19 / 47
第二章 燃え上がる日々
第四話 カウントダウン
しおりを挟む
部活動結成集会と時を同じくして、参加してない貴哉たちは野球部の部室でおしゃべりをしていた。灰皿にある新しい吸殻は彼らのものだ。
「なぁ、貴哉。」
「なんだよ音也?」
「お前、煙草似合わねぇな。」
「うるせぇよ。」
実は貴哉も喫煙者の仲間入りを果たした。これまでも何回か吸ったことはあるが、吸えたもんじゃない、と思っていた。しかし、「野球部ならば通る道」「最初は1ミリメンソールから」などの意味不明な同調圧力に敗北し、今ではマイルドセブン6ミリロングを吸っている。無論、伯亜たちにはまだ言ってない。
「でもよぉ、お前みたいので吸ってる奴なんてのは、伊志凪初じゃないのか?」
春樹がセブンスターを吸いながら問いかける。
「お前だってオタク初の喫煙者じゃねぇか。」
「誰がオタクだ!」
和やかな時間が流れる。貴哉も彼らとつるむようになって、その場の空気が分かるようになってきた。ついこの前までの、小学校時代の自分は黒歴史だと思い始めてる。
「端から見たらお前の方がオタクだろうが。」
「うるせぇ、俺はな、アイドルとアニメを生き甲斐にする気は更々ねぇよ。お前らと燃えるような熱い青春を過ごすんだよ!」
貴哉は今、別のタイプの黒歴史を更新中であることに気付いていない。そんな和やかな雰囲気の中、貴哉の携帯が鳴る。恵弥からだ。
「はいはい、どした?」
「あー、貴哉か?よかった、和人にかけても取らなかったからよぉ。」
「まじかよ?わりぃな。俺、今日の昼休み携帯取られたんだ。」
「らしいぜ。」
「....まぁ、いいや。それより今から神栄公園集合だからみんなに伝えてくれ。」
「あいよ。」
貴哉は電話を切ってそれを伝える。
「なぁ、何で公園行くんだよ。」
「お披露目式だよ。」
和人が答える。
「お披露目式だぁ?」
「あぁ、先輩たちの前で自己紹介するんだ。」
「ふーん。」
適当に答えながら、貴哉はその辺に置いた学ランを羽織る。
「そういえば学ランもそろそろいじりたいよな。」
「あほ、浮かれすぎだ。」
「あ、どういうことだよ?」
「....公園行けば分かるよ。」
和人はぶっきらぼうに答える。貴哉は嫌な予感がした。
(まぁ、自己紹介ならすぐ終わるだろ。)
貴哉はこれからやらされる自己紹介を、新しいクラスになった時や、初対面の同級生に会った時とかにするような、そんな程度のものだと考えていた。わざわざ公園でやる意味も分からない、そう思っている。
しかしその認識が間違いであることを、これから嫌というほど叩き込まれることになる。
地獄へのカウントダウンがもう始まっているのだ。
つづく
「なぁ、貴哉。」
「なんだよ音也?」
「お前、煙草似合わねぇな。」
「うるせぇよ。」
実は貴哉も喫煙者の仲間入りを果たした。これまでも何回か吸ったことはあるが、吸えたもんじゃない、と思っていた。しかし、「野球部ならば通る道」「最初は1ミリメンソールから」などの意味不明な同調圧力に敗北し、今ではマイルドセブン6ミリロングを吸っている。無論、伯亜たちにはまだ言ってない。
「でもよぉ、お前みたいので吸ってる奴なんてのは、伊志凪初じゃないのか?」
春樹がセブンスターを吸いながら問いかける。
「お前だってオタク初の喫煙者じゃねぇか。」
「誰がオタクだ!」
和やかな時間が流れる。貴哉も彼らとつるむようになって、その場の空気が分かるようになってきた。ついこの前までの、小学校時代の自分は黒歴史だと思い始めてる。
「端から見たらお前の方がオタクだろうが。」
「うるせぇ、俺はな、アイドルとアニメを生き甲斐にする気は更々ねぇよ。お前らと燃えるような熱い青春を過ごすんだよ!」
貴哉は今、別のタイプの黒歴史を更新中であることに気付いていない。そんな和やかな雰囲気の中、貴哉の携帯が鳴る。恵弥からだ。
「はいはい、どした?」
「あー、貴哉か?よかった、和人にかけても取らなかったからよぉ。」
「まじかよ?わりぃな。俺、今日の昼休み携帯取られたんだ。」
「らしいぜ。」
「....まぁ、いいや。それより今から神栄公園集合だからみんなに伝えてくれ。」
「あいよ。」
貴哉は電話を切ってそれを伝える。
「なぁ、何で公園行くんだよ。」
「お披露目式だよ。」
和人が答える。
「お披露目式だぁ?」
「あぁ、先輩たちの前で自己紹介するんだ。」
「ふーん。」
適当に答えながら、貴哉はその辺に置いた学ランを羽織る。
「そういえば学ランもそろそろいじりたいよな。」
「あほ、浮かれすぎだ。」
「あ、どういうことだよ?」
「....公園行けば分かるよ。」
和人はぶっきらぼうに答える。貴哉は嫌な予感がした。
(まぁ、自己紹介ならすぐ終わるだろ。)
貴哉はこれからやらされる自己紹介を、新しいクラスになった時や、初対面の同級生に会った時とかにするような、そんな程度のものだと考えていた。わざわざ公園でやる意味も分からない、そう思っている。
しかしその認識が間違いであることを、これから嫌というほど叩き込まれることになる。
地獄へのカウントダウンがもう始まっているのだ。
つづく
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
保健室の秘密...
とんすけ
大衆娯楽
僕のクラスには、保健室に登校している「吉田さん」という女の子がいた。
吉田さんは目が大きくてとても可愛らしく、いつも艶々な髪をなびかせていた。
吉田さんはクラスにあまりなじめておらず、朝のHRが終わると帰りの時間まで保健室で過ごしていた。
僕は吉田さんと話したことはなかったけれど、大人っぽさと綺麗な容姿を持つ吉田さんに密かに惹かれていた。
そんな吉田さんには、ある噂があった。
「授業中に保健室に行けば、性処理をしてくれる子がいる」
それが吉田さんだと、男子の間で噂になっていた。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる