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ゴシゴシ
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リリを洞窟に連れて行く事になったが、俺はリリについて気になる事が
あった。この子は男なのか、女なのか良く分からない。
リリエラっていう名前は前世の感覚では女の子っぽいが、こちらでの風習は分からないしな。髪の長さも同様だ。
「なあリリ、変な事を聞くかも知れないけど、リリは女の子だよな?」
リリは不審そうに俺を見つめて言った。
「何言ってるだ、赤いあんちゃん。オラが女子以外に見えるだか?」
ああ、やっぱり女の子だったか。
「ああ、ごめんなリリ、謝るよ。でも俺を赤いあんちゃんって呼ぶのは止めてくれ」
「じゃあ何て呼べばいいだか?」
「そうだな~。レイ兄ちゃんとでも呼んでくれ、そしてこの黒猫はロップだ」
「分かっただ。レイ兄ちゃん。このケモノはなんだか分からねえけんども、
ロップちゃんと呼ぶだよ」
ロップがまたうにゃうにゃ抗議している。仲良くなってほしいな。
時計を確認すると午前8時。リリを連れて行く事になったから、美味い物を食わしてやりたい。今日は魔物狩りは中止して食材ゲットを中心にしよう。
収納袋を展開して釣り道具を取り出す。ん?またフリスビーがある。
毎回思うんだが、ロップはどうやって遊び道具を紛れ込ませているのだろう?
まあ今回は丁度いい。俺はフリスビーを取り出してロップを呼んだ。
「ロップ君、俺はこれからお魚を釣るので君はリリと遊んでいなさい」
「うにゃ、分かったっす。ボクはリリちゃんとふりすびーで遊ぶっすよ!」
ずっと独りフリスビーだったからな、ロップはやや興奮気味だ。
早速リリと遊び始めた。リリも楽しそうにキャッキャとはしゃいでいる。
いいもんだね、子供が遊んでいる姿は。
俺は浅瀬の石をひっくり返して釣り餌を集めた、この辺りは蟹はいないらしい。
結構デカい川虫を集めて渓流竿でミャク釣りをしてみる。
2時間程で30cm位の茶鱒を14匹ゲットした。小さいのはリリースしたから
結構時間掛かったね。ロップとリリはまだフリスビーで遊んでいる。
楽しそうですね。
茶鱒のワタを抜いてから、クーラーボックスに魔法で作った氷と一緒に放り込んだ。さて後はノビルを採ったら洞窟に帰ろう。
ある程度ノビルを採ったので、遊んでいるロップとリリに声を掛ける。
「キミ達、そろそろおうちに帰りますよ~」
ロップとリリが駆け寄ってきた。リリは声を弾ませて話し出した。
「オラ、こんな楽しかったの初めてだ!村では誰もオラと遊んでくれなかっただよ。ロップちゃんがオラの初めての友達だ」
「うにゃ~、リリちゃんと遊べてボクも楽しかったっすよ。夜はリバーシで遊ぶっすよ!」
ううっ(涙)なんて不憫な子だ。取り合えず洞窟に戻ってからリリの村の話を詳しく聞こう。
だが、どうやって連れていこうか?多分リリは下着とか着けていない。
ロップと遊んでる途中に川でしゃがんでそのままオシッコしてたからな。
肩車するのは俺の前世の感覚では倫理的にNGだ。
ロップを肩車してリリは抱えて飛んで行こう。
「じゃあ家に帰ろうか。ロップは俺の首に跨れ、リリは俺が抱えるからこっちに来なさい」
だが、ちょっと気になる事がある。リリの持ち物のズタ袋がゴニョゴニョ蠢いている。それ何が入ってるの?
