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第十話 アダルト科の愉快な仲間たち

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 この白雪学園には、普通の学校とは違った特殊な校則がある。たとえば……

『物理的な闘争は禁止』

 これはつまり、ケンカはしちゃダメってことだね。

「でもっていうのが引っかかるよね。物理的じゃないケンカはアリなのかな」

 僕の頭には、暴力教師のお仕置きで大きなタンコブが出来ていた。

「あのチョップはだったぞ」

 身長が145センチメートルの小柄な修子も、タンコブのおかげで5センチくらい背が伸びていた。それに『睡眠と入浴時以外はノートパソコンの着用を必須とする』ってのも、学園独特の校則。個人情報やブログの管理などをノートパソコンで一元管理しているこの世界。これを手放すとどんな目に遭うか、一度失敗している僕には身に染みて分かっているからね。
 他にも、『ブログ王国キングダムへのランキング登録が義務』とか、『卒業するまで学園を出ることはできない』などがある中で、

『広告収入による報酬は、仮想通貨で得られる』

「報酬ってのは、つまりお金がもらえるってことだよね。でも仮想通貨って、どういうことだろう」

 まさか子供銀行券みたいなおもちゃのお金じゃないよね?

「通貨単位は『ベル』って書いてあるぞ。聞いたことがないな」

 修子と一緒に首を傾げていると、金髪でガラの悪そうな男が、

「ベルってのはこの世界の仮想通貨だけどな、現実世界に帰ればちゃんと『円』とか『ドル』に替えられるんだぜ」

 いつの間にか僕の横に来て、口を挟んできた。

「そうですわ。仮想通貨はこの世界だけのものですけれど、仮想世界こっちで何かを買うには通貨ベルが必要ね」

 今度は髪の長い清楚系の女性が、僕らの方に振り向いた。

「だから広告収入で報酬をもらわないと、こっちの世界では一文無しなんだな」

 最前列に座っている丸っこい男が、背中を丸めたまま言った。

 今は授業と授業の合い間、つまり休み時間だ。ステ娘教師がいなくなった教室は、生徒たちだけの空間だった。あの暴力教師がいる間は、みな姿勢を正して口を閉ざしていた。もし教師の話を無視しておしゃべりを始めようものなら、容赦なく殺人チョップが飛んでくるからね。
 それを実証したのは僕と修子だけど。

「オレ様は、すけとうだらEXってんだ。アダルトブログの世界じゃ、ちょっとは名の知れたブロガーなんだぜ」

 なんと、金髪でガラの悪いお兄さんはすでにアダルトブロガーだった。

「あら、アナタが『すけとうだら』ですのね。アナタの下品なブログ、たしかに名が知れてますわよ?」

「な、なんだと!? 下ネタ界の革命児と言われるオレ様のブログを馬鹿にするとは、アンタもそれなりのブロガーなんだろうな?」

 清楚系のお姉さんは意外と毒舌だった。

「ワタクシは日野ひのイルカ。誰かさんと違って、もっと上品なアダルトブログをやっていますわ」

「は~ん? テメーが『日野イルカ』か。キラッキラの百合ゆりブロガーじゃねえか。あれが上品とは聞いてあきれるぜ」

「な、なんですって!? 優雅で美しいワタクシのブログを侮辱するなんて、許しませんわよ!」

 見た目がガラの悪いすけとうだらEX君は、口も悪かった。てか『すけとうだらEX』って呼びにくいからさ、『すけたら君』でいいかな。で、毒舌のお姉さんは『イルカさん』ということで、二人には納得してもらえました。
 そんな二人は、最前列に腰掛けている丸っこい人にも自己紹介を促す。

「で、そっちのデブはどうなんだ?」

「あら、デブにデブと言っては失礼ですわ」

 どっちも失礼だよっ!

「ボ、ボキュのハンネは団子騎士だんごナイトなんだな。ボキュは君たちと違って、もっとコアなブログを書いているんだな」

「「団子騎士だって!?」ですって!?」

 すけたら君もイルカさんも、声を揃えて驚いている。どうしたんだろう、団子騎士君てそんなに凄い人なのかな。

「あんたが――『下劣すぎて誰もついていけない』で有名な団子騎士か?」

「ワタクシも知っていますわ。エロというよりは、むしろ淫猥。専門的というよりは、むしろマニアック。エロブロガー界のキワモノと名高い団子騎士のブログ、その名も『エロ! まにあっくす』」

 二人とも、汚いものを見るような目で恐れおののいている。しかし当の本人は、むしろそこに愉悦を感じるように恍惚の表情を浮かべていた。

「も、もっと褒めてほしいんだな」

「「褒めてねぇ!」ないわよ!」

 キワモノなエロブロガーの団子騎士君は、見た目が団子みたいで一人称が「ボキュ」、虐げられて快感を覚えるドMな人だった。なんとも個性的なメンバーが揃ったもんだね。僕らはアダルトな世界に無知だから3人のブログを知らないし、ステ娘教師のブログだって初めて見たけど。

「な……っ! お前ら、もしかしてステ娘も知らねーのか?」

 すけたら君は顔に似合わずリアクションがオーバーだ。ズザっという音が聞こえそうなくらいに後ずさりして、目をひん剥いている。

「あの人はアダルトブログ界のトップだぞ!? ブログのPV(アクセス数)だってオレらとは桁が違う上位ランカーだ」

 そういえばさっき修子が見ていたランキングページだと、アクセス数は十万単位だったかな。だた、それがどのくらいすごいのかは僕には分からない。

「じゃあ、もっと分かりやすく説明してやる。そのアクセス数を、お前らが話してた仮想通貨『ベル』の報酬に換算するとだな……」

 この世界の仮想通貨は、単位こそ『ベル』と呼ばれるが、実際は『円』と同じ。ブログの閲覧数によって得られる報酬は、お金と同じ価値。それが、

「あの人のブログは、一日で数万ベルの収益があるんだぞ?」

 数万ベルって――数万円ってこと!?
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