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序章 クローズドベータテスト編
第一話 あるゲームとの出会い
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折角の休日だというのに僕はけたたましく鳴り響く着信音によって目を覚ます。枕元に置いてあるスマホを手に取り寝ぼけまなこをこすりながら、画面に表示されている犯人の名前を確認する。
そこに表示されていた名前は山河聖陽……山河とは幼稚園の頃からの腐れ縁で俗に言う幼馴染ってやつだ。イケメンな上に性格も明るく愛想も良いため同性、異性どちらからも好かれるタイプ。
この時間に僕がまだ起きていない事など山河も知っているはずだ。それを知ってなお僕に電話をかけてきたということは、それほど早急に伝えないといけない事があったのかもしれない。
まだ覚醒していない状態の頭を軽く左右に振り通話ボタンに触れる。僕は寝起きのガラガラな声で電話に出る。
「あー、山河……こんな朝早くにどうしたんだよ」
「おっはよぉぉぉぉ!拓斗!!ちょっと聞いてくれよ!!!!」
僕はスピーカーから聞こえてくる爆音から鼓膜を守るためスマホを耳元から素早く離し、腕を前後して丁度いい音量の位置で固定する。
僕の幼馴染ってこんなに朝からテンション高いやつだったかと思いながらも話の続きを聞く。
「それで……どうしたんだよ?」
「あぁ!それがな!!当たったんだよ……あの……あのゲームのクローズドベータがさ!!!!」
「それは良かったな~、おめでとう~!!それじゃ~、僕はもうひと眠りするから」
「待て待て待て待て待て!待てよ拓斗!!寝ようとするんじゃない!!全世界で1,000人しか…………」
僕はまだ何か話そうとしている幼馴染の言葉を無視してそのまま通話を切り、スマホをまた枕元に置くと二度寝をするためまぶたを閉じる。
暗闇の中、僕はあいつが言っていた事を思い出す。寝る前に事前の会話などが頭の中をぐるぐる回る例のあれだ。
山河が言っているあのゲームとは、アーティファクト・オンラインとかいう新作VRMMOの事だろう。
VRMMOとは仮想現実の世界で交流したり敵対したりなど、ゲームによって内容に差はあるが基本的には大人数で遊ぶゲームらしい。
僕が『らしい』と言ったのには理由がある。僕も人並みにはVRゲームを遊んでいる。もちろんフルダイブ型と呼ばれる頭に装着する新型デバイスも持ってはいるが、僕がやっているのはソロ向け。つまりひとりでやるゲームばかりでMMOと呼ばれるジャンルには触れた事が無い。
僕とは逆に山河はソロ用のゲームはあまりやらず、そのMMOとかいうのを好んで遊ぶ事が多い。
何度か一緒にやろうと誘われた事はあったが、僕は一度たりともやろうと賛同した事も僕から誘った事も一度もない。
なので、僕たちがVRで遊ぶ時はMMOのような多人数ではなく、少人数で遊べる協力や対戦が出来るゲームに限定される。
……そろそろ眠れそう……おやすみなさい…………。
ピロロロン、ピロロロン、ピロロロン、ピロロロン、ピロロロン。
眠りに誘われる寸前だった僕はまたやつからの電話で起こされる。
無視したい……無視したいがここで無視するとあいつは……山河は絶対に僕の家に来る。なぜなら、あいつの家と僕の家は徒歩5分圏内のご近所さんだから。
ピロロロン、ピロロロン、ピロロロン、ピロロロン、ピロロロン、ピロロロン。
眠るのを諦めた僕は再度通話ボタンに触れる。
その瞬間、またあのハイテンションな声がスマホを通して聞こえてきた。
「それでな!全世界で1,000人しか当選しないクローズドベータに俺当たっちまったんだよ!!!!」
「あ~、うん……それはさっき聞いた。それで?」
「それでな!ゲームのシリアルコードが送られてきたんだけどさ、それが!それが三人分!三人分送られて来たんだ!!」
「えっと~、お前の話を整理すると……あれか?三人分送られて来たから、僕と蘇芳院にもやらせようとしてる?」
「イエス!イエス!!と言う事でシリアルコード送るから、朝飯食ったらすぐにやろうぜ!!あー、そうそう六華は先にログインしてるってさ……当選した俺よりも早いとかおかしくね?まぁそう言う事だからまた後でなぁ~」
「まだ僕はやるなんて一言も言っていないんだけど……あのぅ、山河さん?」
僕の言葉があいつの耳に届く前には通話が切られていた。
それから数秒後、シリアルコードと僕が絶対にあいつの誘いを断る事が出来ない一文が添えられたメッセージが届く。
〈クローズドベータに参加すると特典として拓斗がよくやってる音ゲーが付いてくるってさ。〉
音ゲーが付いてくる……それだけでもうこのゲームをやらないという選択肢が消えた。なぜなら僕がVRで一番やっているジャンルは音ゲー。
簡単に説明すると音ゲーとは、リズムに合わせて流れてくるノーツをタイミングよく押すゲーム。とは言ってもジャンルとしては同じでも、銃や剣でノーツを撃ったり斬ったりするものから、王道のボタンを押すものまで色んな種類があって、曲数も数えきれないほど膨大にある。
さらにVR音ゲーの場合だと仮想現実という事もあり、臨場感が凄まじく気づけば何時間も平然とやってしまう。
僕はそれほど音ゲーが上手いわけではないし、高難易度をクリアしたこともない……パーフェクトも数えるほどしかない。
自慢ではないが僕は人並み以上に動体視力は良い方だと思う。通り過ぎる電車の乗客が何をしているかとか普通に目視出来る。
なので、色んな音ゲーの高難度ノーツも問題なく見えてはいるが、ただそれに身体が反応しないってだけ……。
それでも僕としては楽しく遊べているから、それで別に構わないと思っている。
ただちょっとだけ本心を言うとするならば、もう少しだけ上手くなりたいかも。
ベッドから起き上がった僕は早速机に置いてあるVRデバイスを手に取り、山河が送ってきたシリアルコードを早速入力しようと思ったが、まずはご飯を食べてからにしよう。
両親は海外旅行が趣味のため家に帰って来たと思っても、またすぐにどこかに行ってしまう。
今回も案の定そうだったようでリビングに向かうと、どこの国のものか分からないお土産とひとり分の朝食がテーブルに用意されていた。朝食を食べ終え、食器を洗い片付けると冷蔵庫からスポーツドリンクを取り出し部屋に戻る。
部屋に戻った僕は机に置いてあるVRデバイスを手に取りベッドに移動すると、仰向けに寝そべった状態でVRデバイスを頭に装着する。
スマホと連携しているVRデバイスに山河の送ってきたシリアルコードを転送し、シリアルコードを入力してアーティファクト・オンラインを自身のライブラリーに追加する。
アーティファクト・オンラインがライブラリーに追加されると同時にアーティファクト・リズムが追加された。これがたぶん山河が言っていた音ゲーだろう。
アーティファクトって名前が付いているって事は、このゲームのBGMとかを使用しているって事なのか。アーティファクト・リズムか……非常に気になるけど、まずは本家のアーティファクト・オンラインからやらないと山河に何言われるか分かったもんじゃない。
そこに表示されていた名前は山河聖陽……山河とは幼稚園の頃からの腐れ縁で俗に言う幼馴染ってやつだ。イケメンな上に性格も明るく愛想も良いため同性、異性どちらからも好かれるタイプ。
この時間に僕がまだ起きていない事など山河も知っているはずだ。それを知ってなお僕に電話をかけてきたということは、それほど早急に伝えないといけない事があったのかもしれない。
まだ覚醒していない状態の頭を軽く左右に振り通話ボタンに触れる。僕は寝起きのガラガラな声で電話に出る。
「あー、山河……こんな朝早くにどうしたんだよ」
「おっはよぉぉぉぉ!拓斗!!ちょっと聞いてくれよ!!!!」
僕はスピーカーから聞こえてくる爆音から鼓膜を守るためスマホを耳元から素早く離し、腕を前後して丁度いい音量の位置で固定する。
僕の幼馴染ってこんなに朝からテンション高いやつだったかと思いながらも話の続きを聞く。
「それで……どうしたんだよ?」
「あぁ!それがな!!当たったんだよ……あの……あのゲームのクローズドベータがさ!!!!」
「それは良かったな~、おめでとう~!!それじゃ~、僕はもうひと眠りするから」
「待て待て待て待て待て!待てよ拓斗!!寝ようとするんじゃない!!全世界で1,000人しか…………」
僕はまだ何か話そうとしている幼馴染の言葉を無視してそのまま通話を切り、スマホをまた枕元に置くと二度寝をするためまぶたを閉じる。
暗闇の中、僕はあいつが言っていた事を思い出す。寝る前に事前の会話などが頭の中をぐるぐる回る例のあれだ。
山河が言っているあのゲームとは、アーティファクト・オンラインとかいう新作VRMMOの事だろう。
VRMMOとは仮想現実の世界で交流したり敵対したりなど、ゲームによって内容に差はあるが基本的には大人数で遊ぶゲームらしい。
僕が『らしい』と言ったのには理由がある。僕も人並みにはVRゲームを遊んでいる。もちろんフルダイブ型と呼ばれる頭に装着する新型デバイスも持ってはいるが、僕がやっているのはソロ向け。つまりひとりでやるゲームばかりでMMOと呼ばれるジャンルには触れた事が無い。
