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第四話 花マルスイッチ、オン!
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トップブロガーを育成する学校……?
「イツキ、そのノートパソコン。たぶん一人一台が支給されてるんだ。開いてみなよ」
修子に促されて僕もパソコンを手に取ると、天板には『У’s』っていう、見たことのないロゴが入っていた。このロゴは、修子のパソコンにはなかったような……。
折り畳みのモニターを開くと、自動でパソコンが起動する。デスクトップにはアイコンがいくつかあって、その中の一つ『Weblog専門学校・白雪学園』をクリックすると学園のホームページが開き、横から修子が説明してくる。
・生徒はそれぞれ自分のサイトを作って、そこでWeblogを公開する。
・サイトはインターネットを通じて、現実世界のすべてのネットユーザーに発信される。
・サイトには広告収入が設定されているので、サイトを閲覧された数に応じて報酬が発生する。
ブロガーとは、ブログを運営する人のことらしい。で、この学園はブロガーを育成するからWeblog専門学校なんだ。本当はもっと詳しい説明があったけど、僕がすぐに理解したのはこのくらいだった。一番大事な『報酬』についての説明は、『パーセンテージ』という難解な数学用語が出てきたので、脳内で強制スルーした。
自慢じゃないけど、僕は数学が苦手だからね。
入学式が終わると、僕たちは式館の外で待機するよう指示された。
ゾロゾロと式館を出てきた生徒たちは、数人のグループに分かれて固まり始める。さっきの説明について色々と意見し合ってるんだろうね。
しかし僕と修子に近寄ってくる生徒は誰もいなかった。まあ、入学式で派手に怒られたからね。「あのふたりはグレートなバカ」って思われてるのかもしれない。そんな若干の疎外感を感じながら、僕はさっきの説明をひと言でまとめてみた。
「つまり、ブログを作ってたくさん見てもらえればお金がもらえる。ってことだよね」
「よく理解できたじゃないか、イツキ。花マルをあげよう」
僕の横で、修子は地面にマルを書き始める。ヤメなさい、木の枝で絵を描くのは。しかもそのマル、真ん中に縦線を入れちゃってるから花マルじゃないよ?
ああ……バカ! そのマークは描いちゃダメ!
僕はいかがわしい花マルを慌てて足で揉み消した。
「今まで僕は他人のブログを見ることはあったけど、自分で書いたことはないからなぁ。難しい部分はサッパリだよ」
「いいんだよそれで。こういうのは知識じゃない」
ん? 修子は「いかにも自分は知ってます」っていう口ぶりだけど、
「修子はブログをやったことあるの?」
「いや、やったことはない。やったことはないけど、面白そうだ」
面白そう……か。出来るかわからないことを「面白そう」だなんて、躊躇とか不安とかないのかな。
「イツキはどうなんだ?」
「僕は……どうかな。出来るかどうかなんて分からないよ」
今までも、何かをやろうとしても何も出来なかったんだ。いや、何もしてこなかったと言った方が正しいかな。だから高校を卒業してニートになってしまったわけだし。流れに任せて入学しちゃったけどさ……。サイトを立ち上げる? ブログを書く? 広告収入で報酬を得る? そんなの僕にできるわけがない。
そんな僕のネガティブ思考を察したのか、隣で修子がズイっと胸を張った。張るほどのモノはないくせに、大きく高らかに胸を張ると、
「あとはスイッチを入れるだけだ」
「スイッチ?」
「そうだ。やる気スイッチ。アタシのスイッチはここにある」
と言って、自分の胸のあたりを指差した。右手の人差し指と、左手の人差し指で、小ぶりな両胸の先端にスイッチオン。
「……あんっ」
悩ましげな嗚咽を漏らし、頬を赤らめて恍惚の表情を浮かべる。
「どうしてすぐエロっぽい方向に持ってくの!?」
修子はオブラートに包むっていうことを知らないんだよ。高校の頃からそうだけど、いつも一人でエロイズムをぶっ放してくる。
「アタシはエロっぽいんじゃない。エロだからな。変態だからな。隠す必要なんてないんだ。イツキも自分の中に隠れてないで、早く膜を破ってこい」
それを言うなら「殻を破って」じゃないの? どうして「膜」になるんだろ。それも下ネタじゃない。
しかし、修子の言うことはもっともかもしれない。僕は今まで、出来ないことは何もしてこなかった。だから僕には「自分の殻を破る」なんて言葉すら出てこないんだ。
