、素晴らしい演説でした。皆も奮っていますぞ。でもあの壺って何ですか?」

「....気にしないでください。モノの弾みですよ。はっはっは」


そして、俺達はそれぞれの配置についた。捲き餌部隊は既に先行している。広場にはダイアべアのワタがてんこ盛りだ。
俺は一番高い木の上で待機だ。アーロフさん、ミルロフさん、エーラは広場を狙える配置で潜伏している。小一時間程待つと、捲き餌部隊が走って戻って来た。
統括本部のベルザロフさんの元に情報が集められる。狩人のハンドサインで速やかに情報が共有された。俺や自警団の人達も昨夜必死で覚えたんだよ!

どうやらサイクロプス三連星はもうじき現れるらしい。そろそろ俺は上空で待機しようか。今回はロップも一緒だ。
「レイ様、無茶しちゃダメっすよ。あの槍で突っ込むのは止めて欲しいっすよ」

「そうだな、ロップ。だが俺は必要と思ったらやるべき事をやる。ロップも覚悟
しておけよ」

「....分かったっすよ。ボクはレイ様とずっと一緒にいるんすから、いつでも覚悟は出来てるっすよ」


こうして、RE:サイクロプス撃退戦が幕を上げた。
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