Revolution Calling!俺と黒猫が異世界秩序改変に挑戦する話

猿型茄子

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ベルザロフの真意

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俺の毒傷は2日で何とか癒えたようだ、身体中が瘡蓋かさぶただらけだったが、
搔き落とすと普通の肌に戻った。まず村に戻ろう。だがどうしようか?
俺が急降下爆撃ルーデルアタックをするには、ヤツに毒を吐かせなければならない。
アハト・アハトでは仕留める確信が持てない。下手に手負いにすると周りに毒を
撒き散らしそうだしな。やはり上空からの急降下爆撃ルーデルアタックでの一撃必殺しかない。

バシリスク討伐に失敗した俺は項垂うなだれて村に帰還した。
村の広場に降り立つと、

「レイ兄ちゃん、うわ~ん。良かっただよ。オラ心配で寝られなかっただよ」
リリが飛びついて来た。ごめんなリリ。兄ちゃん考え足らずだったよ。
その後エーラがタックルして来た。おうふ!お前はデカいんだから加減しろ!
気を付けろポンコツ!
「びえええん。レイ兄ちゃん、無事に帰って来て良かったよ~」

無事じゃ無いんだけどな、死ぬかと思ったよ。コイツもポンコツだけど可愛い
ヤツだ。でも鼻水を拭け!俺に擦り付けるな!
ゴレロフさんが厳しい表情で俺に問いかけた、
「使徒様、結果を説明してくれるかの?衆議堂に来てくれ。昨日ベルザロフが
帰還した。使徒様と話をしたいそうだ」
ベルザロフって狩猟マニアの人だよな。
「はい、了解しました。ゴレロフ村長、今回は失敗でした。済みません」
「....そうか。皆に経緯を説明して欲しい」

衆議堂には頭衆とドルロフさん、そして黒髪の長髪を後ろで纏めた大男がいる、
この人がベルザロフだな。結構若そうだ。20~30代だろう。イケメンだな。
クソッ!
議長のゴレロフ村長が俺に説明を求めた、
「では、使徒様。今回の毒トカゲ討伐の顛末を教えてくだされ」
「はい、まず俺は森の荒れ地に毒物の餌を仕掛けました....」

その後、バシリスクとの闘いを説明した。頭の上の目について説明すると、
皆、沈黙してしまった。俺も、まだこれについての攻略方は具体的にはない。
毒を口から吐かせる事が出来ればチャンスがあるのだが。
ベルザロフが挙手した。
「俺から発言しても宜しいか?」
「いいだろう、ベルザロフの意見を聞こう」
「使徒様、まだ名乗っていませんでしたな。俺は狩人のベルザロフと申します。
先程の使徒様の毒トカゲ討伐の件について、いくつか質問させて頂きたい」
以外と礼儀正しい人だな。もっとヒャッハーな人だと思っていたよ。
「はい、構いません。俺も狩人衆の意見を聞きたいです」
「まず、毒トカゲ討伐に上方からの槍の打ち下ろしを選んだ理由を教えて頂きたい」
「はい、トカゲ類は基本的に上方に視野がありません。それを見込んで今回の
作戦を立てたのですが。頭の上にもう一つ目があるとは思いませんでした。
これは、俺の不明によるものです。まずヤツを観察するべきでした」

「その後、地上戦を行おうとは考えなかったのですかな?」
「残念ながら、その時点で俺は毒煙に侵されていました。また、ヤツも狂乱して
口から毒煙を撒き散らしていたので近づく事も出来ず撤退して意識を失いました」

「毒トカゲの毒煙はそんなに強力なのですか?」
「俺は星母神様の使徒です。星母神様に加護を受けていて大抵の毒は効きません。
その俺が2日間意識を失っていた事から、ヤツの毒の強さを察してください」

ベルザロフさんが目を瞑って、腕を組みながら俺に質問した。
「ふ~む。今後、使徒様には勝算はありますかな?」
「....ヤツは毒を撒き散らす時に目を全て閉じます。その時に槍を打ち下ろせれば
討伐は可能でしょう。口から毒を吐き出している時が好機でしょうね。
ただ、それを行うのが難しいです。如何に毒息を噴き出させるかが勝機に関わる
でしょう」

