変態少女と、転生失敗した僕が書くブログ

皐月 十次

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第十七話 キツネのお面は見抜いている

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 ステ娘教師は舞台に上がり、中央へ歩いていく。どうやら僕らの試験の立ち会いを務めるらしい。

「おおっ! やっとアタシの出番か!」

 嬉々として目を輝かせる修子。

「よし! オレ様の活躍、見せてやるぜ!」

 揚々とノートパソコンを立ち上げるすけたら君。

「ワタクシの美しさをご披露する時が来ましたわ!」

「ボキュのマニアックさは誰にも負けないんだな!」

 イルカさんも団子騎士君も、声高に意気込む。
 でも僕は違った。これまでの対戦を見て、僕のブログが太刀打ちできるとは到底思えないからだ。僕なんて、数値が見えた瞬間に笑いものにされるだろう。
 そんな自信のなさから、僕は自分のブログがとても情けないものに思えてしまった。

「よし、まずは――すけとうだらEX、お前からだ」

 立ち会いのステ娘教師がトップバッターに指名したのは、すけたら君。

「おっしゃ! オレ様がアダルト科の斬り込み隊長だぜ」

 すけたら君は勢いよく舞台に上がり、ノートパソコンをセットする。頭上に現れたパラメーターは、

HN:すけとうだらEX
ATK:310
DEF:180
VIT:390
Buz:完全無ケツのオレ様

 DEF(応援ポイント)が少し低いけど、まずまず平均的。『完全無ケツのオレ様』っていうバズリティーが、いかにもすけたら君らしい。相手のパラメーターも平均的で、これはいい勝負になりそうだ。
 でも、僕の頭はすけたら君の勝負には向けられなかった。たった二つだけの記事、それも挨拶程度の簡単な内容。そんな僕の『変態少女と、転生失敗した僕が書くブログ』は、「何か書かなきゃ」と思って無理やりキーボードを叩いただけのもの。応援ポイントもブックマークもゼロっていうのが、僕のやる気の無さが伝わっている気がした。

「どうした? イツキ」

 隣で観戦している修子が、僕の気持ちを察したように声を掛けてくる。が、その視線は舞台で攻防を繰り広げるすけたら君と対戦相手のバズリティーを追っていた。

「みんなこの学園に来て、たくさん記事を書いて、たくさん応援してもらってさ。すごいなって」

「イツキはどうなんだ?」

「僕は……僕にはやっぱり、向いてないのかな」

 僕のブログのアクセスカウンターは、日に数回しか動かない。僕のブログを見に来る人はいない。

「それは違うぞ」

「え?」

 周囲から歓声が上がり、舞台ですけたら君がガッツポーズを取った。どうやら、すけたら君が勝ったようだ。

「イツキはここに来た時と変わってないぞ。自分の膜を破れてない」

 続いて、イルカさんが舞台に上がり、ステ娘教師の掛け声で対戦が始まる。

「僕が、変わってない?」

「ああ。何も変わってない。イツキは出来ないんじゃない、やらないだけなんだ」

「だって、僕にアダルトブログは無理なんだ。何も知らずにここへ来て、いきなり押し付けられても出来るわけないじゃないか」

「ほら、また。やってないのに、出来ないって」

 修子はこちらを振り向こうとはしなかった。まるで僕の目を見たくないと言いたげに、視線を前に向けたままでいる。その横顔にあるキツネのお面が、僕を睨んでいるようだった。

「よしっ、いいぞ!」「あと少しなんだな!」

 すけたら君と団子騎士君が、イルカさんを応援する声が響く。二人の声援には熱が入っていた。
 やがて「それまで!」っとステ娘教師が手を上げる。イルカさんも勝利をもぎ取り、次は団子騎士君が舞台へ上がる。

「イツキは、このままあきらめて何をするんだ? 今いるところから逃げ出して、次は何が出来るんだ?」

 修子の声は冷たかった。高校での三年間、ずっと一緒に過ごしてきた修子とは別人のように、遠慮も容赦もない言葉が僕の頬を殴りつけているようだった。

「出来ないことを放り投げてばかりじゃ何も変わらない。イツキのやる気を見せてみろ」

「僕の……やる気?」

「ああ、そうだ。アタシのやる気は見せてやる」

 と言って修子はようやく僕の方を向くと「ほれ」っと、自分のセーラー服のスカートを両手で捲ってみせた。

「――――っ!? なんでスカート捲るの!?」

「にししっ! 安心しろ。パンツは穿いてる」

 修子は真っ白な下着を見せて僕を赤面させると、ハラリと手を離した。他の生徒たちは舞台の対戦に注目してたようで、こんな場所でスカートを捲ってみせた修子を気に留めることもない。

「お、どうやらエロ団子も勝ったみたいだな。それじゃ、次はアタシが行ってくる」

 華奢きゃしゃな身体をひるがえし、修子は舞台へと上がっていった。
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