僕とは逆に山河はソロ用のゲームはあまりやらず、そのMMOとかいうのを好んで遊ぶ事が多い。
何度か一緒にやろうと誘われた事はあったが、僕は一度たりともやろうと賛同した事も僕から誘った事も一度もない。
なので、僕たちがVRで遊ぶ時はMMOのような多人数ではなく、少人数で遊べる協力や対戦が出来るゲームに限定される。
……そろそろ眠れそう……おやすみなさい…………。
ピロロロン、ピロロロン、ピロロロン、ピロロロン、ピロロロン。
眠りに誘われる寸前だった僕はまたやつからの電話で起こされる。
無視したい……無視したいがここで無視するとあいつは……山河は絶対に僕の家に来る。なぜなら、あいつの家と僕の家は徒歩5分圏内のご近所さんだから。
ピロロロン、ピロロロン、ピロロロン、ピロロロン、ピロロロン、ピロロロン。
眠るのを諦めた僕は再度通話ボタンに触れる。
その瞬間、またあのハイテンションな声がスマホを通して聞こえてきた。
「それでな!全世界で1,000人しか当選しないクローズドベータに俺当たっちまったんだよ!!!!」
「あ~、うん……それはさっき聞いた。それで?」
「それでな!ゲームのシリアルコードが送られてきたんだけどさ、それが!それが三人分!三人分送られて来たんだ!!」
「えっと~、お前の話を整理すると……あれか?三人分送られて来たから、僕と蘇芳院にもやらせようとしてる?」
「イエス!イエス!!と言う事でシリアルコード送るから、朝飯食ったらすぐにやろうぜ!!あー、そうそう六華は先にログインしてるってさ……当選した俺よりも早いとかおかしくね?まぁそう言う事だからまた後でなぁ~」
「まだ僕はやるなんて一言も言っていないんだけど……あのぅ、山河さん?」
僕の言葉があいつの耳に届く前には通話が切られていた。
それから数秒後、シリアルコードと僕が絶対にあいつの誘いを断る事が出来ない一文が添えられたメッセージが届く。
〈クローズドベータに参加すると特典として拓斗がよくやってる音ゲーが付いてくるってさ。〉
音ゲーが付いてくる……それだけでもうこのゲームをやらないという選択肢が消えた。なぜなら僕がVRで一番やっているジャンルは音ゲー。
簡単に説明すると音ゲーとは、リズムに合わせて流れてくるノーツをタイミングよく押すゲーム。とは言ってもジャンルとしては同じでも、銃や剣でノーツを撃ったり斬ったりするものから、王道のボタンを押すものまで色んな種類があって、曲数も数えきれないほど膨大にある。
さらにVR音ゲーの場合だと仮想現実という事もあり、臨場感が凄まじく気づけば何時間も平然とやってしまう。
僕はそれほど音ゲーが上手いわけではないし、高難易度をクリアしたこともない……パーフェクトも数えるほどしかない。
自慢ではないが僕は人並み以上に動体視力は良い方だと思う。通り過ぎる電車の乗客が何をしているかとか普通に目視出来る。
なので、色んな音ゲーの高難度ノーツも問題なく見えてはいるが、ただそれに身体が反応しないってだけ……。
それでも僕としては楽しく遊べているから、それで別に構わないと思っている。
ただちょっとだけ本心を言うとするならば、もう少しだけ上手くなりたいかも。
ベッドから起き上がった僕は早速机に置いてあるVRデバイスを手に取り、山河が送ってきたシリアルコードを早速入力しようと思ったが、まずはご飯を食べてからにしよう。
両親は海外旅行が趣味のため家に帰って来たと思っても、またすぐにどこかに行ってしまう。
今回も案の定そうだったようでリビングに向かうと、どこの国のものか分からないお土産とひとり分の朝食がテーブルに用意されていた。朝食を食べ終え、食器を洗い片付けると冷蔵庫からスポーツドリンクを取り出し部屋に戻る。
部屋に戻った僕は机に置いてあるVRデバイスを手に取りベッドに移動すると、仰向けに寝そべった状態でVRデバイスを頭に装着する。
スマホと連携しているVRデバイスに山河の送ってきたシリアルコードを転送し、シリアルコードを入力してアーティファクト・オンラインを自身のライブラリーに追加する。
アーティファクト・オンラインがライブラリーに追加されると同時にアーティファクト・リズムが追加された。これがたぶん山河が言っていた音ゲーだろう。
アーティファクトって名前が付いているって事は、このゲームのBGMとかを使用しているって事なのか。アーティファクト・リズムか……非常に気になるけど、まずは本家のアーティファクト・オンラインからやらないと山河に何言われるか分かったもんじゃない。
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