63 / 84
はじめての救出その1
しおりを挟む
地下四階は他の地下階層の四分の一ほどの大きさに、縮小したかのような空間が広がっていた。リアムが落ちた場所は、ちょうど地下四階の中心に位置していた。ワンルームで高さ三メートル、横幅奥行ともに二十五メートルという空間は、工場としては狭いかもしれないが、ここは他と違って部屋が分かれていなかったり、物がほとんど置かれていないこともあって、他の階層に比べて広く感じた。
物があるといってもリアムと一緒に落ちてきた瓦礫と、壁に横並びで取り付けられた配電盤、分電盤、制御盤の三点セットがあるだけだった。その三点セットの前では、リュックサックを背負った人間が項垂れ体育座りをしていた。また人間の足元には棒状の金属が転がっていた、どうやらこれを叩いてあの音を出していたようだ。
リアムはこの人間が、一体どうやって入り込めたのか不思議でならなかった。この地下四階は四方八方壁で塞がれている上に、地下三階へとつながる移動手段が存在しない。リアムが天井を破壊するまで、ここは完全な密室空間だったからだ。
リアムはその疑問を解決するため人間に近づき「質問がある」と声をかけたが、返事も顔を上げることもなく無反応そのものだった。呼吸もしているし、体も小刻みに震わせているから生きてはいるはずなのに、なぜこの人間は反応しないのだろうかと、また新たな疑問が生まれようとしていた時だった。
目の前でうずくまる人間が小声で「……ごめんなさい」となぜか謝罪してきた。今まで出会ったことがないタイプの人間と接触したことで、初期リアムが再誕してしまった。
「――謝罪、意味不明?」
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい」
「――謝罪不要、侵入目的発言」
「はい、ごめんなさい。言います、言いますからどうか殺さないで……」
「――目的発言」
「はい、それはですね……えっと、あの~、何と言いますか」
「――早急回答」
リアムのさっさと質問に答えろという圧を感じ取ったのか、彼はすぐさまここに訪れたわけを吐露し始めた。
リアムとしてはただ地下四階の侵入方法だけを教えてくれれば、それだけでよかったのだが思った以上に圧が効いたらしく、あれこれと聞いていないことまで語りだした。
この人間の男の名前はウィルというらしく発掘者を生業にしているらしい。発掘者とは世界中を駆け巡って、機械兵器のような過去の遺産を探し求める、ロマンを生きがいにしている人間たちのことを指す。で、彼はまだ発掘者一年目という新人で、しかも今回がはじめてのソロ探索だった。またリアムとは反対側、南方面からではなくて北方面から来たようだ。もし、彼がリアムと同じ南方面から向かっていたのなら、もれなく亡骸樹林で行方不明になっていたことだろう。
物があるといってもリアムと一緒に落ちてきた瓦礫と、壁に横並びで取り付けられた配電盤、分電盤、制御盤の三点セットがあるだけだった。その三点セットの前では、リュックサックを背負った人間が項垂れ体育座りをしていた。また人間の足元には棒状の金属が転がっていた、どうやらこれを叩いてあの音を出していたようだ。
リアムはこの人間が、一体どうやって入り込めたのか不思議でならなかった。この地下四階は四方八方壁で塞がれている上に、地下三階へとつながる移動手段が存在しない。リアムが天井を破壊するまで、ここは完全な密室空間だったからだ。
リアムはその疑問を解決するため人間に近づき「質問がある」と声をかけたが、返事も顔を上げることもなく無反応そのものだった。呼吸もしているし、体も小刻みに震わせているから生きてはいるはずなのに、なぜこの人間は反応しないのだろうかと、また新たな疑問が生まれようとしていた時だった。
目の前でうずくまる人間が小声で「……ごめんなさい」となぜか謝罪してきた。今まで出会ったことがないタイプの人間と接触したことで、初期リアムが再誕してしまった。
「――謝罪、意味不明?」
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい」
「――謝罪不要、侵入目的発言」
「はい、ごめんなさい。言います、言いますからどうか殺さないで……」
「――目的発言」
「はい、それはですね……えっと、あの~、何と言いますか」
「――早急回答」
リアムのさっさと質問に答えろという圧を感じ取ったのか、彼はすぐさまここに訪れたわけを吐露し始めた。
リアムとしてはただ地下四階の侵入方法だけを教えてくれれば、それだけでよかったのだが思った以上に圧が効いたらしく、あれこれと聞いていないことまで語りだした。
この人間の男の名前はウィルというらしく発掘者を生業にしているらしい。発掘者とは世界中を駆け巡って、機械兵器のような過去の遺産を探し求める、ロマンを生きがいにしている人間たちのことを指す。で、彼はまだ発掘者一年目という新人で、しかも今回がはじめてのソロ探索だった。またリアムとは反対側、南方面からではなくて北方面から来たようだ。もし、彼がリアムと同じ南方面から向かっていたのなら、もれなく亡骸樹林で行方不明になっていたことだろう。
10
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
もうダメだ。俺の人生詰んでいる。
静馬⭐︎GTR
SF
『私小説』と、『機動兵士』的小説がゴッチャになっている小説です。百話完結だけは、約束できます。
(アメブロ「なつかしゲームブック館」にて投稿されております)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる