関西訛りな人工生命体の少女がお母さんを探して旅するお話。

虎柄トラ

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はじめての別れその3

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 ノリスに続いて吊り橋を渡り始めたリアムは、常人であれば恐怖する軋む音を楽しんでいた。それはもうスキップで渡り切るほどであった。
 ノリスは必死の思いで向こう側まで渡った自分と対照的なリアムに呆れつつも、無事に吊り橋を渡れたことに安堵した。

「あんた随分楽しそうに渡ってきたね……こっちは落ちないかと思って、終始ヒヤヒヤしたけどな」
「あの音と揺れる板。最高、往復してもいいほど!」
「おおう、やめてくれ。あの橋が壊れたら、私もあんたも帰れなくなるだろ。まああんたの場合は当分あとの話になるかもしれないけどな」
「――それは困る。お母さんを見つけ出せても一緒に帰宅できないんじゃ意味ない」
「そういうこと。じゃここでリアム、お別れだ。どこに向かえばいいか覚えているよな?」
「ここから真っすぐ北に進んで、集落を目指す」
「うん、正解だ。私も一緒に行きたいけど、集落のみんなをほったらかして旅に出ることはできなくてな……必ず母親と一緒に帰って来いよ、絶対だからな!」
「ノリスは次期長。ノリスにはノリスの役目がある。リアムなら大丈夫、おもちもいるし問題ない」

 リアムはそう返すと九十度向きを変え歩き出した。後方からは「絶対だからな!」と何度も別れを惜しむ声が聞こえた。そんな感動的な別れをしたのも束の間、リアムはふと気になることがあり足を止め振り返った。
 このまま背中を向けたまま別れるものだと思っていたノリスは「えっ、なんで振り向いた?」と率直な意見を言葉にした。
 謎行動に驚きを隠せないノリスを無視してリアムは疑問を投げかけた。

「集落に帰るのに、なんでわざわざ吊り橋を渡ったん?」
「はぁ~? そんなの危ないからに決まってるからだろ。さっき言い忘れていたけど、リアムが帰ってくるまでには、修復しておくから安心しな。で、話はそれだけか?」
「ふ~ん了解した。あー、あと一個だけある。ノリス、今までありがとう。ノリスはいいお父さんになれる、リアムが保証する」
「……ああ、ありがとう? って、なぜにお母さんじゃなくて、お父さん? お前……まさかと思うが、今までずっと私のことを男だと思ってたんじゃないだろうな!」
「――えっ、違うん? だってほら、あれ――あっ、行ってきます!」
「おい、いまチラッとどこを見た! 言ってみろよ! おいおいおい無視して行こうとすんなよ、おい聞いてるのかリアム!」

 リアムは鬼の形相で肩を掴もうと駆け寄ってくるノリスから逃げるように出発したのだった。
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