【完結】うちのブス知りませんか?~金目当ての貴族との縁談をブチ壊そうと、全力醜女メイクしてたら引っ込みがつかなくなった件~

羊蹄

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22.きちんと話していただきます

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 素顔の時に出会ったラインハートの顔を思い浮かべると、少し怖い気がした。
(何か言ってくるかもしれない)
(婚約の申し込みはなかったことに、といわれるかもしれない)
 もし仮にそうなった場合、では素顔のクロエとして出会って恋に落ちるなんてことはできるだろうか。

 出来るわけがない。
 クロエはどう転んだってゴドルフィンの孫なんだから、結婚に至った時には必ずばれる。
 結婚の申し込みにやってきた男性を試すような女であることが、ばれてしまうのだ。

 こくりと喉を鳴らして中庭の見えるテラスへと出ると、ハインハートがこちらに気付いて立ち上がった。

「クロエ!」

 丁寧にお辞儀をして頭を上げると、前回会った時と変わらない笑顔の彼がそこにいた。
 ほっとして思わず表情が緩む。

「いらっしゃいませ、ラインハート様」
「お招きありがとう、クロエ。今日もとてもキュートだ」

 甘く瞳を細めてそう言い、彼は微笑む。
 裏表を感じない。どうしてだろう。
 好き……になってしまったから、目が曇ってしまったのだろうか。

 こんなことで、祖父の財産をきちんと守れるのか。不安になってしまう。

「あ、クロエ。この前、街に出たときに」
 どきりと胸が鳴る。動揺を悟られないように、きょとんとした顔を作って首を傾げた。
「これ、買ってきたんだけど読む?」
「アナスタシア先生の新刊……!!」

 すっと差し出されたそれは、あのラインハートに素顔で出会った日に発売された本だったとのこと。あのまま本屋に行っていたら絶対に買っていただろうに、例の件で動揺してしまって帰宅したせいで、見つけそびれていたらしい。

「ありがとうございます! よろしいんです?」
「うん、もちろん。これはあなたのために買ったものだから」
 受け取ろうとした手の甲に、ラインハートの手が重ねられた。びくっとしたが払いのけることができずに固まってしまう。
 じわりと彼の温かさが伝わってきて、頬が熱くなってくる。

「あ、あの、」
「ごめんね、可愛くてつい」

 ぱっと手を離すと、まったく悪びれる様子もなくそう言われた。
 可愛くて、とか。キュートだ、とか。そんなわけないでしょ、と理不尽なのはわかっているけれど気分が悪い。
 もう、そろそろいいだろう。
 クロエはじっとラインハートを見つめると、ゆっくりと切り出した。

「ラインハート様」
「はい」
 真剣な空気を感じたのか、彼もせすじを伸ばしてこちらを見つめる。
 凛とした表情に思わず見入ってしまいそうになるのを耐えて、口を開いた。

「どうして、私に求婚などするのです」

 
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