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第四章 魔導書実装編
第五十三話 中ボスに向けての作戦会議
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あっけなく戦闘を終え呆然と前方を見つめるシノマツリに僕は背後から声をかけた。
「あの……マツリ?これは一体??」
シノマツリはクルっと反転し、本日何度目かのジッと見つめる仕草をした。
これといった反応が返ってこない。僕はもう一度、シノマツリに聞いてみた。
「えっと~、マツリ?」
「はいです!」
今度は僕の声がシノマツリの耳に届いたようで、返事を返してくれた。ただ話している間、ずっとキョロキョロし落ち着かない様子だった。
「これ全部マツリがひとりでやったの?」
「はいです!マツリが考えた魔法で倒したです。マツリ頑張ったです!」
「そっか~。お疲れ、マツリ。でもね、ひとりで先に行ってはダメだよ。みんな心配するだろ?」
僕に注意されたシノマツリは俯き、今にも途切れそうなほどか細い声で返答した。
「ごめんなさいです。あ、あの……タクトも心配したですか?」
「当たり前だろ……はぁ、本当に無事で良かったよ」
僕はシノマツリを無事見つけ出せた事に安堵したのか、つい無意識に彼女の頭を撫でてしまっていた。
その事に気づいたのは4、5回往復した後だった。
「あっ、ごめん!」
「い、いえ……大丈夫です」
その言葉を最後に二人と合流するまでの間、シノマツリはずっと俯いたまま一言も発する事はなかった。
その後はシノマツリの手によって大量に生み出された魔石を拾い集めながら、僕達は4階層を目指し探索を続けた。
4階層に到達すると次はサンが先頭に立ちダンジョンを突き進む。ここも特に苦戦する事もなくサンひとりで襲いかかる魔物を返り討ちにしていった。
そして僕達は10階層ある内の半分、5階層まで足を進めた。
5階層には見覚えのある巨大な両扉が配置されていた。
僕達は輪になって座り、この先に待ち受けるボス戦に備えて作戦会議を開く事になった。
「それじゃ何かいい案があるひとぉ~!」
「いや、サンがまず案を出すべきじゃないか?」
「そうよ、サン。それにここのボスとかって、まだどんなのか分かってないのよね?」
「そうなんだよなぁー」
これといった案が出て来ず頭を悩ませていると、シノマツリがおもむろに手を上げた。
「あの……ちょっといいです?」
「おっ、マツリなんか思いついたのか?」
「分からないボスについて、あれこれ考えてもしょうがないと思うです。なので、ひとりで突っ走ったマツリが言うのも……おかしいけど、ひとり戦わないようにしようです」
「まぁボスの時点でひとりで戦う事はねぇんだけど……あー、んじゃまずはパーティーの基本をやってみるか!」
「「「パーティーの基本?」」」
「簡単な事だ。ただ隣のやつの背を守れように立ち回ればいいさ。ここに来るまでの2、3、4番目のようにすりゃいいさ」
この時にはまだどういったボスが出現するのか公表されていないため、ボスの動きに合わせての作戦を決める事は出来ない。だからもっと簡単で単純なあるルールを決めた。それは半々に別れて常に二人で行動しフォローし合えるようにしようというもの。
パーティーなのだから、全員でフォローし合えばいいんじゃないかと思うかもしれない。僕、サン、修羅刹の3人は問題なく動けるだろう。ただシノマツリはあれほどの高威力の魔法を使いこなすとはいえ、まだこのゲームを数時間しかプレイしてない。
何が言いたいかと言うとシノマツリは、周りを気にしながら戦えるほどの余裕はまだないという事だ。
それなら3人でシノマツリをフォローする事に専念し、シノマツリは魔法を唱える事だけに専念すれば、そんな事を考えずとも圧倒的な火力に完璧な防御と優秀な布陣が完成する。
正直なところ別にそれでも悪くはないとは思っている。シノマツリの魔法は威力、範囲がずば抜けている。僕が今から戦うボスだとして、先ほど述べた3人防御編成を相手取って戦うとなると、かなり手こずる。下手をすると一矢報いる事も出来ずに、シノマツリの魔法によって天に召されるだろう。
それにここに来るまでほとんどそういったパーティーらしい事は何一つやっていない。
ソロ重視のゲームである以上、そこまで考える必要はないかもしれないが、今回のアップデートで【魔法】が実装された手前、そういったパーティーでの立ち回りを覚えていくのも悪くない。
「んじゃ、俺様とマツリ。タクトと修羅刹つう事で」
「えぇ~、マツリ、バカ兄となの……です!?」
「あのな……マツリ。お前だとタクトや修羅刹の俊敏な動きについて行けねぇよ。だからまずは初級編として俺様と組め」
「分かったです。しゃ~なし組んでやるです」
「しゃーなしでも何でもいいよ。んでタクト、修羅刹もそれでいいか?」
「僕は別にそれで構わないよ」
「拙僧も問題なし」
「んじゃ、作戦も決まった事だし、ボスの顔を拝みに行くとしますか!」
サンはそう言いながら腰を上げると、まだ見ぬ5階層のボスへと続く両扉に手を当てた。
