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はじめての坑道探索その2

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 坑道内は半地下集落といい勝負ができるほど荒廃していて、ハウスダスト満載な環境となっていた。歩くたびにホコリが舞い、足音が残る灰色の絨毯を踏みしめながら先を進んでいった。
 鉱山跡地は機械兵器が移動できるように坑道は通常よりも広くとられていた。狭い場所でも横幅四メートル、高さは六メートル以上あり、広い場所では横幅高さともに四十メートルもある空間が広がっていた。レーン上には運搬用のトロッコが何台も鉱石を載せたまま放置され、道中にはピッケルやスコップなどの工具があちこちに散乱し、その奥ではショベルカーが掘削中のまま打ち捨てられていた。

 特に何も起こらないなか迷路のようにうねった坑道を歩いていると、二十メートルほど先の曲がり角に不審な影が映っているのが見えた。この位置からでもハッキリと聞こえる、ガシャンガシャンという駆動音と、キュイーンというレンズを絞る音。その音の正体こそが、ウィルたちが危険視してこのルートを使用しない理由である。
 作業員を監視または警護するために配置された機械兵器。かつては守るべき作業員として認識していたが、今では罰するべき逃亡者として認識するようになっていた。鉱山跡地に入るためには作業員に偽装しなければならない。それはつまり必然的に彼らの懲罰対象になるということ。

 生半可な火器では歯が立たない機械兵器が数十体と跋扈ばっこする。もしかすると、見つからずに通り抜けられるかもしれない。だが、一度でも発見されてしまうと全てが終わる。万が一逃げ切れたとしても、鉱山跡地から脱出することはできないだろう。彼らは警告射撃と称して大量に弾丸をばら撒く、脆くなった坑道など一切気にもせずに容赦なく撃ち続ける。その結果、この場所は完全に死の山脈と同化することになり、誰も通ることができなくなる。
 ここを通るのが人間であればという話であり、石ころ一個で銀の木を撃破した実績のあるリアムにとっては、やはり児戯でしかない。ただ前回に比べて数が多く、さらに一射でも発砲されると即ゲームオーバー。そのゲーム性により大幅に難易度は上がっているのだが、当の本人はトロッコから回収した選りすぐりの鉱石を両手いっぱいに抱えて、どれを投げようか物定めをしていた。

「チュチュー?」
「投げる石を決めるのもいいけど、その状態でどうやって投げるんやって? それはこう――なるほど、ちょっと持ちすぎか」

 リアムはそう言うと、両手いっぱいの鉱石から目視で三つ選ぶと、残りは全部その場で落とした。その音を聞きつけたのか曲がり角から見えていた影が方向転換し、こちらに向かってくるのが見えた。

「この音やと気づかれてアウト。逆に言えば、これよりも小さい音やったら、そんなに気にせんでもよさそう」
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