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Ocean Adventure 5

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オレ達が戻ると、港はちょっとした騒ぎになった。

まぁモンスターのせいで漁獲高が激渋のなか、銀色で目立つバカデカ怪魚を3本も甲板に載せたうえ、それでも載りきらず網を引き摺ってる傾いた船が大漁旗をはためかせながら港に戻ってきたのだから、いったい何事かと注目を集めるのも当然だろう。

「うわぁ~、なんだよ、そりゃあ…」
「げげぇ…!」

「お~い、ソレが連絡のあった化け物かぁ??」

すると帰る前に無線で一報を入れていたので、集まった人だかりのなかには事情を知っている漁協関係者の姿も。

「そうだ!コイツ等のせいで網がズタボロにされてたんだ。とにかくみんな、水揚げするから手ぇ貸してくれ!」
「「おう!」」

これで、問題のすべてが解決したわけではない。

が、それでも問題の一部がこうして退治できたことは喜ばしいこと。という訳で港にいた漁師さんたちも総出で、水揚げを手伝ってくれた。


そうして偽リュウグウノツカイはすべて競りなんかをする倉庫みたいなトコに運び込まれたのだが、問題はコレをどうするか。

港に魚を買い付けに来た人達は『なんか獲れたんなら早く競りはじめてくんないかな~』といった顔で待ってるし、漁協の人は『安全の確認がとれるまで出荷なんてできないから、保健所の人間が来るまで待ってくれ』と、そんな周囲の人達を宥めていた。

しかしそんななか、ご年配の漁師さんが突然「この魚は食えるぞ」と、口を開いた。

「え、そりゃ本当かい?」
「ああ、儂の獲ったのはもっと小さかったが、それでもとんでもない引きでな…。準備したカジキ用の仕掛けを全部ダメにした。しかもようやく弱ってきたと思ったら、今度は他のに獲物が襲われてな。結局、頭と前半分も釣れんかった」

ご年配の漁師さん曰く、それが余りにも悔しくこれじゃ出荷もできないと、腹いせに自分で食ったのだという。

「へぇ~。毒とかは、なかったのかい?」
「棘に毒がある…。儂はそれで3日寝込んだ」

いや、なにしてんのよ。

「ほぉ~。だがするってぇと、コイツも食えるんか」
「ふ~む、魚は見た目が悪いほど美味いっていうしなぁ」

するとご年配漁師さんの話を聞いた他の漁師さんも、魚の顔の事はこの際見なかったことにして食べる気になっている模様。そしてチラチラと、オレへと視線を向けてくる。

うん、知らない人が5人以上いる場では、基本空気となることが癖になっているオレ。だが漁師さん的観点で獲った獲物は獲った人の物というのが強いのか、未だアーマード蟲王スーツ姿のオレに漁師さんの視線が集中した。

「なぁ、いいかい兄ちゃん?」
「ええ、差し上げたモノですので、どうぞ」

倒した偽リュウグウノツカイは、すでに全て船の漁師さんに差し上げ済み。オレは今、特異産業から来た善意の協力者としてこの場にいるので、会社の看板を背負っている。故にみみっちいことなど言えないのだ。

「よし、ならいっちょ捌いて食ってみるか!」
「ああ、なら見栄えの悪い、あの折れてる奴がいいな!」

そういうと刃物や鉤棒を持った漁師さんが背骨の折れた偽リュウグウノツカイを取り囲み、早速解体をはじめた。

う~む、さすが交通事故ワースト上位の県民性というか、見切り発車が甚だしい。まだ保健所の人間も来ていないというのに。ま、あのご年配漁師さんがそれだけ周囲から信頼されているというのも、あるんだろうけど。


…。


オレが私服に着替えて戻ってくると、解体された偽リュウグウノツカイは半身が骨だけの状態になっており、その周囲では漁師さんや買い付けの人がその刺身や焼いたのに舌鼓を打っていた。

あ、あとその人だかりの向こうでは漁協の人が怒られてるのか、保健所らしき白衣の人に平謝りしているのが見える。まぁオレのサイコメトリーでも食えそうというのは確認済だけど、そういったチカラは秘密だから教えられないしな。

「あ、ジャング!コイツすげぇ美味いぞ!食ってみろよ!」


と、そこへオレの姿をみつけたシャークが、刺身の載った紙皿と割り箸を手に近づいてくる。その紙皿をよく視れば、鰤のように白身に血合いの入った切り身がキラキラとした脂で醤油を弾いている。

「ほぉ、これは…まただいぶ脂がのってるな」

うむ、網にかかった魚をバクバク食ってたのだから、そりゃ脂ものるだろうといった大トロな身質。

「でも魚の脂なんだから、そんな気にすることないだろう?」

そういってオレに食わせるため割り箸で刺身をつまんで掲げるシャークに、身を屈め口に放り込んでもらう。

「うむ…、これは、確かに美味いな…。雛形くんも、もう食べてみたか?」
「いえ、私はいま、ちょっと食欲が…」


シャークの隣に並ぶ結月ちゃんは、まだ船酔いの余韻に苦しんでいるらしい。 はたまた、あの顔を見て食欲などすっかり失せてしまったか。

そうして再び周囲に眼を向けると、偽リュウグウノツカイの頭には誰が被せたのか、何時の間にかブルーシートが被せられていたのだった。
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