王国騎士に憧れる村娘は最強装備で成り上がる~あたしの武器だけ毎回違うのが出てくるけど、どれも強いので問題ないです~

虎柄トラ

文字の大きさ
上 下
13 / 24

第十三話 初任務

しおりを挟む
「あ~、なかなかあいつら尻尾を出さないわね。もっと早く解決すると思っていたのに……」

 あたしはひとりトリス村にある宿屋の一室でベッドに腰かけ、団長に呼び出された一週間前のことを思い出していた。
 
 団長はあたしとリーガルがソファーに座ると同時に話し始めた。

「全員集まったか……では、時間も惜しいので手早く説明をする。一度しか説明しないからよく聞いておけよ。ここ最近、王都とトリス村を行き交う馬車が盗賊を襲われる事件が多発していることは知っているな?」

 あたしたちは団長の話を妨げないように声に出さずに、肯定の意を示すためコクッと頷く。

 一か月ほど前から王都とトリス村の区間で盗賊に略奪される事件が頻発している。
 不自然なことに積まれた荷物は一つも盗られてはいない。それどころか一切荷物に手を付けていないのか、綺麗な状態で放置されているらしい。
 ただ人だけが最初からその場にいなかったかのように消えている。
 そして……その消えてしまった人が帰って来たことは一度もない。

「で、その事件を調べていた部隊がひとりを残して全滅した。……ほぉ、クランはもう私がこのあと何を言おうとしているのか理解したようだな」

 団長はスッと目を細めクランに視線を向ける。
 クランはあたしとクアンをチラッと見ると、眉をひそめ嫌そうな顔で団長に尋ねた。

「……僕たちでその盗賊団を壊滅してこいってことですよね?」
「まぁそういうことだ。今回の盗賊団は今までのやつらとは別格らしくてな、上層部でも頭を抱えている案件だ。あの従騎士がいなければ王国騎士団はやつらが潜伏している場所の目星すらつかなかった。そんな面倒な案件を好き好んでやりたがる部隊はいないようでな。上層部では誰にやらせるかで、ごたついている」

 あたしは団長の言葉を聞いて愕然とした。
 だって、国民が被害に遭っているというのに国民を守るべき王国騎士団はまだ何も行動していない。
 盗賊から命からがら逃げ延びた従騎士から貴重な情報を得ることができたのに……。

 その真実を知った時にはもうあたしは声を張り上げていた。

「それは……あまりにも!」
「あぁ、私もそう思う。だが、組織とはそういうものだ。それは王国騎士団だからといって例外ではない。だからこそ私は独立遊撃部隊――従順なる狼を立ち上げた。全て私財で賄えば色々と融通が効くのでな」

 団長は嬉しそうにそう語った。ただ声に反して表情は少しばかり寂しそうに見えた。
 その後、あたしたちは荷物をまとめ私服に着替えると、休憩するどころかお昼ご飯を食べることもなく、急ぎトリス村に向かうのだった――。

「トリス村に着いてから今日で五日目……あのリーガルがここまで手こずるなんて思いもしなかったわ」

 あれからまたボヤキ続けていると、ガチャっとドアノブを回す音がした。
 クランは部屋に入って来るなり呆れた様子であたしに声をかけてきた。

「やぁリーティア。今日もなかなか暇そうにしてるね」
「そりゃそうでしょ。五日目に突入したってのにまだアジトも見つからないし、ずっと部屋にこもってないといけないし!」

 盗賊団のアジトはトリス村付近にあることは団長から聞かされていたので知っていた。あまりにも暇すぎて時たま忘れそうになることはあったけど……。
 
 だって、仕方ないじゃない……あたしだけこの何も無い部屋でずっと待機なのよ。部屋を出るのはお風呂やご飯の時ぐらいで、それ以外の時間は部屋で大人しくみんなからの報告をただ待ってないといけないのよ。それが一日、二日とかならまだあたしだって我慢できるけど……さすがに五日とか長すぎませんか。こんなん誰だって、あたしと同じようになるわ。はぁ~、剣を思いっきり振り回したい……。

 クランは駄々をこねる子供をなだめるような優しい口調で問いかける。

「あのね、リーティア……これも訓練だよ。団長から言われたこと覚えてる?」
「分かってるよ。クランたちが集めた情報をぼくがまとめて、あとで団長に報告するってやつでしょ。でも、それってぼくよりもクランの方が適任じゃない?」
「かもしれないけどさ、団長はリーティアを指名したんだから僕がとやかく言える立場にはないよ」
「う~ん、あの腹黒団長めぇ~」
「あっはっはっは。聞こえなかったことにしておくよ」
「それで――ただ雑談しに来たってだけじゃなさそうだけど?」
「もちろんだよ。今夜、盗賊団のアジトに忍び込むことになったから、その報告をしに来たんだ。そういうことだから、晩御飯を食べ過ぎないようにね。いざって時にお腹いっぱいで戦えないとか笑えないからね」
「あ~、うん。分かった」

 クランはそう告げると部屋から出て行った。
 あたしはまたひとりだけとなった部屋で、クランからの報告を整理することにした。

 クランは確かこう言った『今夜、盗賊団のアジトに忍び込むことになったから』と、今夜ってことは今日の夜ってことよね。
 いまの時刻は二時ちょっと過ぎってことはあと四時間ほどで日が落ちて夜になる。
 アジトを襲撃するまでまだ四時間ある、逆を言えばあと四時間しかない。

 えっと、えっと何を用意すればいいんだろ、とりあえず制服に着替えておくべきか、いやでもそれだと王国騎士だとバレちゃうし……あれ、あたしのギフトって今日なんだっけ、というかアジトを見つけたその日にいきなり襲撃しに行って大丈夫なの……なんか準備とかあるんじゃ……。
 情報を整理しているはずがいつの間にか、ひとりパニックに陥っていた。
 
 その結果、あたしは急激な眠気に襲われる。
 普段あんまり使っていない脳を働かせ過ぎたようで限界がきたのかもしれない。
 そんな夢の世界への誘惑に、もちろんあたしが勝てるわけもなく……。

「まだ時間あるし……ちょっとだけ寝よう。おやすみなさい」

 次に目を覚ました時に見えたものはあたしを冷たいまなざしで見下ろす三人の姿だった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。

玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!? 成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに! 故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。 この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。 持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。 主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。 期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。 その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。 仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!? 美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。 この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。

アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。 両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。 両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。 テッドには、妹が3人いる。 両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。 このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。 そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。 その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。 両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。 両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…   両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが… 母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。 今日も依頼をこなして、家に帰るんだ! この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。 お楽しみくださいね! HOTランキング20位になりました。 皆さん、有り難う御座います。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。

大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった! でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、 他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう! 主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!? はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!? いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。 色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。 *** 作品について *** この作品は、真面目なチート物ではありません。 コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております 重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、 この作品をスルーして下さい。 *カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

老女召喚〜聖女はまさかの80歳?!〜城を追い出されちゃったけど、何か若返ってるし、元気に異世界で生き抜きます!〜

二階堂吉乃
ファンタジー
 瘴気に脅かされる王国があった。それを祓うことが出来るのは異世界人の乙女だけ。王国の幹部は伝説の『聖女召喚』の儀を行う。だが現れたのは1人の老婆だった。「召喚は失敗だ!」聖女を娶るつもりだった王子は激怒した。そこら辺の平民だと思われた老女は金貨1枚を与えられると、城から追い出されてしまう。実はこの老婆こそが召喚された女性だった。  白石きよ子・80歳。寝ていた布団の中から異世界に連れてこられてしまった。始めは「ドッキリじゃないかしら」と疑っていた。頼れる知り合いも家族もいない。持病の関節痛と高血圧の薬もない。しかし生来の逞しさで異世界で生き抜いていく。  後日、召喚が成功していたと分かる。王や重臣たちは慌てて老女の行方を探し始めるが、一向に見つからない。それもそのはず、きよ子はどんどん若返っていた。行方不明の老聖女を探す副団長は、黒髪黒目の不思議な美女と出会うが…。  人の名前が何故か映画スターの名になっちゃう天然系若返り聖女の冒険。全14話+間話8話。

処理中です...