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第一章 それぞれの出逢い
第三話 クラスメイト 2
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(あぁ、やっちまった、、)
入学式の次の日、貴哉は自分の席で項垂れていた。というのも昨日、ふと頭の中に浮かんだ明良のブルマ姿が忘れられなくて、夜にはとうとう魔が差してしまったのだ。心の中が罪悪感でいっぱいになり、ろくに明良の顔が見れない。そんな状態が3時間目まで続いた。そして、休み時間が始まるチャイムが鳴った頃、
「おい貴哉、どうした、そんな浮かない顔して」
貴哉の前の席の男子が話しかけてきた。彼の名は「池宮城 恭典」、真北小学校出身で貴哉とは従兄弟にあたる。だが、貴哉とは対称的にスポーツマンな上、身長が高く女子からの人気もある。小学校6年間は野球部だったようで、中学でも続けるような話を昨日の自己紹介の時にしていたが、その割りには髪の毛が長い、というより明るめで眉毛も心なしか細く見える。
「なんでもねーよ。」
「じゃあもっと笑えよ。せっかくの可愛い顔が台無しだぜ?」
「うるせーよ。」
「なぁ、そんか怖い顔すんなよ。せっかく従兄弟同士で同じクラスになれたんだからさ、もっと仲良くしようぜ。」
その時、1人の男子が恭典の机に座り込み話に入ってきた。
「おい恭典、仲良くなったんなら俺にも紹介してくれよ。」
彼の名は「篠原 音也」。恭典と同じ真北小出身で野球部だった男だ。彼もまた、中学でも野球部に入る旨の挨拶をしていたが、短い髪と眉毛を金に染め上げたその姿を見てそれを信じる者はいないだろう。
「あぁ、こいつな、俺の従兄弟で貴哉っていうんだ。」
「お前の従兄弟だぁ?こんな真面目そうな奴が?」
音也は少々怪訝そうな顔で貴哉を眺める。それを制止して恭典が言う。
「おいおい、あんまり怖がらせるなよ。貴哉、こいつは俺の小学校の友だちでな、名前は音也ってんだ。」
「おう、よろしくな!」
「うん、よろしく。」
「なんだよ、随分元気のねぇ奴だな。」
音也は基本的に活発なタイプの子とだけ遊んできた。それもあって、こういう静かなタイプが苦手なのだ。本当なここでもう関わらないことにしたいが、恭典の従兄弟ともなるとそうもいかない。そこで、普段は使わない頭を使い一つの提案をした。
「なぁ、俺4校時フケて部室行くけどお前らも来るか?どうせ、自己紹介とかだろ?そろそろ飽きるっての。」
「お、そりゃあいい。貴哉、お前どうする?」
「俺はいいよ。不良じゃないんだから。」
「あ?」
今の「不良」というフレーズに、音也がイラッときたようだ。彼もこういう身なりをしてる以上、不良という自覚がない訳ではないが、こういう真面目で大人しそうなタイプの奴に面と向かって「不良」呼ばわりされたのが頭にきたようだ。
「誰が不良だって?」
「お前らだよ。」
「喧嘩売ってんのか?」
「売ってねーよ。」
ちなみに、貴哉の方は本当に喧嘩を売ってるつもりはない。ただ、思ったこと、聞かれたことを素直に答えてるだけだ。
「まぁまぁ、2人とも、そんなに熱くなるなよな。貴哉の言うとおり、授業フケるのはよくないな、うん。昼休みに3人で行こう、な?」
恭典がなんとかして2人の間を取り持ったので、音也は不服そうではあったが自分の机に戻って行った。
(危ねぇ危ねぇ、久しぶりに会うもんだからすっかり忘れてた。こいつすげぇKYだったよなぁ。それにしても、音也もあんぐらいでキレんなよ。)
冷や汗を拭いながら貴哉の方を見ると何事もなかったかのような顔をしてる。対して音也の方はイライラオーラが周囲に漂っている。その時、後ろのドアから教室に戻ってきた男子が音也に近づき話かけた。
「おい、教室でそんな怖い顔すんなよ。みんな怖がってんじゃねぇか。」
「あー、すまねぇ、恵弥。」
彼の名は「玉元 恵弥」。彼もまた真北小出身で、恭典、音也とは野球部のチームメイトであり、キャプテンも務めた。その為、毎年バレンタインの日はチョコレートの数で恭典と互角の勝負を繰り広げるほどだ。そしてやはり、例のごとく、彼も野球を続けると挨拶していたがその割りには眉毛が細い。髪はまだ染めてはないがかなり長めで後ろを縛ってある。
「入学早々何があったんだよ?」
「あの、恭典の後ろの貴哉とかいうチビがよ、俺のこと舐めてんだよ!」
そう言われ、恵弥は貴哉の方に目を向ける。こっちの会話が聞こえてるのかは分からないが、なに食わぬ顔で教科書を並べている。
(あのチビか、確かに音也は嫌いそうだ。)
「なぁ音也、いくらなんでも泣かしたりすんなよ?」
「けっ、分かったよ!」
