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バシリスク討伐計画1(設計会議~魔樫伐採)
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ナマコ騒動がやっと収まり、バシリスク討伐の件の話が進められる。
だが当面、関係のあるのは俺とドルロフさん、ワイルフさんだけなので、
俺達三人は別棟で銛の作成計画を詰めることになった。
残りのメンバーはこのまま衆議堂で塩の分配方法を検討するらしい。
ベルルフさんはエーラとリリに海の話を聞きたいらしく、
『皆の衆、後は良しなに』とエーラとリリを連れて退出してしまった。
何故かロップがフリスビーを持ってトコトコ着いていった。
まさかベルルフさんとも遊ぶ気なのか?
となりのちょっと小型の高床式住居で話を詰める事にした。
以前俺達が寝泊まりした小屋だ。
「それで、どんな感じでしょう?」
ドルロフさんは以前に俺が紙で作ったモックアップを出して説明を始めた。
「ふむ、ワイルフ殿とも検討したのですが、単にこの穂先の底に穴を空けるだけでは柄との強固な接合は難しいだろうという結論に達しました。
そこで、底に柄と接合するために筒状の構造を作り、そこに柄を差し込むのはどうかと考えました。ただそれでも柄を完全に固定する方法がなかなか思い浮かびません。
穴を筒の横に穴をあけて鉄の棒を柄ごと貫通させて固着させようと思ったのですが、この方法だと不具合があった場合、形成からやり直しになってしまいます。
使徒様は練習が必要と言っていましたから、ある程度、補修し易くないと難儀な事になってしまいます」
それは尤もだが、柄を固定する留め具か、俺の家にあるかもしれないぞ。
だが筒では単に柄を入れる穴が深くなるだけで、留め具で固定してもがたつきが
出るだろう。柄の方の規格がある程度統一出来れば話はべつだが。
「ワイルフさん、矢羽根の方はどうでしょう?」
「使徒様、これも4枚の羽が同じ大きさで同じ厚さ、重さじゃないと
ダメなんですかい?ちょっと難しいですぞ」
「そうですね。同じ大きさ、厚さ、重さでなければ無理して付ける必要はないですね。柄自身はどの位真っ直ぐで同じ太さに加工できますか?」
「使徒様の注文は厳しいのう、こればっかりは素材の魔樫次第だて」
せっかくアーロフさんからサンプルを貰ったが無駄になりそうだ。
まあ仕方ないよな、矢の場合は鳥の羽だし。同じようにはいかないか。
柄の規格統一も、やはり旋盤がないと厳しいか。職人の勘にも限度があるし
効率が悪い。
「筒状の構造物というのは俺の考えにもありました。ただこれは柄の部分の太さがが同一の規格であることが前提になります。うーん、どうしようかな?」
ん?待てよ、円柱での規格統一は旋盤がないと難しいが、
角柱ならいけるんじゃないか?
「ワイルフさん、円形で太さを整えるのは難しいでしょうが、接合部だけ精密に
角材のようにする事は可能ですか?」
「使徒様、それがワシらの仕事ですぞ。ただあまり細かいのはどうですかな?」
「道具は俺が貸します!よし今から再設計しますので、確認してください!」
ワイルフさんと相談して、接合部の角材部分は8cm×8cmの正方形にした。本当は負荷分散の為、八角形が良かったのだが、加工の手間を考えて、
最初は四角形で試してみる事にした。
そして穂先の再設計をする。まず単なる円錐ではなく、双円錐形に変更した。
円錐の底部にいきなり接合するのではなく双円錐の形にした方がバランスがいいと思ったのだ。要はRPG7みたいな形状だ。
つまり直径20cmで高さ50cmの円錐と高さ18cmの円錐を底面で貼り合わせた形だ。そして高さ18cmの円錐の頂点に
厚さ7ミリで高さ15cmの四角柱の接続部を設けるイメージだ。
この形状で再び紙でモックアップを作った。四角柱の筒を紙で作るのが面倒臭かったぞ!後の細かい部分は実際に試してみるしかない。
また、当初は同型二つを考えていたが、用途の違う2本があった方が良いと考え、
より貫通に特化した長い穂先も設計した。これは直径18cmで高さ70cmと
18cmの双円錐だ。これもモックアップを作った。
ドルロフさんは、モックアップを眺めながら、
「ふむ、いずれにしろ、柄を固定する部品次第になりますな」
「ドルロフさん、柄の部分の留め具には心当たりがあります。
もしかしたら丁度よい物が見つかるかもしれません」
「分かりました、期待しておりますぞ」
今日はもう遅いが明日には魔樫を伐採に行きたい。鋸は俺も持っているが、
もしかしたら魔樫には刃が立たないかもしれない。一応ワイルフさんの鋸を借り
ておこう。
「ワイルフさん、俺は明日南に魔樫を伐採しに行こうと思います。道具を貸して
いただけますか?」
「おう、分かりましたぜ使徒様!これからちょっくら取ってきますぜ!」
ワイルフさんは駆けだしていった。どうも鬼人族はせっかちが多い気がする。
俺も人の事は言えないが。
「ドルロフさん、前もってお願いがあるのです。これはまだ確定でもないですし、断って頂いても構いません」
「なんでしょう?使徒様。ワシに出来る事であれば協力しましょう」
「銛が完成した後、俺は海に練習に行きます。その時に出来れば、ドルロフさんにも同行して頂きたいのです」
そうメンテ要員だ。本当はワイルフさんにも来て欲しいんだがガタイが良すぎる。
その点ドルロフさんは背もあまり高くないし痩身だ。なんとかなるだろう。
それに故障が出るとしたら接合部だろう。その場合ドルロフさんじゃないと対応は難しい。
ドルロフさんは目を見開いて硬直している。
「....ワシが海へ?」
「あ、勿論、出来たらの話です。無理でしたら結構ですので」
ドルロフさんがむしゃぶりついて来た!
