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第二章 エインヘリャル最強決定戦編
第二十二話 楓御前と凪太郎
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シャドーエッジは短剣用のスキルで、装備している武器を投影をする事によって、実体化した影が対象に向かって真っすぐ飛んで行くスキル。これのいいところはソニックブレイドと同じクールタイムが1分。それと影を相手に向かって投げるだけなので、実際にいま装備している武器を手放さずに済む事だ。
これでソニックブレイドのクールタイムが終了していなくても、同じ遠距離攻撃が出来るシャドーエッジで、何とか対応出来るだろうという作戦。まぁいまのように同時に発動したら、その作戦は台無しになる。その分瞬間火力は上がるので場合によりけりではあるが、選択肢としては存外悪くないと思う。
その後もバトルロイヤルは続き……乱戦で生き残ったプレイヤーは、僕を含めた三人だけとなった。
僕以外のプレイヤー2名は、両方とも日本古来の甲冑らしき装備を身にまとっていた。片方は打刀と脇差による二刀流で、もうひとりはロングボウを装備していた。ロングボウなどの弓矢を好んで使っているプレイヤーは、このゲームではかなり少数なため彼女がどんな戦い方をするのか少し興味を持った。
このゲームで遠距離攻撃するには、ソニックブレイドなどのスキルを使用するか、もしくはジャベリンやトマホークといった元から投擲可能な武器を装備するか、またはロングボウのように最初から離れた敵を射抜く武器を装備するかの三択のみ。
そのなかで弓矢を選ぶのは、かなり腕に自信がないと選ぶ事は出来ないだろう。なぜならこのゲームは白兵戦主体のゲームだからだ。接近戦に持ち込まれる可能性大のため剣や槍などを装備していないと、相手の攻撃を防ぐことも反撃する事も出来ずに一方的に倒されてしまう。そのため大半のプレイヤーは、いまの僕と同じように白兵戦主体だけど、一応遠距離戦も対応出来るようにスキルを習得している事が多い。
投擲可能武器を選んでいるプレイヤーもスキルで遠距離戦に対応するか、武器で遠距離戦に対応するかだけの違いで、考え方にさほど大きな違いはない。
だが、この弓矢だけは他のふたつとは明らかに違う。それは弓矢は両手武器で、尚且つ遠距離戦特化のため白兵戦との相性が極端に悪い。そのうえ凄まじく使用難易度が高い。弓を引くだけでも難しいのに、さらに狙いを定め矢を射るともなれば大概のプレイヤーは、弓矢を諦めて他の武器を選ぶ。
やっと矢を射れたとしても正確に相手を射抜く事が出来なければ、そこら辺の落ちている石を投げた方が効率もいいし威力もある。
そんな武器をわざわざ選んでいるという事は、それほど彼女は相当弓に自信があるのだろう。
それにしても背格好や装備している甲冑といい、それに顔立ちも非常によく似ている。ふたりの髪がそれぞれ金銀と違う事や装備などを実際に、いま見比べているからまだ別人だと分かるが、もしそうじゃなかったら楓御前と凪太郎という2名のプレイヤーを見分けるのは、相当難しいかもしれない。
それぐらいに本当にうり二つなのだ。それにちょいちょい親しげに会話をしているのも見て取れる。という事はもしかするとこの後、僕ひとりであのふたりを相手取らないといけないのか。あのふたりが戦っているところをもっと見ておけば良かった。そうすれば対応策も講じる事が出来たかもしれないのに……。
白兵戦をしながら飛んでくる矢にも気を付けないとダメなのか、そんな事を考えていると急に凪太郎と楓御前が大声で言い争いはじめた。
呆気に取られた僕は、両手に構えていたショートソードとダガーを鞘に戻し、成り行きを見守る事にした。
「だ~か~ら~、何度も言ってんじゃん!!ナギが先にあの兄ちゃんと戦うんだって!!」
「ダメ!カエデと一緒に戦うの!!じゃないとタクトくんには勝てない!!」
タクト……くん?……おかしいな……僕、君達とははじめましてのはずなんだけど……。
「い~や~だ!ナギがひとりで兄ちゃんと戦う!!」
「だ~か~ら~!ダメだって言ってるでしょ!コタロウくんにも言われたでしょ!タクトくんと戦う時はふたりで協力するようにって!!」
コタロウ?……あのギルド設立費用を立て替えてくれた、あのコタロウの事を言っているのか。
コタロウとはあの一件以来、メッセージのやり取りやコールで通話したりなど、ごく普通に友達として接しているが、彼の口から楓御前と凪太郎という名前が出た事など一度もなかった。なのにあのふたりは、コタロウの事も僕の事も会話の内容を聞く限りだと知っているように思える。
もしかしたらそもそも僕が思い浮かべているプレイヤーのコタロウではなくて、別人のコタロウの事を言っているのかもしれない。ただそうなってくると、今度はなぜ僕の事を知っているのという疑問が出てくるわけだが……。
どちらも自らの主張を取り下げようとはせず、平行線のまま……さらにヒートアップしていく楓御前と凪太郎。
このままでは埒が明かない……それにこれ以上続けたら、本当に喧嘩がはじまってしまうのではという心配が先に立ってしまう。大会に参加している以上、それで勝手に双方で争い合って自滅してくれるのであれば、それはそれで越したことはないのだが、こんな結果で予選通過したとしても全く嬉しくない。それに僕としても今後コタロウにどんな顔で会えばいいのか分からなくなる、そろそろやめさせるとしよう。
僕はふたりの会話をバッサリ中断するように横槍を入れた。
「はい!ふたりともそこまでにしようか!!それで僕の事を知っているようだけど、君達は桜花爛漫のコタロウの知り合いなのかい?」
急に僕から質問されたふたりはピタッと口を閉ざし、暫く経ってから楓御前が僕の質問に答えてべく口を開いた。
「はい、カエデもナギもコタロウくんと同じ桜花爛漫に所属してます。あっ……申し遅れました。姉のカエデと弟のナギです」
楓御前がペコっとお辞儀をすると隣にいる凪太郎も姉に連動してお辞儀をしてくれた。僕も楓御前と凪太郎に続いてふたりに向け頭を下げる。
「これはどうもご丁寧に、僕は雪月山花のタクトです。で……楓御前さん、凪太郎くん。ふたりの会話を盗み聞きする気はなかったんだけど、聞こえたからさ……それで僕もひとつ提案していいかな?」
ふたりは首を縦に振る。
「ありがとう。楓御前さんが良ければなんだけど、まずは凪太郎くんと僕で1対1で戦おうと思うんだ」
僕の話をさえぎるように楓御前が言葉を発する。
「でも!それじゃコタロウくんとの約束が!!」
「なので、そこでは模擬訓練っぽい感じで双方の力量を測る程度で刃を交えるだけにして、その次に楓御前さんも参加して2対1で戦うってのはどうかな?」
「でも……それだとタクトくんだけが余計に体力を消耗して不利になります」
「まぁそれはそうなんだけど、僕としても凪太郎くんとちょっと1対1で戦ってみたいんだよね。ダメかな……楓御前さん?」
「兄ちゃんもナギと戦いたいって言ってるんだし、いいだろカエデ!!」
楓御前は目をつむり眉をひそめ、僕の提案を受け入れるべきかどうか悩んでいるようだ。隣ではそんな姉の肩を両手で掴み揺さぶり懇願している弟の姿があった。
ゆっくりと目を開いた楓御前は、早速結論を伝えるため口を開いた。
「それでよろしくお願いします……タクトくん。ナギのわがままに付き合ってくれてありがとうございます」
「いやいや、こちらこそありがとう。楓御前さん」
「やったぁぁぁ!!カエデありがとうなぁぁぁ!!ひゃっほ~~~~~い!!!!」
姉の楓御前から許可を得た凪太郎は、懇願するために納刀していた打刀と脇差を即座に抜刀して、ぴょんぴょん飛び跳ねている。
「あと……カエデとナギを呼ぶ時は楓御前、凪太郎ではなくカエデ、ナギと呼んでくれると嬉しいです」
「そうだぜ!兄ちゃん!!コタロウの友達って事はナギの友達でもあるんだからな!そんな他人行儀な呼び方やめてくれよな!!」
「分かったよ。今後ともよろしく!カエデ、ナギ」
