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美麗なる女剣士? 前編

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 馬が闊歩する足音、荷台の車輪が転がる音、賑やかな騒音が耳を付く。
 オレは荷馬車の御者台に乗っている。
 フィーリアの仕事を手伝う為、奴隷の娘さん達をお偉さん方に身売りする為、身請け人の所へ向かっていた。
 悲しいけど仕方ない。これがこの世界の現実。
 オレの隣に座るは、紅碧色のロングヘアを風に靡かせて、端麗な横顔から見える切れ長の灰瞳と長い睫毛、それにシミひとつない白肌が眩しいくらい美しい女性が一人。
 すれ違う者は男女関係なく、思わず息を止め立ち止ってしまう程の麗人。
 フィーリアの専属護衛で、美麗の女剣士アイシャ。
 アイシャが馬の手綱を操作して馬車を引いていた。
 オレは全く馬を操る事が出来ない。差し当たり、この仕事をするのなら先ず馬を操れないとお話にならない。
 で、本来ならオレが、一人で熟なさないといけない仕事なんだけど、今回のみ、アイシャが、オレの補佐役兼護衛として同行する事となった。
 見た目からは全く想像出来ないが、アイシャは、もの凄く腕が立つらしい。
 フィーリアの専属護衛するくらいだから当然なのだが、やっぱ信じられん。
 なんにせよ、本来、フィーリアの護衛をしている筈なのに、オレの所為で悪い事したな。
 暫く馬車に揺られているけども、アイシャと全然、会話がない……スゲェ気まずいんです。
 なので、ここは一つアイシャに何か話題を振ってみるかな。

「あのう、アイシャさん目的の街まで、どのくらいかかりますか?」
「うーん、半日もあれば、メンフィスに着くかな。あ、それから、さん付けなんてしなくていいよ。アイシャで構わないから」

 アイシャはオレの質問に空を見上げながら答えてたが、話し終わると不意にこちらへと振り向けば、マジマジとオレを眺めてきた。

「ジュン、キミって女の子だったけ?」

 オレを見たアイシャの言葉。
 そう! オレは女になっている。
 この間、図書館で閲覧した魔人教典って本に記載されてた魔法、淫魔の魔術、性転換魔法を物は試しにと使用した。
 その結果が今のオレの姿。
 それから性転換魔法は、満月と新月の十五日周期の時にしか使えない。
 ここまでは良かったのだが、今は元に戻れないんだよ。
 この魔法、一度使用すると、十五日間はその姿のまま過ごさないと行けないのだ。
 教典を読み直してみたら、注意事項が記載されていた。
 マジ、しくじった!
 真逆の落とし穴。
 とある満月の夜、フィーリアに「こんな魔法使えますよ」何て言うんじゃなかった! 「面白そうだから、やってみて」何てフィーリアが言うもんだから……ついつい調子乗って。
 嗚呼! 俺は頭を抱え、自己嫌悪に陥る。

「どうしたの? ボク何か変なこと言ったかい」

 その様子を見て不安気な面持ちで、アイシャが尋ねてきた。
 おお、アイシャってボクっ娘か!
 それはさて置き。しゃんとしないとな。

「いいえ、アイシャの所為ではないですよ 実は…………」

 この間あった事をアイシャに話してみた。

「アッハハ! 別に気にする様な事じゃ、ないじゃないか。元にすぐ戻れないだけだし。それにジュン、物凄く可愛いくなったんだから今の状況を大いに楽しみなよ!」

 清々しいくらいに大笑いするアイシャ。
 アイシャの言う通り、自分で言うのも何だけど、確かに、スゲー美少女になった!
 髪、瞳、肌の色は変わらないが、外見が大幅にチェンジした。
 アラビアンな神秘的な感じで、出るとこ出て引っ込むところ引っ込んで、スタイルもなかなかに。
 この姿になってからと言うもの、街を歩けば、男が言い寄って来てくる始末。頗るウザい。
 多分、これも淫魔の成せるワザ、魅了が関係してそう。
 マジ、男にモテても全く嬉しくない。
 そんでもって、女を抱く事が出来ない!
 なによりも、これが一番の問題。
 まあ、この事で落ち込んでいる、なんてこと、アイシャには言えないけどな。
 アイシャが言うには、目的地までしばらく、石畳で整備された街道をひたすら進むらしい。
 半日かかると言ってたけど、と言うことは向こうの街で一泊するのか? それとも日帰り?

「アイシャ、お聞きしたいのですが、目的地に到着しましたら、一泊するのですか? それとも日帰りですか?」

 率直な疑問をアイシャに尋ねてみた。

「さすがに日帰りは疲れるからね。今回は宿屋で一泊して、それから屋敷へ帰るよ」

 アイシャは、そう答えると姿勢を整えて前へと向き直った。そして手綱を引き馬車の速度ペースを上げようとした矢先、街道沿いの林から突然、数人の男達が現れたなら馬車の進行を妨害してくる。
 そいつらを見ると身なりは汚らしく、ニタニタと低俗で野蛮な面をしてた。

「ジュン、この手綱を持って、ここで待機してて、あいつらは野盗だ」

 アイシャが真剣な面持ちで声を掛けて来たなら御者台をサッと降りる。
 そして、腰に下げた黒塗りの鞘、それに納められる剣の柄へと手を掛けた。
 アイシャの漂わす気配が変われば、周囲の空気が一瞬で張り詰めていく。
 なんかヤベェ! これが、仕事モードのアイシャか。

「ほう! こんなとこに上玉が二人。いいねえ! 特にメイドの方は、ドえれぇベッピンだ!」

 野盗の一人が下品な声を吐く。
 ちっ、キモい。気持ちわるいからコッチを見るんじゃねぇ。
 メイドってのは、オレのこと。
 これ、ものすっごい拒否を示したのだけど、メアリーが、どうしてもと懇願してくるから渋々にメイド服を着用することを了承した。
 普段メアリーが着用しているクラシカルなメイド服とは、また違ってロリータよりのメイド服を着せられてしまった。
 で、アイシャの服装は、近衛兵を彷彿とさせる群青色のチュニックと、黒革パンツに黒革のロングブーツ姿。
 これがまた、妙にハマって、めっちゃ宝塚ヅカっぽい。

「おい! この馬車、奴隷を運んでるぜ!」
「ククッ、こいつはいいや!」

 荷馬車の後方から幌の中を覗いた野盗達が口々に声を上げた。
 どうやら囲まれたらしい。
 さて、どうしたもんか? 野盗の人数は全部で七人。
 奴隷の娘たちは、なんとしても守らないとな。
 いざとなったら、オレの取って置きで、野盗ヤツラをぶっ殺す!

「いっひひ! 何しようってんだ? お嬢ちゃん」

 アイシャと対峙している野盗の一人、右手にハンドアックスを持つ男が、明らかに嘗めきった態度でアイシャへと近づいて来る。
 コイツ、アホか? 素人のオレでもわかるくらいにアイシャは殺気を放ってる。
 オレの肌が、あり得ないほど騒つけば、アイシャがスーッと動き、野盗との間合いを難なく潰す。
 刹那! 抜き身の刃が水平に薙がれていた。
 すると野盗の右腕が、肘の辺りからズルリと鈍い音して地面に落ちる。
 瞬く間とはこの事か、アイシャがいつ抜刀したのか分からなかった。
 当然の如く、右腕を切断された野盗も、自身に、なにが起こったかわからず、口をアウアウさせるだけ。
 その隙を逃すことなく、アイシャは返す刀で、野盗の喉を一突きして絶命させた!

「ゴクッ……すげぇ……」

 それを見たオレは、只々固唾を呑み驚嘆するだけだった。
 次にアイシャは、落ちているハンドアックスを拾い上げると、ちょうど、死んだ野盗の真後ろに位置していた野盗に向かって拾い上けたハンドアックスを投げ放つ!
 その野盗はハンドアックスを避ける事も叶わず、そのまま頭蓋をグシャリと砕かれ、崩れ落ちるようにその場で倒れ伏した。

「このぉぉガキャ! ぶっ殺す!」

 他の野盗達は一瞬の出来事に困惑し、呆気にとられていたが、すぐ、正気を取り戻すと、怒声を張り上げながらアイシャに狙いを定めて襲い掛かった!
 流石に、アイシャばかり負担を掛けさせるのも悪いし、オレも少しは良いところ見せたい。なので、今よりオレの取って置きをお披露目してやるか。
 魔人教典には、魔法の事も幾つか記載されており、その中には軍用魔法なんて危ないもんある。
 魔法を扱う為の絶対の条件、それは独特な言霊、呪文を必ず詠唱しなければならない。
 魔法を行使すれば、様々な奇跡的現象を引き起こす事が出来た。
 で、今からそれを使って、野盗ヤツラを一網打尽にしてやろうと思う。
 魔法を発動するために、オレは呪文詠唱を始める。
 何度か試しに使用した魔法、オレも最近呪文を覚え始めたばかりだから、まだ魔法のバリエーションが少ない。魔法に関しては、まだまだわからない事づくめ。なので、少しづつ覚えて行く予定だ。
 呪文詠唱を終えると魔法を発動させた。

円環炎サークルフレイム!」
 
 オレはアイシャに襲い掛かろうと密集している野盗達に向け、魔法をぶっ放してやる!

「なっ! なんだこりゃ?」

 野盗達の回りをドーナツ状の炎が取り囲み、その中心に向かって炎が収縮し始めれば、野盗達を爆炎が包む!

「ぐぅおああぁぁあ…………」

 炎が野盗達を焼き尽くす。人の焼ける臭い……。
 あまりにもすんなり行き過ぎて殺した実感が湧かない。
 相手も此方を殺すつもりだったし、それに見るからに悪党だった。
 こいつら、いない方が皆の為になるだろう。だから、これは仕方のない事だよな。そう仕方ない。オレは心中で一人納得する。
 爆炎が焼失した後に、残ったのは消炭だけ。
 その様子を遠目で伺っていたアイシャがオレの所へ駆け寄って来た。

「ジュン、本当に魔人だったんだね! しかし、魔法と言うのは凄いね!」

 魔法と言うものを初めて見たのか、アイシャは興奮気味に賞賛してくる。

「いえいえ、アイシャに比べれば、私など大した事ないですよ。あの技量まで己れを高めるには、相当な修練が必要なはず。アイシャはスゴイです」

 オレは首を大きく横に振り、謙遜したら、逆にアイシャを褒め称えた。

「えっへへ! 大した事ないよ」

 アイシャは褒められたのが嬉しいのか照れ笑いを見せる。
 奴隷の娘達も魔法の行使に驚いていたようだけど、この事は他言無用と言っておく。
 失った時間を取り戻すべく急ぎ馬車へと戻れば、再び馬を走らせて目的地であるメンフィス公国を目指す。
 野盗に襲われる以外は、何事もなく順調にメンフィスまで行くことが出来た。
 メンフィス公国はラーナ王国に隣接する従属国で聖ラーナ王国領土で、二番目に大きい国だ。
 オレ達が目的地の街に到着したのは、空が夕焼けで染まった頃。
 街に入れば、早速オレ逹は奴隷の娘達を身請人が住む館へと連れて行く。
 今から会う身請人は、ここメンフィスで一、二を争う凄腕の豪商だそうだ。
 五人の娘達を身売りする為、豪商の元へと訪れたら、奴隷の娘達を豪商に引き渡して売買契約を成立させる。
 アイシャが滞りなく全て取りなしてくれた。オレは只、隣でそれを見ていただけ。
 今回は仕事の流れを覚える感じだから研修期間みたいなもん。
 売買を終えると、案の定、豪商がオレに目をつけ口説いてきた。
 鬱陶しい! 早く男にもどりてぇ!


 豪商の邸宅を後にすれば、オレ達は今夜の宿を探すため街へと繰り出した。
 宿屋にもランクがあり、所謂五つ星的なものか一つ星まで。
 なるべく経費を節約する為、オレとアイシャは、この街で下級ランクの宿屋を見つけてそこへと入った。
 ここの宿屋は食堂も併用しているようで、中は大勢の客で賑わっている。
  
「空き部屋があるか聞いてくるよ。空きがあれば、今夜はこの宿屋で一泊しよう」
「ハイ、わかりました。私は旅慣れしていないので、アイシャに宿の手配をお任せしてもいいですか」
「ああ、それじゃあ、ボクが決めさてもらうね。フロントに空き部屋があるか聞いてくるから、ジュンは、食堂で何か飲み物でも頼んで、休憩してて」

 そう言うとアイシャは、宿屋のフロントに向かった。
 食堂へと足を運べば、バーカウンターの空いた一席に腰掛ける。
 オレはバーカウンター上の壁に掛けてあるオーダー表を見上げ、何を頼もうかと思案していたら、何処からともなく声がかけられた。

「どうだい! お姉ちゃん。暇してるなら俺と一杯だけでも」
 
 声のした方へ顔を振り向かせたら、そこには、ニタニタといやらしい笑みを浮かべる男の姿。
 そのニタ顔野郎と視線が合う。どうやら、オレのことを呼んでたみたいだな。
 ナンパか? ちっ、面倒くせぇぞ! なので無視しとこう。
 オレは無関心を決め込んで、ニタ顔野郎から顔をプイッと背けてやった。

「おいおい、そんな顔してたら、綺麗な顔が台無しだぜ」

 ニタ顔野郎が、どさくさ紛れに隣の席へと座り、オレの顔を覗き見て来る。
 くっ、うぜぇ、しつこい! 早く何処か行けや。
 テメェの失敗面、鏡で見た事あるのか?
 と心の内で悪態吐いた。
 オレは、ウザいオーラを纏い、徹底して無視を決め込んだ。
 すると、

「おい! もう、その辺でやめておけよ! その人、嫌がっているだろう」

 ニタ顔野郎を戒める声!
 とりあえず、声の主に視線を送ったなら、そこには金髪の結構なイケメン君がニタ顔野郎の後ろに立っていた。

「お、アンタか。すまねぇ。調子に乗り過ぎた」

 ニタ顔野郎がきまりの悪そうな顔をしてイケメン君に詫びを入れる。

「わかれば良いんだよ」

 おいおい、どう言うことだ? 先ず、こっちに、謝るのが筋じゃね?
 ニタ顔を押し退けてイケメン君が此方へ歩み寄ると、オレに話かけてくる。

「すまない。俺の連れが迷惑掛けたみたいで」

 バツの悪そうな顔を見せてイケメン君が、オレに頭を下げてきた。

「いいえ、貴方に謝られても」

 どうやら、イケメン君とニタ顔野郎は知り合いらしい。

「嫌な思いをさせてしまったね。そのお詫びに、どうかな? 一杯だけでも奢らせてもらえないかい?」

 イケメン君が、爽やかな笑顔でオレに言う。
 ん? なんかこのイケメン君も口説きにきてないか?
 ……深く考え過ぎかな。まぁ、奢ってくれるのは、嬉しいしありがたい。

「じゃあ、一杯だけ頂きます」
「ほんとかい! ありがとう! マスター、ワインを一本、後グラスを二つ用意してくれ」

 オレの言葉に、イケメン君は甘いマスクを一段と輝かせて礼を言う。
 なんだろ、こういう手合いは好きくない。笑顔が物凄く胡散臭い。
 イケメン君からグラスに注がれたワインをもらう。
 そしてイケメン君が一言。

「乾杯!」

 チリンとグラスを合わせた。
 そのままグラスを口へと運び、ワインをひとくち含み、舌で転がすようにして風味を味わいながらゴクリと喉へ流し込む。
 少々、渋い味だが、飲めない程じゃない。
 この世界に来て初めての酒だ。意外とオレの身体は酒がイケる口か。
 イケメン君はまだ隣に居座ってる。
 ちっ、早く何処かへ行けと、口に出しそうになるのを抑えつつ、グラスのワインを飲み干そうとした時、突然、意識が朦朧としてきた。
 な、なに? どうなってる?
 オレは、そのまま意識が落ちた…………。


 気がつくと見知らぬ部屋の天井が目に入る。

「おっ、やっとお目覚めですか。お姫様」

 どこかで聞いたことがある声色だな。
 声のした方に視線を動かすとイケメン君がベッド脇に立っていた。
 ただ、さっきと違って、瞳に妖しい光を灯し、ニヤニヤと含み笑いを浮かべて、こちらを伺っている。
 その顔を察すれば、今から何をされるのか想像せずとも、直ぐ理解した。
 非常に不味い状況だよな。
 この状態は良くないと思い、身体を起こそうとするも全く力が入らない?
 くっ、マジ、どうなってる?

「どうしたの? 動けないのかい? 大丈夫?」

 それを見てイケメン君改め、下衆野郎がなに食わぬ顔して言ってくる。

「なぃ*に、○◇*○し*○」

 オレは文句を言ってやろうとするも、舌に力が入らず呂律が回らない。
 オレの姿を見下ろして、ニヤニヤする下衆野郎。
 うぅぅ、ムカつく! 十中八九お前が何かしたんだろう!

「そんな顔しないでくれよ。俺はただキミが意識を失い倒れたから、ここに運んで介抱してあげようかなと」

 白々しい態度で下衆野郎がそんなことを言う。
 介抱って、絶対違う意味だろうがよ!
 くっそ、何とかしないと。
 ゆっくりと下衆野郎がベッドで横たわるオレに近づいて来る。
 まるで、死刑宣告をされた死刑囚の気分だ。
 オレが想像し難い事をコイツはやろうとしてる。
 本当に不味いぞ。逃げようと思い身体に力を入れるも、一切身動き出来ない。
 マジで、何しやがったクソ野郎!
 下衆野郎がベッド脇に腰を下ろしたら、ギシギシと撓み沈んでいく。
 間近に迫る下衆を見れば、いやらしく瞳を細めて、予期した通りにそれはやって来る。
 オレの下腹部へと手を伸ばしてきた下衆。
 手を伸ばした先にあるのは、スカートの裾、そこを指で摘み、パサッと勢いよく捲り上げられてしまう。
 否が応なく晒される下半身。
 うっ、マジ……最悪。
 ってかよ、そこは普通、もっと焦らすとこだろうが!
 やるなら、ちゃんと有難がれよ! 
 なんか知らんが怒りで身体が震えてくる。
 スカートを捲くられ露呈するは、パンティとガーターベルト、それにオーバーニーのタイツ、全部白で統一してある。
 恨むよメアリー、セクシー過ぎだろ。
 下衆野郎に下半身を余すことなく舐め入るように視姦されてしまう。
 うっ、鳥肌もんだぜ。勘弁してくれ。
 自身の置かれた状況を悲観していたら下衆の手が動く。
 下衆の指が、いとも容易くガーターベルトとタイツを繋ぐ留め金をパチンッと外す。
 
