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第二章 エインヘリャル最強決定戦編
第二十九話 タクト対コタロウ
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コロシアムにはもうすでにコタロウが待っていた。
僕はついさっきまでディスプレイで見ていた光景が頭を過りつつもコタロウに声をかけた。
「コタロウ、お互い手加減なしでやり合おう!」
コタロウはチラッとこっちを興味なさげに見た後、僕に向かってつまらなさそうに返事を返した。
「タクト殿……それは某の台詞かと……」
「それはどういう意味?」
コタロウから投げかけられた言葉の真意を尋ねようとした時、この大会で何度も聞いたあの女性から試合開始しても良いかという声が響く。
「タクト対コタロウ。両者、準備はよろしいでしょうか?」
コタロウは頷き「はい」とすぐに答えていた。僕はまだコタロウから質問に対する答えてもらっていない事もあって即答出来ずにいた。
「タクト殿、聞きたい事があるのでしたら……力ずくで聞き出してみては?」
コタロウはさっきまではつまらなさそうにしていたのに、今度は打って変わって僕を挑発してきたのだった。いつものコタロウらしくないと感じつつも僕はその挑発にのる事にした。
僕は「はい」とコタロウを真っすぐに見据え答えた。
「それでは……試合開始!!!!」
準決勝でサンにしたような速攻を僕にも仕掛けて来るのかと思い、即武器を取り出し警戒したが僕の予想は大きく外れコタロウは、僕とは正反対にゆっくりと左腰に携えた刀を抜刀した後、こちらを警戒するどころか眠たそうにあくびをしていた。
「ふあぁぁぁぁ~~~」
刀は両手武器としても選択する事が可能で、その場合は凪太郎のように二刀流で戦う事は出来ないが、その代わり抜刀術が使えるようになる。
僕を怒らせるためにわざとコタロウはやっているのだろうか、それでもさすがに決勝戦でやるべき事ではない。僕はあくびをやめさせるために攻撃を仕掛ける。
「ソニックブレイドォ!!」
僕は上を向いてあくびをしているコタロウの胴体めがけて、ショートソードを横一線に薙ぎ払った。
「……それではダメなんですよ、タクト殿」
コタロウは飛んでくるソニックブレイドの事など気にする様子もなくそう呟いた。
僕もコタロウも試合が始まってからまだ一歩を移動していない。そのため中心部からそれぞれ1mずつ離れている。
ソニックブレイドがコタロウを切り裂くまでの時間はわずか1秒……そんな一瞬の猶予しかないのにもかかわらず、コタロウは回避も防御もせずにおもむろに手首を返すと、そのまま打刀を僕に刃が向くようにして地面に突き刺した。
バシューーーーン!!
コタロウが地面に突き刺した打刀よって、僕が放ったソニックブレイドが真っ二つになった。斬られたソニックブレイドは威力がどんどん落ちていき最後には、コタロウから斜め後ろにある壁にそよ風が頬を撫でるように優しく触れて消えていった。
コタロウはあたかもそれが自然の流れだと、ごく普通の出来事のように打刀を引き抜きながら話しかける。
「ほら……だからダメだって言ったんですよ」
ソニックブレイドが通用しない事は今までにも何度かあった。それでも回避や防御などの行動によって、躱されたりダメージを軽減されたりしたが、この距離で一歩も動かずに完全に無効化されたのは今回がはじめてだった。
その戸惑いが僕の顔に出ていたのか、コタロウは僕の顔をジッと見ながらその事を指摘してきた。
「タクト殿、まさかとは思いますが……動揺していますか?たったこの程度、赤子の手をひねるぐらいに簡単に出来る事ですよ?」
「なるほど……確かにカエデが自分達よりも強いと断言する訳だ」
「そう思うのでしたら、是非とも某にもタクト殿の本気とやらを見せて下さい」
「あぁ、そのつもりだ。そしてコタロウがどうしてそんな似合わない演技をしているのか問いただしてやるからな!!」
「えぇ……是非ともそうして頂けますか、タクト殿?」
「アサルトラッシュ、ダンシングイリュージョン、エアリアルステップ」
そして僕は姉妹との交戦時のようにスキル三種同時発動したのだった。
一方その頃……。
準決勝でコタロウに負けたサンは、観客席にいる楓御前達のところに向かっていた。
「それにしても広すぎだろ。どこに座っているか聞いてないと一生見つけられないんじゃないか……」
周囲を見渡しながら歩いていると、こっちに向かって大きく手を振っているプレイヤーの姿が見えた。ただサンの位置からだと逆光のため、そのプレイヤーを識別する事までは出来なかった。ただサンに対して行動している時点で誰かすでに分かっていたりもする。
「サ~ン!こっちよ、こっち!!」
サンは修羅刹を目印に楓御前達が用意してくれていた席に移動すると、ふたりに声をかけ席に着いた。
「ふたりとも俺様の席を確保しておいてくれて、ありがとうな!」
「「……うん」」
楓御前と凪太郎は決勝戦にくぎ付けになっているらしく、こっちを一度も見ることもなくカラ返事を返していた。
「それで修羅刹、試合はどんな感じだ?」
「いまのところはタクトがスキル連発していて有利に見えるけどって感じね。それよりも拙僧が気になるのは、コタロウの様子がいつもと違うところなのよね」
「ふ~ん、そうなのか。まぁ俺様はコタロウに秒殺されたから、それどころじゃなかったけどな」
「あー、それだけどサン……あなた。コタロウから試合直前に何か言われたでしょ?あの準決勝でのコタロウも様子がおかしかったわ」
サンは数秒黙り込んだ後、修羅刹の質問に答えた。
「なんつうか、タクトのためにも全力で戦いましょうって言われた。まぁそのうえで俺様は秒殺されたんだけどなぁ」
「たったそれだけ?タクトのためってはよく分からないけど……じゃ~、試合前のあの殺伐とした雰囲気はなによ?」
「あ~あれか!あの方がなんか真剣勝負って感じがするだろ!!」
修羅刹はガクッと肩を落とし「あぁそぉ~」とサンに返事した後、決勝戦を見るために視線をコロシアム中央に向けたのだった。
サンも修羅刹に続いて試合に視線を移した。
そんななか楓御前と凪太郎の姉弟は試合を見ながら、それぞれあの予選での感想を述べるのだった。
「コタロウくんがあそこまでするなんて、やっぱりあの時のタクトくんは全然本気出してなかったんだぁ。それに気づかないなんてカエデもまだまだってことかぁ~」
「兄ちゃん、ナギとカエデに対して手加減してたのか。次戦う時は絶対、ぜぇぇったい!本気で戦ってもらうからなぁ!兄ちゃん!!」
僕はついさっきまでディスプレイで見ていた光景が頭を過りつつもコタロウに声をかけた。
「コタロウ、お互い手加減なしでやり合おう!」
コタロウはチラッとこっちを興味なさげに見た後、僕に向かってつまらなさそうに返事を返した。
「タクト殿……それは某の台詞かと……」
「それはどういう意味?」
コタロウから投げかけられた言葉の真意を尋ねようとした時、この大会で何度も聞いたあの女性から試合開始しても良いかという声が響く。
「タクト対コタロウ。両者、準備はよろしいでしょうか?」
コタロウは頷き「はい」とすぐに答えていた。僕はまだコタロウから質問に対する答えてもらっていない事もあって即答出来ずにいた。
「タクト殿、聞きたい事があるのでしたら……力ずくで聞き出してみては?」
コタロウはさっきまではつまらなさそうにしていたのに、今度は打って変わって僕を挑発してきたのだった。いつものコタロウらしくないと感じつつも僕はその挑発にのる事にした。
僕は「はい」とコタロウを真っすぐに見据え答えた。
「それでは……試合開始!!!!」
準決勝でサンにしたような速攻を僕にも仕掛けて来るのかと思い、即武器を取り出し警戒したが僕の予想は大きく外れコタロウは、僕とは正反対にゆっくりと左腰に携えた刀を抜刀した後、こちらを警戒するどころか眠たそうにあくびをしていた。
「ふあぁぁぁぁ~~~」
刀は両手武器としても選択する事が可能で、その場合は凪太郎のように二刀流で戦う事は出来ないが、その代わり抜刀術が使えるようになる。
僕を怒らせるためにわざとコタロウはやっているのだろうか、それでもさすがに決勝戦でやるべき事ではない。僕はあくびをやめさせるために攻撃を仕掛ける。
「ソニックブレイドォ!!」
僕は上を向いてあくびをしているコタロウの胴体めがけて、ショートソードを横一線に薙ぎ払った。
「……それではダメなんですよ、タクト殿」
コタロウは飛んでくるソニックブレイドの事など気にする様子もなくそう呟いた。
僕もコタロウも試合が始まってからまだ一歩を移動していない。そのため中心部からそれぞれ1mずつ離れている。
ソニックブレイドがコタロウを切り裂くまでの時間はわずか1秒……そんな一瞬の猶予しかないのにもかかわらず、コタロウは回避も防御もせずにおもむろに手首を返すと、そのまま打刀を僕に刃が向くようにして地面に突き刺した。
バシューーーーン!!
コタロウが地面に突き刺した打刀よって、僕が放ったソニックブレイドが真っ二つになった。斬られたソニックブレイドは威力がどんどん落ちていき最後には、コタロウから斜め後ろにある壁にそよ風が頬を撫でるように優しく触れて消えていった。
コタロウはあたかもそれが自然の流れだと、ごく普通の出来事のように打刀を引き抜きながら話しかける。
「ほら……だからダメだって言ったんですよ」
ソニックブレイドが通用しない事は今までにも何度かあった。それでも回避や防御などの行動によって、躱されたりダメージを軽減されたりしたが、この距離で一歩も動かずに完全に無効化されたのは今回がはじめてだった。
その戸惑いが僕の顔に出ていたのか、コタロウは僕の顔をジッと見ながらその事を指摘してきた。
「タクト殿、まさかとは思いますが……動揺していますか?たったこの程度、赤子の手をひねるぐらいに簡単に出来る事ですよ?」
「なるほど……確かにカエデが自分達よりも強いと断言する訳だ」
「そう思うのでしたら、是非とも某にもタクト殿の本気とやらを見せて下さい」
「あぁ、そのつもりだ。そしてコタロウがどうしてそんな似合わない演技をしているのか問いただしてやるからな!!」
「えぇ……是非ともそうして頂けますか、タクト殿?」
「アサルトラッシュ、ダンシングイリュージョン、エアリアルステップ」
そして僕は姉妹との交戦時のようにスキル三種同時発動したのだった。
一方その頃……。
準決勝でコタロウに負けたサンは、観客席にいる楓御前達のところに向かっていた。
「それにしても広すぎだろ。どこに座っているか聞いてないと一生見つけられないんじゃないか……」
周囲を見渡しながら歩いていると、こっちに向かって大きく手を振っているプレイヤーの姿が見えた。ただサンの位置からだと逆光のため、そのプレイヤーを識別する事までは出来なかった。ただサンに対して行動している時点で誰かすでに分かっていたりもする。
「サ~ン!こっちよ、こっち!!」
サンは修羅刹を目印に楓御前達が用意してくれていた席に移動すると、ふたりに声をかけ席に着いた。
「ふたりとも俺様の席を確保しておいてくれて、ありがとうな!」
「「……うん」」
楓御前と凪太郎は決勝戦にくぎ付けになっているらしく、こっちを一度も見ることもなくカラ返事を返していた。
「それで修羅刹、試合はどんな感じだ?」
「いまのところはタクトがスキル連発していて有利に見えるけどって感じね。それよりも拙僧が気になるのは、コタロウの様子がいつもと違うところなのよね」
「ふ~ん、そうなのか。まぁ俺様はコタロウに秒殺されたから、それどころじゃなかったけどな」
「あー、それだけどサン……あなた。コタロウから試合直前に何か言われたでしょ?あの準決勝でのコタロウも様子がおかしかったわ」
サンは数秒黙り込んだ後、修羅刹の質問に答えた。
「なんつうか、タクトのためにも全力で戦いましょうって言われた。まぁそのうえで俺様は秒殺されたんだけどなぁ」
「たったそれだけ?タクトのためってはよく分からないけど……じゃ~、試合前のあの殺伐とした雰囲気はなによ?」
「あ~あれか!あの方がなんか真剣勝負って感じがするだろ!!」
修羅刹はガクッと肩を落とし「あぁそぉ~」とサンに返事した後、決勝戦を見るために視線をコロシアム中央に向けたのだった。
サンも修羅刹に続いて試合に視線を移した。
そんななか楓御前と凪太郎の姉弟は試合を見ながら、それぞれあの予選での感想を述べるのだった。
「コタロウくんがあそこまでするなんて、やっぱりあの時のタクトくんは全然本気出してなかったんだぁ。それに気づかないなんてカエデもまだまだってことかぁ~」
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