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はじめての外出その1
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この場所は山岳にある盆地を開拓してできた村。そのためどこか出かけるとなると、毎回山越えをしなければならない。過去に人間が行ってきた、お母さんも買い出しのために同じことを行っていた。その往復が少しでも楽になるようにとお母さんは舗装道路を作った。なので、外へはその舗装道路に従って進めばいいだけなのだが、ここで一つ問題がある。それは白銀の世界になったことで、肝心の舗装道路が見えないということだ。
「とりあえず真っすぐ行けば、外へは出られるよね?」
「……チュウ」
「道路灯があるだろって?」
「チュチュー」
「その棒と棒の間を通れば分かる、ね」
リアムはおもちが言っていた道路灯の間を通り抜けようと近づいた時だった。点々と配置された道路灯が手前から順番に起動し進むべき道を照らし始めた。その明かりに導かれるように歩みを進めていくと、その先には小さな横坑があった。外からでは暗すぎて横坑内部が全然見えなかった。
「――暗黒、さすがに真っ暗すぎじゃない。ねぇおもち、この先にも道路灯みたいなのはあるん?」
おもちに問いかけるがいくら待っても返答がない。待ちくたびれたリアムは問い詰めるため視線を下ろす。
「ねぇおもち聞いてる――あれ、どこいった?」
胸ポケットにいたはずのおまちがいない。ここに来る途中で落としてしまったのかと、踵を返して後方を見渡すがそれらしいものは発見できない。全身真っ白なハムスターが雪に埋もれた。完全に雪と同化する迷彩柄、相当注意深く探したとしても見つけるのは難しい。家を出てからまだ数十分しか経っていないのに、もう話し相手を失い一人ぼっちとなってしまった。
リアムは「――困惑」と呟き首を傾げると、髪の毛を引っ張られる痛みとともに「チュー!」と抗議するハムスターの鳴き声が聞こえた。道路灯に気を取られてた時には、もうすでにポケットから移動していたようだ。
「危ないちゃうわ、こっちも痛かった。で、リアムの頭上で何してたん?」
「……チュ、チュ!」
「あの桜に留守を頼んでいたって? 動けない木に留守番を? 意味がよく分からないけど、おもちがしたのなら、リアムもお願いしとこうかな」
「チュウ!」
「敬意を込めて、確かに、リアムたちよりも長寿。留守番よろしくお願いします」
リアムは満開の桜に向けて会釈したが、肩上で深々と頭を下げるおもちを見て、もう一度深く頭を下げた。
「で、このトンネルにも照明とかはあるん?」
「チュー」
「あ~、なるほど。了解した」
「とりあえず真っすぐ行けば、外へは出られるよね?」
「……チュウ」
「道路灯があるだろって?」
「チュチュー」
「その棒と棒の間を通れば分かる、ね」
リアムはおもちが言っていた道路灯の間を通り抜けようと近づいた時だった。点々と配置された道路灯が手前から順番に起動し進むべき道を照らし始めた。その明かりに導かれるように歩みを進めていくと、その先には小さな横坑があった。外からでは暗すぎて横坑内部が全然見えなかった。
「――暗黒、さすがに真っ暗すぎじゃない。ねぇおもち、この先にも道路灯みたいなのはあるん?」
おもちに問いかけるがいくら待っても返答がない。待ちくたびれたリアムは問い詰めるため視線を下ろす。
「ねぇおもち聞いてる――あれ、どこいった?」
胸ポケットにいたはずのおまちがいない。ここに来る途中で落としてしまったのかと、踵を返して後方を見渡すがそれらしいものは発見できない。全身真っ白なハムスターが雪に埋もれた。完全に雪と同化する迷彩柄、相当注意深く探したとしても見つけるのは難しい。家を出てからまだ数十分しか経っていないのに、もう話し相手を失い一人ぼっちとなってしまった。
リアムは「――困惑」と呟き首を傾げると、髪の毛を引っ張られる痛みとともに「チュー!」と抗議するハムスターの鳴き声が聞こえた。道路灯に気を取られてた時には、もうすでにポケットから移動していたようだ。
「危ないちゃうわ、こっちも痛かった。で、リアムの頭上で何してたん?」
「……チュ、チュ!」
「あの桜に留守を頼んでいたって? 動けない木に留守番を? 意味がよく分からないけど、おもちがしたのなら、リアムもお願いしとこうかな」
「チュウ!」
「敬意を込めて、確かに、リアムたちよりも長寿。留守番よろしくお願いします」
リアムは満開の桜に向けて会釈したが、肩上で深々と頭を下げるおもちを見て、もう一度深く頭を下げた。
「で、このトンネルにも照明とかはあるん?」
「チュー」
「あ~、なるほど。了解した」
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