関西訛りな人工生命体の少女がお母さんを探して旅するお話。

虎柄トラ

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自我の芽生えその3

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「そうそう、あなたにプレゼントがあるんよ……の前にまず服を着替えましょうか。その母シャツもすんごい可愛いけど、このままだとお母さんまた発作起こしそうやから。ということなので、リアム万歳して」

 リアムは創造主に言われた通り両手を上げたところで不動となった。淡い水色のフリルトップス水着の上に、ぶかぶかの白シャツを一枚羽織っているだけで下は完全に無防備。白シャツの裾から覗く太ももに目を奪われながらも、彼女は最後まで自制し着替えを終わらせた。服は今日買った物の中から選んだ、黒いロングワンピース。下着だけはリアム本人に着替えさせた。その後、すぐにプレゼントを渡そうと思っていた彼女だったが、家中に散らばった戦利品を見て、それよりも先にやるべきことがあるのを思い出した。

「その前にこれをどうにかせんと……」

 創造主はポツリと呟くと片付け始めた。とはいっても、彼女がしたことはハンガーラックの下に衣料品が入った袋を置き、食料品が入った袋は作業机の上に置いただけ。

「ふぅ~、かんっぺき!」

 額の汗を拭う仕草をしてやり遂げた感を出してはいるが、彼女が行ったことは前述のとおり、ただ荷物を別の場所に移動させただけである。その様子を棒立ちで最後まで見ていたリアムは「――慰労」と労いの言葉を口にした。その独り言のような娘の囁き声が聞こえた創造主は、口角を上げつつも少しだけ驚きの表情を浮かべた。
 帰宅時に着替えていたことも、さっきの言葉もリアム自ら思考し行動していた。それはつまり人のように成長しているということ、それこそが彼女が待ち望んでいたもの。その成長をさらに促すため用意したものが、今回の誕生日プレゼント。用意するのに少々手こずってしまい渡すのが遅くなってしまったが、今はその話は置いておこう。

「少し遅れちゃったけど、リアムお誕生日おめでとう。お願いがあるんやけど、両手でお椀を作ってくれへん?」
「――是」
「ありがとうな。はい、お母さんからのお誕生日プレゼントです」

 創造主は白衣の腰ポケットから小箱を取り出すと、リアムの小さな手にその小箱をそっと置いた。鴇色のレースリボンで封をされた横幅奥行十センチ高さ五センチほどの小さな白無地箱。クロス結びされたリボンは綺麗な十字にはなっておらず、一部しわくちゃになっていたり中央のリボンの長さも左右違っていた。そのラッピングは一目見ただけで、すぐに素人だと分かってしまうほどお粗末なものだった。そのことは用意した張本人も理解しているらしく、リアムに手渡す際に頬をかいて、気恥ずかしそうにしていた。
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