「何を言ってるんです!勿論行きます、行きますぞ!使徒様」
この人は普段、物静かだけど突然興奮するから怖い。
「ま、まずは完成させてからですね。頑張りましょう!あと、この話は暫く
ご内密にお願いします」
「分かりましたぞ!使徒様」
そこへワイルフさんが戻ってきた。
「使徒様、どうぞこれを。これで沢山魔樫を伐ってきてくだされ」
「ありがとうございますワイルフさん。ただ長さに制限がありまして、
あまり長いものは持ってこれませんよ」
「ああ、問題無いですぞ、魔樫はどちらかと言うと、堅いので細かい部品に使う事が多いのです」
「ああ、そうですか、では出来るだけ伐ってきましょう。それからこれはお二人に海からのお土産です。皆さんには内緒にした方がいいでしょうね」
「おお、これはコノワタですな!有難く頂きますぞ」
「ただ、この入れ物は星母神様の贈り物ですので、後で必ずお返し下さい」
「分かりましたぞ!ではワシは失礼しますぞ!」
ワイルフは小瓶を抱えてホクホク帰っていった。
「ドルロフさんもどうぞ」
「これは、あとどのくらい残っているのですかな?」
「これを含めて2瓶です」
「ならば、ワシは遠慮しておきます。海に行くという機会を頂けた上に、
さらに希少品を頂く程ワシは欲深くありません。
それにワシは鍛冶頭でもないので貰う資格はないでしょう。他の方に差し上げて
ください」
なるほど、それもそうか。俺としてはお礼のつもりだったんだが、
「分かりました。ドルロフさんは謙虚な方ですね」
「いえいえ、ただの人見知りな偏屈鍛冶ですよ。それでは、自宅に戻り、
このもっくあっぷの形状を、魔法形成する練習を始めようと思いますので
失礼します」
ドルロフさんも帰っていった。さて、そろそろ16時になる。今日はそろそろ家に帰らねば。
外に出ると、頭衆達が衆議堂から出てくるところだった。ギギロフがこちらに
気付き話しかけてきた。
「おお、使徒様、方針は決まりましたかな?」
「はい、俺は明日、南に魔樫を伐りに行ってきます」
ティエラがちょっと考え込んで、頼み事をしてきた。
「あの、使徒様、南の大河に行かれるのですよね?もし時間があったら、
ベサル菜を採ってきていただくわけにはいかないでしょうか?
今、村には使徒様に教わった乾燥野菜を作るのに適した葉野菜がないのです」
まあ芋とか香辛料ばっかで葉野菜を育てていないみたいだしな。
「....分かりました。多分知っている野草だと思います。たくさん刈ってくればいいんですね」
「はい、ありがとうございます。使徒様」
なんか、分かってやってる事だけど段々便利屋みたいになって行くな。
取り合えず、バシリスク討伐までは手助けするが、それ以降は村とは距離を
置いた方がよいだろうな。
「ゴレロフ村長、俺は明日から南の大河に向かいます。日帰り出来るかどうかは
未定です。そして今日はリリを連れて帰りますが、明日から長くて2日程、
ゴレロフ村長かギギロフさんにリリを預かって欲しいのですが」
即座にギギロフが名乗りを上げた。
「使徒様、ワシにお任せくだされ。以前の罪滅ぼしじゃよ」
「ありがとうございます。いくつか食材を置いて行きますね。このコノワタの瓶
は星母神様の贈り物なので後で必ずお返しください」
俺はコノワタと干し牡蠣、煮干しを提供した。食べ方はリリが知っているはずだ。
キーロフさんが燃えるような目でコノワタを見つめている。仕方がない。
「コノワタは後、1瓶あります。誰に差し上げるか、キーロフさん、アーロフさんで決めてください」
アーロフさんは辞退した。
「いや、私は結構です。それでは使徒様、私は明日から北の森に遠征ですので、これにて失礼します」
「あ、アーロフさん、お聞きしたい事があるのですが、お忙しいですか?」
「いえ、大丈夫ですよ。なんでしょう使途様」
「ちょっと待っていて下さい」
アーロフさんは一番癖がなくて話しやすい人だな。狩人衆もこの人が頭ならグレたりしないだろう。
さて食いしん坊爺を追い払おう。
なんかキーロフさんに渡すのは癪な気がするが仕方がない。
「では、キーロフさんに差し上げます。瓶は星母神様の贈り物なので後で必ずお返しください」
「分かりました。使徒様ありがとうございます」
キーロフさんは一礼して去っていった。
「さて、アーロフさん、俺は明日南に向かいますが、どんな魔物がいるのでしょう?」
「ああ、魔物の話ですか、それは我々狩人の領域ですね。まず南には....」
アーロフさんに色々レクチャーを受けた。かなり参考になったぞ。
さて、大分遅くなった、家に帰ろう。
ロップとリリはどこだ?庭の方で4人でフリスビーをしているのが見える。ベルルフさん、会議サボって遊ぶなよ。
「ロップ、リリ!帰るぞ~」
4人とも駆け寄って来た。なんでベルルフさんまで?
「使徒様!ふりすびいは楽しい遊びですな。エーラとリリに海の話を聞いて
ますます行きたくなりましたぞ、それでは俺は失礼します」
「オラ、ベルルフさんに一杯遊んでもらっただよ」
「うにゃ~、もう帰るっすか」
「そっか、じゃあそろそろ家に帰ろうぜ、レイ兄ちゃん」
....この中で一つだけ不適切な言動があります。そうエーラです。
「エーラ姉ちゃん、キミは何を言ってるんですか?キミは明日からアーロフさんと遠征に行くんですよ」
「えー、だって明日だろ。今日はいいじゃんかよー」
「遠征には、いつ出発するのですか?」
「ん?大抵早朝だな。あ!」
「エーラ姉ちゃんは俺を真夜中に起こすつもりだったのか?却下だ」
「じゃあ今度は何時....」
「だ~め!俺はこれから忙しくなるの!約束はしないからな」
エーラが涙ぐみ始めた。ここでギャン泣きは勘弁だ。無視して早く帰ろう。
「ロップ、肩に乗れ、リリは抱えるからこっちに来なさい」
「エーラちゃん、ばいばいっす」
「エーラ姉ちゃん、また遊ぶだよ」
俺は浮き上がり家路についた。
「びええええん、寂しいよ~」
下からエーラの鳴き声が聞こえて来るが俺は聞こえない振りをした。
「レイ様、エーラちゃん可哀そうっすよ」
「仕方ないだろ、明日は早朝からアーロフさんと狩りなんだから。あとリリにも家についたら話がある」
「ん、なんだべ?」
俺は暗くなりつつある渓谷を最高速に近い速度で飛ぶ。なかなかのスリルだな。高速に慣れてきたリリも無言で身体を強張らせている。
なんとか日が落ちる前に家に着くことが出来た。鬼人族の村から1時間ちょいだ。
今日は飯は簡単に済まそう。
「リリ、悪いが晩飯は黒芋でいいか?」
「オラ、黒芋は甘くて大好きだ!」
うんいい子だ、ロップには干物、俺達は黒芋で簡素な夕飯を済ました。
さて岩棚でロケットストーブに火を入れて、リリにお話をする事にした。
「リリ、俺とロップは明日、危険なところに行く。リリには明日、もしかしたら
明後日まで、ギギロフさんのところでお手伝いをしていて欲しいんだ」
「....オラ、レイ兄ちゃんと離れるの嫌んだ!」
「分かってくれ、俺はリリがいると、リリを守る事に気を使わなきゃならない。
リリを後ろにして戦っていても、その後ろでリリが襲われていたらと思うと全力
で戦えないんだ」
リリはしばらく俯いていたが、声を絞り出した。
「....分かっただよ。オラ、ギギロフおじちゃんの所でお手伝いしているだよ。
でもレイ兄ちゃん、必ず戻って来てくんろ!」
「そうっすよ。ボクもリリちゃんと一緒にレイ様の帰りをお待ちしてるっす」
俺はリリにはなでなでを、ロップには百裂デコピンを与えた。
ロップとリリがリバーシで遊んでる横で、海での戦果の回収を行った。
魚醤4甕を2つの大甕に統合。これでしばらくは魚醤は作らない。
一年程様子見だ。
カサゴの干物はクーラーに入れて持っていこう。残りの乾物類は干し網に入れた
まま乾燥を継続する。そうだ、干しナマコも持っていかなきゃな。何個位戻せばいいんだ?
これ戻すと30cm位になるんだよな。取り合えず10個位あればいいか?
俺はタライに湯を沸かし、干しナマコを放りこんだ。
さて、明日の準備だ。道具を取り出すのが面倒臭い。塩作り関連の樽とか甕は
取り出す。採取用の道具はそのままでいいや。あと両刃鋸を追加しておこう。
そしてこれだ、やっぱりあった!未整理品の中からみつけたぞ。
六角ボルト&ナット!今回使えそうなサイズの物をいくつか探し出した。
それと工具が必要だな。特にハンドドリルは必要だろう。
長ネジ類も役に立つかもしれないな、入れておこう
あ、水汲み忘れてた。今回は川に行くので不要かとも思ったが、汚い川だったら
嫌なので一応持って行くべきだろう。面倒くさっ。
最近はあまり寝ていないから今日はちゃんと寝ておこうか。
それでは皆さんお休みなさい。
翌朝、5時に目が覚めた。ラジオ体操をして黒芋を茹でる。
そういえばまた着た切りだったな。なんかこの世界に来てからかなり不潔になったぞ。全部着替える。カーゴパンツが迷彩の軍服レプリカになった。
左腰には剣鉈と普通の鉈。右腰には作業用ポーチと水筒、ナイフ。取り合えず
村まで行くので武器はなしだ。
現在7時。
「よし、村に行きますよ~」
俺は家から1時間弱で鬼人族の村に到着した。エーラは以前、石河原から3日位
の場所だと言っていた。いくら鬼人族が健脚でも森の中は一日20キロが限界だろう。多分、石河原から60キロ位なんだろうな。
一応ゴレロフさんに挨拶してから、ギギロフさんの所に行ってリリを預けよう。
村長宅に着くと、ティエラさんとキーロフさんが待っていた。
「使徒様、どうぞ対価をお納めくださいませ」
また大量の作物を頂いた。そろそろ少なくなっていたので有難くいただいておこう
「どうぞ使徒様。コノワタは最高ですじゃ」
キーロフさんからもまた2袋分の炭を頂いた。ほとんど減ってないので断ったが、
無理やり押し付けられた。
親戚のおじさんが小遣いを押し付ける時のようだ。コノワタの瓶も返して貰った。
もう食ったの?
二人に礼をいい、ゴレロフさんに挨拶をした後。ギギロフさんの工房を訪れた。
工房と言っても土間の様なところに板と粘土が入った甕が置いてあるだけだ。
焼き場はどこにあるんだろう?
「おお、使徒様。ようこそ我が工房へ」
「ギギロフさん。今日から最長2日、リリの事をお願いします。リリもちゃんと
お手伝いするんだぞ」
「うん、オラ、ギギロフおじちゃんのお手伝いするの好きだ」
「おまかせくだされ、リリ、仕事の仕方は覚えているな?」
「オラ、早く粘土こねこねしてえだよ」
よし、大丈夫そうだな。もう一度ギギロフさんにリリの事を頼んだ。さあ出発だ!
収納袋からバールを出しておく。
「よし、行くぞロップ!」
「レイ様、行ってらっしゃいっす」
俺はアイアンクローでロップを掴み上げ肩に乗せて南へ出発した。
一度高度を高く取ってみよう。南方の景色はずっと森だな。
ああ、あそこか。南のおそらく全速力なら30分位で着く距離だろうか?
森が枯死して開けている地域がある。
近付いてみよう。全速で30分程で森の枯死地帯に到着した。おそらく村から
50キロ位だろう。廻りにも所々、木々が枯死している場所がある。まずいぞ、
早く狩らないと村の方にまで来るかもしれない。
岩塩を採りに行っていた村の男衆はこの辺りを迂回していたのだろうか?
しまった、話を聞いておくべきだったな。
でも、バシリスクはあんな丸見えの場所に住むだろうか?
「なあ、ロップ。バシリスクはあそこに居ると思うか?」
「う~ん?これはボクの考えっすけどね。あの枯れている場所は、バシリスクが
毒を噴出した場所であって、バシリスクが住んでいる場所じゃないと思うっすよ」
「俺の考えと一緒だ。要はヤツはこの辺のどこかにいるって事だな。
怒ったか、狩りか分からないが、毒を噴出した形跡がこの有様ってことだな」
これは厄介だ。やはり毒で誘き出す必要があるな。まあ今は手が出せない、
このまま南へ直進しよう。さらに最高速で15分程飛ぶと小規模な山地になって来た。高尾山のあたりに似ている。この山のどれかで岩塩が採れるのだろう。
結構遠いな~。村から70キロくらいあるんじゃないか?
山地を縫うように南へ向かうと大きな河に辿り着いた。東から西へ向かって流れている。これを下ると新たな河口を発見できるだろうな。いずれ調査してみよう。
岸は石河原で川幅は200メートル位ある、確かに大河だ。大河沿いの林に魔樫
は生えているんだったよな。
アーロフさんによると対岸は鬼人族未踏の地で、行くのはお勧めできないって
言っていた。行くのは止めておこう。下流を見ると200メートル位先に木立が
見えるな。確認してみよう。
成程、真っ黒い幹の木が沢山生えている、これが魔樫で間違いないだろう。さっそく収納袋から鋸類を出し、伐採に取り掛かった。
「ロップは周囲の警戒を頼む。今日はマラカスとタンバリン禁止」
「うにゃ~、酷いっす!レイ様は暴君っすよ!」
俺は8cm~12cm位の木でなるべく真っ直ぐなものを選び、鋸で伐採していった。最初はワイルフさんに借りた鋸で伐っていたが、どうも刃が引っかかる。
コウエイ様の遺産の両刃鋸の方が質は大分いいようだ。後でドルロフさんに見せればワイルフさんの鋸も改良出来るだろう。
魔樫は使徒の膂力だと一本2分くらいで倒せる。倒した後は枝を打ち落とし、
2.7メートル位で切り分けて積み上げておく。昼飯抜きで作業したので、
15時には63本の木材を得る事が出来た。これに打ち落とした枝の中から
太いものを厳選し、コウエイ様の収納袋に入れた。採りすぎはいくない。
今から帰る事も可能だが、まだティエラさんの依頼もあったな。
仕方ない今日は野営だ。
暫く野営地を探して、砂地の河原を見つけたのでテントを設営した。
アーロフさんに確認したところ、村から南方面はこの大河までは、ダイアボア、ダイアラット、ダイアバックくらいが危険な魔物で、あとは普通の生き物が住んでいるらしい。確かに安全で良い狩場かもしれない。ただアーロフさんが気になる事を言っていた。
『これは未確認情報なんですが、異形の魔物の目撃例が幾つかあります。なんでも巨大で手足の長い熊のような魔物、巨大な狼と猪を掛け合わせたような魔物、それに2本足で走り回る巨大な鳥らしいです。目撃者達は隠れてやり過ごしたそうですが、尋常じゃない巨大さだったそうですよ』
なにそれコワイ。俺も見かけたらスルーしよう。
さて、飯を探すとしようか。恒例の釣りだ。川虫で茶鱒を6匹程釣った。
ちょっとカニ網を仕掛けてみようか。茶鱒のワタを入れてカニ網を放り込んだ。
今日の晩飯は茶鱒だけだ。今日はリバーシとトランプを出発直前でこっそり抜いておいた。ロップが荷物をゴソゴソしてリバーシとトランプを探している様を肴に
晩酌をする。俺がネタバラシをすると、
「もう、レイ様とは遊んでやんないっすよ!」
案の定不貞腐れた。俺はロップに遊んで貰った覚えは一度たりともないのだが。ロップがテントで不貞寝を始めたので、ロケットストーブ前で、見張りながら、
干しナマコを戻しながら、重力魔法の練習を始めたのだった。
翌朝、徹夜明けの俺は重力魔法に関しては少し手応えを感じていた。石の落下に多少の緩急をつけられる様になった気がする。ただこれが重力を操作したせいなのか、他の魔法であるかはまだ分からない。今後の検証が必要だな。
さて朝食を終えて、現在7時。残念ながらカニ網は空だった。
よし、ティエラさんの依頼のベサル菜を探そう、からし菜と同じなら川沿いに
生えているはずだ。川沿いをしばらく探すと、おっアレじゃね?
菜の花によく似た草が大群生している。多分コレだろう、違っていたとしても
食えるはず。ちょっと齧ってみるといい感じのほろ苦さだ。ゾクゾクもしないので毒はないだろう。
よし、これは俺用にも一袋採ろう!鉈でザクザク刈り、土嚢袋に詰め込んでいく。2時間程続けて9袋分も採ってしまった。だがまだ群生地のほんの一角だ。
この草は枯れるとマスタードシードが取れるはずだ。また来よう。
俺の収納袋に収納し、さて帰ろうかと思った時、
「レイ様、後ろ!避けて下さいっす!」
俺が振り返ろうと半身になった瞬間、右肩になにかデカい物が突っ込んできて、
5メートル位、吹っ飛ばされた!
ぐおお、痛え。何なんだ!最近は俺も魔力感知出来るようになっていたんだが、
完全に油断していた。起き上がって俺をふっとばした相手の方を見ると、
奇妙なケモノが俺に突進しようと前脚をガツガツしている。顔は細長く、
猪と犬のハーフみたいで上顎にも下顎にも牙が生えている。
しかも頭には2本の短い角?瘤?がある。
身体はかなりの巨体で肩の高さは俺よりも高い。
四肢は猪と違いかなり長い。そして爛々とした目は赤く光っている。
これがアーロフさんの言っていた未確認の魔物だろう。
しまった!今は武器が無い、どうしよう、逃げるか?迷っているとまた突っ込んで来た。ぐおっ、俺はバックステップ+飛行で石河原まで飛び退った。からし菜の生えているあたりは草の丈が高く俺の方が不利だが、河原なら足場が悪いしヤツが
不利だろう。よし、やってやろうじゃんか!俺は剣鉈を抜いた。河原はヤツに不利かと思ったが、ゴロタ石を蹴散らして突進してきた。だが流石にスピードは大分落ちている。俺は華麗に躱して、生命魔法"キーン"を掛けた。ヤツはこちらに尻を向けたまま、嫌そうに頭を振っている。俺は近づいて後ろ右足の膝裏に剣鉈を突き立て捻った。
「ぶぎーっ」
痛かったようだ。俺も痛かったんだよ。
こちらを向いて前脚ガツガツからの突進をしてきたが、もう見る影もない。びっこ引いてるし。今度は"チカチカ"を掛けてから。後ろ左足の膝裏を抉った。
猪犬はもう立てないようで、前脚だけでもがいている。これは慈悲ですよ。
俺はパラライズからのダークファイアーボルトで猪犬を倒した。
ふと気付くと、右肩から結構出血していた。最初に突っ込まれた時に角か牙で
抉られたんだろう。俺は傷口を消毒し布を当ててテープで貼っておいた。
さてじっくり観察してみよう。
「レイ様、大丈夫っすか!ごめんなしゃい~。
ボクがもっと早く気付いていたら....」
「いや、ロップ大丈夫だ。骨に異常はないし、刺傷もそんなに深くない。
それよりコイツは何なんだ?」
「うにゃ~ダイアボアっぽいっすけど、見た目は全然違うっすね。
それにダイアボアよりも素早いっす」
何だっけ?絶滅した哺乳類のドキュメンタリーでこんなヤツを見た覚えがある。
名前はダエドン?ダエオン?そうだ、確かダエオドンだ!
どういう生き物なのかは忘れた、結構どうでもいい。これ持って帰る?
俺の収納袋には頭を落とせば詰めて入れられるかもしれない。やってみるか。
取り合えず頭を落とそう。剣鉈でジャクジャク切れ目を入れ、鋸で頭を落とした。
全長3メートル位あったが、頭がかなり長いので、頭を落とすと2メートル位だ。
魔法で血を抜いた後は収納袋を展開しパズルのように収納した。うんしょ!
