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驚愕の真実その1
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内装はアジア支部と似ていたがこっちのほうが断然広くて豪華だった。正面には背後に巨大なディスプレイを吊り下げた受付窓口があり、その奥にはセキュリティーゲートが横一列に十台設置されていた。ゲートを通過した先には定員十名のエレベーターが四台あり、そのどれもがドアを堅く閉ざしていた。受付窓口に向かう途中にはゲストルームが左右に二室ずつ用意され、ドア横には飲み物から食べ物まで揃った自動販売機が一台ずつ置かれていた。照明はアジア支部とは異なり、はじめっからつきっぱなしだった。
IDカード以外にももう一つ気になることがあった。それはあの土地には一個しかマンホールはなかったにもかかわらず、ゲート奥にあるエレベーター四台以外にも、セキュリティーゲート同様に横並びにエレベーターが十台設置されていた。それはつまりマンホールが九個まだどこかにあることを意味すると同時に、信じ難いことにこのエレベーターは、ただ単に垂直で昇り降りだけをしていないことも意味していた。
リアムが何度も目をこすり、幻覚でも見ているのではないかと疑うほど驚愕した出来事がさらにあった。それは受付カウンター越しに受付嬢とは、似ても似つかないガスマスクを被った人物がいたからだ。あんな物騒な容姿をした人物は彼女の知るところ一人しか見当がつかなかった。
リアムはそんな神出鬼没な馴染みの行商人に向かって「イデア?」と声をかけた。すると、イデアはいつもよりも畏まった態度で応対し始めた。
「リアム様、ようこそおいでくださいました。パンフレットがございますので、まずこちらをどうぞ」
イデアはそう言うと、受付カウンターの下収納から『極東支部ガイドブック』と表紙に大きく書かれた冊子を取り出し机上に置いた。その際に表紙がリアム側に向くように百八十度反転させていた。
リアムは見かけに相反して手慣れた仕草をするイデアを目の当たりにしたことで、理解できずに思考停止しかけたがあれだけ戦闘できるんなら、これぐらい余裕かと思いつつ差し出された冊子に目を通した。またこれには自分がいま置かれている状況を整理する時間を作るという目的もあった。もちろんこれは機械仕掛けのように動く彼女を見かねた胸ポッケの居住者によるものである。
極東支部ガイドブックは全十頁で構成された冊子で、その中身の大半はエレベーターで聞いたアナウンスの内容と重複していた。それを絵や文章で子供にも分かりやすいように言葉を砕いて載せていた。文章は特に気にはならなかったが、絵に関してはなんて伝えればいいのか判断に困る、何とも独特なセンスで描かれていた。文章を読んでそこからどういう絵が書かれているのか推理せよという謎解きにさえ思えた。
その謎解きの効果もあって、リアムは自分なりにではあるが現状を受け入れることができた。
リアムは冊子を閉じて無言のままイデアに視線を向けると、それを合図にガスマスク受付嬢は話し始めた。
IDカード以外にももう一つ気になることがあった。それはあの土地には一個しかマンホールはなかったにもかかわらず、ゲート奥にあるエレベーター四台以外にも、セキュリティーゲート同様に横並びにエレベーターが十台設置されていた。それはつまりマンホールが九個まだどこかにあることを意味すると同時に、信じ難いことにこのエレベーターは、ただ単に垂直で昇り降りだけをしていないことも意味していた。
リアムが何度も目をこすり、幻覚でも見ているのではないかと疑うほど驚愕した出来事がさらにあった。それは受付カウンター越しに受付嬢とは、似ても似つかないガスマスクを被った人物がいたからだ。あんな物騒な容姿をした人物は彼女の知るところ一人しか見当がつかなかった。
リアムはそんな神出鬼没な馴染みの行商人に向かって「イデア?」と声をかけた。すると、イデアはいつもよりも畏まった態度で応対し始めた。
「リアム様、ようこそおいでくださいました。パンフレットがございますので、まずこちらをどうぞ」
イデアはそう言うと、受付カウンターの下収納から『極東支部ガイドブック』と表紙に大きく書かれた冊子を取り出し机上に置いた。その際に表紙がリアム側に向くように百八十度反転させていた。
リアムは見かけに相反して手慣れた仕草をするイデアを目の当たりにしたことで、理解できずに思考停止しかけたがあれだけ戦闘できるんなら、これぐらい余裕かと思いつつ差し出された冊子に目を通した。またこれには自分がいま置かれている状況を整理する時間を作るという目的もあった。もちろんこれは機械仕掛けのように動く彼女を見かねた胸ポッケの居住者によるものである。
極東支部ガイドブックは全十頁で構成された冊子で、その中身の大半はエレベーターで聞いたアナウンスの内容と重複していた。それを絵や文章で子供にも分かりやすいように言葉を砕いて載せていた。文章は特に気にはならなかったが、絵に関してはなんて伝えればいいのか判断に困る、何とも独特なセンスで描かれていた。文章を読んでそこからどういう絵が書かれているのか推理せよという謎解きにさえ思えた。
その謎解きの効果もあって、リアムは自分なりにではあるが現状を受け入れることができた。
リアムは冊子を閉じて無言のままイデアに視線を向けると、それを合図にガスマスク受付嬢は話し始めた。
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