変態少女と、転生失敗した僕が書くブログ

皐月 十次

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第四十四話 システムダウン

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 結局、夏の合宿はこれで終了だった。
 すけたら君たちはキャンプファイヤーや肝試し、夜の恋愛話を本気で期待していたようだけど、

「お前たちは子供か」

 と、呆れたようなステ娘教師に却下され、

「私はこれから仕事がある。お前たちは帰って記事の一つでも書いておけ」

 との追加課題を賜り、ならば仕方ないとアブラゼミの重奏に沸く並木道を通って僕らは寮に向かった。
 とはいえ、日帰り合宿でも十分に楽しめたらしい修子は未だにテンションが下がらない様子で、

「見ろ、イツキ。この日焼けの跡、白い水着を着ているみたいだぞ」

 巫女服の胸元を大きくはだけさせてくる。よしなさい、薄っぺらい胸の先っちょが見えちゃうでしょ。

「こっちもすごいぞ!」

 さらに巫女服の裾をまくって、小麦色の太ももと、水着で隠れていた部分の生白い肌と、真っ白いパンツのコントラストを披露してくる始末。
 はいはい、良かったね。放送禁止の恥部を晒さなければ、もう僕も気にしないよ。

「仮面しゃん、ボキュとしてはパンツは縞パンをきぼんぬ」

 キリっとしたキモ汚いスマイルで一人悦に入っている団子騎士君に、

「いい加減、キモイのはブログだけにしていただけます?」

 とイルカさんの凍てつく文句がアブラゼミのかなでと重なり、

「オレ様はTバックが好みだ」

「いいぞ、今度穿いてこよう」

「修子はTバックなんか持ってないでしょ?」

「なくてもTバックにすればいい」

 などと言いながらスカートの中に手を入れた修子に、

「さすがにそれはやめなさい」

 と軽めのチョップを脳天に落とす僕。
 そんな脱線に脱線を重ねた会話を続けつつ、西の空に傾き始めた夕陽に照らされて、アダルト科御一行の夏休みが過ぎていった。


 
 九月になれば暑さは和らぐ。

 というのは学園のメインコンピューターが気候を操作しているからであって、早々と涼しげな風が吹き始める頃に僕らは二学期の登校とあいなった。

「それでは……夏休みの成果を見せてもらおうか」

 開口一番。ステ娘教師が例の課題を持ち出し、僕らのアクセス数をチェックする。

「ふむ。すけとうだら、日野イルカ、団子騎士、お前たちはノルマ達成か」

 すけたら君たちはキッチリと「アクセス数を倍にしてくる」課題をクリアしていた。

「苦労したぜ……」

 と、目の下にドス黒いクマを貼り付けて半笑いするのはすけたら君。だいぶ寝不足気味に見えるのは……追い込み型なんだろうね。分かるよ、ていうか、似合うよ。そういうの。
 イルカさんも団子騎士君もホッと胸を撫でおろしているようだ。

「次はモモイロだが……まあ、お前は元々アクセス数が低かったからな。せめて十倍くらいになっているかと期待したが」

 そんな皮肉交じりに言われた僕も、アクセス数を2500まで伸ばしてノルマクリア。
 たしかに元々低かったからね。それでも1000アクセスから2500まで伸ばした僕も、若干の寝不足はいなめません。頑張って書いたんですよ、特にこの三日間は。

「最後は仮面修子だな。どれ……」

 夏休み前に9万8千アクセスがあった修子のノルマは、約20万アクセス。それだけのアクセスを短期間で稼ぐのは容易ではないはずだ。
 真剣な面持ちでステ娘教師のアクセスチェックを受ける修子。どことなく自信がなさそうに俯いているが、キツネのお面がニヤニヤしているのを見ると……

「ほう、48万アクセスか。リンクシステム無しで、大したものだ」

 なんと夏休みの間、必ず一日一記事は書いていたものの、それ以外の時間はエロサイトの巡回にばかり精を出していた修子のアクセスは、二倍どころか五倍に届こうかという跳ね上がりっぷりだった。

「にししっ……」

 こにきてようやくニヤけ顔を漏らす修子だけど、キツネ面の表情で最初からバレてるんだよね。僕には。
 全員がめでたくノルマクリアできたので、

「それじゃあ、オレらのリンクシステムを戻してくださいよ。あれが無いとアクセス増加が遅くて……」

 すけたら君はリンクシステムを戻してくれと片手拝みをした。アクセス数が報酬になる僕らにとっては、リンクシステムの有無は死活問題だからね。
 あ、「僕ら」とは言ったけど、正確には「僕以外」ね。僕はリンクシステムを持ってないから。
 しかしステ娘教師は突然に声のトーンを落とすと、

「リンクシステムはメンテナンス中だ。……まだ復旧の目途めどは立っていない」

 僕らから目を逸らし、教卓の隅を見つめるのだった。
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