Revolution Calling!俺と黒猫が異世界秩序改変に挑戦する話

猿型茄子

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怪力娘と激辛小僧

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村に戻るとココエラさん達が炊き出しを行っていた。リリも元気に働いている。
「おお、ゴレロフ戻ったか、どうじゃったかの?丁度炊き出しで、西の衆も揃っている所じゃ。村長として報告せい」
「うむ、分かった。母ちゃ、いや長老」

ゴレロフさんが広場の壇上に上がって説明を始めた。俺は木立の陰に隠れて様子を窺う、こういう時は俺は出ない方がいいだろう。ここは鬼人族の村だからな。
キーロフの爺みたいに俺を守護神か何かだと勘違いされても困る。

「皆の衆!今回は西の集落で、非常事態が起きた事は説明するまでも無いだろう。
西の集落は残念ながら壊滅状態だ。南の集落と同じ様な事態だが、しかし今回は
使徒様が二頭の一つ目巨人を屠って下さったのだ!現在は狩人衆と自警団の大半
が西の集落に残って警戒中だ。我々も今までの様にヤツらに蹂躙されるままでは
ない!今回こそヤツらを駆逐し平穏を得るのだ!そして、二人の幼子を救出する
事が出来た!これから犠牲になった西の衆の仇は必ず取る事を村長として宣言
しよう!」

おおーっ!広場は大歓声に包まれた。人望あるじゃないかゴリマッチョゴレロフ村長
臭いけどな。

『村長、ワシの息子と妻の仇を必ず討ってくだされ!』
『使徒様、ありがとうございます!我等の積年の恨みを晴らしてください!』
『村長!俺も自警団に入れてください』
『西の衆、ワタシらも応援するから安心しておくれよ。きっと西の集落を
再建出来るさ』
『オレの言った通りだろ!やっぱり、あの赤い人は本当に使徒様だったんだ』
『オイラ、昨日ピリピリの実唐辛子を食べ過ぎてケツが熱いんだ~』
「南へ向かった偵察隊はまだ戻らんのかのう?今は西に戦力を集中するべきじゃろ』

また変なヤツが混じっている。コイツがメドロフだったら嫌だな。
俺は炊き出し班の方に近づいた。リリを安心させてやろう。

「リリ、ちゃんとココエラさんのお手伝いをしていたか?他の皆にイジメられなかったか?」

「レイ兄ちゃん!オラ心配してただよ!うわーん」

どおーん!リリが泣きながら飛びつきタックルをしてきた!
ぐほっ、何だこのパワーは?俺のアバラがががが!
これはエーラのタックル以上だ。
やっぱり、リリはおかしい。早急に相談しなければ。ゴレロフさんはガサツそう
だからやめておく、ベルザロフさんは今いないから、やはりココエラさんだな。
自分の怪力を早く認識させないとリリは誰かを傷つけてしまうかもしれない。

「リリ、俺はアバラを折っているから、今はあまり飛びつかないでくれ」

「レイ兄ちゃん、怪我してるだか?ゴメンだよ。オラは別にイジメられてないだよ」

「リリちゃん大丈夫っすよ。こんな怪我はすぐに治るっす。ヘタレのレイ様が
大袈裟に騒いでるだけっす」

この野郎。だが俺がヘタレなのは事実だ。コウエイ様は右腕を失っても翌日から
魔物を狩っていたらしいからな。リリへのイジメもココエラさんが側にいれば心配ないか。

「ロップちゃんも無事で良かっただよ~」
リリがロップを抱きしめるベアハッグとロップが白目を剥いてグッタリした。

「ロップちゃん!どうしたんだべ!ロップちゃ~ん」

やはり、ヤバい!俺は気絶したロップとリリを横抱きにして、ココエラさんを探しに行った。

「ココエラさん!すいません、ちょっと相談があるのですが!」

「使徒様、この度はありがとうございますじゃ。相談とはリリエラの事じゃろ?
分かっていますじゃ。この子はワシらと同じく魔力適性があるのじゃろう。
炊き出しでも大鍋を抱えておったので、多分そうじゃろうなと思っておったのですじゃ。ワシらの剛力は魔力を身体に循環させて、必要時に魔力を集中して発揮
しておるのですじゃ」

アーロフさんは稀に怪力を持って生まれる者がいるって言ってたけど、
魔力集中の事だったのか

「魔力適性ってどういう事ですか?アーロフさんに基本魔法が使える人はある程度いるって聞いてますけど?」

「鬼人族は自分の魔力を認識するコツを掴める者が少なくてのう、その先に行ける者が少ないのじゃよ。基本魔法を使える者はそれなりにおるが、魔力の循環がガサツなんですじゃ。ワシらも勘でモノにしたんで説明が上手く出来んのじゃよ。
グーッと魔力を集めて、グルッと身体に循環させて、ガーッと集中させるとか、
そんな感じでしか説明出来ないのですじゃ。魔法を使える者も、力技で無理やりこなしておる状態なんじゃよ。魔力の循環を維持出来ればそれなりに強くなるのじゃがのう。ワシも魔力制御の講義をやった事があるのじゃが、あまり捗々はかばかしくなかったので立ち消えになったのですじゃ」

ああ、これは天才の説明下手ってヤツだな。感覚で把握してる事は説明し難いのだろうな。しかし、魔力集中による身体能力強化か。俺の場合、いつもは翼に
魔力を集中しているからな。他の部位に魔力を集中する練習もしないとな。
だが、リリは誰にも教わらずにどうやって身に付けたのだろう?
やはり天才なのか?

「リリ、気付いているか?リリは急に力持ちになったんだぞ」

「ん?オラ、力持ちなんだべか?そう言えば蟹獲りでも大きな石をひっくり返せるようになっただよ」

「いつから力持ちになったか分かるか?」

「う~ん?オラ良く分かんねえけど、ロップちゃんと遊んでる時にいろんな事を教わっただよ。まりょくを感じるとか、ぐるぐるさせるとかやってただよ。
オラ難しい事は分かんねえけど、毎日やってただ。多分それからだべな」

ロップの仕業か!フリスビーで遊んでいるだけじゃなかったのか!

「ロップ!目を覚ませ!いつまで気絶してやがるんだ!」

俺がロップの頭を締め上げると、ロップが目覚めた。

「うにゃ~。レイ様!いきなり何するっすか。ボク何もしてないっすよ!」

「うるさい!オマエはリリに魔力制御の事を教えたな。理由を言え!」

「何でそんなに怒ってるんすか!ボクはリリちゃんがレイ様の役にもっと立ちたいって言うから教えたんすよ。レイ様酷いっすよ。うわ~ん!」

泣きだしたロップをリリが慰める。

「レイ兄ちゃん、ロップちゃんを怒らないでくんろ。オラがロップちゃんにお願いしただよ。そんなに悪い事だと思わなかっただよ。うわ~ん!」

二人で抱き合って大泣きしている。俺が悪者みたいじゃないか。

「いや二人とも悪かったよ。別に悪い事じゃないんだ。ただ俺にも言っておいて欲しかったんだよ。ロップもやり方だけ教えてリリがどうなるか想像していなかったのか?急に怪力になったリリが、周りの人達に怪我をさせるかもしれないんだぞ」

「....ボクもこんなに早くリリちゃんが魔力制御を使いこなす様になるとは思ってなかったっす。多分、魔力集中も自然に覚えたみたいっすね。ボクはまだ魔力集中は教えてないっすから。それにボクはリリちゃんが働いている時はいつも遊んでいるから、リリちゃんの変化に気付く訳ないっすよ!ふんっ」

なにを偉そうにふんぞり返って、自分が遊んでいる事を告白しているのだろう?
思わず右手がワキワキしたが、リリが見ているから我慢しよう。

「....それで、いつ頃リリに魔力制御を教えたんだ?」

「バシリスクを倒してから家に帰った時っすよ。リリちゃんがレイ様の役に立ちたいって言うから、遊んでる時に教えたっす」

4~5日前か。確か俺も飛べる様になるまで4日掛かったはずだ、しかも必死こいて練習したんだぞ!リリは遊びながら習得したのか?やはり天才らしい。
「リリはどんな感じで魔力を扱ってるんだ?」

「オラ、難しい事はよく分かんねえだ。ロップちゃんに言われたとおりに、お腹
に感じるじーんとしたモノを、ずっと身体中にぐるぐる回してただけだよ。
重い物を持つ時はそれを手に集めるだよ」

ここでココエラさんが発言した。

「ふむ、ロップ殿は魔力制御の素晴らしい教官のようじゃな。今度村の衆にも、
ご教授願えんかのう。ワシやゴレロフでは上手く伝えられんのじゃ」

「(ふんっす)いいっすよ!よくぞボクの才能を見抜いたっすね。眼が節穴の
レイ様と大違いっす」

コイツの教え方も大概適当だったぞ。だが魔力制御と魔力増強の習練方法の
全工程を一応把握しているからな。やってみる価値はあるかもしれない。

だが、俺はもっと相応しそうな人物に心当たりがある。ドルロフさんだ。
あの人の基本魔法は凄い、魔力制御も当然こなしているだろう。
それに理知的だし、このアホ猫より上手く説明出来るんじゃないのか?

