関西訛りな人工生命体の少女がお母さんを探して旅するお話。

虎柄トラ

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はじめての寵愛その3

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「グラファス様に少々お尋ねしたいことがございまして、こちらに伺わせていただきました」
「さっさと用件を言え」
「承知しました。では、お尋ねいたします。リアムという白衣を着た女の子がどこに向かったか、ご存じありませんか?」
「白衣……だと」

 グラファスは反射的に声に出すと、すぐさま口をつぐんだ。このガスマスクは『見ていないか?』ではなく『どこに向かったか』と訊いた。事前にあの少女がこの周辺一帯にはいないことを知っていないと、そんな言い方をしてこないはずだ。少女に詳しい人物が現れたこと、これが天命、神のお告げに違いない。このガスマスクを引き込めれば、少女の情報も入手しやすくなり、発見した際にも確保がより容易くなる。絶対に起こり得ないとは思うが、プロポーズを断られた場合の戦力として使うのも面白そうだ。
 二人の会話が中断したままエレベーターは無事一階に到着した。エレベーターに乗った時のように、ガスマスクはボタンを押して外に出るように促した。だが、外の景色は彼の知っているものではなかった。どおりで部下の誰一人として報告しにこないわけだ、その時になってようやく彼は自分の置かれた状況を理解した。隣にいる人物が見た目以上に狂気じみた存在、絶対に歯向かってはいけない相手。彼はただ従うほかなかった、それ以外の選択肢を選べば即終了。街路に寝そべる部下と同じ運命をたどってしまうと確信してしまった。

 グラファスはエントランスを抜けマンションを出ると、窓越しから見えていた部下に歩み寄った。近づいて分かったが、部下は死んでおらずまだ生きていた。両足のアキレス腱は鋭利な刃物で切り裂かれ、両手指の関節は全て逆方向を向いていた。舌も切り取られていたが、窒息死しないように手当されていた。彼はこのガスマスクがここまでしておいてあえて殺さず、生かしておいた理由についても見当がついていた。同業者がよくやる常套手段というやつだ、同じ目に遭いたくなければさっさと白状しろというあれだ。

「あのグラファス様、それで先ほどのお話の続きなのですが?」
「ああ……どこに向かったのかまでは私は知らない」
「さようでございますか。グラファス様の表情や声から判断しましても、嘘はついていないようですね。では、質問を変えさせていただきます。あの子がどの方角から来たかとか覚えておりませんでしょうか?」
「部下からの報告では、確か南方面から徒歩で来たとか言っていた気がするが……」
「ありがとうございます、大変助かりました。ではこれもう必要ありませんね」

 グラファスはその心にもない感謝の言葉と同時に部下を永眠させる銃声を聞いた。目にも見えぬ速さで部下は脳天を撃ち抜かれた。そしてガスマスクに視線を向けると、その手には見覚えのあるリボルバーが握られていた。
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