青春〜或る少年たちの物語〜

Takaya

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第二章 燃え上がる日々

第九話 叶わぬ願い

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 お披露目式が終わり、将紘は祐士の家に来ていた。どうにかこうにかして手に入れた、泡盛を飲んでいる。

「幹部の2人はさすがだったな。」
「あぁ、あいつらには期待できるな。」

 今日の1年生たちの話をしている。

「しかしよぉ、恵弥はもう少し止めに入ってくると思ったんだが、何もしてこねぇとは思われるなかったな。」

 将紘は少々不満げに語る。しかし、祐士は違うようだ。

「いや、あいつはよ、昔から少々大人びてるところがあるからよ、もしかしたら、俺たちの目的とかお見通しだったのかもしれねぇ。」
「おいおい、だとしたらあいつ、なかなかのタマだぞ?」
「あぁ、俺は結構期待してるよ。あいつは大物になる。」

 その時、将紘の携帯が鳴る。桃子だ。祐士にも聞こえるぐらいの大きな声で怒鳴っている。しばらくして、会話が終わる。

「今日の貴哉とかいうチビ、桃子と知り合いみたいだぜ。」
「聞こえてたよ。」
「....それにしても、さすがにあいつ殴るのは辛かったぜ。」
「俺もだよ。」
「どう手加減すればいいのかも分かんねぇしよぉ、おまけにあの状況で言い返してくるもんだから、本当に俺が悪者みてぇでよぉ....」
「あぁ、お前はすっかり悪者だったよ。」

 そう言って祐士はゲラゲラ笑う。

「笑ってんじゃねぇよ!それにしても、ああいう奴にはこういう世界に来てほしくねぇよな。」
「おいおい。お前も随分丸くなったな。昔なら容赦なく血祭りだったのによ。」

 また祐士が笑い始めた。

「だから、笑うんじゃねぇって!」
「わりぃわりぃ。でもまあ、お前の言うとおりだよ。」

 祐士は少々寂しそうな顔になる。

物食わすど我が御主むぬくゆすどわーうしゅーか....俺たちはそんなリーダーにはなれそうにねぇな。」
「あぁ、どうかあいつらには、俺たちと同じ道は歩んでほしくねぇよな。」

 きっと、祐士たちより上の卒業生たちも同じことを願ってきたのだろう。しかし、それは叶わなかった。だからこそ、決して口には出せない願いを、彼らもまた後輩たちに託している。

「ところでよ、桃子ってなかなかおっぱい小さいよな。」

 祐士の発言に将紘は吹き出す。

「おいおい、何だよいきなり?」
「こないだよ、バレー部の部室のカーテンが少しだけ空いててな、チラッと見てみたらよ、桃子が着替えてたんだよ。」
「聞きたかねぇよ!変態!」

 将紘のうぶな反応がおもしろくて祐士は笑う。それから後は、そんなしょうもない話が夜中まで続いた。

つづく
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