「あ~、リリ、その袋には何が入っているのかな?ちょっと見せてもらえないかな?」
リリは警戒しながらズタ袋を背中に隠して、後ずさった。
「これはオラが集めた食べ物だ。レイ兄ちゃんはオラから取り上げるのか?」
「いや、取り上げはしないよ。ただちょっと中を見せて欲しいんだよ」
「....まあいいだよ」
リリは警戒しながら俺にズタ袋を差し出した。
俺は袋を受け取り、中を覗いた。
キャー!何これ、蟲毒の壺か!30cm位のデカいムカデとか、10cm位あるダンゴムシとかが蠢いている。最初にリリを見かけた時に袋から取り出して食ってたのはコレか!
俺は昆虫食にはある程度理解はある。ミルワームとかイタドリの茎にいる虫とかは、砂糖醤油で炒めるとコクがあって結構美味かった。イナゴも佃煮やかき揚げにして良く食べていた。タイとかでは虫は普通に食べられてるらしいしな。
だがリリは袋から取り出してそのまま食ってたよな?美味いのか?大丈夫なのか?
「....なあリリ、これは美味いのか?」
「うーん?オラ美味いとか良く分かんね。でもこのカスレの実と一緒に食べれば、大体のもんは喰えるだよ」
リリはズタ袋からブドウみたいに実が連なった、緑のものを取り出した。
ん、これは胡椒じゃないか?リリに一粒貰って齧ってみると、ピリッとした懐かしい味わいが口に広がった。胡椒だ!グリーンペッパーだな。
「リリ!この実は何処にあるんだ?」
「ん、その辺の森で簡単に見つかるだよ。村では食べ物は大体カスレの実と一緒に食べてただよ」
なんですと!俺はリリを連れて廻りの森を巡ってカスレの実を探した。
成程、結構ワサワサ実っている。土嚢袋を取り出して出来るだけ採集した。
素晴らしい!これで塩以外の調味料が手に入った。
俺はホクホクして河原に戻った。そしてリリに宣告した。
「リリ、このカスレの実は素晴らしい。キミのおかげだ。だけどそれ以外の虫は逃がしてあげなさい。俺がもっと美味しい物を食べさせてあげるから」
「やっぱり、オラから食べ物を取り上げるんか?オラ嫌んだ」
ズタ袋を握りしめてリリが涙目になる。
「まあまあ、リリ君これを見たまえ」
俺はクーラーボックスを開いて中を見せた。
「うわ!お魚だ!オラあんまり食べた事ないだよ!凄いんだな、レイ兄ちゃんは」
「これから家に帰ってこれを焼くから、虫さんたちは放してあげなさい」
「うん!分かっただよ。レイ兄ちゃん」
リリはズタ袋をひっくり返して虫達を解放した。
よし家に帰ろう。今は午前11時半だ。正午過ぎ位には家に着くだろう。
荷物を梱包した後、ロップを肩車してリリを抱きかかえて帰路についた。
しかしリリは臭いな。昼飯を食った後はまずコイツを徹底的に洗おう!
空に浮かぶと、リリは俺に抱えられてはしゃいでいる。
「うんわ~!オラ、空飛んだの初めてだ!レイ兄ちゃんは凄いんだな」
俺に抱えられて無邪気にはしゃいでいるリリを見ると、何か心にじんわりした
暖かいものがうかんで来る。これが父性愛というものだろうか?
前世で独身だった俺には分からないが。
両親を失い、村で虐げられたリリの境遇を想像すると涙が出そうになる。
ただコイツは臭い、臭すぎる!
倫理的NGは無視だ!ひん剥いて徹底的に洗ってやんよ!
