17 / 78
第十七話 キツネのお面は見抜いている
しおりを挟む
ステ娘教師は舞台に上がり、中央へ歩いていく。どうやら僕らの試験の立ち会いを務めるらしい。
「おおっ! やっとアタシの出番か!」
嬉々として目を輝かせる修子。
「よし! オレ様の活躍、見せてやるぜ!」
揚々とノートパソコンを立ち上げるすけたら君。
「ワタクシの美しさをご披露する時が来ましたわ!」
「ボキュのマニアックさは誰にも負けないんだな!」
イルカさんも団子騎士君も、声高に意気込む。
でも僕は違った。これまでの対戦を見て、僕のブログが太刀打ちできるとは到底思えないからだ。僕なんて、数値が見えた瞬間に笑いものにされるだろう。
そんな自信のなさから、僕は自分のブログがとても情けないものに思えてしまった。
「よし、まずは――すけとうだらEX、お前からだ」
立ち会いのステ娘教師がトップバッターに指名したのは、すけたら君。
「おっしゃ! オレ様がアダルト科の斬り込み隊長だぜ」
すけたら君は勢いよく舞台に上がり、ノートパソコンをセットする。頭上に現れたパラメーターは、
HN:すけとうだらEX
ATK:310
DEF:180
VIT:390
Buz:完全無ケツのオレ様
DEF(応援ポイント)が少し低いけど、まずまず平均的。『完全無ケツのオレ様』っていうバズリティーが、いかにもすけたら君らしい。相手のパラメーターも平均的で、これはいい勝負になりそうだ。
でも、僕の頭はすけたら君の勝負には向けられなかった。たった二つだけの記事、それも挨拶程度の簡単な内容。そんな僕の『変態少女と、転生失敗した僕が書くブログ』は、「何か書かなきゃ」と思って無理やりキーボードを叩いただけのもの。応援ポイントもブックマークもゼロっていうのが、僕のやる気の無さが伝わっている気がした。
「どうした? イツキ」
隣で観戦している修子が、僕の気持ちを察したように声を掛けてくる。が、その視線は舞台で攻防を繰り広げるすけたら君と対戦相手のバズリティーを追っていた。
「みんなこの学園に来て、たくさん記事を書いて、たくさん応援してもらってさ。すごいなって」
「イツキはどうなんだ?」
「僕は……僕にはやっぱり、向いてないのかな」
僕のブログのアクセスカウンターは、日に数回しか動かない。僕のブログを見に来る人はいない。
「それは違うぞ」
「え?」
周囲から歓声が上がり、舞台ですけたら君がガッツポーズを取った。どうやら、すけたら君が勝ったようだ。
「イツキはここに来た時と変わってないぞ。自分の膜を破れてない」
続いて、イルカさんが舞台に上がり、ステ娘教師の掛け声で対戦が始まる。
「僕が、変わってない?」
「ああ。何も変わってない。イツキは出来ないんじゃない、やらないだけなんだ」
「だって、僕にアダルトブログは無理なんだ。何も知らずにここへ来て、いきなり押し付けられても出来るわけないじゃないか」
「ほら、また。やってないのに、出来ないって」
修子はこちらを振り向こうとはしなかった。まるで僕の目を見たくないと言いたげに、視線を前に向けたままでいる。その横顔にあるキツネのお面が、僕を睨んでいるようだった。
「よしっ、いいぞ!」「あと少しなんだな!」
すけたら君と団子騎士君が、イルカさんを応援する声が響く。二人の声援には熱が入っていた。
やがて「それまで!」っとステ娘教師が手を上げる。イルカさんも勝利をもぎ取り、次は団子騎士君が舞台へ上がる。
「イツキは、このまま諦めて何をするんだ? 今いるところから逃げ出して、次は何が出来るんだ?」
修子の声は冷たかった。高校での三年間、ずっと一緒に過ごしてきた修子とは別人のように、遠慮も容赦もない言葉が僕の頬を殴りつけているようだった。
「出来ないことを放り投げてばかりじゃ何も変わらない。イツキのやる気を見せてみろ」
「僕の……やる気?」
「ああ、そうだ。アタシのやる気は見せてやる」
と言って修子はようやく僕の方を向くと「ほれ」っと、自分のセーラー服のスカートを両手で捲ってみせた。
「――――っ!? なんでスカート捲るの!?」
「にししっ! 安心しろ。パンツは穿いてる」
修子は真っ白な下着を見せて僕を赤面させると、ハラリと手を離した。他の生徒たちは舞台の対戦に注目してたようで、こんな場所でスカートを捲ってみせた修子を気に留めることもない。
「お、どうやらエロ団子も勝ったみたいだな。それじゃ、次はアタシが行ってくる」
華奢な身体をひるがえし、修子は舞台へと上がっていった。
「おおっ! やっとアタシの出番か!」
嬉々として目を輝かせる修子。
「よし! オレ様の活躍、見せてやるぜ!」
揚々とノートパソコンを立ち上げるすけたら君。
「ワタクシの美しさをご披露する時が来ましたわ!」
「ボキュのマニアックさは誰にも負けないんだな!」
イルカさんも団子騎士君も、声高に意気込む。
でも僕は違った。これまでの対戦を見て、僕のブログが太刀打ちできるとは到底思えないからだ。僕なんて、数値が見えた瞬間に笑いものにされるだろう。
そんな自信のなさから、僕は自分のブログがとても情けないものに思えてしまった。
「よし、まずは――すけとうだらEX、お前からだ」
立ち会いのステ娘教師がトップバッターに指名したのは、すけたら君。
「おっしゃ! オレ様がアダルト科の斬り込み隊長だぜ」
すけたら君は勢いよく舞台に上がり、ノートパソコンをセットする。頭上に現れたパラメーターは、
HN:すけとうだらEX
ATK:310
DEF:180
VIT:390
Buz:完全無ケツのオレ様
DEF(応援ポイント)が少し低いけど、まずまず平均的。『完全無ケツのオレ様』っていうバズリティーが、いかにもすけたら君らしい。相手のパラメーターも平均的で、これはいい勝負になりそうだ。
でも、僕の頭はすけたら君の勝負には向けられなかった。たった二つだけの記事、それも挨拶程度の簡単な内容。そんな僕の『変態少女と、転生失敗した僕が書くブログ』は、「何か書かなきゃ」と思って無理やりキーボードを叩いただけのもの。応援ポイントもブックマークもゼロっていうのが、僕のやる気の無さが伝わっている気がした。
「どうした? イツキ」
隣で観戦している修子が、僕の気持ちを察したように声を掛けてくる。が、その視線は舞台で攻防を繰り広げるすけたら君と対戦相手のバズリティーを追っていた。
「みんなこの学園に来て、たくさん記事を書いて、たくさん応援してもらってさ。すごいなって」
「イツキはどうなんだ?」
「僕は……僕にはやっぱり、向いてないのかな」
僕のブログのアクセスカウンターは、日に数回しか動かない。僕のブログを見に来る人はいない。
「それは違うぞ」
「え?」
周囲から歓声が上がり、舞台ですけたら君がガッツポーズを取った。どうやら、すけたら君が勝ったようだ。
「イツキはここに来た時と変わってないぞ。自分の膜を破れてない」
続いて、イルカさんが舞台に上がり、ステ娘教師の掛け声で対戦が始まる。
「僕が、変わってない?」
「ああ。何も変わってない。イツキは出来ないんじゃない、やらないだけなんだ」
「だって、僕にアダルトブログは無理なんだ。何も知らずにここへ来て、いきなり押し付けられても出来るわけないじゃないか」
「ほら、また。やってないのに、出来ないって」
修子はこちらを振り向こうとはしなかった。まるで僕の目を見たくないと言いたげに、視線を前に向けたままでいる。その横顔にあるキツネのお面が、僕を睨んでいるようだった。
「よしっ、いいぞ!」「あと少しなんだな!」
すけたら君と団子騎士君が、イルカさんを応援する声が響く。二人の声援には熱が入っていた。
やがて「それまで!」っとステ娘教師が手を上げる。イルカさんも勝利をもぎ取り、次は団子騎士君が舞台へ上がる。
「イツキは、このまま諦めて何をするんだ? 今いるところから逃げ出して、次は何が出来るんだ?」
修子の声は冷たかった。高校での三年間、ずっと一緒に過ごしてきた修子とは別人のように、遠慮も容赦もない言葉が僕の頬を殴りつけているようだった。
「出来ないことを放り投げてばかりじゃ何も変わらない。イツキのやる気を見せてみろ」
「僕の……やる気?」
「ああ、そうだ。アタシのやる気は見せてやる」
と言って修子はようやく僕の方を向くと「ほれ」っと、自分のセーラー服のスカートを両手で捲ってみせた。
「――――っ!? なんでスカート捲るの!?」
「にししっ! 安心しろ。パンツは穿いてる」
修子は真っ白な下着を見せて僕を赤面させると、ハラリと手を離した。他の生徒たちは舞台の対戦に注目してたようで、こんな場所でスカートを捲ってみせた修子を気に留めることもない。
「お、どうやらエロ団子も勝ったみたいだな。それじゃ、次はアタシが行ってくる」
華奢な身体をひるがえし、修子は舞台へと上がっていった。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~
明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!!
『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。
無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。
破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。
「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」
【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

倒した魔物が消えるのは、僕だけのスキルらしいです
桐山じゃろ
ファンタジー
日常のなんでもないタイミングで右眼の色だけ変わってしまうという特異体質のディールは、魔物に止めを刺すだけで魔物の死骸を消してしまえる能力を持っていた。世間では魔物を消せるのは聖女の魔滅魔法のみ。聖女に疎まれてパーティを追い出され、今度は魔滅魔法の使えない聖女とパーティを組むことに。瞳の力は魔物を消すだけではないことを知る頃には、ディールは世界の命運に巻き込まれていた。

【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~
くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】
その攻撃、収納する――――ッ!
【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。
理由は、マジックバッグを手に入れたから。
マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。
これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。
完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-
ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。
自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。
そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。
安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。
いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して!
この世界は無い物ばかり。
現代知識を使い生産チートを目指します。
※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる