青春〜或る少年たちの物語〜

Takaya

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第三章 始まる闘い

第十話 女たちの夜 ※下ネタ注意

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 香織は部活が終わった後、1人で部室に残っていた。携帯をいじる訳でもなく、もちろん煙草も吸わない。ただ1人で物思いに耽っていた。

(私、何やってるんだろう....)

 香織は入学してから散々な目に遭ってきた。先輩たちはほとんど不良みたいなもので、同級生も似たようなものだ。言い掛かりをつけられたり、露骨に嫌味を言われたり。遂には八つ当たりまでしてしまった。昨日の事件も、もとはと言えば香織の行動が原因だ。

(私のせいであんな風になったのに、貴哉のこと思いっきり無視するなんて、私、やっぱりおかしいわ....)

 香織は決して悪い子ではない。だからこそ、自分がいかに馬鹿なことをしたかは分かっている。

(結局、私も散々嫌ってる他のみんなと同じなのね....)

 香織は自分のことが嫌いになりはじめている。そして、とある結論を出そうとしている。

(こんな思いするなら、私、バレー辞めようかな....)

 その時、部室のドアが開いた。麗花だ。

「あら、香織。まだいたの?」
「うん、考え事しててさ。あんたは何しにきたの?」
「携帯忘れたから取りにきただけ。」
「携帯ってあんたね、こんな大事な時期に見つかったら大変じゃないの。」

 麗花はえへへと笑う。伊志凪中は携帯持ち込み禁止だ。だが、守っている方が少ないだろう。

「それよりさ、今日明良の家に泊まらない?」
「平日に何言ってんのよ。」
「んもー、真面目ねぇ。遅刻しなきゃいいじゃん。むーちゃんとフェイも来るんだしおいでよ。」

 香織の中で、貴夜と鈴飛は苦手な部類だ。チームメイトだからこそ話はするが、正直プライベートでは会いたくない。

「いや、私はいいよ。」
「えー、なんでー!来ないとあれバラすわよ?」
「あれって何よ?」
「同人誌!」
「!?」

 香織が固まる。

「い、いや、な、なんのことかしらねぇー....」
「そんな顔したって無駄よ?私合宿の時にあんたの携帯みたんだもん。」
「!?」
「私だってエロいのは見るけど、さすがに引いたわ。」

 香織が震えている。

「よくも....よくも....」
「え?」
「よくもやってくれたわねー!」

 香織が飛びかかろうとする。

「何よ!私に今なんかしたら明日言いふらすわよ?」

 麗花が嫌らしい笑みを浮かべている。

「嫌なら今日、明良の家来るでしょ?」
「....分かったわよ。」
(ふふっ、大成功♪)

 こうして、香織は不本意ながらお泊まりに参加することになった。

 その日の夜、バレー部の1年生全員が勝連家の明良の部屋に集合した。全員寝間着だ。いきなり麗花が王さまゲームをやりたいと言い出し、みながそれに賛同した。香織も渋々賛同する。最初の王さまは明良だ。

「えっと、2番が3番に、んー、デコピン!」
「やった!私2番だ!」

 鈴飛が嬉しそうに声をあげる。

「3番だーれ?」
「....私。」
「えー、香織!じゃ、遠慮なくいきまーす♪」

 鈴飛が割りと強めのデコピンをする。

「いった!」
「いぇーい!香織怒った?怒ってる?怒ってないよねー?」

 鈴飛は悪びれる様子もなく笑っている。次の王さまは貴夜になった。

「じゃあ、1番が王さまの、足を舐める!」

 すると爆笑が起こった。

「ちょっとあんた、自分の足の匂い嗅いだことあんのー?」
「何よそれ、失礼ね!そんなことより1番は誰よ?」

 鈴飛の文句を軽く流して貴夜が進める。すると、香織が手を挙げた。

「....私。」
「よし、香織!さぁ、おいで!」

 笑っている3人を尻目に、香織は覚悟を決めて貴夜の足に顔を近づける。

(うおぇ!臭っ!)

 貴夜の足の臭さは筋金入りだ。鈴飛の先ほどの発言は冗談ではなく、半ば本気である。ちなみに、本人は全く自覚していない。

「さ、香織!早く!」
(どういう神経してんのよこの女!絶対後で殺す!)

 香織は舌先で貴夜の足を舐める。

「おぇー!」

 そして4人がゲラゲラ笑う。

「んもう!失礼ねー。」
「さっ!早く次いきましょ!」
(この女もいつか殺す....)

 香織は貴夜と麗花への殺意を胸にくじを引く。次の王さまは麗花だ。

「よし!じゃあ、4番が王さまに×××する!」
「いやー!変態!」

 鈴飛が抗議するがその顔は笑っている。貴夜も明良もだ。しかし、香織は何やら青ざめている。

「私なんだけど....」
「え?」
「4番、私なんだけど....」
「えー、またあんたなのー!」

 香織を除いた4人が笑う。

「たぶん、今日は厄日なのね。じゃ、香織、おいで。」
「え?」
「え、じゃないわよ。」

 麗花がズボンと下着を膝まで下ろした。他の3人の奇声が上がる。

「怖がってないで、さ、早くしな。」

 香織は催促され、震えながら顔を少しずつ近づける。

「えー!まじー!」

 貴夜は携帯で動画を撮ろうとするも麗花に止められた。

「こんなことさせるのに恥ずかしいとかあるわけー?」
「うるさいわね!黙ってみてなさいよ!」

 香織は遂に、あと少しの所まで顔を近づけた。

「あー、鼻息が当たってるわ。×××ちゃうかも。」
「ちょっと、ここ私の部屋よ?やめてよねー。」

 しかし、明良も本気で抗議している訳ではないようだ。香織は恐る恐る舌先を伸ばす。

「さ、早く!私もうびしょびしょなんだよ?分かる?早く×××!」

 麗花が言った冗談にまた香織以外の全員が笑った。そして、

「ふ、ふ、ふざけるなー!」

 香織が遂に爆発した。

「あんたの××××毛むくじゃらの××××なんか舐めれるかー!」
「××××ってあんた失礼ね!私まだヤったことないんだけど!」
「うるさーい!」

 香織が怒りだしたのを見て全員が笑い転げる。なんとか香織を宥めて、次の行く。さすがに、これ以上香織に回ってくることはなかった。そして遂に、香織が王さまになる。

「じゃあ、麗花!携帯のエロ画像フォルダ見せなさいよ。」
「ちょっと!なんで名指しなのよ!」

 すると、貴夜がニヤニヤしながら口を挟む。

「いいじゃないの、楽しけりゃなんでも。」
「そうそう。どうせあんた、いっぱい持ってんでしょ。」

 鈴飛も同じくニヤニヤ笑っている。麗花もゴネたが観念して携帯を渡す。

「ふんだ!」

 全員が携帯の画面に集中する中、1人だけそっぽを向いてしまう。

「うわー、ないわー。」

 みんな好き勝手な感想を言い合う。

「理解できないわねー、ん?」

 香織が何かに気付いた。

「明良、あんたどうしたのよ?」

 明良は何やら顔を赤らめている。

「あんたもしかして下ネタ苦手なやつ?」
「いや、そういう訳ではないんだけどさ....」

 明良が少し照れながら答える。

「じゃあ、どうしたのよ?」
「いや、その、なんていうか....」

 要領を得ない回答が返ってくる。そして、鈴飛があることに気づく。

「分かった!あんたもしかしてムラムラしてんでしょ!」
「まさかそんなわけ....そうなの?」
「....うん。」

 本日何度目かの爆笑が起こる。麗花も笑っている。ただ、明良だけが顔を赤らめ、内股になり両手で股間を押さえている。

「さっさとトイレ行ってきなよ。」

 鈴飛が冗談っぽく言うと、

「....うん。ごめんね。」

 そう言って明良は部屋から出て行ってしまった。一瞬だけみんなポカンとしていたが、次第に笑いの渦になる。女たちの夜はまだまだ終わりそうにない。

つづく
 
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