妙に納得しちゃったよ。
修子はエロで変態だけど、実はいいヤツなんだよね。
「イツキ、そのノートパソコン。たぶん一人一台が支給されてるんだ。開いてみなよ」
修子に促されて僕もパソコンを手に取ると、天板には『У’s』っていう、見たことのないロゴが入っていた。このロゴは、修子のパソコンにはなかったような……。
折り畳みのモニターを開くと、自動でパソコンが起動する。デスクトップにはアイコンがいくつかあって、その中の一つ『Weblog専門学校・白雪学園』をクリックすると学園のホームページが開き、横から修子が説明してくる。
・生徒はそれぞれ自分のサイトを作って、そこでWeblogを公開する。
・サイトはインターネットを通じて、現実世界のすべてのネットユーザーに発信される。
・サイトには広告収入が設定されているので、サイトを閲覧された数に応じて報酬が発生する。
ブロガーとは、ブログを運営する人のことらしい。で、この学園はブロガーを育成するからWeblog専門学校なんだ。本当はもっと詳しい説明があったけど、僕がすぐに理解したのはこのくらいだった。一番大事な『報酬』についての説明は、『パーセンテージ』という難解な数学用語が出てきたので、脳内で強制スルーした。
自慢じゃないけど、僕は数学が苦手だからね。
入学式が終わると、僕たちは式館の外で待機するよう指示された。
ゾロゾロと式館を出てきた生徒たちは、数人のグループに分かれて固まり始める。さっきの説明について色々と意見し合ってるんだろうね。
しかし僕と修子に近寄ってくる生徒は誰もいなかった。まあ、入学式で派手に怒られたからね。「あのふたりはグレートなバカ」って思われてるのかもしれない。そんな若干の疎外感を感じながら、僕はさっきの説明をひと言でまとめてみた。
「つまり、ブログを作ってたくさん見てもらえればお金がもらえる。ってことだよね」
「よく理解できたじゃないか、イツキ。花マルをあげよう」
僕の横で、修子は地面にマルを書き始める。ヤメなさい、木の枝で絵を描くのは。しかもそのマル、真ん中に縦線を入れちゃってるから花マルじゃないよ?
ああ……バカ! そのマークは描いちゃダメ!
僕はいかがわしい花マルを慌てて足で揉み消した。
「今まで僕は他人のブログを見ることはあったけど、自分で書いたことはないからなぁ。難しい部分はサッパリだよ」
「いいんだよそれで。こういうのは知識じゃない」
ん? 修子は「いかにも自分は知ってます」っていう口ぶりだけど、
「修子はブログをやったことあるの?」
「いや、やったことはない。やったことはないけど、面白そうだ」
面白そう……か。出来るかわからないことを「面白そう」だなんて、躊躇とか不安とかないのかな。
「イツキはどうなんだ?」
「僕は……どうかな。出来るかどうかなんて分からないよ」
今までも、何かをやろうとしても何も出来なかったんだ。いや、何もしてこなかったと言った方が正しいかな。だから高校を卒業してニートになってしまったわけだし。流れに任せて入学しちゃったけどさ……。サイトを立ち上げる? ブログを書く? 広告収入で報酬を得る? そんなの僕にできるわけがない。
そんな僕のネガティブ思考を察したのか、隣で修子がズイっと胸を張った。張るほどのモノはないくせに、大きく高らかに胸を張ると、
「あとはスイッチを入れるだけだ」
「スイッチ?」
「そうだ。やる気スイッチ。アタシのスイッチはここにある」
と言って、自分の胸のあたりを指差した。右手の人差し指と、左手の人差し指で、小ぶりな両胸の先端にスイッチオン。
「……あんっ」
悩ましげな嗚咽を漏らし、頬を赤らめて恍惚の表情を浮かべる。
「どうしてすぐエロっぽい方向に持ってくの!?」
修子はオブラートに包むっていうことを知らないんだよ。高校の頃からそうだけど、いつも一人でエロイズムをぶっ放してくる。
「アタシはエロっぽいんじゃない。エロだからな。変態だからな。隠す必要なんてないんだ。イツキも自分の中に隠れてないで、早く膜を破ってこい」
それを言うなら「殻を破って」じゃないの? どうして「膜」になるんだろ。それも下ネタじゃない。
しかし、修子の言うことはもっともかもしれない。僕は今まで、出来ないことは何もしてこなかった。だから僕には「自分の殻を破る」なんて言葉すら出てこないんだ。
妙に納得しちゃったよ。
修子はエロで変態だけど、実はいいヤツなんだよね。
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