「くっ、○*☆☆◇」

 ヤメろと叫びたいが呂律が回らない。クソッたれ、何故こんな目に!
 次にタイツをサラサラと脱がされれば、生足が晒された!
 嗚呼、神様って奴がいるなら、ココで終わらせてくれよ!
 そんな願いなど、叶うはずもなく、下衆の指先が太ももへ這わされた。そこから、スリ、スリリと指の腹で内モモを撫でられる。
 き、気持ち悪りぃ。嫌な感触が伝わってくる。

「キミ、イイね! 凄くイイよ! キミのカラダ。太ももを触る指に肌が吸いついてくるよ」
 
 下衆がだらし無く顔歪ませて言ってくる。
 くっ、オレに触るな! クソ野郎!
 そんな思いを他所に、何度もそれを繰り返し、それに飽きたら次に狙いを定めてきたのは、パンティの縁、股関節のV字ゾーンをわさわさ触り出した。
 そう、気持ち悪い筈なのに、悪寒しか走らなかった筈なのに……別の何かがオレを襲い始める。
 この感じ、嫌だ! 宜しくない感覚だ! 絶対にそうだ!
 けど、そんな思いとは裏腹にカラダが正直な反応を示しだす。

「んっ……んん……んっ!」

 腰が勝手に震え出し、言い知れぬ感覚が、押し寄せようとするのを、オレはくちびる噛み締めて必死にそれを拒んだ。
 これは違う。こんなのは認めない。マジでおかしい!
 下衆は、おれの反応を観察しながら、徐々にパンティの中心へと指を持って行く。そして、等々辿り着くのは、パンティ越しの肉ワレメ。
 そ、それ以上は許さない。絶対に許さない。
 ジリジリとアソコをなぞり上げられれば、今までに感じた事のない……それがやって来る!

「はぁ、あん……あん、ふんんっ」

 官能に肉体が波打ち、喘ぎが溢れ出す!
 嫌だ、嫌だ、嫌だ。
 今、出来得る力、全てを使って全身を揺らし、それを拒否する!

「ククッ、どうしんだい? 気持ち良かったのかな。嫌がる素ぶりを見せても、本当の所は、わかってるだろ。だからさ、キミも早く素直になりなよ。そうすれば、もっと……」

 オレにとって最低な言葉を吐きやがる。
 下衆の行為は一段とエスカレートして行き、パンティ越しの淫唇をクニュ、クニュと押し広げられて、指先で幾度も淫裂を掻き出しては、快感を与えようと躍起になってた。
 オレはその行為に抗おうと頑張って意識を保つも、次第に肉体カラダは順応し出す。
 全身に快感が行き渡っているのを感じた。どんなに抵抗するも、それはオレの中で、どんどん大きくなって抗う事さえ出来なくさせる。

「んはぁ……あっ! んんっんむっ……はぁんっ!」

 嫌悪しかない筈の下衆にいいようにされてるのに、身悶え声を出し感じてしまった。
 うっ、自殺もんだ。

「いい声で鳴く! パンティも、お露でグショグショだよ。クックク!」

 口角を引き裂くよう歪な笑いを見せる下衆。
 その顔が、更にオレの不安感を煽ってくる。

「クック、タマンネェな。その顔、唆られるよ!」

 待ってましたと言わんばかりに下衆の手が、クロッチをグイッと引っ張り勢い良くズラし、肉華を露わにしてきた!
 くっ、こんな下衆野郎に大事なトコ見らちまうなんて……オ、オレ自身だって、まだ見たことねぇのによ! お初をこんな糞に!
 下衆の顔が、アソコへと近づいてくる。
 下衆野郎の汚ねぇ吐息が、フーフーとアソコを薙ぎ、ジリジリとにじり寄ってくる顔面。
 無理、無理、それ以上は殺す、絶対殺す! はああ…………。
 オレは半ば諦めが入れば、何も考えないように目を瞑り唇を噛み噤んだ。
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