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funeral
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(まったく、なんてことだ…)
ゾンビどもを動かぬ骸へと変貌させた後で、オレは独り下水道のなかで後悔に震えていた。
(もしやオレは、重大なミスを犯してしまったのだろうか…)
桂名の死体が変貌したゾンビ。それは一見、他とさして変わらぬゾンビだった。が、オレの放った塩を浴びた途端に、意志を持たぬ存在とは思えない行動をとったのだ。
(オレの名を口にし、そして不利とみるや即座に逃走…)
その行動は知性を感じさせない他のゾンビどもとは、明らかに違っていた。
(ハッ!そういえば桂名の彼女だった由香の話では、アイツはオレに対抗するためダンジョン能力者になっていたという…。とするとオレの浴びせた塩が原因で、ヤツもまたただのモンスターから融合個体のような存在になってしまったのだろうか…)
その可能性は、無きにしも非ず。
だいたいオレがゾンビを確殺―というか倒すのには、塩おおさじ1ほどの塩が必要だった。しかし桂名ゾンビに対しては、ケチッてこさじ少々といった程度の塩しか使わなかった。もしそれがアンデッド化の呪術的なシステムを破壊するのではなくエラーやバグといったモノを引き起こしていた場合、桂名ゾンビが融合個体のような状態になっていてもおかしくはないのかもしれない。
とはいえ急に弱まってしまったゴキたちの不調もまた気かかりで、オレはそれ以上深入りすることなく地下下水道から引き揚げたのだった。
…。
そして自宅に帰ると、即気になっていたゴキたちの不調について調べていた。
「なるほど、そういうことだったのか…」
パソコンディスプレイに表示された海外サイトの翻訳文を前に、ガッテン。そこには昆虫型モンスターの弱体化についての考察が詳細に載せられていたのだ。
「う~む、酸素濃度か…。たしかにダンジョンスタンピードが起きていた時はデカバッタみたいなのが暴れまわっていたが、その後はすっかり姿を見なかったもんな…」
海外サイトでの考察。それはダンジョンないしダンジョンがあるような異世界では、恐竜が生きてたような古代地球のように酸素濃度が高い環境だったのではないかという仮説だった。つまり酸素がいっぱいあると、生物はデカくなるという話。
逆に今現在の地球上では酸素濃度がそれよりも低いため、昆虫タイプのモンスターではまず生存に適さないということだ。
「うむむ…。受動呼吸器官と能動呼吸器官の差で、そうまで差が出るのか…」
これはオレのテイムしているモンスターでいえば、ピクシーたちは小型とはいえ人型であるため、能動的な呼吸器官である肺を有しているはず。それゆえ酸素濃度が低くても、その分だけ肺を動かし地上でも活動することが出来る。
しかし気管という受動的な呼吸器官しか持たないゴキたちでは対応しきれず酸欠となってしまい、真面に活動することが出来なくなってしまうということらしい。逆にいえば、ダンジョンの中はそれだけ酸素濃度が濃かったのだろう。
そこで改めて冷蔵庫ダンジョンで今日下水道で召喚したゴキたちを召喚してみると、どういうわけかみんなひっくり返って死んでしまっていた…。
「な…!どうしたんだおまえたち!?」
それに慌てて今日召喚した以外のゴキたちも召喚してみると、生きてるのもいれば死んでしまっているのも数多くいるといった状態。そんな数多くひっくり返っているゴキたちの姿に、思わず愕然としてしまう。
「そ、そうか…。これがもしやおまえたちの、寿命だったのか…」
カード化されていても当人達にはその間の意識があるようなので、カード化中に時間が停止している訳ではない。しかし魔力さえ注いでおいてやれば特に問題が無いようだったのでそのままにしていたが、寿命まではどうにもならなかったようだ。
さらにピクシーたちは長くカード化したまま放置すると拗ねてしまうので、定期的に召喚しハチミツをあげたりして機嫌を取っていた。が、ゴキたちに関しては特に文句を言う訳でもなかったので、そういった対応を取っていなかったという経緯もある。
「しかし、だからといってカード化したままで、無為に死なせてしまうとは…」
大量にいて管理する手に余っていたとはいえ、無為にその命を尽きさせてしまったことには心が痛む。
「おまえたち…。おまえたちは、どう生きるのが幸せだったんだ…?」
「「「……」」」
まだ辛うじて生き残っているゴキたちにそう問いかけてみても、返ってくる答えは無い。
そこで遺骸をひとまとめにし、まだ生き残っているゴキたちも含めて地下2層に放ってやることにした。するとたちまち地下2層にいたゴチたちが群がり、仲間の遺骸をガサガサワサワサと音を立てながらむさぼり食っていく。
