魔法が存在しない世界でパリィ無双~付属の音ゲーを全クリした僕は気づけばパリィを極めていた~

虎柄トラ

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第四章 魔導書実装編

第六十三話 僕は全てをパリィする

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 天井ギリギリの高度にファフニールよりも大きな石が燃え盛り宙に浮いていた。

「なぁあれって隕石とかいうやつか?」

「ファフニールはメテオとか言ってたわ」

「そっかー……ってやっぱ隕石じゃねぇか!」

 ファフニールは目覚めた僕に称賛し戦いの終焉を告げる。

「ほぉ、そなたまだ生きておったか実に見事だ。だが、この宴はもう終わる。最後に褒美として我の最大魔法を受け取るが良い」

 ファフニールの言葉を合図にメテオは落下を開始した。

「タクトは何でもいいからアレをどうにか出来る方法を考えて!拙僧達はファフニールを殴りに行ってくるから。それじゃ後は任せたわよ、ギルドマスター。サン、マツリ行くわよ!!!」

 修羅刹の号令に合わせサンとシノマツリはファフニールに向かう。

「いやいやいやいや、アレをどうしろと。もうテュルフィングも3回使っちゃったし、もう残された手なんて……あっ、一つだけある」

 僕にはまだ最後の切り札が一つだけある。それは僕が自ら封印したユニークスキル。

 コタロウとの決勝戦で訳も分からず勝利した事による虚無感。使用すればアレをもう一度味わう事になる。

「みんなも全力を戦った!ファフニールも全力で戦った!なのに僕だけ全力を出さないとかやっぱおかしいよな……」

 僕は壁に手を当て立ち上がり、メテオに視界に捉えながらユニークスキルを発動した。

全てを見通し支配するヨグソトース者」

 その瞬間、映像をスローにしたように世界が遅くなった。ただその中で僕だけがいつも通り動くことが出来た。また全ての物体になぞる様に青い線が何十にも重なっていた。

 僕はそれが何を意味するのかすぐに理解出来た。

 これはこの先に起こり得る未来が青い線で表現されている。つまり僕はその中から最良の選択肢を選べばいいという事だ。

 最悪の未来は僕がこのまま何も行動せず5秒後にメテオで全滅する未来。

 最良の未来は僕が一歩前に進み、ソニックパリィングエッジを右斜め下から切り上げるように放ち、メテオをパリィしてファフニールにぶつけて勝利する未来。

 僕はその最良の未来を実行に移した。

「ソニックパリィングエッジ」

 僕が青い線で見たとおりにメテオはパリィによって軌道が変わり、ファフニールめがけて落下する。

 ドッゴオオオオオオオオオォォォーーーン!

「実に、実に良い饗宴だった……」

 ファフニールは満足そうに自分のメテオに押しつぶされ消えていった。舞い上がる光の粒子の量も圧巻で、ボスエリア全てがキラキラと光り輝いていた。

「あっぶねぇなお前、でもよくやったぜ!!!」

「さすがはタクトです、カッコいいです!」

「まさかあんなものまでパリィするなんて思わなかったわよ!?」

「ユニークスキル様様だけどな。つうか、これ思ったより負担がデカい。早く効果終われ……マジで死ぬ」

 何十種類という未来を見続ける行為は予想以上に負担が激しかった。

 僕はクラっと眩暈を起こし倒れそうになる。

「おいおい、大丈夫かよ。タクト?」

「あぁ……もう大丈夫」

「さっさとドロップを拾って外に出ようぜ」

 サンはそう言うとシノマツリほどある巨大な魔石をインベントリーにしまい込み、そそくさとポータルを通り抜けて行った。

「バカ兄は余韻って言葉を覚えてこいです」

 シノマツリは小言を言いながら魔石を拾い街に戻っていった。

「拙僧達も戻るとしましょう?」

 修羅刹は魔石を拾いながら僕に声をかける。

「あ~、そうだな……あのさ、一つ聞いていい?」

「なに?」

「僕が気を失っていた時、なんか柔らかいのが当たったんだけど……もしかして、あれって?」

「……さ、さっさと帰るわよ!!!!」

「あっ、はい……」

 それから修羅刹は一度も振り返る事もなくそのままポータルを抜けた。

 修羅刹に続き僕もポータルを抜けいつもの噴水広場に戻った瞬間、色々あって忘れていたあの代償がついに発動した。

「あっ……忘れてたわ」

 そして僕はログアウトするかのようにコッソリと死亡した。

 デスペナルティが終わったら次は何をしようかと、頭を悩ませながら僕は充電するためにVRデバイスを所定の位置に戻した。
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