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第1話「明日、夏野さんに告白する!」
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高校最後の夏休み。
それが明後日から始まるのだ。
空野花火。18歳。高校3年生。
彼にはこの夏までにかなえたい目標があった。
それは彼にとっては夏休みの宿題や中間試験、何なら進路のことよりも先に考えなくちゃいけない事案だった。
彼と同じクラスの夏野蒼。吹奏楽部で活躍している女子生徒だ。
彼の目標は彼女に告白することだ。
「どうすりゃいいんだー」
「だから、何度もいってんだろ。告白しろ」
花火のうめきに対して目の前の男はそう僕にこたえる。
「お前が告白しないことには進まないだろ」
彼はそう付けたしながら、スマホをいじる。彼の名前は八坂太陽。花火の1年生のころからの親友だ。花火が夏野のことをずっと好きなことを知っていた人物で、花火が夏野のことを好きなことを知る数少ない人物だ。
「そういったって、向こうが俺のことを好きかどうかはわからないだろ」
「そういって、1年生の時からもう2年たったんだぞ。もう高校生活最後の夏休みなんだぜ」
高校生活最後の夏休み――――
その言葉を聞くと、少しだけの後悔が花火の心をチクリと刺す。高校3年になって、いまだに花火は好きな人に自分の想いを告げられていないのだ。3年あったのに、花火と彼女との進展はその程度だとまざまざとつきつけられ、同時にあまりの時間の経過の速さと残酷さに胸を焼かれるような思いがする。
「あんたら、またここにいたの」
花火のもう一人の親友の浅野紫音。彼女はややあきれた様子で僕らに近づいてくる。
ここは彼らが放課後にいつも集まる公園のベンチだ。ここは上に屋根もあって、避暑地としても優秀な場所だ。
「こんなくそ暑いところによくもいられるわね」
優秀な避暑地に彼女はそう一蹴した。
「屋根があって涼しいだろ」
「近くのマックとかじゃダメなの?」
「マックは高い!」
「なんで、100円もあれば十分だろ」
「マックの人たちの気持ちを考えろ、高校生が何時間もあそこにいるのは迷惑だろ」
「......単純に金がないだけだろ」
「......バレたか」
そんな馬鹿なやり取りをするのが彼らの恒例だった。紫音は隣に腰かける。
「それで話していたのは、相変わらず夏野さんの話?」
「......そうだよ」
「太陽もほんとよく付き合うね、この話に。もう誰が何をするべきかなんてさんざん話し合われて、結論が出た話でしょうに」
「......まぁな」
「おっぱい揉めばお前の気持ちも伝わるよ」
「伝わんねーよ、お前らいつもそうやって俺の恋心をもてあそびやがって」
「じゃあ夏野さんが好きな気持ちを歌ったラブソングを作って、告白の時に歌うとか」
太陽がふざけ始めた。
「それじゃ、夏野さん体調崩して学校に来なくなるよ」
「......それは良くないな」
「お前らの俺の扱いもよくないぞ、いい加減にしろ」
太陽と紫音がそろうと大体こういう風になってしまう。
「......でもさ」
紫音が声色を変えてそういう。さらに言葉をつづける。
「......高校生活最後の夏休みだよ。いよいよ茶化す段階じゃないんじゃない?もう猶予は迫っていると思うよ」
「......つまりどういうこと?」
のんきな様子でそう返す花火に彼女は溜息を吐き、言葉を返す。
「あんたは告白して、もしうまくいったら夏野さんと何がしたいの?
そう言われると考え込んでしまう。夏野さんと付き合えたら何がしたいか......
「胸触ったりとか、どうせエッチなことだろ」
「うるせえよ」
太陽は変なスイッチが入ったままだがとりあえず置いておこう。
僕は紫音の方を見て、まっすぐに返す。
「夏野さんがどんな人か知りたいし、夏祭り一緒に行ったり、デートしたり、家に行ったりとか、一緒に勉強したりとかそういうことをして、一緒に思い出を作りたい」
「そういうことをしたいなら、この夏休みがラストチャンスだよ」
紫音は淡々とそう告げた。えっ?僕は彼女の言葉を理解できずハトが豆鉄砲をくらったような顔と反応をしてしまった。
「考えてみなよ、もうあたしらだって受験なんだよ。それは夏野さんも同じ。進路のこととかいろいろなことに向き合っていかないといけないの」
「受験のことで頭がいっぱいになってるのに恋愛なんてしてる暇あると思う?」
「.......」
花火は彼女のラストチャンスという言葉を少しずつ咀嚼していた。
これがラストチャンス。ラストチャンス。
おととしと昨年と同じ夏休みを過ごして、きっと僕の恋はかなわず、高校卒業を迎える。そんなのは絶対嫌だ。
「だったら決めた!」
僕は立ち上がる。花火の突然の動作に紫音はびくっと体をびくつかせる。
「明日、夏野さんに告白する!」
それが明後日から始まるのだ。
空野花火。18歳。高校3年生。
彼にはこの夏までにかなえたい目標があった。
それは彼にとっては夏休みの宿題や中間試験、何なら進路のことよりも先に考えなくちゃいけない事案だった。
彼と同じクラスの夏野蒼。吹奏楽部で活躍している女子生徒だ。
彼の目標は彼女に告白することだ。
「どうすりゃいいんだー」
「だから、何度もいってんだろ。告白しろ」
花火のうめきに対して目の前の男はそう僕にこたえる。
「お前が告白しないことには進まないだろ」
彼はそう付けたしながら、スマホをいじる。彼の名前は八坂太陽。花火の1年生のころからの親友だ。花火が夏野のことをずっと好きなことを知っていた人物で、花火が夏野のことを好きなことを知る数少ない人物だ。
「そういったって、向こうが俺のことを好きかどうかはわからないだろ」
「そういって、1年生の時からもう2年たったんだぞ。もう高校生活最後の夏休みなんだぜ」
高校生活最後の夏休み――――
その言葉を聞くと、少しだけの後悔が花火の心をチクリと刺す。高校3年になって、いまだに花火は好きな人に自分の想いを告げられていないのだ。3年あったのに、花火と彼女との進展はその程度だとまざまざとつきつけられ、同時にあまりの時間の経過の速さと残酷さに胸を焼かれるような思いがする。
「あんたら、またここにいたの」
花火のもう一人の親友の浅野紫音。彼女はややあきれた様子で僕らに近づいてくる。
ここは彼らが放課後にいつも集まる公園のベンチだ。ここは上に屋根もあって、避暑地としても優秀な場所だ。
「こんなくそ暑いところによくもいられるわね」
優秀な避暑地に彼女はそう一蹴した。
「屋根があって涼しいだろ」
「近くのマックとかじゃダメなの?」
「マックは高い!」
「なんで、100円もあれば十分だろ」
「マックの人たちの気持ちを考えろ、高校生が何時間もあそこにいるのは迷惑だろ」
「......単純に金がないだけだろ」
「......バレたか」
そんな馬鹿なやり取りをするのが彼らの恒例だった。紫音は隣に腰かける。
「それで話していたのは、相変わらず夏野さんの話?」
「......そうだよ」
「太陽もほんとよく付き合うね、この話に。もう誰が何をするべきかなんてさんざん話し合われて、結論が出た話でしょうに」
「......まぁな」
「おっぱい揉めばお前の気持ちも伝わるよ」
「伝わんねーよ、お前らいつもそうやって俺の恋心をもてあそびやがって」
「じゃあ夏野さんが好きな気持ちを歌ったラブソングを作って、告白の時に歌うとか」
太陽がふざけ始めた。
「それじゃ、夏野さん体調崩して学校に来なくなるよ」
「......それは良くないな」
「お前らの俺の扱いもよくないぞ、いい加減にしろ」
太陽と紫音がそろうと大体こういう風になってしまう。
「......でもさ」
紫音が声色を変えてそういう。さらに言葉をつづける。
「......高校生活最後の夏休みだよ。いよいよ茶化す段階じゃないんじゃない?もう猶予は迫っていると思うよ」
「......つまりどういうこと?」
のんきな様子でそう返す花火に彼女は溜息を吐き、言葉を返す。
「あんたは告白して、もしうまくいったら夏野さんと何がしたいの?
そう言われると考え込んでしまう。夏野さんと付き合えたら何がしたいか......
「胸触ったりとか、どうせエッチなことだろ」
「うるせえよ」
太陽は変なスイッチが入ったままだがとりあえず置いておこう。
僕は紫音の方を見て、まっすぐに返す。
「夏野さんがどんな人か知りたいし、夏祭り一緒に行ったり、デートしたり、家に行ったりとか、一緒に勉強したりとかそういうことをして、一緒に思い出を作りたい」
「そういうことをしたいなら、この夏休みがラストチャンスだよ」
紫音は淡々とそう告げた。えっ?僕は彼女の言葉を理解できずハトが豆鉄砲をくらったような顔と反応をしてしまった。
「考えてみなよ、もうあたしらだって受験なんだよ。それは夏野さんも同じ。進路のこととかいろいろなことに向き合っていかないといけないの」
「受験のことで頭がいっぱいになってるのに恋愛なんてしてる暇あると思う?」
「.......」
花火は彼女のラストチャンスという言葉を少しずつ咀嚼していた。
これがラストチャンス。ラストチャンス。
おととしと昨年と同じ夏休みを過ごして、きっと僕の恋はかなわず、高校卒業を迎える。そんなのは絶対嫌だ。
「だったら決めた!」
僕は立ち上がる。花火の突然の動作に紫音はびくっと体をびくつかせる。
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