37 / 84
はじめての虚言その3
しおりを挟む
それから数秒後、数人の嘲笑う声がドア前でピタリと止まると同時にドアが開錠した。人間は全部で四人いた。そのなかにリアムを部屋まで案内した人間たちの姿はなかった。四人のうち三人は部屋に入ってきたが、残り一人は彼女を一瞥しただけで部屋に入ることはせず、外で静かに待っていた。三人のうちの一人が目配せすると、両脇にいた人間たちは後ろに下がっていった。
リアムは言葉を発することなく、こちらに見下ろし近づいてくる人間に視線を向けた。服装は白いジャケットに白のパンツ、リアムが羽織る白衣よりも若干暗めの白色。ジャケット、パンツどちらも汚れ一つなく折り目もあり、普段から綺麗にしているのが見て取れた。汚れが目立つため白系の服は好まれないとノリスから聞いていたこともあって、はじめて自分と同じ色合いの服を着ていたことに、少しだけ彼女は親近感を覚えた。
彼女の白衣は洗濯不要、なぜならあのお母さんの手が加わっている、見た目以上に頑丈で刃物や銃弾は通さず、シミに汚れ、匂いなどが付着したとしても数日もあれば、何もしなくても自然と消え去り新品のように元通りになる。
ノリスと比べてこの人間は背丈もあり体格もガッチリとしている印象を受けた。胸部はノリスと大差はないが、たぶん今回こそ男で間違いなさそうだ。その人間は穏やかな声で話しかけてきた。
「やぁはじめましてお嬢さん。僕はグラファス、ここの代表を務めています。部下から話は聞いたけど、君はお母様とはぐれてしまったそうだね。本当にいいタイミングで訪ねてくれたよ、なんと僕は君のお母様と知り合いなんだ。それでね、彼女が今どこにいるのかも僕は知っているから、君さえよければいつでも案内するよ?」
「お母さんの友達! お母さんはどこにいるの? リアムを今すぐそこに連れて行って!」
「あぁもちろん連れて行ってあげるよ。案内する前に僕のお仕事を手伝って欲しいんだけど、お願いできるかな?」
「その仕事って何?」
「とっても簡単なお仕事だよ。もう少ししたら、スーツを着た男の人がここに来るから、その人の遊び相手になって欲しいんだ」
「――どんな遊び?」
「そこは別に気にしなくていいよ。その人が君で勝手に遊ぶだけだから、君は何もしなくても大丈夫。それじゃその人を呼んでくるから、君はイスに座ってただただお人形のように待っていてくれると助かる」
リアムは頷き「――了解した」と返答すると、グラファスは目を細め「いい子だ」と言い残し、部下とともに部屋をあとにした。部屋の外にいた部下だけは彼らについて行かず、その場に残っていた。
リアムは言葉を発することなく、こちらに見下ろし近づいてくる人間に視線を向けた。服装は白いジャケットに白のパンツ、リアムが羽織る白衣よりも若干暗めの白色。ジャケット、パンツどちらも汚れ一つなく折り目もあり、普段から綺麗にしているのが見て取れた。汚れが目立つため白系の服は好まれないとノリスから聞いていたこともあって、はじめて自分と同じ色合いの服を着ていたことに、少しだけ彼女は親近感を覚えた。
彼女の白衣は洗濯不要、なぜならあのお母さんの手が加わっている、見た目以上に頑丈で刃物や銃弾は通さず、シミに汚れ、匂いなどが付着したとしても数日もあれば、何もしなくても自然と消え去り新品のように元通りになる。
ノリスと比べてこの人間は背丈もあり体格もガッチリとしている印象を受けた。胸部はノリスと大差はないが、たぶん今回こそ男で間違いなさそうだ。その人間は穏やかな声で話しかけてきた。
「やぁはじめましてお嬢さん。僕はグラファス、ここの代表を務めています。部下から話は聞いたけど、君はお母様とはぐれてしまったそうだね。本当にいいタイミングで訪ねてくれたよ、なんと僕は君のお母様と知り合いなんだ。それでね、彼女が今どこにいるのかも僕は知っているから、君さえよければいつでも案内するよ?」
「お母さんの友達! お母さんはどこにいるの? リアムを今すぐそこに連れて行って!」