洞窟に着いた後、ロップとリリに河原で遊ぶように促した後。茶鱒を4匹塩焼きにした。ロップは生でいいから茶鱒を2匹バケツに放り込んだ。
残り8匹は氷を追加して、クーラーボックスを滝壺に沈めて置く。今日の晩飯は昨日狩ったダイアボアにしよう。俺とロップは飯抜きでもいいが、リリにはちゃんと食事はさせたい。こうなると魔物狩りも魔法の練習もなかなか出来なくなるかもしれないな。でも俺にはリリを放って置けない。ごめんなロップ。
「キミ達ご飯ですよ~」
フリスビーで遊んでいたロップとリリが駆け寄ってきた。
プラ皿に二匹の茶鱒の塩焼きを取り分けリリに差し出した。ロップにはバケツだ。
「それでは皆さん"頂きま~す"」
リリが首を傾げて聞いてきた。
「レイ兄ちゃん、"頂きま~す"ってなんだべ?」
「これがウチのルールですよ。食べる時は手を合わせて"頂きます"、食べ終わったら、手を合わせて"ごちそうさま"と言いましょう。これが守れなかったら、次は飯抜きですよ」
「分かっただ、オラやるだよ」
3人揃って頂きますをした後、食事に取り掛かった。ロップは速攻でバケツに突入だ。リリは手で茶鱒を掴んで頭からバリバリ食べている。
日本の妖怪、岸涯小僧のようだ。
「美味いだ!オラこんな美味いもんを、食べたの初めてだ!」
この茶鱒は俺も初めて食べる。頭と尻尾を両手で掴んで齧り付く、うん、前世でのヤマメとかイワナに近い味だな、淡泊な白身で非常に骨離れがよい、美味いな。
俺が食べ終えた後、俺の食べ残しの頭と骨をめぐって、ロップとリリが睨み合っている。俺は平和的に両者に一匹ずつの食べ残しを提供して仲裁した。
さて今日の午後はやることがいっぱいだ。まずリリを徹底的に洗う。臭いのだコイツは!
「リリ、これから俺はお前をキレイキレイにする!これはイジメじゃないぞ」
「オラに何をする気だ!オラ嫌んだ!」
逃げようとするリリをひっ捕まえて、河原に連れて行ってデカい漬物樽に水を汲んで魔法で温める。丁度良い温度になったところで、汚い服を引っぺがして、リリを漬物樽に入れた。
これ前世では絶対犯罪だよな。だが俺は今は保護者モードなのだ。
そもそも俺に幼女趣味はない!リリは最初はギャーギャー喚いていたが、
だんだんトロンとしてきた。
「ほえ~、オラこんな気持ちいいの初めてだ」
非常に気持ち良さげだ。良かったですね。俺も川でしか身体洗ってないし風呂に入りたいよ。タライにお湯を沸かしてリリを漬物樽から引き出した。
またリリがギャーギャー喚き出した。
「オラまだここに浸かっていてえよ。レイ兄ちゃんは意地悪だ」
ロップは、どこ吹く風でリコーダーを吹き鳴らしている。あの野郎。
「リリ、これからがお前をキレイキレイにする本番だ!さあこの布で身体の前をゴシゴシ擦れ!背中とか腕は俺が擦ってやる」
事前に石鹸の泡を染み込ませた垢すりをリリに渡して、俺はゴシゴシゴシゴシ擦りまくった。なんだこの垢の量は!日本の民話で老夫婦の垢から生まれた垢太郎って話があったが、こんな感じなのか!湯で流して同じ事を繰り返した。
眼を瞑らせて顔もゴシゴシ洗った。途中でリリは無言になっていったが俺は容赦なくゴシゴシを続けた。
湯を掛けて綺麗に泡を洗い流す。リリはぐったりしているが、まだ次の工程がある。リリにバスタオルを巻いて、キッチン鋏を取り出す。
「リリ、髪を切るがいいか?」
「いいだよ。好きなようにしてくんろ」
リリが無気力になっている。やっぱこれは幼女虐待なのか?腰辺りまであった銀髪をキッチン鋏で肩位の長さで適当に切りそろえる。前髪は眉上パッツンでいいだろう。
「リリ、俺がいいと言うまで眼をギュっと瞑っていろよ」
「....分かっただよ」
取り合えず、湯を頭に掛けて洗う。その後シャンプーを掛けて洗うが泡が起たない、洗い流して何度かワシャワシャしていると、やっとゴワゴワの髪がスルスルになった。
よし!リリのキレイキレイ作戦は完了だ。コウエイ様の遺品をほじくり返して着替えを探すと、下着は何とか合いそうなサイズが見つかったが、服はリリのサイズに合いそうな服が体操着とブルマーしかなかった。
コウエイ様、業が深すぎるぞ!
