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最果ての目的地その3

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 リアムがマンホールから離れると、今度はピーピーという機械音に切り替わり、マンホールが蓋ごとせり上がってきた。最終的にマンホールだったものは高さ二メートル、直径一メートルのエレベーターとなって、リアムの前に姿を現した。来客を迎えるべく音もなくドアが開いていった。ドアの隙間からは明かりが誘うように零れていた。

 リアムはそのどこへと続くか分からないエレベーターに足早に乗り込んだ。ドアが閉まり切ると、エレベーターは五秒ほど降りたところで一度停止したが、次からは止まることなく延々と降っていった。

 エレベーター内は非常に簡素であり、普通はついてあるはずのものが何もついていなかった。行先階ボタンにインジケーター、それに非常ボタンまでも取り付けられていなかった。ドアには窓がなく外も見れないため、閉所恐怖症の人間がもしこのエレベーターに搭乗したのなら、耐えきれずに発狂すること間違いなし。例えドアに窓があったとしても、そこから見える景色は真っ暗な地下空洞のみで、あまり心境の変化はないかもしれない。

 エレベーター内に流れるアナウンスによって、この場所についてある程度知ることができた。アナウンス自体はドアが閉まると自動で流される仕様であり、またエレベーターが地下施設に到着してドアが開く十秒前に、ピシャリと終了するように調整されていた。ただ尺が足りなかったのか内容の一部には、全く関係ないような世間話が盛り込まれていた。

 このエレベーターの行先は魔宝石兵器開発局、極東支部。セキュリティーもそうだが、隠し方といいウィルと出会ったあのアジア支部よりも、明らかに上位の施設に思えた。ここではアジア支部のように兵器開発や実験よりも、魔宝石の研究開発に重きを置いていたらしい。そのため兵器については他支部から寄せられた資料をもとに、魔宝石の取り付け位置を話し合うだけとか、休憩がてらに片手間でやる程度だったようだ。

 またこの極東支部は緊急時にはシェルターとしての役割も兼ねているようで、ここの職員が全員毎日欠かさずに必要なカロリーを摂取したとしても、百年は余裕でもつほどの膨大な食糧に、何でも真水に変える半永久的にリサイクル可能な循環ろ過装置、ウイルスや不純物を完全除去するメンテナンス不要の空気清浄機、魔宝石を生み出し続ける魔宝石を用いた永久機関な製造機。それ以外にも娯楽なども用意されているらしいが、そこら辺は省略されていた。
 
 この説明を受けた時のリアムの率直な感想は、ここで一生暮らすことになったとしても、困ることはなさそうだなという実にシンプルなものだった。あと、世間話はある職員が無断外出してまだ帰ってこないから誰か行先知らないかという、それ本当にアナウンスに入れていいのかと思える内容だった。

「リアム研究員、まもなくドアが開きます。社員証の取り忘れがないようご注意ください」

 そのアナウンスが流れ終わり、ドアが開き始めたことで極東支部のエントランスが見えてきた。

 リアムはドアが開き切るとすぐに外に出て、アジア支部との違いを知るために周囲を見回して、記憶と照らし合わせた。思い出せない部分は手帳を見ながら確認していった。またマンホールの蓋にはめ込んだはずのIDカードは、どういう仕掛けなのか分からないが気づいた時にはもうそこにあった。エレベーターから外に出る前に、回収しろと言わんばかりに眼前でプカプカと浮いていた。
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