「ココエラさん、ドルロフさんの基本魔法は凄いです。ドルロフさんなら上手く
説明出来るんじゃないですか?」

「ドルロフ?アヤツはダメじゃ。アヤツもワシらと同じで勘で魔力制御の感覚を
掴んだのじゃよ、それを鍛冶に使える魔法にしか利用しようとせんのじゃ。
それに人見知りじゃからのう。大勢に説明するなんぞ嫌がるじゃろうな」

う~ん、これなら講師は俺でも出来るんじゃね?まずはアホ猫にやらせてみるか。
アーロフさん達に血抜き魔法を教える約束だったが、まず魔力制御を習得しないと多分無理だろう。まあ、全てはサイクロプス討伐が終わってからだ。

「リリ、ロップに教わった事はしばらく禁止だ。まだリリは全部を教わっていないんだ。いずれロップが村の皆と一緒にきちんと教えてくれるから、それまでは魔力ぐるぐるは禁止だ」

「分かっただよ。オラはレイ兄ちゃんの言いつけは守るだよ」

ふう、これでリリの怪力問題は取り合えずいいだろう。

「ココエラさん、ゴレロフさんは村に戻ったら衆議を行うと言っていましたが」

「いや、今日はもう無理じゃろう。まだやる事が山積みじゃからのう。衆議は明日の朝からになると思いますじゃ。使徒様も今日は拙宅に泊まってくれませんかのう?」

時計を確認すると15時半だ。俺も今日は帰る訳にはいかないと思っていた。いつサイクロプスが戻って来るか分からないからな。

「分かりました。お世話になります。ところでゴレロフさんとワイルフさん、
それとティエラさんは何処にいますか?」

「ドルロフとワイルフは拙宅の庭で狩人衆や自警団の為に予備の武器を作っておるはずじゃ、ティエラは畑で炊き出し用の芋の収穫をしておると思いますじゃ」
俺は残っていたダイアボアの半身を提供しておいた。足りないとは思うが、
ココエラさんに大変喜ばれた。肉が全然足りないらしい。

「いろいろ、ありがとうございます。リリはまたココエラさんのお手伝いをしていてくれ。ロップ行くぞ!」

「うにゃ~、リリちゃんまた後でっす」

「うん、レイ兄ちゃん、ロップちゃん、オラ頑張るだよ!」
ココエラさんが優しそうな目でリリを撫でている。いいお婆ちゃんだな。

俺は村長宅の庭に行き、ドルロフさんとワイルフさんに会いに行った。
カジキとダツ、アハト・アハトのメンテを頼まなくてはならない。

「おう!使徒様、話は聞きましたぞ!よくぞワシらの積年の恨みを晴らしてくださったのう。ぐぅぅ」
どうもワイルフさんは涙もろいようだ。俺はこういう熱い人は結構好きだぞ。

「使徒様、ご無事でなによりです。ご用件は槍の整備ですな?早速お預かりしましょう」
ドルロフさんは相変わらず淡々としているな。俺はこういう冷静な人も結構好きだぞ。

ファイアー&アイスか、ドルロフさんもワイルフさんもお互いに違い過ぎて分かりやすいから、仲がいいのかもしれないな。

「ありがとうございます。カジキとダツは槍先にひびが入ってしまいましたが大丈夫でしょうか?」

俺は4本の槍を二人にチェックして貰った結果、カジキとダツは穂先と柄の全改修。アハト・アハト一号は穂先の改修が必要らしい。
無事なのは未使用のアハト・アハト二号だけだ。

「どのくらいで直りますかね?まだ一つ目巨人は三頭残っています。いつ襲って
来るか分からないので、出来るだけ早くお願いしたいのですが」

「穂先の方はひびを繋ぐだけならすぐに直せるでしょう。ですが再形成した方がいいと思います。しかしワシの魔力が持ちません、明日まで掛かると思います」

「そうですなぁ。槍の柄の方は予備は残っておるから何とかなりますが、やはり
ドルロフの魔力次第でしょうなあ、ワシらは今まで自警団や狩人衆の矢を作っておったからのう」

あれ?鉄はどうしたんだろ?やじりって鉄だよな。それに矢羽根もワイルフさんは作れるんだっけ?

「鉄はどうしたんですか?それに矢羽根は?」

「ガハハ、ココエラ長老がの、緊急事態という事で鍛冶衆から鉄を強制徴収したんですぞ。矢羽根は狩人衆が自分で山鳥の羽から作るんです。ワシらはやじりと矢の柄を作っておったんですぞ。それから、逃げて来た西の衆への炊き出しに炭を出し渋ったキーロフは息子に拘束されましたぞ。
食い意地の張ったケチ爺じゃが、息子の方はなかなか気概のあるヤツですぞ」

へえ、短い間に村でも色々事態が動いていたんだね。俺も早急に動かねば。

「分かりました。では槍の整備をお願いします」

「おう!任せてくだされ、使徒様!一つ目巨人共を駆逐してくだされ」
「使徒様、槍の整備は任されました。明日には完璧な状態でお渡ししましょう」

俺は色違いの好漢達に別れを告げ、ロップを横抱きにしてティエラさんの畑に飛んで行った。

畑ではティエラさんが炊き出し用の作物の収穫を指揮していた。
俺は側に降り立って、声を掛けた。

「ティエラさん、お忙しいところ済みません。ちょっと緊急な要件があるのですが、お時間はありますか?」

「まあ、びっくりしましたわ。大丈夫です。ご用件を伺いますわ」

「ティエラさんの処にメドロフと言う子供がいると聞いたのですが、会わせて貰えませんか?」

「メドロフ?確かにおりますが、あの子に何の用でしょう?ちょっと変わり者ですよ」

「一つ目巨人討伐に辛いピリピリの実唐辛子が必要なのです。ゴレロフ村長からメドロフが育てているかもしれないと聞いたのでやって来ました」

「辛いピリピリの実唐辛子?アレは辛いどころか痛いピリピリの実唐辛子ですわ!到底食べられたものではないですよ。あの子は変なモノばかり育てて、ワタクシが何度注意しても止めないのです。(あのクソガキめ)」

あれ?今クソガキって聞こえたような気がするぞ。まあ気のせいか、今は酒が入ってないし、おっとりお母さんがそんな事言う訳ないよね。
だが、辛いどころか痛い唐辛子には期待が持てる!

「今、呼びますわ。メドロフく~ん。作業を止めてこっちにいらっしゃ~い。
使徒様がアナタに用があるそうで~す」

10歳位に見える、青っ洟を垂らした子供がこちらにやって来た。

「あ~、使徒様だ~。オイラはメドロフだよ。オイラに何の用かな~」

何故、温暖なこの島で青っ洟を垂らしているんだ!

「や、やあ、メドロフ君。キミはひょっとして足の親指の爪の匂いが好きだったりするのかな?」

「使徒様、なんでオイラの好きな匂いを知ってるんだ~」

やっぱりコイツだ!確かに変な子供としか言いようがない。

「メドロフ君、キミは凄く辛いピリピリの実唐辛子を育てている様だけど、俺に分けてくれないかな?」

「え~、使徒様もアレに興味があるの~?もう次の段階に挑戦する分の種は採ったから、今、成っている分の半分をあげてもいいよ~。でも一つ条件があるな~」

嫌な予感がするが、一応聞いてみよう。
「メドロフ君、条件って何かな~?」

「オイラと同じ、辛い物好きという事を証明してみせてよ~。一つ食べて欲しいんだ~」

ティエラさんがメドロフを叱りつけた。

「メドロフ君!あんなモノを使徒様に食べさせるなんて、どうかしてますよ!
いい加減にしなさい!」

「うわ~ん!ティエラ母さんが怒った~。使徒様~」

メドロフが青っ洟を垂らしながら俺に抱き付いてこようとする。
ヤメろ!その青っ洟を俺で拭こうとするな!俺は咄嗟にロップを差し出した。
ロップが青っ洟小僧に抱き着かれて、うにゃうにゃ悲鳴を上げているが無視した。

「ま、まあ、ティエラさん、俺は大丈夫ですよ。メドロフ君、じゃあ一つご馳走になろう。何処で育てているのかな?