音也は吐き捨てるように言うと机の上に突っ伏した。
(はーあ、先が思いやられるよ)
つづく
入学式の次の日、貴哉は自分の席で項垂れていた。というのも昨日、ふと頭の中に浮かんだ明良のブルマ姿が忘れられなくて、夜にはとうとう魔が差してしまったのだ。心の中が罪悪感でいっぱいになり、ろくに明良の顔が見れない。そんな状態が3時間目まで続いた。そして、休み時間が始まるチャイムが鳴った頃、
「おい貴哉、どうした、そんな浮かない顔して」
貴哉の前の席の男子が話しかけてきた。彼の名は「池宮城 恭典」、真北小学校出身で貴哉とは従兄弟にあたる。だが、貴哉とは対称的にスポーツマンな上、身長が高く女子からの人気もある。小学校6年間は野球部だったようで、中学でも続けるような話を昨日の自己紹介の時にしていたが、その割りには髪の毛が長い、というより明るめで眉毛も心なしか細く見える。
「なんでもねーよ。」
「じゃあもっと笑えよ。せっかくの可愛い顔が台無しだぜ?」
「うるせーよ。」
「なぁ、そんか怖い顔すんなよ。せっかく従兄弟同士で同じクラスになれたんだからさ、もっと仲良くしようぜ。」
その時、1人の男子が恭典の机に座り込み話に入ってきた。
「おい恭典、仲良くなったんなら俺にも紹介してくれよ。」
彼の名は「篠原 音也」。恭典と同じ真北小出身で野球部だった男だ。彼もまた、中学でも野球部に入る旨の挨拶をしていたが、短い髪と眉毛を金に染め上げたその姿を見てそれを信じる者はいないだろう。
「あぁ、こいつな、俺の従兄弟で貴哉っていうんだ。」
「お前の従兄弟だぁ?こんな真面目そうな奴が?」
音也は少々怪訝そうな顔で貴哉を眺める。それを制止して恭典が言う。
「おいおい、あんまり怖がらせるなよ。貴哉、こいつは俺の小学校の友だちでな、名前は音也ってんだ。」
「おう、よろしくな!」
「うん、よろしく。」
「なんだよ、随分元気のねぇ奴だな。」
音也は基本的に活発なタイプの子とだけ遊んできた。それもあって、こういう静かなタイプが苦手なのだ。本当なここでもう関わらないことにしたいが、恭典の従兄弟ともなるとそうもいかない。そこで、普段は使わない頭を使い一つの提案をした。
「なぁ、俺4校時フケて部室行くけどお前らも来るか?どうせ、自己紹介とかだろ?そろそろ飽きるっての。」
「お、そりゃあいい。貴哉、お前どうする?」
「俺はいいよ。不良じゃないんだから。」
「あ?」
今の「不良」というフレーズに、音也がイラッときたようだ。彼もこういう身なりをしてる以上、不良という自覚がない訳ではないが、こういう真面目で大人しそうなタイプの奴に面と向かって「不良」呼ばわりされたのが頭にきたようだ。
「誰が不良だって?」
「お前らだよ。」
「喧嘩売ってんのか?」
「売ってねーよ。」
ちなみに、貴哉の方は本当に喧嘩を売ってるつもりはない。ただ、思ったこと、聞かれたことを素直に答えてるだけだ。
「まぁまぁ、2人とも、そんなに熱くなるなよな。貴哉の言うとおり、授業フケるのはよくないな、うん。昼休みに3人で行こう、な?」
恭典がなんとかして2人の間を取り持ったので、音也は不服そうではあったが自分の机に戻って行った。
(危ねぇ危ねぇ、久しぶりに会うもんだからすっかり忘れてた。こいつすげぇKYだったよなぁ。それにしても、音也もあんぐらいでキレんなよ。)
冷や汗を拭いながら貴哉の方を見ると何事もなかったかのような顔をしてる。対して音也の方はイライラオーラが周囲に漂っている。その時、後ろのドアから教室に戻ってきた男子が音也に近づき話かけた。
「おい、教室でそんな怖い顔すんなよ。みんな怖がってんじゃねぇか。」
「あー、すまねぇ、恵弥。」
彼の名は「玉元 恵弥」。彼もまた真北小出身で、恭典、音也とは野球部のチームメイトであり、キャプテンも務めた。その為、毎年バレンタインの日はチョコレートの数で恭典と互角の勝負を繰り広げるほどだ。そしてやはり、例のごとく、彼も野球を続けると挨拶していたがその割りには眉毛が細い。髪はまだ染めてはないがかなり長めで後ろを縛ってある。
「入学早々何があったんだよ?」
「あの、恭典の後ろの貴哉とかいうチビがよ、俺のこと舐めてんだよ!」
そう言われ、恵弥は貴哉の方に目を向ける。こっちの会話が聞こえてるのかは分からないが、なに食わぬ顔で教科書を並べている。
(あのチビか、確かに音也は嫌いそうだ。)
「なぁ音也、いくらなんでも泣かしたりすんなよ?」
「けっ、分かったよ!」
音也は吐き捨てるように言うと机の上に突っ伏した。
(はーあ、先が思いやられるよ)
つづく
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