「よろしくな、兄ちゃん」
「よろしくお願いします、タクトくん」
挨拶も終えにこやかな雰囲気の中、楓御前はタクトと凪太郎の邪魔にならないように後方に下がっていった。
楓御前が十分に離れた事を確認した僕は、ショートソードとダガーをゆっくり鞘から引き抜き、戦闘態勢にはいるのだった。
これでソニックブレイドのクールタイムが終了していなくても、同じ遠距離攻撃が出来るシャドーエッジで、何とか対応出来るだろうという作戦。まぁいまのように同時に発動したら、その作戦は台無しになる。その分瞬間火力は上がるので場合によりけりではあるが、選択肢としては存外悪くないと思う。
その後もバトルロイヤルは続き……乱戦で生き残ったプレイヤーは、僕を含めた三人だけとなった。
僕以外のプレイヤー2名は、両方とも日本古来の甲冑らしき装備を身にまとっていた。片方は打刀と脇差による二刀流で、もうひとりはロングボウを装備していた。ロングボウなどの弓矢を好んで使っているプレイヤーは、このゲームではかなり少数なため彼女がどんな戦い方をするのか少し興味を持った。
このゲームで遠距離攻撃するには、ソニックブレイドなどのスキルを使用するか、もしくはジャベリンやトマホークといった元から投擲可能な武器を装備するか、またはロングボウのように最初から離れた敵を射抜く武器を装備するかの三択のみ。
そのなかで弓矢を選ぶのは、かなり腕に自信がないと選ぶ事は出来ないだろう。なぜならこのゲームは白兵戦主体のゲームだからだ。接近戦に持ち込まれる可能性大のため剣や槍などを装備していないと、相手の攻撃を防ぐことも反撃する事も出来ずに一方的に倒されてしまう。そのため大半のプレイヤーは、いまの僕と同じように白兵戦主体だけど、一応遠距離戦も対応出来るようにスキルを習得している事が多い。
投擲可能武器を選んでいるプレイヤーもスキルで遠距離戦に対応するか、武器で遠距離戦に対応するかだけの違いで、考え方にさほど大きな違いはない。
だが、この弓矢だけは他のふたつとは明らかに違う。それは弓矢は両手武器で、尚且つ遠距離戦特化のため白兵戦との相性が極端に悪い。そのうえ凄まじく使用難易度が高い。弓を引くだけでも難しいのに、さらに狙いを定め矢を射るともなれば大概のプレイヤーは、弓矢を諦めて他の武器を選ぶ。
やっと矢を射れたとしても正確に相手を射抜く事が出来なければ、そこら辺の落ちている石を投げた方が効率もいいし威力もある。
そんな武器をわざわざ選んでいるという事は、それほど彼女は相当弓に自信があるのだろう。
それにしても背格好や装備している甲冑といい、それに顔立ちも非常によく似ている。ふたりの髪がそれぞれ金銀と違う事や装備などを実際に、いま見比べているからまだ別人だと分かるが、もしそうじゃなかったら楓御前と凪太郎という2名のプレイヤーを見分けるのは、相当難しいかもしれない。
それぐらいに本当にうり二つなのだ。それにちょいちょい親しげに会話をしているのも見て取れる。という事はもしかするとこの後、僕ひとりであのふたりを相手取らないといけないのか。あのふたりが戦っているところをもっと見ておけば良かった。そうすれば対応策も講じる事が出来たかもしれないのに……。
白兵戦をしながら飛んでくる矢にも気を付けないとダメなのか、そんな事を考えていると急に凪太郎と楓御前が大声で言い争いはじめた。
呆気に取られた僕は、両手に構えていたショートソードとダガーを鞘に戻し、成り行きを見守る事にした。
「だ~か~ら~、何度も言ってんじゃん!!ナギが先にあの兄ちゃんと戦うんだって!!」
「ダメ!カエデと一緒に戦うの!!じゃないとタクトくんには勝てない!!」
タクト……くん?……おかしいな……僕、君達とははじめましてのはずなんだけど……。
「い~や~だ!ナギがひとりで兄ちゃんと戦う!!」
「だ~か~ら~!ダメだって言ってるでしょ!コタロウくんにも言われたでしょ!タクトくんと戦う時はふたりで協力するようにって!!」
コタロウ?……あのギルド設立費用を立て替えてくれた、あのコタロウの事を言っているのか。
コタロウとはあの一件以来、メッセージのやり取りやコールで通話したりなど、ごく普通に友達として接しているが、彼の口から楓御前と凪太郎という名前が出た事など一度もなかった。なのにあのふたりは、コタロウの事も僕の事も会話の内容を聞く限りだと知っているように思える。
もしかしたらそもそも僕が思い浮かべているプレイヤーのコタロウではなくて、別人のコタロウの事を言っているのかもしれない。ただそうなってくると、今度はなぜ僕の事を知っているのという疑問が出てくるわけだが……。
どちらも自らの主張を取り下げようとはせず、平行線のまま……さらにヒートアップしていく楓御前と凪太郎。
このままでは埒が明かない……それにこれ以上続けたら、本当に喧嘩がはじまってしまうのではという心配が先に立ってしまう。大会に参加している以上、それで勝手に双方で争い合って自滅してくれるのであれば、それはそれで越したことはないのだが、こんな結果で予選通過したとしても全く嬉しくない。それに僕としても今後コタロウにどんな顔で会えばいいのか分からなくなる、そろそろやめさせるとしよう。
僕はふたりの会話をバッサリ中断するように横槍を入れた。
「はい!ふたりともそこまでにしようか!!それで僕の事を知っているようだけど、君達は桜花爛漫のコタロウの知り合いなのかい?」
急に僕から質問されたふたりはピタッと口を閉ざし、暫く経ってから楓御前が僕の質問に答えてべく口を開いた。
「はい、カエデもナギもコタロウくんと同じ桜花爛漫に所属してます。あっ……申し遅れました。姉のカエデと弟のナギです」
楓御前がペコっとお辞儀をすると隣にいる凪太郎も姉に連動してお辞儀をしてくれた。僕も楓御前と凪太郎に続いてふたりに向け頭を下げる。
「これはどうもご丁寧に、僕は雪月山花のタクトです。で……楓御前さん、凪太郎くん。ふたりの会話を盗み聞きする気はなかったんだけど、聞こえたからさ……それで僕もひとつ提案していいかな?」
ふたりは首を縦に振る。
「ありがとう。楓御前さんが良ければなんだけど、まずは凪太郎くんと僕で1対1で戦おうと思うんだ」
僕の話をさえぎるように楓御前が言葉を発する。
「でも!それじゃコタロウくんとの約束が!!」
「なので、そこでは模擬訓練っぽい感じで双方の力量を測る程度で刃を交えるだけにして、その次に楓御前さんも参加して2対1で戦うってのはどうかな?」
「でも……それだとタクトくんだけが余計に体力を消耗して不利になります」
「まぁそれはそうなんだけど、僕としても凪太郎くんとちょっと1対1で戦ってみたいんだよね。ダメかな……楓御前さん?」
「兄ちゃんもナギと戦いたいって言ってるんだし、いいだろカエデ!!」
楓御前は目をつむり眉をひそめ、僕の提案を受け入れるべきかどうか悩んでいるようだ。隣ではそんな姉の肩を両手で掴み揺さぶり懇願している弟の姿があった。
ゆっくりと目を開いた楓御前は、早速結論を伝えるため口を開いた。
「それでよろしくお願いします……タクトくん。ナギのわがままに付き合ってくれてありがとうございます」
「いやいや、こちらこそありがとう。楓御前さん」
「やったぁぁぁ!!カエデありがとうなぁぁぁ!!ひゃっほ~~~~~い!!!!」
姉の楓御前から許可を得た凪太郎は、懇願するために納刀していた打刀と脇差を即座に抜刀して、ぴょんぴょん飛び跳ねている。
「あと……カエデとナギを呼ぶ時は楓御前、凪太郎ではなくカエデ、ナギと呼んでくれると嬉しいです」
「そうだぜ!兄ちゃん!!コタロウの友達って事はナギの友達でもあるんだからな!そんな他人行儀な呼び方やめてくれよな!!」
「分かったよ。今後ともよろしく!カエデ、ナギ」
「よろしくな、兄ちゃん」
「よろしくお願いします、タクトくん」
挨拶も終えにこやかな雰囲気の中、楓御前はタクトと凪太郎の邪魔にならないように後方に下がっていった。
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