ぐったりしていたリリを着替えさせてしばらくすると、リリが復活した。
「うんわー、なんかオラからいい匂いがするだ。レイ兄ちゃん、あんがと!」
リリが飛びついて来た。うん、キレイに洗ったリリは凄く可愛いぞ。さらさらの銀髪で瞳は青か、何この天使!
さて、まだやる事がてんこ盛りだ、リリを洗うのに2時間近くかかった。リリにはロップと遊んでいるように言うと、はしゃぎながらロップの処に走って行った。
まずは昨日採取したワスプの実を絞ろう。土嚢袋に入れたまま放置してリリに食べられると危険だ。後は干し網に入れていたノビルの葉と行者ニンニクを漬物容器にぬるま湯を入れて仕込む。グンドゥルック作成の2段階目だ。干しナマコはまだ放置だな。しかしこれどうやって食おうか?俺こんな高級食材食った事無いんだよな。干しあがったら瓶詰にして保存しよう。今日の晩飯は昨日狩ったダイアボアだ。
滝壺に沈めた衣装ケースから、ダイアボアを引き上げる。
今日は半身のバラ肉を焼いて食おう。丁度胡椒も手に入ったからな。ロップの分は茶鱒2匹でいいだろう。
ガツガツ鉈でアバラ骨を背骨から切り離す。使徒のパワーって凄いね。
バラ肉を切り分けた後、塩とグリーンペッパーを指で潰したものをまぶした。
俺は前世ではグリーンペッパーなんて料理で使った事はない、だって高いんだもん。それと汲み置きの海水の残りに黒アサリの干物と、今日取ってきたノビルを入れて炊いてみる。海水はちょっと薄めよう。しかし今日は豪勢だね。リリの歓迎会みたいなもんだな。
料理が出来上がったところで、子供たちを呼ぶ。
「みんな~、ご飯よ~」
ロップとリリがキャッキャ言いながら駆け寄って来た。
....俺はオカンなのか?良く考えたらロップが遊んでるのがおかしい。まあいいや。
ロップにはバケツに昼間釣った茶鱒を2匹放り込んで渡す。俺とリリの晩食は、ダイアボアの焼きバラ肉と、黒アサリとノビルのマース煮だ。
「それでは皆さん頂きまーす」
リリは箸が使えないので、マース煮用にレンゲを渡した。どうせ肉は手づかみで食べるだろう。
まず黒アサリとノビルのマース煮を試す。あ~やっぱ調度いい塩加減だと美味いね。アサリからのダシも出てていいねコレ。ノビルの葉はニラみたいな味だ、球根はシャキシャキして美味いよ。胡椒を入れてみても良かったかもね。
次は焼きバラ肉だ。かぶりつくとジューシーな肉汁が口中に溢れる。それにしても、やっぱり胡椒の存在は大きいね。前世で昔は金と等価で取引されてた意味もやっと分ったよ。ガツガツと食い尽くした。ロップは相変わらずバケツに頭を突っ込んでうにゃうにゃしているが、何故かリリが泣いている。
「どうした、リリ!不味かったのか?」
「うんにゃ、オラこんな美味いもん食った事ねえだ。レイ兄ちゃんあんがと」
リリは泣きながら食事を続けたのだった。
あった。この子は男なのか、女なのか良く分からない。
リリエラっていう名前は前世の感覚では女の子っぽいが、こちらでの風習は分からないしな。髪の長さも同様だ。
「なあリリ、変な事を聞くかも知れないけど、リリは女の子だよな?」
リリは不審そうに俺を見つめて言った。
「何言ってるだ、赤いあんちゃん。オラが女子以外に見えるだか?」
ああ、やっぱり女の子だったか。
「ああ、ごめんなリリ、謝るよ。でも俺を赤いあんちゃんって呼ぶのは止めてくれ」
「じゃあ何て呼べばいいだか?」
「そうだな~。レイ兄ちゃんとでも呼んでくれ、そしてこの黒猫はロップだ」
「分かっただ。レイ兄ちゃん。このケモノはなんだか分からねえけんども、
ロップちゃんと呼ぶだよ」
ロップがまたうにゃうにゃ抗議している。仲良くなってほしいな。
時計を確認すると午前8時。リリを連れて行く事になったから、美味い物を食わしてやりたい。今日は魔物狩りは中止して食材ゲットを中心にしよう。
収納袋を展開して釣り道具を取り出す。ん?またフリスビーがある。
毎回思うんだが、ロップはどうやって遊び道具を紛れ込ませているのだろう?
まあ今回は丁度いい。俺はフリスビーを取り出してロップを呼んだ。
「ロップ君、俺はこれからお魚を釣るので君はリリと遊んでいなさい」
「うにゃ、分かったっす。ボクはリリちゃんとふりすびーで遊ぶっすよ!」
ずっと独りフリスビーだったからな、ロップはやや興奮気味だ。
早速リリと遊び始めた。リリも楽しそうにキャッキャとはしゃいでいる。
いいもんだね、子供が遊んでいる姿は。
俺は浅瀬の石をひっくり返して釣り餌を集めた、この辺りは蟹はいないらしい。
結構デカい川虫を集めて渓流竿でミャク釣りをしてみる。
2時間程で30cm位の茶鱒を14匹ゲットした。小さいのはリリースしたから
結構時間掛かったね。ロップとリリはまだフリスビーで遊んでいる。
楽しそうですね。
茶鱒のワタを抜いてから、クーラーボックスに魔法で作った氷と一緒に放り込んだ。さて後はノビルを採ったら洞窟に帰ろう。
ある程度ノビルを採ったので、遊んでいるロップとリリに声を掛ける。
「キミ達、そろそろおうちに帰りますよ~」
ロップとリリが駆け寄ってきた。リリは声を弾ませて話し出した。
「オラ、こんな楽しかったの初めてだ!村では誰もオラと遊んでくれなかっただよ。ロップちゃんがオラの初めての友達だ」
「うにゃ~、リリちゃんと遊べてボクも楽しかったっすよ。夜はリバーシで遊ぶっすよ!」
ううっ(涙)なんて不憫な子だ。取り合えず洞窟に戻ってからリリの村の話を詳しく聞こう。
だが、どうやって連れていこうか?多分リリは下着とか着けていない。
ロップと遊んでる途中に川でしゃがんでそのままオシッコしてたからな。
肩車するのは俺の前世の感覚では倫理的にNGだ。
ロップを肩車してリリは抱えて飛んで行こう。
「じゃあ家に帰ろうか。ロップは俺の首に跨れ、リリは俺が抱えるからこっちに来なさい」
だが、ちょっと気になる事がある。リリの持ち物のズタ袋がゴニョゴニョ蠢いている。それ何が入ってるの?
「あ~、リリ、その袋には何が入っているのかな?ちょっと見せてもらえないかな?」
リリは警戒しながらズタ袋を背中に隠して、後ずさった。
「これはオラが集めた食べ物だ。レイ兄ちゃんはオラから取り上げるのか?」
「いや、取り上げはしないよ。ただちょっと中を見せて欲しいんだよ」
「....まあいいだよ」
リリは警戒しながら俺にズタ袋を差し出した。
俺は袋を受け取り、中を覗いた。
キャー!何これ、蟲毒の壺か!30cm位のデカいムカデとか、10cm位あるダンゴムシとかが蠢いている。最初にリリを見かけた時に袋から取り出して食ってたのはコレか!