そして……ゆっくりと力を加え押し開けていく。
そこで待ち受けていたボスはキマイラという合成怪獣だった。
「あの……マツリ?これは一体??」
シノマツリはクルっと反転し、本日何度目かのジッと見つめる仕草をした。
これといった反応が返ってこない。僕はもう一度、シノマツリに聞いてみた。
「えっと~、マツリ?」
「はいです!」
今度は僕の声がシノマツリの耳に届いたようで、返事を返してくれた。ただ話している間、ずっとキョロキョロし落ち着かない様子だった。
「これ全部マツリがひとりでやったの?」
「はいです!マツリが考えた魔法で倒したです。マツリ頑張ったです!」
「そっか~。お疲れ、マツリ。でもね、ひとりで先に行ってはダメだよ。みんな心配するだろ?」
僕に注意されたシノマツリは俯き、今にも途切れそうなほどか細い声で返答した。
「ごめんなさいです。あ、あの……タクトも心配したですか?」
「当たり前だろ……はぁ、本当に無事で良かったよ」
僕はシノマツリを無事見つけ出せた事に安堵したのか、つい無意識に彼女の頭を撫でてしまっていた。
その事に気づいたのは4、5回往復した後だった。
「あっ、ごめん!」
「い、いえ……大丈夫です」
その言葉を最後に二人と合流するまでの間、シノマツリはずっと俯いたまま一言も発する事はなかった。
その後はシノマツリの手によって大量に生み出された魔石を拾い集めながら、僕達は4階層を目指し探索を続けた。
4階層に到達すると次はサンが先頭に立ちダンジョンを突き進む。ここも特に苦戦する事もなくサンひとりで襲いかかる魔物を返り討ちにしていった。
そして僕達は10階層ある内の半分、5階層まで足を進めた。
5階層には見覚えのある巨大な両扉が配置されていた。
僕達は輪になって座り、この先に待ち受けるボス戦に備えて作戦会議を開く事になった。
「それじゃ何かいい案があるひとぉ~!」
「いや、サンがまず案を出すべきじゃないか?」
「そうよ、サン。それにここのボスとかって、まだどんなのか分かってないのよね?」
「そうなんだよなぁー」
これといった案が出て来ず頭を悩ませていると、シノマツリがおもむろに手を上げた。
「あの……ちょっといいです?」
「おっ、マツリなんか思いついたのか?」
「分からないボスについて、あれこれ考えてもしょうがないと思うです。なので、ひとりで突っ走ったマツリが言うのも……おかしいけど、ひとり戦わないようにしようです」
「まぁボスの時点でひとりで戦う事はねぇんだけど……あー、んじゃまずはパーティーの基本をやってみるか!」
「「「パーティーの基本?」」」
「簡単な事だ。ただ隣のやつの背を守れように立ち回ればいいさ。ここに来るまでの2、3、4番目のようにすりゃいいさ」
この時にはまだどういったボスが出現するのか公表されていないため、ボスの動きに合わせての作戦を決める事は出来ない。だからもっと簡単で単純なあるルールを決めた。それは半々に別れて常に二人で行動しフォローし合えるようにしようというもの。
パーティーなのだから、全員でフォローし合えばいいんじゃないかと思うかもしれない。僕、サン、修羅刹の3人は問題なく動けるだろう。ただシノマツリはあれほどの高威力の魔法を使いこなすとはいえ、まだこのゲームを数時間しかプレイしてない。
何が言いたいかと言うとシノマツリは、周りを気にしながら戦えるほどの余裕はまだないという事だ。
それなら3人でシノマツリをフォローする事に専念し、シノマツリは魔法を唱える事だけに専念すれば、そんな事を考えずとも圧倒的な火力に完璧な防御と優秀な布陣が完成する。
正直なところ別にそれでも悪くはないとは思っている。シノマツリの魔法は威力、範囲がずば抜けている。僕が今から戦うボスだとして、先ほど述べた3人防御編成を相手取って戦うとなると、かなり手こずる。下手をすると一矢報いる事も出来ずに、シノマツリの魔法によって天に召されるだろう。
それにここに来るまでほとんどそういったパーティーらしい事は何一つやっていない。
ソロ重視のゲームである以上、そこまで考える必要はないかもしれないが、今回のアップデートで【魔法】が実装された手前、そういったパーティーでの立ち回りを覚えていくのも悪くない。
「んじゃ、俺様とマツリ。タクトと修羅刹つう事で」
「えぇ~、マツリ、バカ兄となの……です!?」
「あのな……マツリ。お前だとタクトや修羅刹の俊敏な動きについて行けねぇよ。だからまずは初級編として俺様と組め」
「分かったです。しゃ~なし組んでやるです」
「しゃーなしでも何でもいいよ。んでタクト、修羅刹もそれでいいか?」
「僕は別にそれで構わないよ」
「拙僧も問題なし」
「んじゃ、作戦も決まった事だし、ボスの顔を拝みに行くとしますか!」
サンはそう言いながら腰を上げると、まだ見ぬ5階層のボスへと続く両扉に手を当てた。
そして……ゆっくりと力を加え押し開けていく。
そこで待ち受けていたボスはキマイラという合成怪獣だった。
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