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第37話 決戦前夜3 そして決戦開始1
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「こういうことはちゃんと伝えておくべきだと思って」
水月は手を洗って、タオルで拭いたあと、一呼吸置いてから口を開いた。
視線は芽衣の目を真っ直ぐに見ている。
「今まで本当にありがとう」
「そんな……はっきり言われるとすこし恥ずかしいな」
芽衣としてはさすがに照れ臭かったようだ。
「私は明日死ぬかも知れないから。だからはっきり伝えておきたくなったの。一人でどうしようもなかった私を誘ってくれて。私が傷ついた時には何も言わずに治療してくれて。陰陽流空手も丁寧に教えてくれて。リンゴのことだって全然出来なかったのに、ずっと諦めずに教えてくれた。最初に丁寧に教えてくれた正拳突きがなかったら、私はまだ『因果拳』を形に出来ていないと思う」
「だから……明日死んでも後悔しないように、先に伝えておきたかったの。芽衣、親切にしてくれて、優しくしてくれて、本当にありがとう」
芽衣はそれを聞いて、目線を下にし、ぽつりぽつりと話し始めた。
「……私は、水月の事が好きだから。私は子どものことから友達が出来ずにずっといじめられて来たの。だから……水月と一緒にいられて、とても嬉しかったんだ。御礼を言うのは私の方だよ。あとね」
「水月は今死ぬかも知れないって言ったよね?」
「うん……言った」
「死なせない。そのために私が参加するんだから。だからさ、明日は皆一緒に勝って、生きて戻って来よう」
芽衣はそう言ってほほ笑んだ。少し涙がにじんだ跡があった。
「そうだね……明日は芽衣とコンビだし、2人で生きて帰ろう。ああ……それと」
「うん?」
「芽衣がちゃんと気持ちを言ってくれているのに、私だけ黙っているのも良くないと思って。私も芽衣の事が好き。大事な友人として……」
水月が言い終わる前に、芽衣は水月の事をハグしていた。
水月はとても温かく感じた。
芽衣は単に異能力として『再生掌』が使えるんじゃない。芽衣の優しさや温かさが、力となって再生掌を引き出しているのだと、水月は直感で思った。
「明日。よろしくね」水月も芽衣をぎゅっと抱きしめた。
場所が変わり、ここは社長室。
藤原社長は、バイク便で送ってもらった解毒薬の中身を確認した。
(直接噛まれた場合はともかくとして、空中にまかれた場合の呼吸なら、これで対応が出来るか)
毒は御堂宗一の能力であり、その対策品としてこの解毒薬を用意したのだった。
(沙羅の事も万が一の手は尽くした)
(あとは全滅してしまった場合、私が帰ってこれない場合のヴィーナス倶楽部の扱いだが……あらかじめ煉獄會に話を通しておいて良かったな)
明日の事を考えて、完了している事にチェックを入れた。
ふと藤原社長は、サブスクの映画チャンネルを付けると、昭和の映画特集をやっていた。その中で藤原社長が好きだった女優の映画がやっている。
全部見ている時間が無いので、印象深いシーンだけ15分観たが、短時間とは言え藤原社長の心を打つ演技だった。
(これも何かの因果と言うべきか……)
と昔の記憶を思い出しながら、藤原社長はため息をつくのだった。
水曜日の18時50分。神聖千年王国本部。
真示が手に入れたパスカードは問題なく使用出来た。
『電子系統樹』で得たデータは、タブレットで操作出来る様にしており、それを千歳が持っている。
エレベーターを使っては、逆に停電をされて閉じ込められると不利になるため、各人、階段を使って、上に上がっていく。
ぞろぞろと行くとそれも不自然なため、先頭は半径30mの生物の感情と欲望を感知できる『共感』を使用出来る千歳。
藤原社長、水月、芽衣、真示。の順で、バラバラに上がっていく。
千歳は『追憶共有』で記憶を共有できる。
この『追憶共有』は千歳が考えたこと、見たものをメンバーにテレパシーの様に共有出来る。
そのため通常の通信が出来ない場合や、乱戦時に敵にばれないで意思疎通を図るためにも応用が出来る。
本部ビルは10階までは普通の事務棟である。千歳の『共感』でも普通の職員が普通に動いているようにしか感じられない。
問題はこの上である。
11階からは音がしている訳ではない。
しかし千歳の共感によると、12階以上は何かしらのジャミングが働いている様で感知が出来ない。11階は空っぽのようである。
13階建のビルの高さを約45mと考え、千歳の共感が半径30m。直径60mなのだから、12階以上に教祖たちがいると考えられる。全員の緊張が増した。
11階に到着した。ここまでくるとバラバラに階段を上っていても意味が無いので、当初考えていたコンビの組み合わせにする。
水月と芽衣。千歳と真示。藤原社長。
(12階へ階段で向かう。足音を立てずに行くぞ)藤原社長が指示を出す。
その時だった。12階の階段上のドアが開き、刀を持った武装した者たちが8人下りて来た。同時に12階から11階へエレベーターが下りてくる。エレベーターが開くと、そこからも8人、刀を持った武装集団が襲い掛かって来た。
挟み撃ちという形になる上、向こうは刀を持っている。
向こうの武装は刀以外には黒い戦闘服を着ており、特に防毒マスクなどは付けていない。
「千歳と真示は階段の敵。芽衣と水月はエレベーターから来た敵を全滅させろ」
「了解!」全員が迅速に動く。
真示はポケットに入っている500円玉を両手の人差し指に引っかけると、同時にコイントスの要領でそれを弾き飛ばす。陰陽流空手『指弾』である。
刀を構えている一番先に切りかかって来た敵の両眼に500円玉が命中した。
さすがに目を痛めてうめき声を上げている相手に、千歳が容赦なく下段蹴りで相手の金的を破壊する。絶叫を上げて悶絶して倒れた。
2番目に斬りかかって来た相手にも、真示が『指弾』を飛ばす。
2番手は学習したらしい。刀を横にして指弾から目を守った。500円玉は落下する。
しかし刀を防御に使用するということは、その間刀が使用できない事を意味する。
その隙を逃す千歳ではない。足払いで転倒させ、喉をかかとで踏みつけ気絶させた。
芽衣は陰陽流空手の歩法で、エレベーター側から来た相手の刀の内側の間合いに入り、掌底で金的を破壊した。たまらず相手は白目をむいて気絶する。
水月は気絶した敵の刀を持ち上げると、そのまま別の敵に向かって投げ飛ばす。
敵は刀でそれを受けるが、既に水月は歩法で接近し、敵の喉に正拳突きを突く。
敵は気管がつぶれて、呼吸できずに気絶する。
おそらくリターナーと言っても、『異能力』を持たないリターナーなのか。
4人が瞬殺されるのを見た残りの12人は明らかに怯んだ。
藤原社長は一人で二人を相手にし、手刀で首を切り落とす。
明らかに敵に動揺が走った。動揺は隙を生む。その隙を逃す水月達ではない。
次々と人形を破壊する様に倒していく。
しかし敵の戦力が残り3人になった時、千歳が叫んだ。
「目で見えない相手が1人います!」と。
真示が前蹴りで残りの3人の内1人を倒した直後。
水月が残りの2人の内の1人、前方の敵を上段前蹴りで顎を砕いた直後。
「水月さん! 後ろ!」千歳が叫ぶ。
水月の背後の影の中から、起き上がる様に刀使いが現れた!
刀使いは水月を狙って横から刀を振るった。
人は誰でも攻撃の後に隙が出来る。水月でさえ避けられない。
「危ない!」
芽衣が水月を突き飛ばした。
その刀は、水月の代わりに芽衣の左足を切断した。鮮血が飛び散った。
水月は手を洗って、タオルで拭いたあと、一呼吸置いてから口を開いた。
視線は芽衣の目を真っ直ぐに見ている。
「今まで本当にありがとう」
「そんな……はっきり言われるとすこし恥ずかしいな」
芽衣としてはさすがに照れ臭かったようだ。
「私は明日死ぬかも知れないから。だからはっきり伝えておきたくなったの。一人でどうしようもなかった私を誘ってくれて。私が傷ついた時には何も言わずに治療してくれて。陰陽流空手も丁寧に教えてくれて。リンゴのことだって全然出来なかったのに、ずっと諦めずに教えてくれた。最初に丁寧に教えてくれた正拳突きがなかったら、私はまだ『因果拳』を形に出来ていないと思う」
「だから……明日死んでも後悔しないように、先に伝えておきたかったの。芽衣、親切にしてくれて、優しくしてくれて、本当にありがとう」
芽衣はそれを聞いて、目線を下にし、ぽつりぽつりと話し始めた。
「……私は、水月の事が好きだから。私は子どものことから友達が出来ずにずっといじめられて来たの。だから……水月と一緒にいられて、とても嬉しかったんだ。御礼を言うのは私の方だよ。あとね」
「水月は今死ぬかも知れないって言ったよね?」
「うん……言った」
「死なせない。そのために私が参加するんだから。だからさ、明日は皆一緒に勝って、生きて戻って来よう」
芽衣はそう言ってほほ笑んだ。少し涙がにじんだ跡があった。
「そうだね……明日は芽衣とコンビだし、2人で生きて帰ろう。ああ……それと」
「うん?」
「芽衣がちゃんと気持ちを言ってくれているのに、私だけ黙っているのも良くないと思って。私も芽衣の事が好き。大事な友人として……」
水月が言い終わる前に、芽衣は水月の事をハグしていた。
水月はとても温かく感じた。
芽衣は単に異能力として『再生掌』が使えるんじゃない。芽衣の優しさや温かさが、力となって再生掌を引き出しているのだと、水月は直感で思った。
「明日。よろしくね」水月も芽衣をぎゅっと抱きしめた。
場所が変わり、ここは社長室。
藤原社長は、バイク便で送ってもらった解毒薬の中身を確認した。
(直接噛まれた場合はともかくとして、空中にまかれた場合の呼吸なら、これで対応が出来るか)
毒は御堂宗一の能力であり、その対策品としてこの解毒薬を用意したのだった。
(沙羅の事も万が一の手は尽くした)
(あとは全滅してしまった場合、私が帰ってこれない場合のヴィーナス倶楽部の扱いだが……あらかじめ煉獄會に話を通しておいて良かったな)
明日の事を考えて、完了している事にチェックを入れた。
ふと藤原社長は、サブスクの映画チャンネルを付けると、昭和の映画特集をやっていた。その中で藤原社長が好きだった女優の映画がやっている。
全部見ている時間が無いので、印象深いシーンだけ15分観たが、短時間とは言え藤原社長の心を打つ演技だった。
(これも何かの因果と言うべきか……)
と昔の記憶を思い出しながら、藤原社長はため息をつくのだった。
水曜日の18時50分。神聖千年王国本部。
真示が手に入れたパスカードは問題なく使用出来た。
『電子系統樹』で得たデータは、タブレットで操作出来る様にしており、それを千歳が持っている。
エレベーターを使っては、逆に停電をされて閉じ込められると不利になるため、各人、階段を使って、上に上がっていく。
ぞろぞろと行くとそれも不自然なため、先頭は半径30mの生物の感情と欲望を感知できる『共感』を使用出来る千歳。
藤原社長、水月、芽衣、真示。の順で、バラバラに上がっていく。
千歳は『追憶共有』で記憶を共有できる。
この『追憶共有』は千歳が考えたこと、見たものをメンバーにテレパシーの様に共有出来る。
そのため通常の通信が出来ない場合や、乱戦時に敵にばれないで意思疎通を図るためにも応用が出来る。
本部ビルは10階までは普通の事務棟である。千歳の『共感』でも普通の職員が普通に動いているようにしか感じられない。
問題はこの上である。
11階からは音がしている訳ではない。
しかし千歳の共感によると、12階以上は何かしらのジャミングが働いている様で感知が出来ない。11階は空っぽのようである。
13階建のビルの高さを約45mと考え、千歳の共感が半径30m。直径60mなのだから、12階以上に教祖たちがいると考えられる。全員の緊張が増した。
11階に到着した。ここまでくるとバラバラに階段を上っていても意味が無いので、当初考えていたコンビの組み合わせにする。
水月と芽衣。千歳と真示。藤原社長。
(12階へ階段で向かう。足音を立てずに行くぞ)藤原社長が指示を出す。
その時だった。12階の階段上のドアが開き、刀を持った武装した者たちが8人下りて来た。同時に12階から11階へエレベーターが下りてくる。エレベーターが開くと、そこからも8人、刀を持った武装集団が襲い掛かって来た。
挟み撃ちという形になる上、向こうは刀を持っている。
向こうの武装は刀以外には黒い戦闘服を着ており、特に防毒マスクなどは付けていない。
「千歳と真示は階段の敵。芽衣と水月はエレベーターから来た敵を全滅させろ」
「了解!」全員が迅速に動く。
真示はポケットに入っている500円玉を両手の人差し指に引っかけると、同時にコイントスの要領でそれを弾き飛ばす。陰陽流空手『指弾』である。
刀を構えている一番先に切りかかって来た敵の両眼に500円玉が命中した。
さすがに目を痛めてうめき声を上げている相手に、千歳が容赦なく下段蹴りで相手の金的を破壊する。絶叫を上げて悶絶して倒れた。
2番目に斬りかかって来た相手にも、真示が『指弾』を飛ばす。
2番手は学習したらしい。刀を横にして指弾から目を守った。500円玉は落下する。
しかし刀を防御に使用するということは、その間刀が使用できない事を意味する。
その隙を逃す千歳ではない。足払いで転倒させ、喉をかかとで踏みつけ気絶させた。
芽衣は陰陽流空手の歩法で、エレベーター側から来た相手の刀の内側の間合いに入り、掌底で金的を破壊した。たまらず相手は白目をむいて気絶する。
水月は気絶した敵の刀を持ち上げると、そのまま別の敵に向かって投げ飛ばす。
敵は刀でそれを受けるが、既に水月は歩法で接近し、敵の喉に正拳突きを突く。
敵は気管がつぶれて、呼吸できずに気絶する。
おそらくリターナーと言っても、『異能力』を持たないリターナーなのか。
4人が瞬殺されるのを見た残りの12人は明らかに怯んだ。
藤原社長は一人で二人を相手にし、手刀で首を切り落とす。
明らかに敵に動揺が走った。動揺は隙を生む。その隙を逃す水月達ではない。
次々と人形を破壊する様に倒していく。
しかし敵の戦力が残り3人になった時、千歳が叫んだ。
「目で見えない相手が1人います!」と。
真示が前蹴りで残りの3人の内1人を倒した直後。
水月が残りの2人の内の1人、前方の敵を上段前蹴りで顎を砕いた直後。
「水月さん! 後ろ!」千歳が叫ぶ。
水月の背後の影の中から、起き上がる様に刀使いが現れた!
刀使いは水月を狙って横から刀を振るった。
人は誰でも攻撃の後に隙が出来る。水月でさえ避けられない。
「危ない!」
芽衣が水月を突き飛ばした。
その刀は、水月の代わりに芽衣の左足を切断した。鮮血が飛び散った。
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