俺は昆虫食にはある程度理解はある。ミルワームとかイタドリの茎にいる虫とかは、砂糖醤油で炒めるとコクがあって結構美味かった。イナゴも佃煮やかき揚げにして良く食べていた。タイとかでは虫は普通に食べられてるらしいしな。
だがリリは袋から取り出してそのまま食ってたよな?美味いのか?大丈夫なのか?
「....なあリリ、これは美味いのか?」
「うーん?オラ美味いとか良く分かんね。でもこのカスレの実と一緒に食べれば、大体のもんは喰えるだよ」
リリはズタ袋からブドウみたいに実が連なった、緑のものを取り出した。
ん、これは胡椒じゃないか?リリに一粒貰って齧ってみると、ピリッとした懐かしい味わいが口に広がった。胡椒だ!グリーンペッパーだな。
「リリ!この実は何処にあるんだ?」
「ん、その辺の森で簡単に見つかるだよ。村では食べ物は大体カスレの実と一緒に食べてただよ」
なんですと!俺はリリを連れて廻りの森を巡ってカスレの実を探した。
成程、結構ワサワサ実っている。土嚢袋を取り出して出来るだけ採集した。
素晴らしい!これで塩以外の調味料が手に入った。
俺はホクホクして河原に戻った。そしてリリに宣告した。
「リリ、このカスレの実は素晴らしい。キミのおかげだ。だけどそれ以外の虫は逃がしてあげなさい。俺がもっと美味しい物を食べさせてあげるから」
「やっぱり、オラから食べ物を取り上げるんか?オラ嫌んだ」
ズタ袋を握りしめてリリが涙目になる。
「まあまあ、リリ君これを見たまえ」
俺はクーラーボックスを開いて中を見せた。
「うわ!お魚だ!オラあんまり食べた事ないだよ!凄いんだな、レイ兄ちゃんは」
「これから家に帰ってこれを焼くから、虫さんたちは放してあげなさい」
「うん!分かっただよ。レイ兄ちゃん」
リリはズタ袋をひっくり返して虫達を解放した。
よし家に帰ろう。今は午前11時半だ。正午過ぎ位には家に着くだろう。
荷物を梱包した後、ロップを肩車してリリを抱きかかえて帰路についた。
しかしリリは臭いな。昼飯を食った後はまずコイツを徹底的に洗おう!
空に浮かぶと、リリは俺に抱えられてはしゃいでいる。
「うんわ~!オラ、空飛んだの初めてだ!レイ兄ちゃんは凄いんだな」
俺に抱えられて無邪気にはしゃいでいるリリを見ると、何か心にじんわりした
暖かいものがうかんで来る。これが父性愛というものだろうか?
前世で独身だった俺には分からないが。
両親を失い、村で虐げられたリリの境遇を想像すると涙が出そうになる。
ただコイツは臭い、臭すぎる!
倫理的NGは無視だ!ひん剥いて徹底的に洗ってやんよ!
