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サイクロプス撃退戦1(出陣前)
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サイクロプス襲来の報告を受けて、ゴレロフ村長が吠えた。
「アーロフ、狩人衆は今どれだけ集められる?」
「南方に偵察隊を派遣していますし、今は20数名だと思います」
「そうか、至急招集をかけてくれ。俺も自警団を招集してから西の集落に
急行する、一緒に来てくれ!」
ベルザロフさんが立ち上がった。
「村長、俺も同行しますぞ。片手でもゲドルフよりは役に立つでしょう。
今は緊急事態です。収監中のゲドルフ配下の狩人達を俺の指揮下に入れて
くれませんか?」
「....いいだろう。伝令を飛ばせ!村の広場に狩人衆と自警団を招集しろ。
それと手の空いている者には西からの避難民を介抱して事情を聴くように伝える
のだ!」
ココエラさんも立ち上がった。
「ゴレロフ!避難民の回収はワシに任せろ。村の女衆にも伝令を飛ばすのじゃ。
南の集落の悲劇を繰り返してはならん!」
ココエラさんにサイクロプス討伐をさせれば良くね?
と、ちょっと思ってしまったが、サイクロプスの脅威を俺は知らない。
ココエラさんでも敵わないのかな?やっぱ俺も行くしかないよな。
俺には最終兵器の口臭と腋臭がある。しかし、使用するには西の集落民を全員避難
させる必要がある。畑にも被害が出るだろうし出来れば使いたくないんだよな。
ドルロフさんに整備を頼んだカジキとダツはどうなったんだろう?
急降下爆撃と近接射撃で何とかならないかな。
ずっと沈黙していたドルロフさんが声をあげた。
「村長、ワシに出来る事はありませんかな?非力なワシですが、村の為に協力
したいのです」
「ドルロフは村で待機していてくれ、武器の整備を担当して欲しい。
長期戦になる可能性も充分にある。最悪、この村で防衛戦になるかもしれない。
お前は他の鍛冶衆と違ってすぐに武器を直せるだろう?退却して来た連中の装備
の面倒を見てくれ。ワイルフと木工衆にもすぐに来てもらう。武器の修理はお前
とワイルフに頼むぞ!」
「....はい、ワシにはそれしか出来ませんからな。任せてくだされ」
この村で防衛戦って、そんなにヤバい状況なのか?流石にこの事態を知らんぷり
する事は、ヘタレの俺でも出来ない。
「ドルロフさん、整備をお願いしたカジキとダツはどうなりましたか?」
「使徒様、槍先は特に問題はありませんでしたぞ。柄はワイルフ殿に確認して
貰いましたが、カジキの方が接合部にヒビが入っていた様で、予備の柄に換装
しています。今はワシの工房に保管してありますぞ」
良かった。まだ使える様だ。急降下爆撃で仕留められるといいのだが。
「ドルロフさん、俺も一つ目巨人を撃退しに行きますので、今からカジキとダツ
を取りに行かせてください」
「了解しました使徒様。では行きましょうか。事態は一刻を争うようですからな」
「ゴレロフ村長。俺は槍を受け取ったら西の集落に向かいます。後援は頼みます」
「うむ、申し訳ない使徒様。俺達も準備が出来次第、西の集落に急行する」
俺は庭にいるロップとリリに事情を説明した。
「レイ様、サイクロプスっすか?かなり強い魔物っすよ。コウエイ様が戦った時
はまだ進化前だったから、かなり苦戦してたっす。とにかく力が凄いし、
身体も頑丈っすよ。パイノワールさんの援護があって、やっと勝てたっす」
やはり完全なパワーファイターだな。急降下爆撃は通用するだろうか?
心配になってきたぞ。
「パイノワールさんはどういう援護をしたんだ?」
「精霊界魔法で毒の気体を撒き散らしたっす。目に沁みる気体で、サイクロプス
が目を押さえて悶えている間にコウエイ様が止めを刺したっすよ」
目に沁みる気体ってなんだろう、亜硫酸ガスかな?精霊界魔法ってそんなモノも
持ってこれるのか。地の精霊界と火の精霊界の挟間には亜硫酸ガスが充満しているゾーンがあるのかもな。凄いぞ精霊界魔法!だがこれで勝算が見えてきたぞ。
俺には亜硫酸ガスより強力な口臭と腋臭があるのだ!やっぱり解禁するしかない様だ。サイクロプス共をを一掃してやんよ!
「参考になったぞロップ。俺はこれからドルロフさんの工房に槍を取りに行って
から、西の集落へ向かってサイクロプス達を駆逐してくる。ロップとリリはここ
で待っていてくれ」
ロップが憤慨して肉球でぺたぺた叩いて抗議してきた。
「何言ってんすか!ボクも一緒に行くっすよ!またバシリスクの時みたいに無茶
する気っすか?ボクは絶対一緒に行くっすからね!」
そうだな、俺とロップとは運命共同体だもんな。俺の命が尽きる時まで一緒に
いる相棒だ。一応、親友宣言もしたしな。普段の行動はムカつくけど。
「分かった。俺と一緒に来てくれるか?相棒」
「当たり前っすよ!レイ様が死んじゃったら、ボクも星母神様の元に戻っちゃう
んすよ。星母神様はボクにお魚を全然くれないんす!ボクにはお魚をくれる
レイ様が必要なんすよ!」
この野郎!やっぱり俺を自動餌出し機と思っていやがった。
アイアンクローで俺への認識を改めさせておいた。
「レイ兄ちゃん、さいくろぷすって、オラの集落を襲った一つ目巨人の事だべか?
集落の皆も、おっ父もおっ母もヤツらにやられちまっただよ。レイ兄ちゃんも
ロップちゃんも一つ目巨人にやられちまうだよ!オラ、嫌んだ!
オラ、レイ兄ちゃんやロップちゃんと一緒にいたいだよ!行かないでくんろ!
オラ、もう一人ぼっちになるのは嫌んだ!うわ~ん」
リリが号泣してしがみついて来た。
「大丈夫だリリ。俺達はお前の父ちゃんと母ちゃん、そして集落の人達の仇を
討ちに行くんだ。俺達は必ず戻るから、ココエラさんの手伝いをして待っていて
くれ」
「ぐすぐす、本当だべか?約束してくんろ。必ずオラの処に戻って来るって」
「ああ、約束するぞ。俺はリリの兄ちゃんだし、ロップはリリの友達だ。
必ず帰って来るから、安心して待ってろ」
「分かっただよ。オラ、レイ兄ちゃんとロップちゃんの帰りを待ってるだよ」
「リリちゃん、ボクがいる限り心配無いっすよ。それにレイ様には秘密兵器が
あるっす。痰を吐いたり、オナラを....」
俺は即座にロップの頭を絞り上げて言論封殺した。
その後リリの頭をワシャワシャしてから、ドルロフさんを乗せて工房に槍を受け取りに行った。
ドルロフさんから受け取ったカジキとダツは綺麗に磨かれてある。
おお、我が愛槍達よ。綺麗になったな!
「使徒様、充分に気を付けてください。一つ目巨人共は我等にとっての宿敵です。
今まで幾多ものの熟練の狩人や自警団の戦士達が犠牲になってきました。
使徒様でも、力での正攻法では難しいと思いますぞ。
ワシは使徒様に毒トカゲ討伐の武器作成依頼を受けてから非情に充実した日々を
過ごしました。一つ目巨人共を倒す事にこだわらず。必ず無事に戻ってください」
「ありがとうございます。ドルロフさん。俺は必ず戻りますので待っていて
下さい」
俺はドルロフさんと別れて村の広場を目指した。両手にはカジキとダツだ!
ドルロフさんは準備を整えてから村に向かうそうだ。
村の広場に降り立つと結構な数の武装した鬼人族が揃っている。大体は長槍だが、ゴレロフさんは大金棒を持っている。ココエラさんに借りたのかな。
「使徒様、もうすぐ出撃可能な者が集まる。申し訳ないが先行を頼む。
ただし無茶はしないでくれ。場合によっては偵察だけでもいい、
俺達も出来るだけ急行するつもりだ」
「分かってますよゴレロフさん。それと状況によっては、禁じ手を使わなければ
ならないかもしれません。集落の農作物にも影響が出ると思われます。禁じ手を
解禁しても宜しいですか?」
「....使徒様が何をしようとしているのかは分からんが西の集落が壊滅すれば、
この本村にもヤツらが迫ってくるかもしれん。許可しよう」
「この村は西の避難民を受け入れる余裕はあるのですか?以前にこの村には
400人位いると聞きましたが」
「ん?使徒様は勘違いをしている様だな。この本村と東西の集落の民を合わせて412人だ。ヤツらに滅ぼされた南の集落と違って、東西の集落はこの本村の
すぐ近くだ。だから緊急事態なのだ」
確かに、最初は東の集落に住んでるドルロフさんの工房に、ワイルフさんの
木工所から歩いて行ったよな。多分3~5キロ位だろう。木工所も村長宅からは
5キロ位の距離だったと思う。西の集落もその位の距離だとヤバくね?
すぐにサイクロプスが襲来するかもしれない!成程、これは緊急事態だ。
「ゴレロフさん、俺はすぐに西へ向かいます!後は頼みましたよ」
俺がロップを乗せて慌てて飛び立とうとすると、
「レイ兄ちゃああああん。今まで何処に行ってたんだよおおお!
姉ちゃんのアタシを無視するなよおおお!」
ポンコツがフライングラリアットで飛び掛かって来た。
「落ち着け!エーラ姉ちゃん!俺は急いで行かなきゃならないんだ!」
「びえええええん!レイ兄ちゃんがアタシを一人で置き去りにしようとするよ~、
もう一人ボッチは嫌なんだ~、アタシも付いていくんだ~」
リリと同じ様な事を言っているな、亡くなった兄弟や父親と俺を重ね合わせて
いるのかもしれない
「大丈夫だ。絶対俺は無事だから!エーラ姉ちゃんも救援に行くんだろ?
そっちこそ気を付けろ!」
「やだ!アタシはレイ兄ちゃんと一緒に行くんだ!アタシだって戦えるんだ!」
ベルザロフさんが進み出てエーラを一喝した。
「エイエラ!あまり駄々を捏ねて使徒様を困らせるな!使徒様に付いて行っても
お前では足手まといだ。だがお前にも出来る事があるはずだ!
お前は俺の隊に入れ。使徒様を後ろから援護するのが俺達の仕事だ。
ガエロフ兄貴も言っていただろう?狩人がそれぞれの役割を果たさなければ獲物
は狩れないとな!」
エーラが塩垂れた。ココエラさん以外にも説教役がいたのか。
「....ベルザロフさん、分かったよ。レイ兄ちゃん、後から追いかけるから絶対
死ぬんじゃねーぞ!」
「大丈夫だって言ってるだろ!では皆さん、俺は先行します」
エーラを抑えてくれたベルザロフさんに感謝だ。コイツはごね始めると面倒
だからな。
しかし、アーロフさんは呼び捨てで、ベルザロフさんは"さん"付けなのか。
亡くなったガエロフさんとベルザロフさんの交友で、幼い頃からエーラとも関係
があったのだろうな。
「使徒様、くれぐれも無理はしないでくれよ」
「使徒様、ご武運を。我々もすぐに急行しますねで」」
「俺は心配していませんぞ。祝勝会の酒が楽しみですな」
ゴレロフさん、アーロフさん、ベルザロフさんと握手をして、俺とロップは西に
向かった。
「アーロフ、狩人衆は今どれだけ集められる?」
「南方に偵察隊を派遣していますし、今は20数名だと思います」
「そうか、至急招集をかけてくれ。俺も自警団を招集してから西の集落に
急行する、一緒に来てくれ!」
ベルザロフさんが立ち上がった。
「村長、俺も同行しますぞ。片手でもゲドルフよりは役に立つでしょう。
今は緊急事態です。収監中のゲドルフ配下の狩人達を俺の指揮下に入れて
くれませんか?」
「....いいだろう。伝令を飛ばせ!村の広場に狩人衆と自警団を招集しろ。
それと手の空いている者には西からの避難民を介抱して事情を聴くように伝える
のだ!」
ココエラさんも立ち上がった。
「ゴレロフ!避難民の回収はワシに任せろ。村の女衆にも伝令を飛ばすのじゃ。
南の集落の悲劇を繰り返してはならん!」
ココエラさんにサイクロプス討伐をさせれば良くね?
と、ちょっと思ってしまったが、サイクロプスの脅威を俺は知らない。
ココエラさんでも敵わないのかな?やっぱ俺も行くしかないよな。
俺には最終兵器の口臭と腋臭がある。しかし、使用するには西の集落民を全員避難
させる必要がある。畑にも被害が出るだろうし出来れば使いたくないんだよな。
ドルロフさんに整備を頼んだカジキとダツはどうなったんだろう?
急降下爆撃と近接射撃で何とかならないかな。
ずっと沈黙していたドルロフさんが声をあげた。
「村長、ワシに出来る事はありませんかな?非力なワシですが、村の為に協力
したいのです」
「ドルロフは村で待機していてくれ、武器の整備を担当して欲しい。
長期戦になる可能性も充分にある。最悪、この村で防衛戦になるかもしれない。
お前は他の鍛冶衆と違ってすぐに武器を直せるだろう?退却して来た連中の装備
の面倒を見てくれ。ワイルフと木工衆にもすぐに来てもらう。武器の修理はお前
とワイルフに頼むぞ!」
「....はい、ワシにはそれしか出来ませんからな。任せてくだされ」
この村で防衛戦って、そんなにヤバい状況なのか?流石にこの事態を知らんぷり
する事は、ヘタレの俺でも出来ない。
「ドルロフさん、整備をお願いしたカジキとダツはどうなりましたか?」
「使徒様、槍先は特に問題はありませんでしたぞ。柄はワイルフ殿に確認して
貰いましたが、カジキの方が接合部にヒビが入っていた様で、予備の柄に換装
しています。今はワシの工房に保管してありますぞ」
良かった。まだ使える様だ。急降下爆撃で仕留められるといいのだが。
「ドルロフさん、俺も一つ目巨人を撃退しに行きますので、今からカジキとダツ
を取りに行かせてください」
「了解しました使徒様。では行きましょうか。事態は一刻を争うようですからな」
「ゴレロフ村長。俺は槍を受け取ったら西の集落に向かいます。後援は頼みます」
「うむ、申し訳ない使徒様。俺達も準備が出来次第、西の集落に急行する」
俺は庭にいるロップとリリに事情を説明した。
「レイ様、サイクロプスっすか?かなり強い魔物っすよ。コウエイ様が戦った時
はまだ進化前だったから、かなり苦戦してたっす。とにかく力が凄いし、
身体も頑丈っすよ。パイノワールさんの援護があって、やっと勝てたっす」
やはり完全なパワーファイターだな。急降下爆撃は通用するだろうか?
心配になってきたぞ。
「パイノワールさんはどういう援護をしたんだ?」
「精霊界魔法で毒の気体を撒き散らしたっす。目に沁みる気体で、サイクロプス
が目を押さえて悶えている間にコウエイ様が止めを刺したっすよ」
目に沁みる気体ってなんだろう、亜硫酸ガスかな?精霊界魔法ってそんなモノも
持ってこれるのか。地の精霊界と火の精霊界の挟間には亜硫酸ガスが充満しているゾーンがあるのかもな。凄いぞ精霊界魔法!だがこれで勝算が見えてきたぞ。
俺には亜硫酸ガスより強力な口臭と腋臭があるのだ!やっぱり解禁するしかない様だ。サイクロプス共をを一掃してやんよ!
「参考になったぞロップ。俺はこれからドルロフさんの工房に槍を取りに行って
から、西の集落へ向かってサイクロプス達を駆逐してくる。ロップとリリはここ
で待っていてくれ」
ロップが憤慨して肉球でぺたぺた叩いて抗議してきた。
「何言ってんすか!ボクも一緒に行くっすよ!またバシリスクの時みたいに無茶
する気っすか?ボクは絶対一緒に行くっすからね!」
そうだな、俺とロップとは運命共同体だもんな。俺の命が尽きる時まで一緒に
いる相棒だ。一応、親友宣言もしたしな。普段の行動はムカつくけど。
「分かった。俺と一緒に来てくれるか?相棒」
「当たり前っすよ!レイ様が死んじゃったら、ボクも星母神様の元に戻っちゃう
んすよ。星母神様はボクにお魚を全然くれないんす!ボクにはお魚をくれる
レイ様が必要なんすよ!」
この野郎!やっぱり俺を自動餌出し機と思っていやがった。
アイアンクローで俺への認識を改めさせておいた。
「レイ兄ちゃん、さいくろぷすって、オラの集落を襲った一つ目巨人の事だべか?
集落の皆も、おっ父もおっ母もヤツらにやられちまっただよ。レイ兄ちゃんも
ロップちゃんも一つ目巨人にやられちまうだよ!オラ、嫌んだ!
オラ、レイ兄ちゃんやロップちゃんと一緒にいたいだよ!行かないでくんろ!
オラ、もう一人ぼっちになるのは嫌んだ!うわ~ん」
リリが号泣してしがみついて来た。
「大丈夫だリリ。俺達はお前の父ちゃんと母ちゃん、そして集落の人達の仇を
討ちに行くんだ。俺達は必ず戻るから、ココエラさんの手伝いをして待っていて
くれ」
「ぐすぐす、本当だべか?約束してくんろ。必ずオラの処に戻って来るって」
「ああ、約束するぞ。俺はリリの兄ちゃんだし、ロップはリリの友達だ。
必ず帰って来るから、安心して待ってろ」
「分かっただよ。オラ、レイ兄ちゃんとロップちゃんの帰りを待ってるだよ」
「リリちゃん、ボクがいる限り心配無いっすよ。それにレイ様には秘密兵器が
あるっす。痰を吐いたり、オナラを....」
俺は即座にロップの頭を絞り上げて言論封殺した。
その後リリの頭をワシャワシャしてから、ドルロフさんを乗せて工房に槍を受け取りに行った。
ドルロフさんから受け取ったカジキとダツは綺麗に磨かれてある。
おお、我が愛槍達よ。綺麗になったな!
「使徒様、充分に気を付けてください。一つ目巨人共は我等にとっての宿敵です。
今まで幾多ものの熟練の狩人や自警団の戦士達が犠牲になってきました。
使徒様でも、力での正攻法では難しいと思いますぞ。
ワシは使徒様に毒トカゲ討伐の武器作成依頼を受けてから非情に充実した日々を
過ごしました。一つ目巨人共を倒す事にこだわらず。必ず無事に戻ってください」
「ありがとうございます。ドルロフさん。俺は必ず戻りますので待っていて
下さい」
俺はドルロフさんと別れて村の広場を目指した。両手にはカジキとダツだ!
ドルロフさんは準備を整えてから村に向かうそうだ。
村の広場に降り立つと結構な数の武装した鬼人族が揃っている。大体は長槍だが、ゴレロフさんは大金棒を持っている。ココエラさんに借りたのかな。
「使徒様、もうすぐ出撃可能な者が集まる。申し訳ないが先行を頼む。
ただし無茶はしないでくれ。場合によっては偵察だけでもいい、
俺達も出来るだけ急行するつもりだ」
「分かってますよゴレロフさん。それと状況によっては、禁じ手を使わなければ
ならないかもしれません。集落の農作物にも影響が出ると思われます。禁じ手を
解禁しても宜しいですか?」
「....使徒様が何をしようとしているのかは分からんが西の集落が壊滅すれば、
この本村にもヤツらが迫ってくるかもしれん。許可しよう」
「この村は西の避難民を受け入れる余裕はあるのですか?以前にこの村には
400人位いると聞きましたが」
「ん?使徒様は勘違いをしている様だな。この本村と東西の集落の民を合わせて412人だ。ヤツらに滅ぼされた南の集落と違って、東西の集落はこの本村の
すぐ近くだ。だから緊急事態なのだ」
確かに、最初は東の集落に住んでるドルロフさんの工房に、ワイルフさんの
木工所から歩いて行ったよな。多分3~5キロ位だろう。木工所も村長宅からは
5キロ位の距離だったと思う。西の集落もその位の距離だとヤバくね?
すぐにサイクロプスが襲来するかもしれない!成程、これは緊急事態だ。
「ゴレロフさん、俺はすぐに西へ向かいます!後は頼みましたよ」
俺がロップを乗せて慌てて飛び立とうとすると、
「レイ兄ちゃああああん。今まで何処に行ってたんだよおおお!
姉ちゃんのアタシを無視するなよおおお!」
ポンコツがフライングラリアットで飛び掛かって来た。
「落ち着け!エーラ姉ちゃん!俺は急いで行かなきゃならないんだ!」
「びえええええん!レイ兄ちゃんがアタシを一人で置き去りにしようとするよ~、
もう一人ボッチは嫌なんだ~、アタシも付いていくんだ~」
リリと同じ様な事を言っているな、亡くなった兄弟や父親と俺を重ね合わせて
いるのかもしれない
「大丈夫だ。絶対俺は無事だから!エーラ姉ちゃんも救援に行くんだろ?
そっちこそ気を付けろ!」
「やだ!アタシはレイ兄ちゃんと一緒に行くんだ!アタシだって戦えるんだ!」
ベルザロフさんが進み出てエーラを一喝した。
「エイエラ!あまり駄々を捏ねて使徒様を困らせるな!使徒様に付いて行っても
お前では足手まといだ。だがお前にも出来る事があるはずだ!
お前は俺の隊に入れ。使徒様を後ろから援護するのが俺達の仕事だ。
ガエロフ兄貴も言っていただろう?狩人がそれぞれの役割を果たさなければ獲物
は狩れないとな!」
エーラが塩垂れた。ココエラさん以外にも説教役がいたのか。
「....ベルザロフさん、分かったよ。レイ兄ちゃん、後から追いかけるから絶対
死ぬんじゃねーぞ!」
「大丈夫だって言ってるだろ!では皆さん、俺は先行します」
エーラを抑えてくれたベルザロフさんに感謝だ。コイツはごね始めると面倒
だからな。
しかし、アーロフさんは呼び捨てで、ベルザロフさんは"さん"付けなのか。
亡くなったガエロフさんとベルザロフさんの交友で、幼い頃からエーラとも関係
があったのだろうな。
「使徒様、くれぐれも無理はしないでくれよ」
「使徒様、ご武運を。我々もすぐに急行しますねで」」
「俺は心配していませんぞ。祝勝会の酒が楽しみですな」
ゴレロフさん、アーロフさん、ベルザロフさんと握手をして、俺とロップは西に
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