梱包終了」
ハア、今回は疲れた。もう村に帰ろう。
だが当面、関係のあるのは俺とドルロフさん、ワイルフさんだけなので、
俺達三人は別棟で銛の作成計画を詰めることになった。
残りのメンバーはこのまま衆議堂で塩の分配方法を検討するらしい。
ベルルフさんはエーラとリリに海の話を聞きたいらしく、
『皆の衆、後は良しなに』とエーラとリリを連れて退出してしまった。
何故かロップがフリスビーを持ってトコトコ着いていった。
まさかベルルフさんとも遊ぶ気なのか?
となりのちょっと小型の高床式住居で話を詰める事にした。
以前俺達が寝泊まりした小屋だ。
「それで、どんな感じでしょう?」
ドルロフさんは以前に俺が紙で作ったモックアップを出して説明を始めた。
「ふむ、ワイルフ殿とも検討したのですが、単にこの穂先の底に穴を空けるだけでは柄との強固な接合は難しいだろうという結論に達しました。
そこで、底に柄と接合するために筒状の構造を作り、そこに柄を差し込むのはどうかと考えました。ただそれでも柄を完全に固定する方法がなかなか思い浮かびません。
穴を筒の横に穴をあけて鉄の棒を柄ごと貫通させて固着させようと思ったのですが、この方法だと不具合があった場合、形成からやり直しになってしまいます。
使徒様は練習が必要と言っていましたから、ある程度、補修し易くないと難儀な事になってしまいます」
それは尤もだが、柄を固定する留め具か、俺の家にあるかもしれないぞ。
だが筒では単に柄を入れる穴が深くなるだけで、留め具で固定してもがたつきが
出るだろう。柄の方の規格がある程度統一出来れば話はべつだが。
「ワイルフさん、矢羽根の方はどうでしょう?」
「使徒様、これも4枚の羽が同じ大きさで同じ厚さ、重さじゃないと
ダメなんですかい?ちょっと難しいですぞ」
「そうですね。同じ大きさ、厚さ、重さでなければ無理して付ける必要はないですね。柄自身はどの位真っ直ぐで同じ太さに加工できますか?」
「使徒様の注文は厳しいのう、こればっかりは素材の魔樫次第だて」
せっかくアーロフさんからサンプルを貰ったが無駄になりそうだ。
まあ仕方ないよな、矢の場合は鳥の羽だし。同じようにはいかないか。
柄の規格統一も、やはり旋盤がないと厳しいか。職人の勘にも限度があるし
効率が悪い。
「筒状の構造物というのは俺の考えにもありました。ただこれは柄の部分の太さがが同一の規格であることが前提になります。うーん、どうしようかな?」
ん?待てよ、円柱での規格統一は旋盤がないと難しいが、
角柱ならいけるんじゃないか?
「ワイルフさん、円形で太さを整えるのは難しいでしょうが、接合部だけ精密に
角材のようにする事は可能ですか?」
「使徒様、それがワシらの仕事ですぞ。ただあまり細かいのはどうですかな?」
「道具は俺が貸します!よし今から再設計しますので、確認してください!」
ワイルフさんと相談して、接合部の角材部分は8cm×8cmの正方形にした。本当は負荷分散の為、八角形が良かったのだが、加工の手間を考えて、
最初は四角形で試してみる事にした。
そして穂先の再設計をする。まず単なる円錐ではなく、双円錐形に変更した。
円錐の底部にいきなり接合するのではなく双円錐の形にした方がバランスがいいと思ったのだ。要はRPG7みたいな形状だ。
つまり直径20cmで高さ50cmの円錐と高さ18cmの円錐を底面で貼り合わせた形だ。そして高さ18cmの円錐の頂点に
厚さ7ミリで高さ15cmの四角柱の接続部を設けるイメージだ。
この形状で再び紙でモックアップを作った。四角柱の筒を紙で作るのが面倒臭かったぞ!後の細かい部分は実際に試してみるしかない。
また、当初は同型二つを考えていたが、用途の違う2本があった方が良いと考え、
より貫通に特化した長い穂先も設計した。これは直径18cmで高さ70cmと
18cmの双円錐だ。これもモックアップを作った。
ドルロフさんは、モックアップを眺めながら、
「ふむ、いずれにしろ、柄を固定する部品次第になりますな」
「ドルロフさん、柄の部分の留め具には心当たりがあります。
もしかしたら丁度よい物が見つかるかもしれません」
「分かりました、期待しておりますぞ」
今日はもう遅いが明日には魔樫を伐採に行きたい。鋸は俺も持っているが、
もしかしたら魔樫には刃が立たないかもしれない。一応ワイルフさんの鋸を借り
ておこう。
「ワイルフさん、俺は明日南に魔樫を伐採しに行こうと思います。道具を貸して
いただけますか?」
「おう、分かりましたぜ使徒様!これからちょっくら取ってきますぜ!」
ワイルフさんは駆けだしていった。どうも鬼人族はせっかちが多い気がする。
俺も人の事は言えないが。
「ドルロフさん、前もってお願いがあるのです。これはまだ確定でもないですし、断って頂いても構いません」
「なんでしょう?使徒様。ワシに出来る事であれば協力しましょう」
「銛が完成した後、俺は海に練習に行きます。その時に出来れば、ドルロフさんにも同行して頂きたいのです」
そうメンテ要員だ。本当はワイルフさんにも来て欲しいんだがガタイが良すぎる。
その点ドルロフさんは背もあまり高くないし痩身だ。なんとかなるだろう。
それに故障が出るとしたら接合部だろう。その場合ドルロフさんじゃないと対応は難しい。
ドルロフさんは目を見開いて硬直している。
「....ワシが海へ?」
「あ、勿論、出来たらの話です。無理でしたら結構ですので」
ドルロフさんがむしゃぶりついて来た!
「何を言ってるんです!勿論行きます、行きますぞ!使徒様」
この人は普段、物静かだけど突然興奮するから怖い。
「ま、まずは完成させてからですね。頑張りましょう!あと、この話は暫く
ご内密にお願いします」
「分かりましたぞ!使徒様」
そこへワイルフさんが戻ってきた。
「使徒様、どうぞこれを。これで沢山魔樫を伐ってきてくだされ」
「ありがとうございますワイルフさん。ただ長さに制限がありまして、
あまり長いものは持ってこれませんよ」
「ああ、問題無いですぞ、魔樫はどちらかと言うと、堅いので細かい部品に使う事が多いのです」
「ああ、そうですか、では出来るだけ伐ってきましょう。それからこれはお二人に海からのお土産です。皆さんには内緒にした方がいいでしょうね」
「おお、これはコノワタですな!有難く頂きますぞ」
「ただ、この入れ物は星母神様の贈り物ですので、後で必ずお返し下さい」
「分かりましたぞ!ではワシは失礼しますぞ!」
ワイルフは小瓶を抱えてホクホク帰っていった。
「ドルロフさんもどうぞ」
「これは、あとどのくらい残っているのですかな?」
「これを含めて2瓶です」
「ならば、ワシは遠慮しておきます。海に行くという機会を頂けた上に、
さらに希少品を頂く程ワシは欲深くありません。
それにワシは鍛冶頭でもないので貰う資格はないでしょう。他の方に差し上げて
ください」
なるほど、それもそうか。俺としてはお礼のつもりだったんだが、
「分かりました。ドルロフさんは謙虚な方ですね」
「いえいえ、ただの人見知りな偏屈鍛冶ですよ。それでは、自宅に戻り、
このもっくあっぷの形状を、魔法形成する練習を始めようと思いますので
失礼します」
ドルロフさんも帰っていった。さて、そろそろ16時になる。今日はそろそろ家に帰らねば。
外に出ると、頭衆達が衆議堂から出てくるところだった。ギギロフがこちらに
気付き話しかけてきた。
「おお、使徒様、方針は決まりましたかな?」
「はい、俺は明日、南に魔樫を伐りに行ってきます」
ティエラがちょっと考え込んで、頼み事をしてきた。
「あの、使徒様、南の大河に行かれるのですよね?もし時間があったら、
ベサル菜を採ってきていただくわけにはいかないでしょうか?
今、村には使徒様に教わった乾燥野菜を作るのに適した葉野菜がないのです」
まあ芋とか香辛料ばっかで葉野菜を育てていないみたいだしな。
「....分かりました。多分知っている野草だと思います。たくさん刈ってくればいいんですね」
「はい、ありがとうございます。使徒様」
なんか、分かってやってる事だけど段々便利屋みたいになって行くな。
取り合えず、バシリスク討伐までは手助けするが、それ以降は村とは距離を
置いた方がよいだろうな。
「ゴレロフ村長、俺は明日から南の大河に向かいます。日帰り出来るかどうかは
未定です。そして今日はリリを連れて帰りますが、明日から長くて2日程、
ゴレロフ村長かギギロフさんにリリを預かって欲しいのですが」
即座にギギロフが名乗りを上げた。
「使徒様、ワシにお任せくだされ。以前の罪滅ぼしじゃよ」
「ありがとうございます。いくつか食材を置いて行きますね。このコノワタの瓶
は星母神様の贈り物なので後で必ずお返しください」
俺はコノワタと干し牡蠣、煮干しを提供した。食べ方はリリが知っているはずだ。
キーロフさんが燃えるような目でコノワタを見つめている。仕方がない。
「コノワタは後、1瓶あります。誰に差し上げるか、キーロフさん、アーロフさんで決めてください」
アーロフさんは辞退した。
「いや、私は結構です。それでは使徒様、私は明日から北の森に遠征ですので、これにて失礼します」
「あ、アーロフさん、お聞きしたい事があるのですが、お忙しいですか?」
「いえ、大丈夫ですよ。なんでしょう使途様」
「ちょっと待っていて下さい」
アーロフさんは一番癖がなくて話しやすい人だな。狩人衆もこの人が頭ならグレたりしないだろう。
さて食いしん坊爺を追い払おう。
なんかキーロフさんに渡すのは癪な気がするが仕方がない。
「では、キーロフさんに差し上げます。瓶は星母神様の贈り物なので後で必ずお返しください」
「分かりました。使徒様ありがとうございます」
キーロフさんは一礼して去っていった。
「さて、アーロフさん、俺は明日南に向かいますが、どんな魔物がいるのでしょう?」
「ああ、魔物の話ですか、それは我々狩人の領域ですね。まず南には....」
アーロフさんに色々レクチャーを受けた。かなり参考になったぞ。
さて、大分遅くなった、家に帰ろう。
ロップとリリはどこだ?庭の方で4人でフリスビーをしているのが見える。ベルルフさん、会議サボって遊ぶなよ。
「ロップ、リリ!帰るぞ~」
4人とも駆け寄って来た。なんでベルルフさんまで?
「使徒様!ふりすびいは楽しい遊びですな。エーラとリリに海の話を聞いて
ますます行きたくなりましたぞ、それでは俺は失礼します」
「オラ、ベルルフさんに一杯遊んでもらっただよ」
「うにゃ~、もう帰るっすか」
「そっか、じゃあそろそろ家に帰ろうぜ、レイ兄ちゃん」
....この中で一つだけ不適切な言動があります。そうエーラです。
「エーラ姉ちゃん、キミは何を言ってるんですか?キミは明日からアーロフさんと遠征に行くんですよ」
「えー、だって明日だろ。今日はいいじゃんかよー」
「遠征には、いつ出発するのですか?」
「ん?大抵早朝だな。あ!」
「エーラ姉ちゃんは俺を真夜中に起こすつもりだったのか?却下だ」
「じゃあ今度は何時....」
「だ~め!俺はこれから忙しくなるの!約束はしないからな」
エーラが涙ぐみ始めた。ここでギャン泣きは勘弁だ。無視して早く帰ろう。
「ロップ、肩に乗れ、リリは抱えるからこっちに来なさい」
「エーラちゃん、ばいばいっす」
「エーラ姉ちゃん、また遊ぶだよ」
俺は浮き上がり家路についた。
「びええええん、寂しいよ~」
下からエーラの鳴き声が聞こえて来るが俺は聞こえない振りをした。
「レイ様、エーラちゃん可哀そうっすよ」
「仕方ないだろ、明日は早朝からアーロフさんと狩りなんだから。あとリリにも家についたら話がある」
「ん、なんだべ?」
俺は暗くなりつつある渓谷を最高速に近い速度で飛ぶ。なかなかのスリルだな。高速に慣れてきたリリも無言で身体を強張らせている。
なんとか日が落ちる前に家に着くことが出来た。鬼人族の村から1時間ちょいだ。
今日は飯は簡単に済まそう。
「リリ、悪いが晩飯は黒芋でいいか?」
「オラ、黒芋は甘くて大好きだ!」
うんいい子だ、ロップには干物、俺達は黒芋で簡素な夕飯を済ました。
さて岩棚でロケットストーブに火を入れて、リリにお話をする事にした。
「リリ、俺とロップは明日、危険なところに行く。リリには明日、もしかしたら
明後日まで、ギギロフさんのところでお手伝いをしていて欲しいんだ」
「....オラ、レイ兄ちゃんと離れるの嫌んだ!」
「分かってくれ、俺はリリがいると、リリを守る事に気を使わなきゃならない。
リリを後ろにして戦っていても、その後ろでリリが襲われていたらと思うと全力
で戦えないんだ」
リリはしばらく俯いていたが、声を絞り出した。
「....分かっただよ。オラ、ギギロフおじちゃんの所でお手伝いしているだよ。
でもレイ兄ちゃん、必ず戻って来てくんろ!」
「そうっすよ。ボクもリリちゃんと一緒にレイ様の帰りをお待ちしてるっす」
俺はリリにはなでなでを、ロップには百裂デコピンを与えた。
ロップとリリがリバーシで遊んでる横で、海での戦果の回収を行った。
魚醤4甕を2つの大甕に統合。これでしばらくは魚醤は作らない。
一年程様子見だ。
カサゴの干物はクーラーに入れて持っていこう。残りの乾物類は干し網に入れた
まま乾燥を継続する。そうだ、干しナマコも持っていかなきゃな。何個位戻せばいいんだ?
