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第二章 エインヘリャル最強決定戦編
第三十二話 全てを見通し支配する者
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枝垂桜が放たれてからというもの僕は、今まで以上にコタロウの動作をさらに注意深く見るようになった。それは瞬きをするその一瞬ですら、不安を覚えてしまうほどである。
それほどまでに桜滅一刀流を解放してからのコタロウの攻撃は苛烈を極めた。
コタロウが使用してきた桜滅一刀流は今のところ全部で四種類、そのいずれかひとつでも防御や回避、パリィを一度でも失敗すればその場で僕の敗北となる。
枝垂桜はある意味身体で覚えたおかげで、腹部に打撃を繰り出そうした時点ですぐにダガーで防御出来るようになった。桜滅一刀流の中でも枝垂桜はまだ予備動作として、必ず納刀しなければならない事もあって、割かし早く対応出来るようになった。
まず一つ目が乱れ桜、これは一秒にも満たない間に四肢を10回切り刻む技。
これを通常攻撃時に普通にいれてくるので、常に警戒しておかなければいけない。それに納刀とかの予備動作もないため、最初にこれをやられた時には反応出来ずに腕と脚を数か所斬られた。
桜滅一刀流、乱れ桜の名前の由来はその斬られた箇所から噴き出る血が、強風であおられて無残に散っていく桜花を表している。
二つ目は舞い散る桜という技で、これは腕や脚などの神経を断ち切る技。
これをやられた相手は糸が切れ傀儡のようにパタッと倒れ、その後身動きが取れなくなる。つまりこの技をくらった瞬間、僕の敗北が決定してしまうという事だ。ただこの技はその分かなりの技量を要するようで、コタロウがこの技を使う時の癖というか、今から使うぞというサインのおかげで今まで一度も僕はくらわずに済んでいる。
そのサインというのは、フゥーと軽く息を吐いて精神統一する事だ。この動作がなければ乱れ桜と見分ける事が出来ずにやられていたかもしれない。
桜滅一刀流、舞い散る桜の名前の由来は季節が変わり、全ての桜花が散った後の桜の木を表している。
三つ目はひとひらの桜花と呼ばれる技で、これは柄頭で頭部を殴打する事で脳を揺さぶり、意識を混濁させる技。
この技は舞い散る桜ほど技量を必要としないらしく、乱れ桜のように通常攻撃の合間にいれてくる。ただこっちは刀身とは真逆の位置にある柄頭による攻撃の上、頭部という場所を限定している事もあって、乱れ桜ほどの脅威は感じない。まぁこれもくらったら即アウトなんだろうけど……。
桜滅一刀流、ひとひらの桜花の名前の由来は一枚の桜花が風に揺られて、ふらふら飛んで行く様子を表している。
まだ致命傷となる一撃を受けていないから、なんとか戦えているがこのままではジリ貧で僕が負ける可能性が高い。コタロウの攻撃は僕に当たっているが、逆に僕の攻撃は未だにかすりもしていない。コタロウは見事な体さばきで僕の攻撃をいなし続けていたからだ。
僕とコタロウではそもそも戦い方が根本的に違っているのが、このジリ貧な状況を作り出している原因かもしれない。僕のパリィの技術は音ゲーによって手に入れた技術。それはつまりその場から一歩も動かず、迫り来るものをただひたすら斬り続ける事に特化した技術。
それに比べてコタロウは自ら行動する事によって、相手を動かしてから後の先で仕留めるような戦い方。これは桜滅一刀流という剣術を幼少期から習っていた事で、自然と身につけたものなのだろう。
そのため常にその場で相手の攻撃を耐え続ける僕と状況に応じて行動出来るコタロウとでは、選べる選択肢が天と地ほどある訳だ。
それとコタロウには僕のパリィと同じように桜滅一刀流がある。回数無制限クールタイムも存在しない、体力が続く限り延々と発動し続ける事が可能。
そんな中、やっと念願の三点セットであるアサルトラッシュ、ダンシングイリュージョン、エアリアルステップのクールタイムが終わった。
何もスキルを発動していない現状でもギリギリではあるが、コタロウと何とか渡り合えている。ならばこの三点セットを発動すれば、今度こそこっちが攻め手になれるはず……。
ただそこまでして……もしコタロウを行動不能に出来なければ、決め手に欠けた状態で戦い続けたところで、結局僕は勝つ事は出来ないだろう。どちらにせよ今はそれしか勝つ方法を見いだせない以上はこれに全てを賭けるしかない。
「コタロウ、スキルのクールタイムがあけた。そろそろ決着をつけようか!」
「本音を言うともう少し楽しみたいところですが、勝者を決めるとしましょう。タクト殿!」
「アサルトラッシュ、ダンシングイリュージョン、エアリアルステップ」
「背水の陣」
スキルを発動した僕とコタロウの両名は、今まで剣を刀を振り続けていた時間がただの準備運動だと感じた。
僕のダガーによる残影斬りからのシャドーエッジの強襲にソニックブレイドの追撃、それらを全ていなしつつもコタロウは桜滅一刀流による反撃、今度はそれをパリィして反撃する。
シャドーエッジやソニックブレイドはクールタイムが1分あるので、そこからさらに激しく攻める事は出来ないが、それでもちゃんと攻守交代が出来ていた。一方的にやられる事もなく無難に戦えている。だけど、このまま戦況がこう着したままになると僕が予期していたマズイ状況に陥る。
その焦りが僕の動きに出ていたのだろうか、コタロウからズバリとその事についてちょっと嫌味を加えて指摘してきた。
「何を焦っているのですか、タクト殿?さぁもっと楽しみましょうよ!!」
「僕が焦っているか……確かにそうかもしれないな。コタロウの言うとおり僕は焦っているのかもな、それに比べてそっちは本当に楽しそうに戦うよな!」
「あはははは……タクト殿、気づいていますか?」
「なにが?」
「そんな事言いながらタクト殿もずっと楽しそうに笑ってますよ」
勝敗がどうとか思考していたとしても結局のところ僕は、そんな事よりもコタロウと戦えた事が本当に嬉しかったのかもしれない。それが僕自身も気づかぬうちに溢れて顔に出ていたのだろう。
だが……そんな楽しい時間も終わりを告げる。
僕の方がコタロウよりも早くスキルの効果時間が終わりクールタイムに突入した事によって、背水の陣を発動しているコタロウの連撃に耐えられなくなったからだ。
「そこです!」
コタロウの打刀が僕の左手首めがけて振り下ろされる。
「まだまだぁ!」
僕はそれをダガーでパリィしようとしたその時、そこでコタロウが右手一本で打刀を握っているのに気づいた。左手はどこにいったと思考した時にはもうすでに手遅れだった。
ガンッ!!!!
枝垂桜の腹部強打に似た痛烈な痛みが左手首を襲った。
「マジか……これじゃもうダガー持てねぇや」
僕はその攻撃によってダガーを持つ圧力すら失った。
カランとダガーが物嘆かわしく地面に落ちた。
コタロウは僕が打刀に気を取られていた隙を狙って、腰に携えていた鞘を引き抜き僕の左手めがけて振り上げていた。
「それでも……僕にはまだ右手がある、まだ剣を振れる!さぁ続きをしよう!!」
僕は右手を前方に伸ばして、ショートソードをコタロウに見せびらかし戦う意思がある事を示した。
「さすがです、タクト殿。その心意気、某は感動いたしました。ですので……某も桜滅一刀流の神髄をお見せいたします」
コタロウはスッと後ろに下がると、納刀しながら鞘をもとの位置に戻し携えたのだった。
今までとは比べものにならないほどの威圧感……これは万全の状態だったとしてもパリィ出来る自信がない。
コタロウが神髄とまで言い放つその技、冥途の土産として見ておくのも悪くない。
でもまだ戦いたい、諦めたくない……そんな思いが全身を駆け巡る。
「思い出せ……あの音ゲーの難易度を!あれに比べたらこの程度の難易度!!乗り越えてみせる!!!!」
自分を奮い立たせるために叫んだ時だった。
僕の目の前にポンッ!という効果音と共にあるメッセージが表示された。
〈ユニークスキル……全てを見通し支配する者が使用可能となりました〉
「考えている余裕なんてないな……全てを見通し支配する者!!!!」
「楽しかったです、タクト殿。本当にありがとうございました。では、参ります。桜滅一刀流……奥義、朔耶!!」
そして……気づいた時には僕はショートソードをだらんと右手に持ったまま、倒れているコタロウを呆然と眺めていた。
それほどまでに桜滅一刀流を解放してからのコタロウの攻撃は苛烈を極めた。
コタロウが使用してきた桜滅一刀流は今のところ全部で四種類、そのいずれかひとつでも防御や回避、パリィを一度でも失敗すればその場で僕の敗北となる。
枝垂桜はある意味身体で覚えたおかげで、腹部に打撃を繰り出そうした時点ですぐにダガーで防御出来るようになった。桜滅一刀流の中でも枝垂桜はまだ予備動作として、必ず納刀しなければならない事もあって、割かし早く対応出来るようになった。
まず一つ目が乱れ桜、これは一秒にも満たない間に四肢を10回切り刻む技。
これを通常攻撃時に普通にいれてくるので、常に警戒しておかなければいけない。それに納刀とかの予備動作もないため、最初にこれをやられた時には反応出来ずに腕と脚を数か所斬られた。
桜滅一刀流、乱れ桜の名前の由来はその斬られた箇所から噴き出る血が、強風であおられて無残に散っていく桜花を表している。
二つ目は舞い散る桜という技で、これは腕や脚などの神経を断ち切る技。
これをやられた相手は糸が切れ傀儡のようにパタッと倒れ、その後身動きが取れなくなる。つまりこの技をくらった瞬間、僕の敗北が決定してしまうという事だ。ただこの技はその分かなりの技量を要するようで、コタロウがこの技を使う時の癖というか、今から使うぞというサインのおかげで今まで一度も僕はくらわずに済んでいる。
そのサインというのは、フゥーと軽く息を吐いて精神統一する事だ。この動作がなければ乱れ桜と見分ける事が出来ずにやられていたかもしれない。
桜滅一刀流、舞い散る桜の名前の由来は季節が変わり、全ての桜花が散った後の桜の木を表している。
三つ目はひとひらの桜花と呼ばれる技で、これは柄頭で頭部を殴打する事で脳を揺さぶり、意識を混濁させる技。
この技は舞い散る桜ほど技量を必要としないらしく、乱れ桜のように通常攻撃の合間にいれてくる。ただこっちは刀身とは真逆の位置にある柄頭による攻撃の上、頭部という場所を限定している事もあって、乱れ桜ほどの脅威は感じない。まぁこれもくらったら即アウトなんだろうけど……。
桜滅一刀流、ひとひらの桜花の名前の由来は一枚の桜花が風に揺られて、ふらふら飛んで行く様子を表している。
まだ致命傷となる一撃を受けていないから、なんとか戦えているがこのままではジリ貧で僕が負ける可能性が高い。コタロウの攻撃は僕に当たっているが、逆に僕の攻撃は未だにかすりもしていない。コタロウは見事な体さばきで僕の攻撃をいなし続けていたからだ。
僕とコタロウではそもそも戦い方が根本的に違っているのが、このジリ貧な状況を作り出している原因かもしれない。僕のパリィの技術は音ゲーによって手に入れた技術。それはつまりその場から一歩も動かず、迫り来るものをただひたすら斬り続ける事に特化した技術。
それに比べてコタロウは自ら行動する事によって、相手を動かしてから後の先で仕留めるような戦い方。これは桜滅一刀流という剣術を幼少期から習っていた事で、自然と身につけたものなのだろう。
そのため常にその場で相手の攻撃を耐え続ける僕と状況に応じて行動出来るコタロウとでは、選べる選択肢が天と地ほどある訳だ。
それとコタロウには僕のパリィと同じように桜滅一刀流がある。回数無制限クールタイムも存在しない、体力が続く限り延々と発動し続ける事が可能。
そんな中、やっと念願の三点セットであるアサルトラッシュ、ダンシングイリュージョン、エアリアルステップのクールタイムが終わった。
何もスキルを発動していない現状でもギリギリではあるが、コタロウと何とか渡り合えている。ならばこの三点セットを発動すれば、今度こそこっちが攻め手になれるはず……。
ただそこまでして……もしコタロウを行動不能に出来なければ、決め手に欠けた状態で戦い続けたところで、結局僕は勝つ事は出来ないだろう。どちらにせよ今はそれしか勝つ方法を見いだせない以上はこれに全てを賭けるしかない。
「コタロウ、スキルのクールタイムがあけた。そろそろ決着をつけようか!」
「本音を言うともう少し楽しみたいところですが、勝者を決めるとしましょう。タクト殿!」
「アサルトラッシュ、ダンシングイリュージョン、エアリアルステップ」
「背水の陣」
スキルを発動した僕とコタロウの両名は、今まで剣を刀を振り続けていた時間がただの準備運動だと感じた。
僕のダガーによる残影斬りからのシャドーエッジの強襲にソニックブレイドの追撃、それらを全ていなしつつもコタロウは桜滅一刀流による反撃、今度はそれをパリィして反撃する。
シャドーエッジやソニックブレイドはクールタイムが1分あるので、そこからさらに激しく攻める事は出来ないが、それでもちゃんと攻守交代が出来ていた。一方的にやられる事もなく無難に戦えている。だけど、このまま戦況がこう着したままになると僕が予期していたマズイ状況に陥る。
その焦りが僕の動きに出ていたのだろうか、コタロウからズバリとその事についてちょっと嫌味を加えて指摘してきた。
「何を焦っているのですか、タクト殿?さぁもっと楽しみましょうよ!!」
「僕が焦っているか……確かにそうかもしれないな。コタロウの言うとおり僕は焦っているのかもな、それに比べてそっちは本当に楽しそうに戦うよな!」
「あはははは……タクト殿、気づいていますか?」
「なにが?」
「そんな事言いながらタクト殿もずっと楽しそうに笑ってますよ」
勝敗がどうとか思考していたとしても結局のところ僕は、そんな事よりもコタロウと戦えた事が本当に嬉しかったのかもしれない。それが僕自身も気づかぬうちに溢れて顔に出ていたのだろう。
だが……そんな楽しい時間も終わりを告げる。
僕の方がコタロウよりも早くスキルの効果時間が終わりクールタイムに突入した事によって、背水の陣を発動しているコタロウの連撃に耐えられなくなったからだ。
「そこです!」
コタロウの打刀が僕の左手首めがけて振り下ろされる。
「まだまだぁ!」
僕はそれをダガーでパリィしようとしたその時、そこでコタロウが右手一本で打刀を握っているのに気づいた。左手はどこにいったと思考した時にはもうすでに手遅れだった。
ガンッ!!!!
枝垂桜の腹部強打に似た痛烈な痛みが左手首を襲った。
「マジか……これじゃもうダガー持てねぇや」
僕はその攻撃によってダガーを持つ圧力すら失った。
カランとダガーが物嘆かわしく地面に落ちた。
コタロウは僕が打刀に気を取られていた隙を狙って、腰に携えていた鞘を引き抜き僕の左手めがけて振り上げていた。
「それでも……僕にはまだ右手がある、まだ剣を振れる!さぁ続きをしよう!!」
僕は右手を前方に伸ばして、ショートソードをコタロウに見せびらかし戦う意思がある事を示した。
「さすがです、タクト殿。その心意気、某は感動いたしました。ですので……某も桜滅一刀流の神髄をお見せいたします」
コタロウはスッと後ろに下がると、納刀しながら鞘をもとの位置に戻し携えたのだった。
今までとは比べものにならないほどの威圧感……これは万全の状態だったとしてもパリィ出来る自信がない。
コタロウが神髄とまで言い放つその技、冥途の土産として見ておくのも悪くない。
でもまだ戦いたい、諦めたくない……そんな思いが全身を駆け巡る。
「思い出せ……あの音ゲーの難易度を!あれに比べたらこの程度の難易度!!乗り越えてみせる!!!!」
自分を奮い立たせるために叫んだ時だった。
僕の目の前にポンッ!という効果音と共にあるメッセージが表示された。
〈ユニークスキル……全てを見通し支配する者が使用可能となりました〉
「考えている余裕なんてないな……全てを見通し支配する者!!!!」
「楽しかったです、タクト殿。本当にありがとうございました。では、参ります。桜滅一刀流……奥義、朔耶!!」
そして……気づいた時には僕はショートソードをだらんと右手に持ったまま、倒れているコタロウを呆然と眺めていた。
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