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第三章 最終都市防衛戦編
第四十六話 テーマパークと不思議な気持ち
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僕達が住んでいる場所から電車で1時間ほどかかる場所にテーマパークがある。何々遊園地や何々パークとかいう名称ではなく、本当に【テーマパーク】という名称なのだ。
この会社はそれ以外にVRデバイス、スマホなど僕達が普段使っているものも作っていたりする。雑な名称の商品は大体この会社が関わっているらしい。
僕達はテーマパークのゲートを抜け、ここのテーマパークを象徴する城を見上げる。
「3人で来るのは俺が中学卒業して以来か?」
「あ~、確かにそうかもしれないな」
山河は僕、蘇芳院よりも1学年上だ。なので、最低でも1年以上は僕達3人でここに訪れていない事になる。
山河は僕と蘇芳院の手を掴み走り出す。
「時間も惜しいし、早速行こうぜ!この日のためにすっげぇ回る順番考えたんだからな!!」
「分かった、分かったから。そんなに引っ張るな!」
「あのぅ~、聖陽君。わ・た・しも一緒に考えたのをお忘れなきようにお願いしますね」
「あ~~~、そうでした。その節はどうもお世話になりました。んじゃ行こうぜ!!」
「よろしい」
それから僕達は時間が許す限り遊び続け、気づけば時刻は午後6時を回ろうとしていた。テーマパークの閉館時間である午後7時まで後1時間。
そんな中、僕と蘇芳院はベンチに座り山河の帰りを待っていた。
「なぁ~、蘇芳院。滄溟さんにお土産とか買わなくてもいいのか?」
「大丈夫です」
「ふむ……そうか。蘇芳院がそれでいいなら、別にいいんだけど」
「はい」
この時の僕はとても困惑していた。外での蘇芳院は猫かぶり仕様になるのはいつもの事ではあるが、なぜかこの日の蘇芳院はいつも以上に大人しく言葉数も少ない。それに今日は会話をするにしても山河を通し、間接的に会話する事が多かった気がする。
非常に気まずい、その一言に尽きる。
「「…………」」
ただただ沈黙が続く。
唯一の救いだったのが僕も蘇芳院も手元に缶コーヒーがあった事だ。
暖かかった昼間とは打って変わり今は少し肌寒く感じた。飲むためというよりもどちらかと言えば暖を取るための缶コーヒー。
元々はそういう目的で購入したものだったが、僕の暖を取るよりもこの気まずい雰囲気から逃げるため、一口また一口と飲んでいった。
僕は中身が無くなり軽くなった缶を片手に空を見上げる。夜空には幾千の星が輝いていた。キラキラ輝くテーマパーク内にいるのに、それでもこれだけ綺麗に見える事に少しだけ感動を覚えた。
「……綺麗だな」
ひとり景色について感想を述べていると、なぜか真横から強烈な視線を感じた。
顔を向けると蘇芳院がこっちを無言で見つめていた。
僕と蘇芳院はどちらも目を背けず言葉も交わさず、ただお互いジッと見つめ合う。
謎の拮抗状態を先に破ったのは蘇芳院からだった。
蘇芳院は視線を逸らし俯くと、ゆっくりと口を開き話し始めた。
「あの……あのね、拓斗君。わたし、今からおかしな事を言うけど聞いてもらえますか?」
僕はコクリと首を縦に振る。
「あのね。最近わたしね、理由は分からないんだけど、拓斗君が夢に出て来るの」
「うん」
「昔は拓斗君と聖陽君とわたしの3人で遊ぶ夢をよく見ていたんだけど、ここ最近はずっと拓斗君と二人きりで遊ぶ夢ばかり見るの」
「う、うん」
「それに3人の時は大丈夫なんだけどね。今みたいに二人っきりだと、なんか緊張するし、顔は火照ってくるし……」
蘇芳院から告げられた内容には心当たりがあった。その事を僕は蘇芳院に伝えた。
「実を言うとな……僕も蘇芳院とこうやって話したりすると、めっちゃ喉が渇いたり言葉が出なくなったりするよ」
「拓斗君も一緒だったのね、良かったわ。わたしだけかと思っていたから不安だったの。お父さんに聞いても『知らん』の一点張りだし……」
「一度だけ母さんに聞いてみた事があるんだ。そしたらさ『病気だけど、病気じゃない』っていう、なぞなぞが返ってきたよ」
