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「異常は?…問題無しか。うむ、助かったよクィーン」
(…、…)

「ああ、そうだ。ともあれ、巻き込んだ…というか巻かれにいったふたりも怪我が無くてよかったよ」

結月ちゃんを送り届けたあと、急いで自宅に戻ったが特になんの異常もみられなかった。

(ふぅむ…、とするとだ。まさか本当にあの場で、オレを強請る為の動画を撮影するつもりだったのか?)

どうやら連中は、オレが慰労会で語った内容をそのまま真実だと受け取っていたらしい。しかもソレを元に、今回の犯行を計画し実行したのだから恐れ入る。まだ遭難してからそれほど時間も経っていないというのに。計画性はともかく、その行動力にだけは感心する。

『鉄砲水で水路にスッポリ嵌って動けなくなり、ライトも消えて迷子になっていた』など、間抜けもいいとこなのに。

しかし彼らはそんな間抜けなオレが、間抜けにも安い挑発に乗って一般人に手をあげている動画を撮影し、『さぁ撮ったぞコレをみろ!免許を失いたくなかったら俺達の言うことを聞け!あるだけ金をよこせ!』なんて風にやりたかったのだろう。これに下手をしたら、オレの名前で瑠羽たちを呼び出せなんてことも含まれていたかもしれない。

(しかしまぁ、対人は本当に厄介だな…)

対モンスターであれば、倒してそれでオシマイにできる。が、人相手ではそうもいかない。

といって中途半端な真似をすれば、舐めて再びかかってくる。かといってやり過ぎてしまえば、今度は周囲の反発や恨みまで買ってしまう恐れが。対人戦はそういったアレやコレやが、いつまでも尾を引くカタチとなっていくから質が悪い。

(が、それ故に、ムケーレファミリーはあんなにもオレを歓迎してくれたんだろうな…)

まったく気にしてなかった事だが、好意的にムケーレを訪ねて行ったことでコチラにはスキルトーナメントでの勝負で、遺恨など一切ナシと示すカタチとなった。

まぁオレも試合会場では、反則負けの判定に不服を申し立てていたからな。あの反則負けを理由に逆恨みされ、相手からなんらかの報復があるのではと不安に感じていたかもしれない。そんなムケーレファミリーからすればオレのにこやかな来訪は、さぞホッとできたのだろう。

「あ~あ、こういうのって…、ホント嫌でおじゃるねぇ~」

と、椅子に腰かけ口ではそうのたまいつつも、ギンと発した魔力で手近にあったラーメンどんぶりにチョロっと液体酸素を生み出してみる。

うん、コイツも上手くいかないモノのひとつ。気体の酸素はスキル【強酸】の括りには入らないものの、液体の酸素だと酸という括りに入り、スキルで生み出せるようなのだ。

で、この液体酸素、LOX (Liquid OXygen)は淡い青色をした液体で、めっさ冷たい。どれくらい冷たいかというと沸点が-183℃らしいので、生み出した途端に常温でグラグラと沸騰しはじめる。そしてその間は酸素発生しまくりなので、下手に近くで火を使うとそれでも爆発してしまう。

だから上手くいかないというか、ものすごく扱いが難しい。

液体酸素だけでも有機物に対し強い酸化作用を持っているうえ超冷たいので、これだけでもう酸攻撃+冷凍攻撃。さらに気化すれば高濃度酸素で爆発だって起きてしまう。

だからもう色々と強力過ぎて、使うにしてもよく考えないと自分の身が危ない。

「あ~、だんだん鼻が通ってきて、頭の芯がシャキッとするな~」

なのでこうして、高濃度酸素浴をするくらいが一番安全で役に立っている。

あとはまぁ、うちは冷蔵庫がダンジョンになってるしドライアイス代わりにも活用したいのだけど、冷たすぎるせいで容器がすぐ破損してしまうのが困りものだ。

冷凍攻撃が有効なモンスターにはもってこいだと思うけど、普通に酸を生み出すのの約3倍は魔力を持ってかれるので、あんまり量は生み出せないときている。

「まぁそれでもおいおい、使いこなせるよう練習だけは積んでおかんとな…」

常に備えよ、といきたいところ。だが、なかなかもってままならない。しかしそんな鍛えの積み重ねが、明日の自分を生かすか殺すかするとなれば、決して疎かにはできない。

「さて、今日の夕飯は雛形師範にもらった素麺にするか。今なら茹でても、コレですぐに冷やせるし…」

さきほど結月ちゃんを送り届けた際に、雛形師範から「いいから持っていきなさい」と頂いた素麺。今夜はこれで、夕飯にしよう。
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