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第二十五話 穴があったら入りたい

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 こんにちは、モモイロイツキです。
 アダルトブログに慣れていないので更新が少なかったですが、今日から頑張って書いていこうと思います。サボると隣のエロマスターに服を剥かれちゃうからね。
 せめてパンツだけは死守しないと(笑)

 昨日、記事の参考になるものがないかと書店に行きました。そこで見つけたのが『君の喘ぎは、僕の快感/新朝文庫』っていう官能小説。男女の交わりを感情たっぷりに書いてる本を棒立ちのまま夢中で読んでいたら、後ろを通りかかった人が「クスッ」って笑ってきた。
 こういうのって、なんか恥ずかしいよね。

 穴があったら入りたい。
 
 

「ど、どうかな」

 新しい記事が書けたら、まず修子に見てもらう。率直な感想を言ってくれるのが、修子の良いところだ。

「イツキ」

「今回は、僕なりに頑張ったと思うんだけど……」

「イマイチだな。30点」

「よしっ! 赤点回避!」

 とガッツポーズをとってみたけれど、ついつい高校のテスト基準で考えてしまったぞ、僕は。30点なんてクラスでビリになるような点数なのに、最初の記事が5点、次が10点だったから、今回の30点が大幅にアップしたように錯覚しちゃったんだよね。
 赤点回避なんて勘違いもいいところ。ああ、恥ずかしい。穴があったら入りたい。

「いいか、イツキ。アダルトブログに来るヤツはエロを見に来るんだ。イツキが恥ずかしがって真面目に書いてたら、期待外れじゃないか」

「う~ん、たしかに」

「内容は悪くないんだから、もっとぶっちゃけて書いた方が良くなるぞ」

 そう言って修子は、僕の文章を直し始める。
 

 
 こんにちは、穴があったら入りたいモモイロイツキです。
 お願い。先っちょだけ、先っちょだけ!
 アダルトブログに慣れていないので更新が少なかったですが、そろそろ自分の膜を破って書いていこうと思います。サボると隣のエロマスターに服を剥かれちゃうからね。
 ああっ、せめてパンツだけは……パンツだけは自分で脱がせてっ!

 昨日、記事の参考になるものがないかとエロ本屋に行きました。そこで見つけたのが『君の喘ぎは、僕の快感』っていうエロ小説。
 出会った男女が本能のままに交わっていき――そうだ、感情なんて必要ないんだ!
 桜の花びらが雨露に濡れ、ひとつ喘ぐたびに僕の快感も――

 ン゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ッ!!

(過激すぎるので割愛)

 夢中で読みふける僕が棒立ちのまま反り返ると、通りかかった人が「ックス」って笑ってた。
 僕は別に恥ずかしくないけれど、穴があったら入りたい。
 

 
「穴があったら入りたいの使い方、間違ってる!?」

「いや、合ってるぞ」

「合ってないよ! それに先っちょだけっておかしいでしょ!?」

「ん? イツキはそれじゃ満足しないのか?」

「そ、そ、そういう意味じゃなくて!」

 僕は自分の顔が熱風に吹かれているように熱かった。石油ストーブの前でチンチンと焼かれているような感覚。こんな恥ずかしい記事を公開したら、それこそ僕は変態エロブロガーだよ。

「何言ってるんだイツキ。アタシたちが目指してるのは超変態のエロブロガーじゃないか」

「超変態が付くのは修子だけでいい!」

 このままの文章で公開したら、どう見ても僕の書いたものじゃないってバレちゃうからね。百万歩譲って「穴があったら」と「先っちょ」は残すとして、他の部分は自分の文章に変えて――

「これでいいかな」

「まあ、45点だな」

 30点から45点にアップした修子の辛口評価。記事を書くのは難しいけれど、修子に手伝ってもらって、少しずつ自分の個性を見つけていければいいのかな。

 そんな感じで、先っちょだけではないブログの奥深さを知る僕だった。
 

 
 修子曰く「45点」の記事を公開した翌日。僕のブログは、

 アクセス数:169
 応援ポイント:2
 ブックマーク:1

「修子! 僕のブログにブックマークが付いてる!」

「うん。応援ポイントも付いてるな」

 誰かが僕のブログを「面白い」と思ってくれたんだ。たった一つのブックマークだけれど、それは記事をちゃんと読んでくれた証拠であって、

「つまりイツキのファンができたってことだな」

「これで次の記事を書けば、ブックマークの人が見に来てくれるかもしれないんでしょ?」

「ブクマすると、新着記事の通知が飛ぶからな。そうやってブクマが増えていけば、アクセス数も同じだけ増えるかもしれない。記事が面白ければ、応援ポイントも貰えるかもしれないんだ」

 ブログの数値は連鎖する。と修子は言いたいらしい。

「ところで、修子のブログはどうなの? 毎日更新してブックマークは増えてる?」

 僕はひょいと、修子のパソコンを覗いてみた。

 アクセス数:27780
 応援ポイント:2040
 ブックマーク:2310

「何、この数字!?」

 なんと修子の数値は、試験の時から10倍近くに跳ね上がっていた。試験ではアクセス数値が十分の一になるから、これをパラメーターにするとすべての数値が二千以上。あの時のドッグマスターあっくんよりも高い数値になっているじゃないか。

「ああ、この間の試験でリンクシステムが付いたからな」

 リンクシステムとは、定期試験で対戦相手に勝利すると、相手のページに勝者の記事がリンクされる機能らしい。
 前回の試験で修子の対戦相手だった疾走くん。今、疾走くんのブログページには修子のブログページがリンクされていて、疾走くんのブログにアクセスすると修子のブログにも同時にアクセスされる。

「これで次の試験までは疾走くんのページとアタシのページがリンクしてるから、疾走くんのアクセス数がそのままアタシにも乗っかってくるんだ」

 リンクシステムは、ジャンルの違うブログを幅広く見てもらうための白雪学園独自の機能。アクセス数の多いブロガーに勝てば、より多くのアクセス数を稼ぐことができるし、応援ポイントやブックマークも貰えるかもしれない。
 そうか。だから試験の時にドッグマスターあっくんは、

 ――こんな、ボクにとって得のない試験は想定外です。報酬のリンクシステムが得られないなんて、ボクのブログ運営には無用のバトルでしたよ。

 僕を対戦相手にしたステ娘教師に不満を漏らしていたんだ。
 僕みたいなアクセス数の少ない相手に勝っても、リンクシステムであっくんのアクセス数が増える見込みがないから。
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