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過去から未来へその4
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彼女が命をとして辿ったそのルートこそが、リアムが今まで旅をしてきたルート。彼女と同じその道筋を通り数多くの出会いをして、人情を学ばせるのが最も効率がよかった。
そして、最後にイデアは保管していた手紙をリアムに手渡すと、背後のメンテナンスケースで暫しの休息、数百年ぶりにスリープ状態に入った。
それが事の顛末であり、リアムの旅の終焉である。
リアムの目にはうっすらと涙が溜まっていた。
あの時、イデアが眠る機械の前で泣き崩れたことを思い出してしまい、感情が揺さぶられたのだろう。今までならそんなことなかったはず、お母さんの計画はまんまと成功したというわけだ。なら、その成功をお母さんに直接見てもらいたかった、そして褒めてもらいたかった。叶わぬ願いだとしても、願わずにはいられなかった。
「はぁ~、リアムはまだお母さんのことを完全には受け入れられへんみたいや。でも、大丈夫やから。リアムはお母さんの娘やからさ! だから、大丈夫! 心配せんでもええよ、お母さん――」
リアムはそこに眠るお母さんに思いのたけを伝え、家に戻ろうとした時だった。呼び止める声が聞こえたリアムは、幻聴かと疑いつつも立ち上がり周囲を見回した。すると、横坑へ延びる舗道の上を道路灯に照らされながら歩く二つの人影が見えた。
黄昏時、数百メートル先にいるその姿は五年という月日が経ったことで、身体や容姿は異なり大人らしく成長していたが、紛れもなく彼らだった。遠目からでもすぐに分かる、忘れたくても忘れることなどできない、レイとライの兄妹がそこにいた。
禁足地と呼ばれる山脈にある盆地内の廃村で、彼らがいることなどありえない。今度は幻覚じゃないかと目をこすったり細めたりと、注意深く観察してみたが、どうやら幻覚ではないらしい。なぜなら、こっちに向かってブンブンと激しく手を振り、自分の名前を叫びながら近づいてきていたからだ。
禁足地など気にせずにドカドカと足を踏み入れる彼らを視認したことで、リアムは万年桜の下で家に帰ってきて以来、久方ぶりの思考停止に陥った。
そんなリアムのことなど気にする様子もなく、ライは五年ぶりにリアムを堪能するために全身全霊で抱きしめた。その後ろではレイが暴走する妹の姿を傍観し乾いた笑いを浮かべていた。
リアムが思考を取り戻した時には、道路灯が消灯していたこともあって、彼らが通ってきた舗道は暗闇と同化していた。ただ月明かりとその光りを浴びた万年桜のおかげで、二人を余裕で認識できるぐらいの明かりは確保できていた。人間の成長は凄まじく、二人はリアムの身長をとっくに越えていた。レイはより凛々しい男性となり、ライはより愛らしい女性になっていた。
リアムはライによる愛情拘束を受けつつ冷静沈着にこの様子を眺めるレイに問いかけた。ほんの数秒前まで、リアムの顔面は双方の身長差によって、隙間なくライの胸部に埋もれていた。もし彼女が呼吸を必要とする生物だったならば、この時点で天に召されていたことだろう。また話す時は首を後ろにずらすことで、レイが少しでも聞き取りやすくしていた。そこしか現状自由に動かせる箇所がなかった。
そして、最後にイデアは保管していた手紙をリアムに手渡すと、背後のメンテナンスケースで暫しの休息、数百年ぶりにスリープ状態に入った。
それが事の顛末であり、リアムの旅の終焉である。
リアムの目にはうっすらと涙が溜まっていた。
あの時、イデアが眠る機械の前で泣き崩れたことを思い出してしまい、感情が揺さぶられたのだろう。今までならそんなことなかったはず、お母さんの計画はまんまと成功したというわけだ。なら、その成功をお母さんに直接見てもらいたかった、そして褒めてもらいたかった。叶わぬ願いだとしても、願わずにはいられなかった。
「はぁ~、リアムはまだお母さんのことを完全には受け入れられへんみたいや。でも、大丈夫やから。リアムはお母さんの娘やからさ! だから、大丈夫! 心配せんでもええよ、お母さん――」
リアムはそこに眠るお母さんに思いのたけを伝え、家に戻ろうとした時だった。呼び止める声が聞こえたリアムは、幻聴かと疑いつつも立ち上がり周囲を見回した。すると、横坑へ延びる舗道の上を道路灯に照らされながら歩く二つの人影が見えた。
黄昏時、数百メートル先にいるその姿は五年という月日が経ったことで、身体や容姿は異なり大人らしく成長していたが、紛れもなく彼らだった。遠目からでもすぐに分かる、忘れたくても忘れることなどできない、レイとライの兄妹がそこにいた。
禁足地と呼ばれる山脈にある盆地内の廃村で、彼らがいることなどありえない。今度は幻覚じゃないかと目をこすったり細めたりと、注意深く観察してみたが、どうやら幻覚ではないらしい。なぜなら、こっちに向かってブンブンと激しく手を振り、自分の名前を叫びながら近づいてきていたからだ。
禁足地など気にせずにドカドカと足を踏み入れる彼らを視認したことで、リアムは万年桜の下で家に帰ってきて以来、久方ぶりの思考停止に陥った。
そんなリアムのことなど気にする様子もなく、ライは五年ぶりにリアムを堪能するために全身全霊で抱きしめた。その後ろではレイが暴走する妹の姿を傍観し乾いた笑いを浮かべていた。
リアムが思考を取り戻した時には、道路灯が消灯していたこともあって、彼らが通ってきた舗道は暗闇と同化していた。ただ月明かりとその光りを浴びた万年桜のおかげで、二人を余裕で認識できるぐらいの明かりは確保できていた。人間の成長は凄まじく、二人はリアムの身長をとっくに越えていた。レイはより凛々しい男性となり、ライはより愛らしい女性になっていた。
リアムはライによる愛情拘束を受けつつ冷静沈着にこの様子を眺めるレイに問いかけた。ほんの数秒前まで、リアムの顔面は双方の身長差によって、隙間なくライの胸部に埋もれていた。もし彼女が呼吸を必要とする生物だったならば、この時点で天に召されていたことだろう。また話す時は首を後ろにずらすことで、レイが少しでも聞き取りやすくしていた。そこしか現状自由に動かせる箇所がなかった。
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