洞窟に着いた後、ロップとリリに河原で遊ぶように促した後。茶鱒を4匹塩焼きにした。ロップは生でいいから茶鱒を2匹バケツに放り込んだ。
残り8匹は氷を追加して、クーラーボックスを滝壺に沈めて置く。今日の晩飯は昨日狩ったダイアボアにしよう。俺とロップは飯抜きでもいいが、リリにはちゃんと食事はさせたい。こうなると魔物狩りも魔法の練習もなかなか出来なくなるかもしれないな。でも俺にはリリを放って置けない。ごめんなロップ。
「キミ達ご飯ですよ~」
フリスビーで遊んでいたロップとリリが駆け寄ってきた。
プラ皿に二匹の茶鱒の塩焼きを取り分けリリに差し出した。ロップにはバケツだ。
「それでは皆さん"頂きま~す"」
リリが首を傾げて聞いてきた。
「レイ兄ちゃん、"頂きま~す"ってなんだべ?」
「これがウチのルールですよ。食べる時は手を合わせて"頂きます"、食べ終わったら、手を合わせて"ごちそうさま"と言いましょう。これが守れなかったら、次は飯抜きですよ」
「分かっただ、オラやるだよ」
3人揃って頂きますをした後、食事に取り掛かった。ロップは速攻でバケツに突入だ。リリは手で茶鱒を掴んで頭からバリバリ食べている。
日本の妖怪、岸涯小僧のようだ。
「美味いだ!オラこんな美味いもんを、食べたの初めてだ!」
この茶鱒は俺も初めて食べる。頭と尻尾を両手で掴んで齧り付く、うん、前世でのヤマメとかイワナに近い味だな、淡泊な白身で非常に骨離れがよい、美味いな。
俺が食べ終えた後、俺の食べ残しの頭と骨をめぐって、ロップとリリが睨み合っている。俺は平和的に両者に一匹ずつの食べ残しを提供して仲裁した。
さて今日の午後はやることがいっぱいだ。まずリリを徹底的に洗う。臭いのだコイツは!
「リリ、これから俺はお前をキレイキレイにする!これはイジメじゃないぞ」
「オラに何をする気だ!オラ嫌んだ!」
逃げようとするリリをひっ捕まえて、河原に連れて行ってデカい漬物樽に水を汲んで魔法で温める。丁度良い温度になったところで、汚い服を引っぺがして、リリを漬物樽に入れた。
これ前世では絶対犯罪だよな。だが俺は今は保護者モードなのだ。
そもそも俺に幼女趣味はない!リリは最初はギャーギャー喚いていたが、
だんだんトロンとしてきた。
「ほえ~、オラこんな気持ちいいの初めてだ」
非常に気持ち良さげだ。良かったですね。俺も川でしか身体洗ってないし風呂に入りたいよ。タライにお湯を沸かしてリリを漬物樽から引き出した。
またリリがギャーギャー喚き出した。
「オラまだここに浸かっていてえよ。レイ兄ちゃんは意地悪だ」
ロップは、どこ吹く風でリコーダーを吹き鳴らしている。あの野郎。
「リリ、これからがお前をキレイキレイにする本番だ!さあこの布で身体の前をゴシゴシ擦れ!背中とか腕は俺が擦ってやる」
事前に石鹸の泡を染み込ませた垢すりをリリに渡して、俺はゴシゴシゴシゴシ擦りまくった。なんだこの垢の量は!日本の民話で老夫婦の垢から生まれた垢太郎って話があったが、こんな感じなのか!湯で流して同じ事を繰り返した。
眼を瞑らせて顔もゴシゴシ洗った。途中でリリは無言になっていったが俺は容赦なくゴシゴシを続けた。
湯を掛けて綺麗に泡を洗い流す。リリはぐったりしているが、まだ次の工程がある。リリにバスタオルを巻いて、キッチン鋏を取り出す。
「リリ、髪を切るがいいか?」
「いいだよ。好きなようにしてくんろ」
リリが無気力になっている。やっぱこれは幼女虐待なのか?腰辺りまであった銀髪をキッチン鋏で肩位の長さで適当に切りそろえる。前髪は眉上パッツンでいいだろう。
「リリ、俺がいいと言うまで眼をギュっと瞑っていろよ」
「....分かっただよ」
取り合えず、湯を頭に掛けて洗う。その後シャンプーを掛けて洗うが泡が起たない、洗い流して何度かワシャワシャしていると、やっとゴワゴワの髪がスルスルになった。
よし!リリのキレイキレイ作戦は完了だ。コウエイ様の遺品をほじくり返して着替えを探すと、下着は何とか合いそうなサイズが見つかったが、服はリリのサイズに合いそうな服が体操着とブルマーしかなかった。
コウエイ様、業が深すぎるぞ!
