変態少女と、転生失敗した僕が書くブログ

皐月 十次

文字の大きさ
上 下
31 / 78

第三十一話 仮面スパム修子

しおりを挟む
 期末試験の翌日、修子の活躍に沸くアダルト科の教室では、

「やったな、仮面ちゃん!」

「あのドッグマスターあっくんに勝つなんて、本当にすごいですわ!」

「ボキュと握手してほしいんだな!」

 すけたら君にイルカさん、団子騎士君が大はしゃぎだった。しかし担任のステ娘教師は「私は今日は忙しい、適当に自習していろ」という投げやりなメールをよこしてから音信不通。
 おかげで僕らは修子を祝っての祝賀会を催していた。あくまで自習の一環として。

「これで仮面ちゃんは名実共に一年生のトップになったわけだな」

 すけたら君が修子のパソコンを覗き込み、アクセスカウンターの増加量を眺めながら「秒で増えてくぞ、スゲー!」とオーバーリアクションをご披露してくれる。
 皆で修子のモニターにくぎ付けになりながら、

「これだけリンクシステムが付いてると、一日でどれだけアクセスされるんですの?」

「んんん……ボキュもイルカしゃんと直リンクしたいお」

「ちょっと、汚らわしいこと言わないで!」

 などと、なぜかアダルト科全員でテンションが上がっている始末。
 かくいう僕は今回もまったくいいところなく試験を終えたわけで、だからというわけではないけれど、みんなのハイテンションの輪に交われず閑散とした教室内の窓際に座ってぼんやりと外の景色をただ眼の中に映していた。

 ――お前はどうしてブログを書いているんだ?

 ステ娘教師はあの時、僕にそう言っていた。そして、

 ――いずれ、分かる日が来る。バズリティーはその時に見えてくる。

 あれは「今はまだいい。お前が楽しくブログを書いているなら」と、言われたような気がした。
 僕がブログを書く理由……か。

「ところでよ、仮面ちゃんはどうしてブログをやろうって思ったんだよ」

 ふいに、すけたら君が修子に尋ねた。僕は一瞬、自分の心の中を読まれたのかと心臓をドキンと鳴らした。

「仮面ちゃんは元々コメント専門だったんだろ? コメ専のやつらってさ、他人のブログを読むのが好きで自分で書こうとは思わないらしいじゃん?」

「そうですわね。ワタクシも仲の良いコメ専さんに自分でも書いてみてはと勧めたことがありますけれど、書くよりも読んでる方がいい、と言われますわ」

「ボキュも、コアなブロガー仲間が欲しいから誘ったことがあるお」

「アナタは黙ってなさい。そんな淫猥でマニアックでキワモノなブロガーはこれ以上いなくていいわよ」

 イルカさん、それ言い過ぎ。

「ん~……たしかにアタシはコメ専だったけど、ブログを書こうとしてこの学園に来たわけじゃないんだ」

 それを聞いた一同が、頭の上に「?」マークを浮かべる。そりゃそうだ、だってここはWeblog専門学校なんだから。入学生は自分の意思で申し込んで来てるんだから。何も知らずに入学してきたのは僕らだけだよ。
 別に聞き耳を立てるわけじゃなくすぐそばの会話が聞こえてきてしまうので、僕の思考回路はツッコミ専門だった。

「じゃあどうしてここに入学したんだよ。勉強が好き……って感じでもなさそうだしな」

 いやいや、すけたら君。こう見えて修子は、高校時代は学年トップクラスの秀才だったんですよ。勉強してる姿なんて見たことないけどね。

「新しいことを学ぶため、ですの?」

「いや、そうじゃなくて」

 そこで修子は「ん~」とうなり声をあげ、ぼんやりと窓の外を眺めている(ふうを装っている)僕の隣でこう言い放った。

「イツキと一緒にいたかったから、ちょうどいいと思って入学した」

「「えええっ!?」」

 ガタタっと音を立ててすけたら君たちが総立ちになると同時に、実は話を全部聞いていた僕も机と椅子を吹っ飛ばす勢いで起立してしまった。

「ちょっと修子、何言ってん……」

「だあぁぁっ! やっぱりそうだったのか!」

 いや、すけたら君。お願いだから待って――

「一緒に入学してきて、いつも一緒にいるからそうかもと思ってましたが……」

 あの、イルカさん。勘違いしないで――

「仮面しゃんはてっきりボキュの嫁だと……」

「「なワケあるか!」ないでしょ!」

 うん、団子騎士君。それはないよ。あと「仮面しゃん」って……

「修子、変なこと言わないでよ。みんなが勘違いしちゃうでしょ?」

「ん? 何を勘違いするんだ? 別にいいじゃないか、昨日だって一緒に寝ただろ」

「「「なぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!?」」」

 修子の爆弾発言はテラバイト級のスパムウイルスとなって教室内に感染する。

 すけたら君はスペックの低いゲームのようにカクカク動きだし、イルカさんはオーバーヒートしたハードディスクのように頭から湯気をあげ、団子騎士君は電池の切れたワイヤレスマウスのように反応がなくなり――

 僕の頭の中はフリーズした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

のほほん異世界暮らし

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。 それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

異世界転生ファミリー

くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?! 辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。 アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。 アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。 長男のナイトはクールで賢い美少年。 ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。 何の不思議もない家族と思われたが…… 彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

とあるおっさんのVRMMO活動記

椎名ほわほわ
ファンタジー
VRMMORPGが普及した世界。 念のため申し上げますが戦闘も生産もあります。 戦闘は生々しい表現も含みます。 のんびりする時もあるし、えぐい戦闘もあります。 また一話一話が3000文字ぐらいの日記帳ぐらいの分量であり 一人の冒険者の一日の活動記録を覗く、ぐらいの感覚が お好みではない場合は読まれないほうがよろしいと思われます。 また、このお話の舞台となっているVRMMOはクリアする事や 無双する事が目的ではなく、冒険し生きていくもう1つの人生が テーマとなっているVRMMOですので、極端に戦闘続きという 事もございません。 また、転生物やデスゲームなどに変化することもございませんので、そのようなお話がお好みの方は読まれないほうが良いと思われます。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

2回目の人生は異世界で

黒ハット
ファンタジー
増田信也は初めてのデートの待ち合わせ場所に行く途中ペットの子犬を抱いて横断歩道を信号が青で渡っていた時に大型トラックが暴走して来てトラックに跳ね飛ばされて内臓が破裂して即死したはずだが、気が付くとそこは見知らぬ異世界の遺跡の中で、何故かペットの柴犬と異世界に生き返った。2日目の人生は異世界で生きる事になった

処理中です...