「オイラに付いて来て~。あっちの離れた畑なんだ~。オイラが一人で開墾したんだよ」

ティエラさんとロップと一緒にメドロフに付いて行くと、林の中に開かれた一画があった。赤い凶悪そうな実を実らせた唐辛子がたくさん植えられている。脇のほうにはなんだか良く分からない植物が色々植えられている。ここを子供が一人で切り開いたのなら凄いな。

ティエラさんがしんみりと呟いた。

「この子のお爺さんは、生きている頃は作物が大きく育つようにしたり、たくさん採れるようにする名人だったのですわ。この子もお爺さんに懐いていて、いろいろ教わったようなんです。その頃はこの子も普通の明るい子だったのですけどね。
三年前にお爺さんが病気で亡くなった時から、変な物ばかり育てる子になってしまいましたわ。お爺さんの死がこの子の何かを壊してしまったのでしょうね」

また、心に傷を負った子供か、だが俺はセラピストじゃないから何も出来ない。
だが、メドロフの心の傷もティエラさんならきっと癒せると思う。
(酔っぱらわなければな!)

「使徒様~。はい、オイラ自慢のピリピリの実唐辛子だよ~。味わっておくれよ。吐いたらダメだよ~。オイラも昨日食べ過ぎてケツが今でも熱いんだ~」

知ってるよ!だが子供が食べられるなら、それ程の辛さではないだろう。
俺は以前ゲテ村との釣り勝負で負けて、罰ゲームでハバネロを食べる事になった。
俺はハバネロに耐えきった男なのだ!その後は二度と食わないと誓ったが。

「よし貰おうか。ん?長くないんだ。なんか丸くてシワシワだね。じゃあ頂くよ」
まあハバネロも丸いしな。ちょっと嫌な予感がしたが、俺は口に放り込んで噛み締めた。....ん?これは!

「わひっぴょ~!はぎょろもろ~!」

何だこれは!口が痛い!熱い!痛い!熱い!痛い!
俺は慌てて吐き出そうとしたが、メドロフがじーっと俺を見ている!

『吐いたらダメだよ~』ダメだよ~』だよ~』よ~』

気が遠くなった俺の脳裏にメドロフの声が響き渡る。

俺は朦朧とした意識の中で関係ない事を考えていた。
何故、辛い物好きの人達は辛い物を食べられるのを偉そうに自慢するのだろう?
『なんだよ、オマエこんなのも食えねーのかよ。情けねえな。俺は余裕だぜ!』
辛い物を食べられると偉いのだろうか?俺には、さっぱり分からない。

「ほひょっほー!ひょげー!」
俺は奇声を上げ、涙を流しながらスクワットジャンプや、反復横跳びを繰り返して、口の中の凶悪な存在を何とか噛み下した。
ロップが腹を抱えて爆笑している。
「レイ様!最高っす。何すかその声と、その踊り!うにゃにゃにゃにゃー」
俺はロップに腹を立てる余裕も無かった。これはハバネロなんてもんじゃない、もっと上の何かだ!キャロライナ・リーパーがどれくらいの辛さかは分からないが、これは俺の限界を超えている。

「オイラ、使徒様がそんなに喜ぶとは思わなかったよ~。もう一個食べる~?」

この激辛小僧!俺を殺す気か!俺は喜んでいたんじゃない。悶えていたんだ!

「いや、今日はもういいよ!また今度な!メドロフ君、俺はお腹いっぱいだよ」

「じゃあ、今度はいつにする~。明後日位かな~?オイラこんなに美味しそうに
食べてもらったの初めてなんだ~」

出た、曖昧な日付を許さない鬼人族の追及力。

「いや、しばらく俺は一つ目巨人狩りで忙しいんだ。ごめんな」

「そうなんだ~、美味しそうに食べてくれたから、今ある分は使徒様に半分あげるよ~。次に蒔く種はもっと辛いと思うんだ~。期待しててね」

「あ、ああ。期待しておくよ。じゃあピリピリの実唐辛子を半分貰っていくよ。
ありがとうメドロフ君」

「いいよ~。でも摘み取る時に素手では止めた方がいいよ~。オイラは慣れてるけど普通の人は手が痛くなるんだよ~。目とか擦ると大変な事になるよ~」

....コイツは素手で触れないような物を何故、人に食わせようとするのだろう?

幸い俺は軍手をしている。畑の半分の劇物を採集する事が出来た。
だがこの軍手は捨てよう。ちょっと手がピリピリしてきた。

「使徒様、よくアレを食べられましたね。ワタクシは気絶しましたのよ」
「レイ様、またあの踊りが見たいっす!」

この野郎!コイツにも食わせてやろうか!」
俺はティエラさんとメドロフに別れを告げて村長宅に戻った。

明日は衆議と催涙弾作成だ!
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