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第三十一話 仮面スパム修子
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期末試験の翌日、修子の活躍に沸くアダルト科の教室では、
「やったな、仮面ちゃん!」
「あのドッグマスターあっくんに勝つなんて、本当にすごいですわ!」
「ボキュと握手してほしいんだな!」
すけたら君にイルカさん、団子騎士君が大はしゃぎだった。しかし担任のステ娘教師は「私は今日は忙しい、適当に自習していろ」という投げやりなメールをよこしてから音信不通。
おかげで僕らは修子を祝っての祝賀会を催していた。あくまで自習の一環として。
「これで仮面ちゃんは名実共に一年生のトップになったわけだな」
すけたら君が修子のパソコンを覗き込み、アクセスカウンターの増加量を眺めながら「秒で増えてくぞ、スゲー!」とオーバーリアクションをご披露してくれる。
皆で修子のモニターにくぎ付けになりながら、
「これだけリンクシステムが付いてると、一日でどれだけアクセスされるんですの?」
「んんん……ボキュもイルカしゃんと直リンクしたいお」
「ちょっと、汚らわしいこと言わないで!」
などと、なぜかアダルト科全員でテンションが上がっている始末。
かくいう僕は今回もまったくいいところなく試験を終えたわけで、だからというわけではないけれど、みんなのハイテンションの輪に交われず閑散とした教室内の窓際に座ってぼんやりと外の景色をただ眼の中に映していた。
――お前はどうしてブログを書いているんだ?
ステ娘教師はあの時、僕にそう言っていた。そして、
――いずれ、分かる日が来る。バズリティーはその時に見えてくる。
あれは「今はまだいい。お前が楽しくブログを書いているなら」と、言われたような気がした。
僕がブログを書く理由……か。
「ところでよ、仮面ちゃんはどうしてブログをやろうって思ったんだよ」
ふいに、すけたら君が修子に尋ねた。僕は一瞬、自分の心の中を読まれたのかと心臓をドキンと鳴らした。
「仮面ちゃんは元々コメント専門だったんだろ? コメ専のやつらってさ、他人のブログを読むのが好きで自分で書こうとは思わないらしいじゃん?」
「そうですわね。ワタクシも仲の良いコメ専さんに自分でも書いてみてはと勧めたことがありますけれど、書くよりも読んでる方がいい、と言われますわ」
「ボキュも、コアなブロガー仲間が欲しいから誘ったことがあるお」
「アナタは黙ってなさい。そんな淫猥でマニアックでキワモノなブロガーはこれ以上いなくていいわよ」
イルカさん、それ言い過ぎ。
「ん~……たしかにアタシはコメ専だったけど、ブログを書こうとしてこの学園に来たわけじゃないんだ」
それを聞いた一同が、頭の上に「?」マークを浮かべる。そりゃそうだ、だってここはWeblog専門学校なんだから。入学生は自分の意思で申し込んで来てるんだから。何も知らずに入学してきたのは僕らだけだよ。
別に聞き耳を立てるわけじゃなくすぐそばの会話が聞こえてきてしまうので、僕の思考回路はツッコミ専門だった。
「じゃあどうしてここに入学したんだよ。勉強が好き……って感じでもなさそうだしな」
いやいや、すけたら君。こう見えて修子は、高校時代は学年トップクラスの秀才だったんですよ。勉強してる姿なんて見たことないけどね。
「新しいことを学ぶため、ですの?」
「いや、そうじゃなくて」
そこで修子は「ん~」とうなり声をあげ、ぼんやりと窓の外を眺めている(ふうを装っている)僕の隣でこう言い放った。
「イツキと一緒にいたかったから、ちょうどいいと思って入学した」
「「えええっ!?」」
ガタタっと音を立ててすけたら君たちが総立ちになると同時に、実は話を全部聞いていた僕も机と椅子を吹っ飛ばす勢いで起立してしまった。
「ちょっと修子、何言ってん……」
「だあぁぁっ! やっぱりそうだったのか!」
いや、すけたら君。お願いだから待って――
「一緒に入学してきて、いつも一緒にいるからそうかもと思ってましたが……」
あの、イルカさん。勘違いしないで――
「仮面しゃんはてっきりボキュの嫁だと……」
「「なワケあるか!」ないでしょ!」
うん、団子騎士君。それはないよ。あと「仮面しゃん」って……
「修子、変なこと言わないでよ。みんなが勘違いしちゃうでしょ?」
「ん? 何を勘違いするんだ? 別にいいじゃないか、昨日だって一緒に寝ただろ」
「「「なぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!?」」」
修子の爆弾発言はテラバイト級のスパムウイルスとなって教室内に感染する。
すけたら君はスペックの低いゲームのようにカクカク動きだし、イルカさんはオーバーヒートしたハードディスクのように頭から湯気をあげ、団子騎士君は電池の切れたワイヤレスマウスのように反応がなくなり――
僕の頭の中はフリーズした。
「やったな、仮面ちゃん!」
「あのドッグマスターあっくんに勝つなんて、本当にすごいですわ!」
「ボキュと握手してほしいんだな!」
すけたら君にイルカさん、団子騎士君が大はしゃぎだった。しかし担任のステ娘教師は「私は今日は忙しい、適当に自習していろ」という投げやりなメールをよこしてから音信不通。
おかげで僕らは修子を祝っての祝賀会を催していた。あくまで自習の一環として。
「これで仮面ちゃんは名実共に一年生のトップになったわけだな」
すけたら君が修子のパソコンを覗き込み、アクセスカウンターの増加量を眺めながら「秒で増えてくぞ、スゲー!」とオーバーリアクションをご披露してくれる。
皆で修子のモニターにくぎ付けになりながら、
「これだけリンクシステムが付いてると、一日でどれだけアクセスされるんですの?」
「んんん……ボキュもイルカしゃんと直リンクしたいお」
「ちょっと、汚らわしいこと言わないで!」
などと、なぜかアダルト科全員でテンションが上がっている始末。
かくいう僕は今回もまったくいいところなく試験を終えたわけで、だからというわけではないけれど、みんなのハイテンションの輪に交われず閑散とした教室内の窓際に座ってぼんやりと外の景色をただ眼の中に映していた。
――お前はどうしてブログを書いているんだ?
ステ娘教師はあの時、僕にそう言っていた。そして、
――いずれ、分かる日が来る。バズリティーはその時に見えてくる。
あれは「今はまだいい。お前が楽しくブログを書いているなら」と、言われたような気がした。
僕がブログを書く理由……か。
「ところでよ、仮面ちゃんはどうしてブログをやろうって思ったんだよ」
ふいに、すけたら君が修子に尋ねた。僕は一瞬、自分の心の中を読まれたのかと心臓をドキンと鳴らした。
「仮面ちゃんは元々コメント専門だったんだろ? コメ専のやつらってさ、他人のブログを読むのが好きで自分で書こうとは思わないらしいじゃん?」
「そうですわね。ワタクシも仲の良いコメ専さんに自分でも書いてみてはと勧めたことがありますけれど、書くよりも読んでる方がいい、と言われますわ」
「ボキュも、コアなブロガー仲間が欲しいから誘ったことがあるお」
「アナタは黙ってなさい。そんな淫猥でマニアックでキワモノなブロガーはこれ以上いなくていいわよ」
イルカさん、それ言い過ぎ。
「ん~……たしかにアタシはコメ専だったけど、ブログを書こうとしてこの学園に来たわけじゃないんだ」
それを聞いた一同が、頭の上に「?」マークを浮かべる。そりゃそうだ、だってここはWeblog専門学校なんだから。入学生は自分の意思で申し込んで来てるんだから。何も知らずに入学してきたのは僕らだけだよ。
別に聞き耳を立てるわけじゃなくすぐそばの会話が聞こえてきてしまうので、僕の思考回路はツッコミ専門だった。
「じゃあどうしてここに入学したんだよ。勉強が好き……って感じでもなさそうだしな」
いやいや、すけたら君。こう見えて修子は、高校時代は学年トップクラスの秀才だったんですよ。勉強してる姿なんて見たことないけどね。
「新しいことを学ぶため、ですの?」
「いや、そうじゃなくて」
そこで修子は「ん~」とうなり声をあげ、ぼんやりと窓の外を眺めている(ふうを装っている)僕の隣でこう言い放った。
「イツキと一緒にいたかったから、ちょうどいいと思って入学した」
「「えええっ!?」」
ガタタっと音を立ててすけたら君たちが総立ちになると同時に、実は話を全部聞いていた僕も机と椅子を吹っ飛ばす勢いで起立してしまった。
「ちょっと修子、何言ってん……」
「だあぁぁっ! やっぱりそうだったのか!」
いや、すけたら君。お願いだから待って――
「一緒に入学してきて、いつも一緒にいるからそうかもと思ってましたが……」
あの、イルカさん。勘違いしないで――
「仮面しゃんはてっきりボキュの嫁だと……」
「「なワケあるか!」ないでしょ!」
うん、団子騎士君。それはないよ。あと「仮面しゃん」って……
「修子、変なこと言わないでよ。みんなが勘違いしちゃうでしょ?」
「ん? 何を勘違いするんだ? 別にいいじゃないか、昨日だって一緒に寝ただろ」
「「「なぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!?」」」
修子の爆弾発言はテラバイト級のスパムウイルスとなって教室内に感染する。
すけたら君はスペックの低いゲームのようにカクカク動きだし、イルカさんはオーバーヒートしたハードディスクのように頭から湯気をあげ、団子騎士君は電池の切れたワイヤレスマウスのように反応がなくなり――
僕の頭の中はフリーズした。
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