「....分かりました。それなら俺が毒トカゲから毒息を噴き出させるオトリに
なりましょう。村長、宜しいですな?」

え、危険すぎるだろ?唯一の生き残りのケルロフさんも恐らく毒煙を真面まともには
浴びていないだろう。アレを真面まともに食らったら、俺以外は多分即死するぞ!
ベルザロフさんが続けて発言した。
「村長、俺が以前に村人全員でこの村から移住しようと提案した件は覚えていますな?あれは毒トカゲを脅威に思ったが故です。ケルロフも含めてヤツに殺された
者達は皆、素晴らしい狩人でした。俺はこのままでは、いずれヤツがこの村に現れる、この村が危ういと思ったのであの様な陳情をしたのです。
ですが村長は受け入れてくれなかった。だから俺は若い狩人達を連れて遠征に
出ました。色々ありましたが、ヤツらも遠征中に立派な狩人に育ちました。
俺は後を若い連中に任せて、毒トカゲと刺し違えようと考えたのです。
だが村に帰ってみると。使徒様がいて下さった。それに先程の使徒様のお話から
察するに、俺では刺し違えることも出来ないでしょう。
ですがオトリにはなれます。それで使徒様があの毒トカゲを仕留めてくれれば
俺は本望です」

なんだ、この人。格好良すぎるだろ!この人は死なせちゃいけない。
アーロフさんが涙ながらにベルザロフさんに語りかけた。
「ベルザロフ、私は今までお前を狩りにしか興味がない狂人の様に思っていた、
ゲドルフの件は聞いておろう。今後はお前がこの村の狩人衆を率いて行くべきだ。
毒トカゲのオトリは私が引き受ける。お前の様な男はこれからの村に必要な存在
なのだ」

「何を言うかアーロフ!お主程、村の事を考えて狩りをしていたヤツはいるまい。
お主が狩人頭になったと聞いて俺は安心したのだ。お主に今後の村の狩りは
任せた。俺の様な狩り狂いは毒トカゲと刺し違えるのが相応なのだ」

なんだこの熱いおとこ達は!俺を泣かせようとしているのか?
「ちょっと待って下さい!俺は貴方達を犠牲にする事は考えていません!
皆が生き残る方法を考えましょう!」

「使徒様の言う通りじゃ。ベルザロフ!アーロフ!何を英雄気取りで
とち狂っているのじゃ!冷静にならんか!」
ココエラさんが一喝してくれた。

「....ココ婆様。確かに俺もアーロフも少し熱くなっていた様です。俺も無駄死に
する気はありません。使徒様、毒トカゲの毒息はどの位の範囲に吐き出されるの
ですか?」

「そうですねえ、ちょっと庭に出て貰えますか?」
俺は村長の庭で毒息の範囲を説明した。大陸では人族の転生者が広めた、
メートル法が通用するだろうけど、この島では単位がない。
大体幅2メートル×射程距離20メートルだという事を実際の視覚範囲で
説明した。

「ふむ、この範囲なら前もって知っていれば、避ける事も可能でしょう。
やはり俺がオトリ役を務めます。その代わり使徒様、必ずヤツを仕留めてください!」
ゴレロフさんが進み出た。
「ベルザロフ、本当に大丈夫なのか?俺はお前が自己犠牲を前提でオトリ役を
引き受けるなら、この案は許可出来ないぞ」
ベルザロフさんはニッと笑って答えた。
「村長。俺は狩り狂いなんですよ。これからも狩りをする為にこの役目を務める
のです。そして村の皆が生き残る為にです」
凄いぞ、ベルザロフ!格好良すぎるぞ。ベルザロフ!

会合は一旦解散し、それから俺はベルザロフさんとアーロフさんで具体的に
バシリスク討伐の詳細を詰めた。
問題なのは移動手段だった。ベルザロフさんは2メートル近い大男だ。
徒歩だとバシリスクの領域まで3日位はかかるだろう。
俺は試しにベルザロフさんを肩車してみた。重いな100キロ位あるだろう。
だが飛んでみると、それ程負荷は無い。
これならバシリスクの領域までは運べるだろう。
ゴレロフさんとココエラさんが様子を見ていたが、
「ふむ、ベルザロフを乗せて飛べるなら、俺も大丈夫だろう。使徒様、
次は俺を海に、ガハッ」
....ゴレロフさんは鬼婆のレバーブローを食らったようだ。南無。

移動は何とかなりそうだな。後はベルザロフさんの防具だ。
雨合羽とか無かったかな?あ、ブルーシートがあるじゃないか!
アレを環頭衣みたいにして被ればいいんじゃない?

よし、家に帰ってブルーシートを持って来よう。俺はロップとリリを置いたまま
速攻で家まで往復した。
現在16時過ぎ。村長の庭に戻ると車座になって頭衆が談笑していた。
つーか皆、酒飲んでるよね?仕事しないでいいの?
それに、何故かエーラもいるぞ。面倒臭そうだな。

「おかえりだよ、レイ兄ちゃん!」
リリが飛びついて来た。可愛いヤツだ。頭を撫でておこう。

「何処に行ってたんだよ!遅えんだよ、レイ兄ちゃん」
何だろうねコイツは?エーラには取り合えず強めのデコピンをしておく。
ビービー泣いているが知ったこっちゃない。

「何してたんすか?負け犬のレイ様。あんなトカゲに負けたのはボクに笛を
教えなかった報いっすよ」
アホ猫はアイアンクローで締め上げる。うにゃうにゃ騒いでいるが無視した。

ブルーシートの切れ端で合羽のような物が2着出来た、頭にも被れるように
なっている。ティエラさんのテクだ。
これである程度、毒は防げるだろう。ベルザロフさんにはゴーグルも渡して
おこう。隙さえ作って貰えれば俺には必要ないからな。
その後。本格的に酒宴になった。俺は茶鱒の塩辛と塩ウニを提供した。
「ワイルフさん、カジキとダツもアハト・アハトも全く問題無かったです。
残念ながら、今回は使う前に毒にやられました。次回は必ず仕留めてみせますよ。
投槍器アトラトルはこの一番ゴツいのが使いやすかったですね」

「ガハハ!使徒様、人生は失敗と再挑戦の連鎖じゃよ。次は前の失敗を
繰り返さない様にすればいいのですぞ。しかし使徒様はこの投槍器アトラトルを気に入られたか。これはガガロフの作品ですな。アイツはもっぱら見た目よりも実用重視の男での。ワシが見た目も大事だと何度も言い聞かせたんじゃが、聞く耳持たずに武骨なものばかり作っている変人ですぞ」

ガガロフさんか、面白そうな人だな。今回の敗戦は俺が焦って、猛り狂って、
心に余裕が無かったせいだ。ワイルフさんとも碌に会話していなかったしな。
もっと色々な人と会話して、意見を聞くべきだった。心に余裕。
これがキーワードだ。俺は他の頭衆とも色々話をした。
エーラがまた無茶苦茶な理由で突っかかって来たので,
デコピンして泣かせておいた。何なんだコイツは?

「使徒様、まず一献どうぞ」
ベルザロフさんが酒を勧めてきた。

「決戦は明日になりますかな?」
「そうですね。ベルザロフさんの都合が合えばですけど。俺は何時でも
構いません」
「ふふ、俺も何時でも大丈夫ですよ。この酒が、今生で最後の酒になるかもしれませんな。じっくり堪能するとしましょうか」

....どうもこの人は死に場所を求めているような言動が多いな。何か事情が
あるのかも知れない。
「何を言ってるんですか。次もありますよ!そして次に飲む酒は勝利の宴で
飲む酒です」
「....そうなると良いですな。使徒様、明日は期待してくだされ。俺は俺の役割を
必ず果たします」

俺はこの人を絶対死なせないと心に誓った。
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