これ戻すと30cm位になるんだよな。取り合えず10個位あればいいか?
俺はタライに湯を沸かし、干しナマコを放りこんだ。
さて、明日の準備だ。道具を取り出すのが面倒臭い。塩作り関連の樽とか甕は
取り出す。採取用の道具はそのままでいいや。あと両刃鋸を追加しておこう。
そしてこれだ、やっぱりあった!未整理品の中からみつけたぞ。
六角ボルト&ナット!今回使えそうなサイズの物をいくつか探し出した。
それと工具が必要だな。特にハンドドリルは必要だろう。
長ネジ類も役に立つかもしれないな、入れておこう
あ、水汲み忘れてた。今回は川に行くので不要かとも思ったが、汚い川だったら
嫌なので一応持って行くべきだろう。面倒くさっ。
最近はあまり寝ていないから今日はちゃんと寝ておこうか。
それでは皆さんお休みなさい。
翌朝、5時に目が覚めた。ラジオ体操をして黒芋を茹でる。
そういえばまた着た切りだったな。なんかこの世界に来てからかなり不潔になったぞ。全部着替える。カーゴパンツが迷彩の軍服レプリカになった。
左腰には剣鉈と普通の鉈。右腰には作業用ポーチと水筒、ナイフ。取り合えず
村まで行くので武器はなしだ。
現在7時。
「よし、村に行きますよ~」
俺は家から1時間弱で鬼人族の村に到着した。エーラは以前、石河原から3日位
の場所だと言っていた。いくら鬼人族が健脚でも森の中は一日20キロが限界だろう。多分、石河原から60キロ位なんだろうな。
一応ゴレロフさんに挨拶してから、ギギロフさんの所に行ってリリを預けよう。
村長宅に着くと、ティエラさんとキーロフさんが待っていた。
「使徒様、どうぞ対価をお納めくださいませ」
また大量の作物を頂いた。そろそろ少なくなっていたので有難くいただいておこう
「どうぞ使徒様。コノワタは最高ですじゃ」
キーロフさんからもまた2袋分の炭を頂いた。ほとんど減ってないので断ったが、
無理やり押し付けられた。
親戚のおじさんが小遣いを押し付ける時のようだ。コノワタの瓶も返して貰った。
もう食ったの?
二人に礼をいい、ゴレロフさんに挨拶をした後。ギギロフさんの工房を訪れた。
工房と言っても土間の様なところに板と粘土が入った甕が置いてあるだけだ。
焼き場はどこにあるんだろう?
「おお、使徒様。ようこそ我が工房へ」
「ギギロフさん。今日から最長2日、リリの事をお願いします。リリもちゃんと
お手伝いするんだぞ」
「うん、オラ、ギギロフおじちゃんのお手伝いするの好きだ」
「おまかせくだされ、リリ、仕事の仕方は覚えているな?」
「オラ、早く粘土こねこねしてえだよ」
よし、大丈夫そうだな。もう一度ギギロフさんにリリの事を頼んだ。さあ出発だ!
収納袋からバールを出しておく。
「よし、行くぞロップ!」
「レイ様、行ってらっしゃいっす」
俺はアイアンクローでロップを掴み上げ肩に乗せて南へ出発した。
一度高度を高く取ってみよう。南方の景色はずっと森だな。
ああ、あそこか。南のおそらく全速力なら30分位で着く距離だろうか?
森が枯死して開けている地域がある。
近付いてみよう。全速で30分程で森の枯死地帯に到着した。おそらく村から
50キロ位だろう。廻りにも所々、木々が枯死している場所がある。まずいぞ、
早く狩らないと村の方にまで来るかもしれない。
岩塩を採りに行っていた村の男衆はこの辺りを迂回していたのだろうか?
しまった、話を聞いておくべきだったな。
でも、バシリスクはあんな丸見えの場所に住むだろうか?
「なあ、ロップ。バシリスクはあそこに居ると思うか?」
「う~ん?これはボクの考えっすけどね。あの枯れている場所は、バシリスクが
毒を噴出した場所であって、バシリスクが住んでいる場所じゃないと思うっすよ」
「俺の考えと一緒だ。要はヤツはこの辺のどこかにいるって事だな。
怒ったか、狩りか分からないが、毒を噴出した形跡がこの有様ってことだな」
これは厄介だ。やはり毒で誘き出す必要があるな。まあ今は手が出せない、
このまま南へ直進しよう。さらに最高速で15分程飛ぶと小規模な山地になって来た。高尾山のあたりに似ている。この山のどれかで岩塩が採れるのだろう。
結構遠いな~。村から70キロくらいあるんじゃないか?