「どういう意味なのかしら?」
「我らが生徒会長様でも解くことが出来ないのなら、お手上げかもしれないな!」
このふたりはまだそれがどういった感情なのか理解していない。生まれた時から常に一緒にいた事による弊害、さらにふたり揃って超鈍感だった。
そんな楽しそうに談笑するふたりを木の陰から終始観察している人影があった。
「せっかくいい雰囲気だったのにさ、あいつらどっちも鈍すぎるだろ!!はぁ、今回こそは上手くいくと思ったんだがなぁ。まぁ拓斗の調子が戻った事だし、今回はこれで良しとするか」
その人影はお土産を買うと言ってひとり別れた山河聖陽その人。山河は幼少期からふたりが惹かれ合っている事を知っていた。そのため常日頃、影からふたりがくっ付くようにあれやこれやと、画策しているのだが、彼の努力が実った事は一度もない。
今日はもうこれ以上発展しないと判断した山河は、アリバイとして1分そこらで選んだお土産を、あたかも時間をかけて選んだかのように演技しつつベンチに向かう。
「お待たせ、ふたりとも。んじゃ、帰るとしますか。あと30分ぐらいでここも閉まっちまうしな!」
家に着いた時にはもう時刻は午後8時を過ぎていた。玄関には靴が3足、仲良さそうに並べられている。そして床には帰りにスーパーで購入した食材がぎっしり入ったビニール袋が3つ、それも全て大きいサイズで。
「いやな……おかしいなとは思ったんだよ。今回に限って何も食べずに帰るし、蘇芳院を送る前に僕の家で一旦休もうとか、そのくせスーパーに寄って行こうとか言うしさ。お前ら……最初っから今日、泊まる気だっただろ?」
僕の質問などお構いなしに山河は浴槽にお湯をためはじめ、蘇芳院は今朝にはなかったはずのボストンバッグの中身を確認している。あのボストンバッグは滄溟さんがコッソリ持ってきたものだろう。
「はぁ……もう好きにしてくれ。僕は料理をはじめるよ」
塞ぎ込んでいた僕を気遣ってふたりは今日の計画を立ててくれていたのだろう。なかなか無茶苦茶な計画ではあったけど、ふたりのおかげで吹っ切れた。
過ちは繰り返さないためにも、後悔しないためにも、僕はもっと強くなる。
包丁片手にキャベツを千切りにしながら僕は心に誓うのだった。
この会社はそれ以外にVRデバイス、スマホなど僕達が普段使っているものも作っていたりする。雑な名称の商品は大体この会社が関わっているらしい。
僕達はテーマパークのゲートを抜け、ここのテーマパークを象徴する城を見上げる。
「3人で来るのは俺が中学卒業して以来か?」
「あ~、確かにそうかもしれないな」
山河は僕、蘇芳院よりも1学年上だ。なので、最低でも1年以上は僕達3人でここに訪れていない事になる。
山河は僕と蘇芳院の手を掴み走り出す。
「時間も惜しいし、早速行こうぜ!この日のためにすっげぇ回る順番考えたんだからな!!」
「分かった、分かったから。そんなに引っ張るな!」
「あのぅ~、聖陽君。わ・た・しも一緒に考えたのをお忘れなきようにお願いしますね」
「あ~~~、そうでした。その節はどうもお世話になりました。んじゃ行こうぜ!!」
「よろしい」
それから僕達は時間が許す限り遊び続け、気づけば時刻は午後6時を回ろうとしていた。テーマパークの閉館時間である午後7時まで後1時間。
そんな中、僕と蘇芳院はベンチに座り山河の帰りを待っていた。
「なぁ~、蘇芳院。滄溟さんにお土産とか買わなくてもいいのか?」
「大丈夫です」
「ふむ……そうか。蘇芳院がそれでいいなら、別にいいんだけど」
「はい」
この時の僕はとても困惑していた。外での蘇芳院は猫かぶり仕様になるのはいつもの事ではあるが、なぜかこの日の蘇芳院はいつも以上に大人しく言葉数も少ない。それに今日は会話をするにしても山河を通し、間接的に会話する事が多かった気がする。
非常に気まずい、その一言に尽きる。
「「…………」」
ただただ沈黙が続く。
唯一の救いだったのが僕も蘇芳院も手元に缶コーヒーがあった事だ。
暖かかった昼間とは打って変わり今は少し肌寒く感じた。飲むためというよりもどちらかと言えば暖を取るための缶コーヒー。
元々はそういう目的で購入したものだったが、僕の暖を取るよりもこの気まずい雰囲気から逃げるため、一口また一口と飲んでいった。
僕は中身が無くなり軽くなった缶を片手に空を見上げる。夜空には幾千の星が輝いていた。キラキラ輝くテーマパーク内にいるのに、それでもこれだけ綺麗に見える事に少しだけ感動を覚えた。
「……綺麗だな」
ひとり景色について感想を述べていると、なぜか真横から強烈な視線を感じた。
顔を向けると蘇芳院がこっちを無言で見つめていた。
僕と蘇芳院はどちらも目を背けず言葉も交わさず、ただお互いジッと見つめ合う。
謎の拮抗状態を先に破ったのは蘇芳院からだった。
蘇芳院は視線を逸らし俯くと、ゆっくりと口を開き話し始めた。
「あの……あのね、拓斗君。わたし、今からおかしな事を言うけど聞いてもらえますか?」
僕はコクリと首を縦に振る。
「あのね。最近わたしね、理由は分からないんだけど、拓斗君が夢に出て来るの」
「うん」
「昔は拓斗君と聖陽君とわたしの3人で遊ぶ夢をよく見ていたんだけど、ここ最近はずっと拓斗君と二人きりで遊ぶ夢ばかり見るの」
「う、うん」
「それに3人の時は大丈夫なんだけどね。今みたいに二人っきりだと、なんか緊張するし、顔は火照ってくるし……」
蘇芳院から告げられた内容には心当たりがあった。その事を僕は蘇芳院に伝えた。
「実を言うとな……僕も蘇芳院とこうやって話したりすると、めっちゃ喉が渇いたり言葉が出なくなったりするよ」
「拓斗君も一緒だったのね、良かったわ。わたしだけかと思っていたから不安だったの。お父さんに聞いても『知らん』の一点張りだし……」
「一度だけ母さんに聞いてみた事があるんだ。そしたらさ『病気だけど、病気じゃない』っていう、なぞなぞが返ってきたよ」
「どういう意味なのかしら?」
「我らが生徒会長様でも解くことが出来ないのなら、お手上げかもしれないな!」
このふたりはまだそれがどういった感情なのか理解していない。生まれた時から常に一緒にいた事による弊害、さらにふたり揃って超鈍感だった。
そんな楽しそうに談笑するふたりを木の陰から終始観察している人影があった。
「せっかくいい雰囲気だったのにさ、あいつらどっちも鈍すぎるだろ!!はぁ、今回こそは上手くいくと思ったんだがなぁ。まぁ拓斗の調子が戻った事だし、今回はこれで良しとするか」
その人影はお土産を買うと言ってひとり別れた山河聖陽その人。山河は幼少期からふたりが惹かれ合っている事を知っていた。そのため常日頃、影からふたりがくっ付くようにあれやこれやと、画策しているのだが、彼の努力が実った事は一度もない。
今日はもうこれ以上発展しないと判断した山河は、アリバイとして1分そこらで選んだお土産を、あたかも時間をかけて選んだかのように演技しつつベンチに向かう。
「お待たせ、ふたりとも。んじゃ、帰るとしますか。あと30分ぐらいでここも閉まっちまうしな!」
家に着いた時にはもう時刻は午後8時を過ぎていた。玄関には靴が3足、仲良さそうに並べられている。そして床には帰りにスーパーで購入した食材がぎっしり入ったビニール袋が3つ、それも全て大きいサイズで。
「いやな……おかしいなとは思ったんだよ。今回に限って何も食べずに帰るし、蘇芳院を送る前に僕の家で一旦休もうとか、そのくせスーパーに寄って行こうとか言うしさ。お前ら……最初っから今日、泊まる気だっただろ?」
僕の質問などお構いなしに山河は浴槽にお湯をためはじめ、蘇芳院は今朝にはなかったはずのボストンバッグの中身を確認している。あのボストンバッグは滄溟さんがコッソリ持ってきたものだろう。
「はぁ……もう好きにしてくれ。僕は料理をはじめるよ」
塞ぎ込んでいた僕を気遣ってふたりは今日の計画を立ててくれていたのだろう。なかなか無茶苦茶な計画ではあったけど、ふたりのおかげで吹っ切れた。
過ちは繰り返さないためにも、後悔しないためにも、僕はもっと強くなる。
包丁片手にキャベツを千切りにしながら僕は心に誓うのだった。
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