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3. 噂のブスはモテモテです。
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100人斬り! と大喜びしたところで、だからこれで一区切りというわけではない。
お見合いの申し込みは、徐々に減ってきているとはいえまだまだ絶えることはなく、とはいってもその申し込みの目的に若干の変化があったようだった。
「『噂のブスを一目見たい』と言っていたみたいだよ」
呆れ半分悲しさ半分、といった複雑な表情でユーゴはそう言うと、白い封筒を3枚差し出してきた。
「噂のブスって……ブスがうわさになっても、見たがられて申し込みにつながるんじゃ意味ないわ!」
クロエはまっすぐな髪をさらりと掻き上げると、短く息をついた。
「仕方がないだろう、それだけ芸術的なブスなんだ。メイクというより特殊メイクだし」
「兄さん、それはもちろん誉め言葉よね」
ブスブス連呼されても、クロエは痛くも痒くもない。だってそれは素顔ではないし、何なら自分のメイク技術に対する称賛であると理解しているからだ。
「でも、そのブス見学目当ての輩っていうのは、お見合いしてももちろん断ってくるのよね?」
「そりゃそう、だろうなぁ。だって、一目見たいっていうくらいだから。ずっと見ていたいじゃないから」
「うんうん、直視できないブスもん」
フィンもなぜか嬉しそうにそう言ってクロエに抱き着いてきた。
今日は、クロエに会いに来る客はいない。だから化粧もお休み。
連日ドーランを塗っていたら肌もあれるし、たまには休ませることも大事だ。とカーテンを開けている窓を見ると、素顔の自分が映っていた。
最近はメイクをしている時間のほうが長いくらいで、色の白い肌、金茶のストレートヘアの姿は、逆に作り物めいて見える。
「で、その3人のうち、2人は明日来るって言っていたよ。辺境伯の息子と、アドル商会の息子」
未婚で年頃の息子がいる辺境伯、と言えば、ノヴァック辺境伯か。息子のことはよくわからないけど、まぁどちらにしても資産が目当てだろう。アドル商会は最近業績を伸ばしてきている商人で、言ってみればライバル……規模は天と地ぐらい違うけれど。だからこっちは祖父の会社のノウハウやコネなどが必要ということか。
「ふぅん……で、残りの1人は?」
「ブスが見たいって言ってたからその場で断った」
「あは。見に来させてあげればよかったのに」
「僕は嫌なんだよ、特殊メイクしているとはいっても、可愛いクロエがブスだドブスだ言われるのは」
それでいつもちょっと悲しい顔をしているのか、とわかっていたけれど兄をかわいく思う。
「兄さんにも素敵な人が現れるといいわね」
「クロエにいい人が見つかってからね。……じゃないと心配で」
「ねえさまは僕が守るよ」
「じゃあそのフィンをわたしが守る」
「そのねえさまを僕が」
「はいはい、もうその辺で」
きゃっきゃしだしたふたりの頭を、ユーゴはそっと抱き寄せて笑った。
お見合いの申し込みは、徐々に減ってきているとはいえまだまだ絶えることはなく、とはいってもその申し込みの目的に若干の変化があったようだった。
「『噂のブスを一目見たい』と言っていたみたいだよ」
呆れ半分悲しさ半分、といった複雑な表情でユーゴはそう言うと、白い封筒を3枚差し出してきた。
「噂のブスって……ブスがうわさになっても、見たがられて申し込みにつながるんじゃ意味ないわ!」
クロエはまっすぐな髪をさらりと掻き上げると、短く息をついた。
「仕方がないだろう、それだけ芸術的なブスなんだ。メイクというより特殊メイクだし」
「兄さん、それはもちろん誉め言葉よね」
ブスブス連呼されても、クロエは痛くも痒くもない。だってそれは素顔ではないし、何なら自分のメイク技術に対する称賛であると理解しているからだ。
「でも、そのブス見学目当ての輩っていうのは、お見合いしてももちろん断ってくるのよね?」
「そりゃそう、だろうなぁ。だって、一目見たいっていうくらいだから。ずっと見ていたいじゃないから」
「うんうん、直視できないブスもん」
フィンもなぜか嬉しそうにそう言ってクロエに抱き着いてきた。
今日は、クロエに会いに来る客はいない。だから化粧もお休み。
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最近はメイクをしている時間のほうが長いくらいで、色の白い肌、金茶のストレートヘアの姿は、逆に作り物めいて見える。
「で、その3人のうち、2人は明日来るって言っていたよ。辺境伯の息子と、アドル商会の息子」
未婚で年頃の息子がいる辺境伯、と言えば、ノヴァック辺境伯か。息子のことはよくわからないけど、まぁどちらにしても資産が目当てだろう。アドル商会は最近業績を伸ばしてきている商人で、言ってみればライバル……規模は天と地ぐらい違うけれど。だからこっちは祖父の会社のノウハウやコネなどが必要ということか。
「ふぅん……で、残りの1人は?」
「ブスが見たいって言ってたからその場で断った」
「あは。見に来させてあげればよかったのに」
「僕は嫌なんだよ、特殊メイクしているとはいっても、可愛いクロエがブスだドブスだ言われるのは」
それでいつもちょっと悲しい顔をしているのか、とわかっていたけれど兄をかわいく思う。
「兄さんにも素敵な人が現れるといいわね」
「クロエにいい人が見つかってからね。……じゃないと心配で」
「ねえさまは僕が守るよ」
「じゃあそのフィンをわたしが守る」
「そのねえさまを僕が」
「はいはい、もうその辺で」
きゃっきゃしだしたふたりの頭を、ユーゴはそっと抱き寄せて笑った。
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