山地を縫うように南へ向かうと大きな河に辿り着いた。東から西へ向かって流れている。これを下ると新たな河口を発見できるだろうな。いずれ調査してみよう。
岸は石河原で川幅は200メートル位ある、確かに大河だ。大河沿いの林に魔樫
は生えているんだったよな。
アーロフさんによると対岸は鬼人族未踏の地で、行くのはお勧めできないって
言っていた。行くのは止めておこう。下流を見ると200メートル位先に木立が
見えるな。確認してみよう。
成程、真っ黒い幹の木が沢山生えている、これが魔樫で間違いないだろう。さっそく収納袋から鋸類を出し、伐採に取り掛かった。
「ロップは周囲の警戒を頼む。今日はマラカスとタンバリン禁止」
「うにゃ~、酷いっす!レイ様は暴君っすよ!」
俺は8cm~12cm位の木でなるべく真っ直ぐなものを選び、鋸で伐採していった。最初はワイルフさんに借りた鋸で伐っていたが、どうも刃が引っかかる。
コウエイ様の遺産の両刃鋸の方が質は大分いいようだ。後でドルロフさんに見せればワイルフさんの鋸も改良出来るだろう。
魔樫は使徒の膂力だと一本2分くらいで倒せる。倒した後は枝を打ち落とし、
2.7メートル位で切り分けて積み上げておく。昼飯抜きで作業したので、
15時には63本の木材を得る事が出来た。これに打ち落とした枝の中から
太いものを厳選し、コウエイ様の収納袋に入れた。採りすぎはいくない。
今から帰る事も可能だが、まだティエラさんの依頼もあったな。
仕方ない今日は野営だ。
暫く野営地を探して、砂地の河原を見つけたのでテントを設営した。
アーロフさんに確認したところ、村から南方面はこの大河までは、ダイアボア、ダイアラット、ダイアバックくらいが危険な魔物で、あとは普通の生き物が住んでいるらしい。確かに安全で良い狩場かもしれない。ただアーロフさんが気になる事を言っていた。
『これは未確認情報なんですが、異形の魔物の目撃例が幾つかあります。なんでも巨大で手足の長い熊のような魔物、巨大な狼と猪を掛け合わせたような魔物、それに2本足で走り回る巨大な鳥らしいです。目撃者達は隠れてやり過ごしたそうですが、尋常じゃない巨大さだったそうですよ』
なにそれコワイ。俺も見かけたらスルーしよう。
さて、飯を探すとしようか。恒例の釣りだ。川虫で茶鱒を6匹程釣った。
ちょっとカニ網を仕掛けてみようか。茶鱒のワタを入れてカニ網を放り込んだ。
今日の晩飯は茶鱒だけだ。今日はリバーシとトランプを出発直前でこっそり抜いておいた。ロップが荷物をゴソゴソしてリバーシとトランプを探している様を肴に
晩酌をする。俺がネタバラシをすると、
「もう、レイ様とは遊んでやんないっすよ!」
案の定不貞腐れた。俺はロップに遊んで貰った覚えは一度たりともないのだが。ロップがテントで不貞寝を始めたので、ロケットストーブ前で、見張りながら、
干しナマコを戻しながら、重力魔法の練習を始めたのだった。
翌朝、徹夜明けの俺は重力魔法に関しては少し手応えを感じていた。石の落下に多少の緩急をつけられる様になった気がする。ただこれが重力を操作したせいなのか、他の魔法であるかはまだ分からない。今後の検証が必要だな。
さて朝食を終えて、現在7時。残念ながらカニ網は空だった。
よし、ティエラさんの依頼のベサル菜を探そう、からし菜と同じなら川沿いに
生えているはずだ。川沿いをしばらく探すと、おっアレじゃね?
菜の花によく似た草が大群生している。多分コレだろう、違っていたとしても
食えるはず。ちょっと齧ってみるといい感じのほろ苦さだ。ゾクゾクもしないので毒はないだろう。
よし、これは俺用にも一袋採ろう!鉈でザクザク刈り、土嚢袋に詰め込んでいく。2時間程続けて9袋分も採ってしまった。だがまだ群生地のほんの一角だ。
この草は枯れるとマスタードシードが取れるはずだ。また来よう。
俺の収納袋に収納し、さて帰ろうかと思った時、
「レイ様、後ろ!避けて下さいっす!」
俺が振り返ろうと半身になった瞬間、右肩になにかデカい物が突っ込んできて、
5メートル位、吹っ飛ばされた!
ぐおお、痛え。何なんだ!最近は俺も魔力感知出来るようになっていたんだが、
完全に油断していた。起き上がって俺をふっとばした相手の方を見ると、
奇妙なケモノが俺に突進しようと前脚をガツガツしている。顔は細長く、
猪と犬のハーフみたいで上顎にも下顎にも牙が生えている。
しかも頭には2本の短い角?瘤?がある。
身体はかなりの巨体で肩の高さは俺よりも高い。
四肢は猪と違いかなり長い。そして爛々とした目は赤く光っている。
これがアーロフさんの言っていた未確認の魔物だろう。
しまった!今は武器が無い、どうしよう、逃げるか?迷っているとまた突っ込んで来た。ぐおっ、俺はバックステップ+飛行で石河原まで飛び退った。からし菜の生えているあたりは草の丈が高く俺の方が不利だが、河原なら足場が悪いしヤツが
不利だろう。よし、やってやろうじゃんか!俺は剣鉈を抜いた。河原はヤツに不利かと思ったが、ゴロタ石を蹴散らして突進してきた。だが流石にスピードは大分落ちている。俺は華麗に躱して、生命魔法"キーン"を掛けた。ヤツはこちらに尻を向けたまま、嫌そうに頭を振っている。俺は近づいて後ろ右足の膝裏に剣鉈を突き立て捻った。
「ぶぎーっ」
痛かったようだ。俺も痛かったんだよ。
こちらを向いて前脚ガツガツからの突進をしてきたが、もう見る影もない。びっこ引いてるし。今度は"チカチカ"を掛けてから。後ろ左足の膝裏を抉った。
猪犬はもう立てないようで、前脚だけでもがいている。これは慈悲ですよ。
俺はパラライズからのダークファイアーボルトで猪犬を倒した。
ふと気付くと、右肩から結構出血していた。最初に突っ込まれた時に角か牙で
抉られたんだろう。俺は傷口を消毒し布を当ててテープで貼っておいた。
さてじっくり観察してみよう。
「レイ様、大丈夫っすか!ごめんなしゃい~。
ボクがもっと早く気付いていたら....」
「いや、ロップ大丈夫だ。骨に異常はないし、刺傷もそんなに深くない。
それよりコイツは何なんだ?」
「うにゃ~ダイアボアっぽいっすけど、見た目は全然違うっすね。
それにダイアボアよりも素早いっす」
何だっけ?絶滅した哺乳類のドキュメンタリーでこんなヤツを見た覚えがある。
名前はダエドン?ダエオン?そうだ、確かダエオドンだ!
どういう生き物なのかは忘れた、結構どうでもいい。これ持って帰る?
俺の収納袋には頭を落とせば詰めて入れられるかもしれない。やってみるか。
取り合えず頭を落とそう。剣鉈でジャクジャク切れ目を入れ、鋸で頭を落とした。
全長3メートル位あったが、頭がかなり長いので、頭を落とすと2メートル位だ。
魔法で血を抜いた後は収納袋を展開しパズルのように収納した。うんしょ!
梱包終了」
ハア、今回は疲れた。もう村に帰ろう。
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