「あぁもちろん連れて行ってあげるよ。案内する前に僕のお仕事を手伝って欲しいんだけど、お願いできるかな?」
「その仕事って何?」
「とっても簡単なお仕事だよ。もう少ししたら、スーツを着た男の人がここに来るから、その人の遊び相手になって欲しいんだ」
「――どんな遊び?」
「そこは別に気にしなくていいよ。その人が君で勝手に遊ぶだけだから、君は何もしなくても大丈夫。それじゃその人を呼んでくるから、君はイスに座ってただただお人形のように待っていてくれると助かる」
リアムは頷き「――了解した」と返答すると、グラファスは目を細め「いい子だ」と言い残し、部下とともに部屋をあとにした。部屋の外にいた部下だけは彼らについて行かず、その場に残っていた。
10
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
Condense Nation
鳳
SF
西暦XXXX年、突如としてこの国は天から舞い降りた勢力によって制圧され、
正体不明の蓋世に自衛隊の抵抗も及ばずに封鎖されてしまう。
海外逃亡すら叶わぬ中で資源、優秀な人材を巡り、内戦へ勃発。
軍事行動を中心とした攻防戦が繰り広げられていった。
生存のためならルールも手段も決していとわず。
凌ぎを削って各地方の者達は独自の術をもって命を繋いでゆくが、
決して平坦な道もなくそれぞれの明日を願いゆく。
五感の界隈すら全て内側の央へ。
サイバーとスチームの間を目指して
登場する人物・団体・名称等は架空であり、
実在のものとは関係ありません。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
えっ俺が憧れの劉備玄徳の実の弟!兄上に天下を取らせるため尽力します。
揚惇命
SF
三国志の三英雄の1人劉備玄徳が大好きな高校生の劉義賢が劉備玄徳の墓を訪れるが、くまなく調べると何かの装置が作動し墓の中に落ちる。
辺りを見回すと奥に劉備玄徳愛用の双股剣があったので触れると謎の女性の『玄徳様の運命をお変えください』という言葉で光に包まれ目を覚ますとそこは後漢末期の涿郡涿県楼桑村だった。
目の前にいる兄だと名乗る劉備殿に困惑しながらも義勇兵を結成し、激動の時代を劉備殿の天下のために尽力する物語。
1章 黄巾の乱編 完結
2章 反董卓連合編 完結
3章 群雄割拠編 完結
4章 三国鼎立編 完結
5章 天下統一編 鋭意製作中
※二次創作ではありますが史実に忠実ではなくオリジナル戦記寄りとなってます。
数多くの武将が出るため、誰が話しているかわからなくなることを避けるために「」の前に名前を入れます。
読みにくい場合はコメントなどで教えてもらえるとありがたいです。
オリジナルキャラも登場します。
※小説家になろう様・カクヨム様でも掲載しています。
私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。
※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!
タイトル未定
夜美神威
SF
「タイトル未定」
(この本にはタイトルがありません)
魔法使いが旅するファンタジー
クールな刑事と熱血刑事とのタッグドラマ
三角関係!彼氏彼女な学園恋愛物
天才外科医が怠慢な医療現場に
メスを入れる医療サスペンス
7人の侍がとある村を悪人から守る時代劇
内容は何があるのか
本を開いてみないと分かりません
タイトルはこの本を手に取った読者のあなたがお決め下さい
一人の少女が古本屋で
タイトルが無い本を手に入れる
中身は真っ白だった
そこに自分の理想の未来を描くと現実の物に
全てを手に入れた少女は何か大切な物に気づく
夜美神威SSシリーズの
ナンバリングタイトル第5弾
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる