上 下
79 / 84

驚愕の真実その3

しおりを挟む
 リアムがその謎機械の一挙一動を興味深く眺めていると、いつの間にか背後まで接近していたイデアから声をかけられた。

「そちらの機械のご説明はまた後ほどいたしますので、まずはそれよりもリアム様にお見せしたいものがございますので、私について来ていただけますでしょうか?」
「――分かった。ついていく」
「では、どうぞこちらへ」

 リアムは先導するイデアのあとについて行った。イデアに案内された部屋の名札には『メンテナンスルーム』と書かれていた。

「ここです、さぁリアム様お入りくださいませ」

 イデアはそう言うと、ドア横に設置された認証機にIDカードをかざしドアを開けた。

 部屋に入ったリアムはその異様な内装に驚きを隠せなかった。いつもと違うイデアや場の雰囲気に流されてしまったのか、リアムとしてもこれほど動揺が続くとは思いもしなかった。またこの広大な保管庫には、職員の姿が見当たらなかった。これほどまでに大量に貯蔵していたとしても、それを消費する人間がいない。そんな空虚な光景を目の当たりしたことで、その動揺を助長させたのかもしれない。良くいえばそれだけより人らしくなった、悪くいえばそれだけ心が弱くなった。

 生活感のない家具の一つもない純白の部屋。その部屋の半分を埋めつくすように巨大な機械が鎮座していた。何かのバロメーターが表示されたディスプレイに、たくさんのボタンとレバーの付いた操作パネル、機械の中心部には人間が一人だけ入れそうな十字に模られた無人の透明なケースが組み込まれていた。機械自体は初めて見るものばかりだったが、あの透明なケースだけはどこか見覚えがあるような気がした。
 
 リアムがそのケースについて目を閉じて考え込んでいたこともあって、イデアが目の前まで移動していることに気づかなかった。結局何も思い出せず、目を開けると静観していたイデアが声をかけてきた。

「もう話しかけてもよろしいでしょうか?」
「――問題ない」
「では……今からお話いたしますが、その前に……これを外しますね。リアム様にも私にとっても、きっとその方が良いかと存じます」

 ガスマスクに内蔵された機能により抑揚もない中性的な声色に変化する。なのに、この時のイデアの声はその機能が発動しているにもかかわらず、いとおしむような優しい声だった。なぜそんな風に聞こえたのか、そう感じたのか、その答え合わせはイデアがガスマスクを外したことで解決した。だが、それ以上にリアムは驚倒してしまった。

 その顔を一度たりとも忘れたことなんてない――イデアの顔はお母さんそっくりだった。ただ似ているだけではなく、髪の色も長さも肌も目も全てが、当時のまま変わらぬ姿をしていた。

「あっああああ、えっ、お母さん――と同じ顔?」
「そうですね、まずはそこからお話いたしましょうか。どうして私が……リアム様のお母様と同じ容姿をしているのかということを……」

 それからイデアはお母さんと同じ声色で、今までの経緯について……そしてこれからについて語り始めた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

魔術師のロボット~最凶と呼ばれたパイロットによる世界変革記~

MS
SF
これは戦争に巻き込まれた少年が世界を変えるために戦う物語。 戦歴2234年、人型ロボット兵器キャスター、それは魔術師と呼ばれる一部の人しか扱えない兵器であった。 そのパイロットになるためアルバート・デグレアは軍の幼年学校に通っていて卒業まであと少しの時だった。 親友が起こしたキャスター強奪事件。 そして大きく変化する時代に巻き込まれていく。 それぞれの正義がぶつかり合うなかで徐々にその才能を開花させていき次々と大きな戦果を挙げていくが……。 新たな歴史が始まる。 ************************************************ 小説家になろう様、カクヨム様でも連載しております。 投降は当分の間毎日22時ごろを予定しています。

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

入れ替われるイメクラ

廣瀬純一
SF
男女の体が入れ替わるイメクラの話

強奪系触手おじさん

兎屋亀吉
ファンタジー
【肉棒術】という卑猥なスキルを授かってしまったゆえに皆の笑い者として40年間生きてきたおじさんは、ある日ダンジョンで気持ち悪い触手を拾う。後に【神の触腕】という寄生型の神器だと判明するそれは、その気持ち悪い見た目に反してとんでもない力を秘めていた。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

❤️レムールアーナ人の遺産❤️

apusuking
SF
 アランは、神代記の伝説〈宇宙が誕生してから40億年後に始めての知性体が誕生し、更に20億年の時を経てから知性体は宇宙に進出を始める。  神々の申し子で有るレムルアーナ人は、数億年を掛けて宇宙の至る所にレムルアーナ人の文明を築き上げて宇宙は人々で溢れ平和で共存共栄で発展を続ける。  時を経てレムルアーナ文明は予知せぬ謎の種族の襲来を受け、宇宙を二分する戦いとなる。戦争終焉頃にはレムルアーナ人は誕生星系を除いて衰退し滅亡するが、レムルアーナ人は後世の為に科学的資産と数々の奇跡的な遺産を残した。  レムールアーナ人に代わり3大種族が台頭して、やがてレムルアーナ人は伝説となり宇宙に蔓延する。  宇宙の彼方の隠蔽された星系に、レムルアーナ文明の輝かしい遺産が眠る。其の遺産を手にした者は宇宙を征するで有ろ。但し、辿り付くには3つの鍵と7つの試練を乗り越えねばならない。  3つの鍵は心の中に眠り、開けるには心の目を開いて真実を見よ。心の鍵は3つ有り、3つの鍵を開けて真実の鍵が開く〉を知り、其の神代記時代のレムールアーナ人が残した遺産を残した場所が暗示されていると悟るが、闇の勢力の陰謀に巻き込まれゴーストリアンが破壊さ

処理中です...