ぐったりしていたリリを着替えさせてしばらくすると、リリが復活した。
「うんわー、なんかオラからいい匂いがするだ。レイ兄ちゃん、あんがと!」
リリが飛びついて来た。うん、キレイに洗ったリリは凄く可愛いぞ。さらさらの銀髪で瞳は青か、何この天使!
さて、まだやる事がてんこ盛りだ、リリを洗うのに2時間近くかかった。リリにはロップと遊んでいるように言うと、はしゃぎながらロップの処に走って行った。
まずは昨日採取したワスプの実を絞ろう。土嚢袋に入れたまま放置してリリに食べられると危険だ。後は干し網に入れていたノビルの葉と行者ニンニクを漬物容器にぬるま湯を入れて仕込む。グンドゥルック作成の2段階目だ。干しナマコはまだ放置だな。しかしこれどうやって食おうか?俺こんな高級食材食った事無いんだよな。干しあがったら瓶詰にして保存しよう。今日の晩飯は昨日狩ったダイアボアだ。
滝壺に沈めた衣装ケースから、ダイアボアを引き上げる。
今日は半身のバラ肉を焼いて食おう。丁度胡椒も手に入ったからな。ロップの分は茶鱒2匹でいいだろう。
ガツガツ鉈でアバラ骨を背骨から切り離す。使徒のパワーって凄いね。
バラ肉を切り分けた後、塩とグリーンペッパーを指で潰したものをまぶした。
俺は前世ではグリーンペッパーなんて料理で使った事はない、だって高いんだもん。それと汲み置きの海水の残りに黒アサリの干物と、今日取ってきたノビルを入れて炊いてみる。海水はちょっと薄めよう。しかし今日は豪勢だね。リリの歓迎会みたいなもんだな。
料理が出来上がったところで、子供たちを呼ぶ。
「みんな~、ご飯よ~」
ロップとリリがキャッキャ言いながら駆け寄って来た。
....俺はオカンなのか?良く考えたらロップが遊んでるのがおかしい。まあいいや。
ロップにはバケツに昼間釣った茶鱒を2匹放り込んで渡す。俺とリリの晩食は、ダイアボアの焼きバラ肉と、黒アサリとノビルのマース煮だ。
「それでは皆さん頂きまーす」
リリは箸が使えないので、マース煮用にレンゲを渡した。どうせ肉は手づかみで食べるだろう。
まず黒アサリとノビルのマース煮を試す。あ~やっぱ調度いい塩加減だと美味いね。アサリからのダシも出てていいねコレ。ノビルの葉はニラみたいな味だ、球根はシャキシャキして美味いよ。胡椒を入れてみても良かったかもね。
次は焼きバラ肉だ。かぶりつくとジューシーな肉汁が口中に溢れる。それにしても、やっぱり胡椒の存在は大きいね。前世で昔は金と等価で取引されてた意味もやっと分ったよ。ガツガツと食い尽くした。ロップは相変わらずバケツに頭を突っ込んでうにゃうにゃしているが、何故かリリが泣いている。
「どうした、リリ!不味かったのか?」
「うんにゃ、オラこんな美味いもん食った事ねえだ。レイ兄ちゃんあんがと」
リリは泣きながら食事を続けたのだった。
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次に目が覚めればまた新しい人生が始まると思っていたクレイムであったが、目覚めてみればそれは10年前の少年時代であった。
最初はどういうことか理解が追いつかなかったが、また同じ未来を繰り返すのかと絶望さえしたが、同時にそれはクレイムにとって悪い話ではなかった。「同じ轍は踏まない。今度は全てを投げ出して平穏なスローライフを送るんだ!」と目標を定め、もう一度人生をやり直すことを決意する。
しかし、運命がそれを許さない。
一度目の人生では考えられないほどの苦難と試練が真人間へと更生したクレイムに次々と降りかかる。果たしてクレイムは本当にのんびり平穏なスローライフを遅れるのだろうか?
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