「すまん…。おまえたちは魔力も小さいし、コレという感情といったものも感じ取れないから、どうすればいいのか分からなかった。だが今度からは、決して無為に死なせるような真似だけはしないと誓おう…」
そう言ってオレは、ゴキたちに向け静かに頭をさげたのだった。
ゾンビどもを動かぬ骸へと変貌させた後で、オレは独り下水道のなかで後悔に震えていた。
(もしやオレは、重大なミスを犯してしまったのだろうか…)
桂名の死体が変貌したゾンビ。それは一見、他とさして変わらぬゾンビだった。が、オレの放った塩を浴びた途端に、意志を持たぬ存在とは思えない行動をとったのだ。
(オレの名を口にし、そして不利とみるや即座に逃走…)
その行動は知性を感じさせない他のゾンビどもとは、明らかに違っていた。
(ハッ!そういえば桂名の彼女だった由香の話では、アイツはオレに対抗するためダンジョン能力者になっていたという…。とするとオレの浴びせた塩が原因で、ヤツもまたただのモンスターから融合個体のような存在になってしまったのだろうか…)
その可能性は、無きにしも非ず。
だいたいオレがゾンビを確殺―というか倒すのには、塩おおさじ1ほどの塩が必要だった。しかし桂名ゾンビに対しては、ケチッてこさじ少々といった程度の塩しか使わなかった。もしそれがアンデッド化の呪術的なシステムを破壊するのではなくエラーやバグといったモノを引き起こしていた場合、桂名ゾンビが融合個体のような状態になっていてもおかしくはないのかもしれない。
とはいえ急に弱まってしまったゴキたちの不調もまた気かかりで、オレはそれ以上深入りすることなく地下下水道から引き揚げたのだった。
…。
そして自宅に帰ると、即気になっていたゴキたちの不調について調べていた。
「なるほど、そういうことだったのか…」
パソコンディスプレイに表示された海外サイトの翻訳文を前に、ガッテン。そこには昆虫型モンスターの弱体化についての考察が詳細に載せられていたのだ。
「う~む、酸素濃度か…。たしかにダンジョンスタンピードが起きていた時はデカバッタみたいなのが暴れまわっていたが、その後はすっかり姿を見なかったもんな…」
海外サイトでの考察。それはダンジョンないしダンジョンがあるような異世界では、恐竜が生きてたような古代地球のように酸素濃度が高い環境だったのではないかという仮説だった。つまり酸素がいっぱいあると、生物はデカくなるという話。
逆に今現在の地球上では酸素濃度がそれよりも低いため、昆虫タイプのモンスターではまず生存に適さないということだ。
「うむむ…。受動呼吸器官と能動呼吸器官の差で、そうまで差が出るのか…」
これはオレのテイムしているモンスターでいえば、ピクシーたちは小型とはいえ人型であるため、能動的な呼吸器官である肺を有しているはず。それゆえ酸素濃度が低くても、その分だけ肺を動かし地上でも活動することが出来る。
しかし気管という受動的な呼吸器官しか持たないゴキたちでは対応しきれず酸欠となってしまい、真面に活動することが出来なくなってしまうということらしい。逆にいえば、ダンジョンの中はそれだけ酸素濃度が濃かったのだろう。
そこで改めて冷蔵庫ダンジョンで今日下水道で召喚したゴキたちを召喚してみると、どういうわけかみんなひっくり返って死んでしまっていた…。
「な…!どうしたんだおまえたち!?」
それに慌てて今日召喚した以外のゴキたちも召喚してみると、生きてるのもいれば死んでしまっているのも数多くいるといった状態。そんな数多くひっくり返っているゴキたちの姿に、思わず愕然としてしまう。
「そ、そうか…。これがもしやおまえたちの、寿命だったのか…」
カード化されていても当人達にはその間の意識があるようなので、カード化中に時間が停止している訳ではない。しかし魔力さえ注いでおいてやれば特に問題が無いようだったのでそのままにしていたが、寿命まではどうにもならなかったようだ。
さらにピクシーたちは長くカード化したまま放置すると拗ねてしまうので、定期的に召喚しハチミツをあげたりして機嫌を取っていた。が、ゴキたちに関しては特に文句を言う訳でもなかったので、そういった対応を取っていなかったという経緯もある。
「しかし、だからといってカード化したままで、無為に死なせてしまうとは…」
大量にいて管理する手に余っていたとはいえ、無為にその命を尽きさせてしまったことには心が痛む。
「おまえたち…。おまえたちは、どう生きるのが幸せだったんだ…?」
「「「……」」」
まだ辛うじて生き残っているゴキたちにそう問いかけてみても、返ってくる答えは無い。
そこで遺骸をひとまとめにし、まだ生き残っているゴキたちも含めて地下2層に放ってやることにした。するとたちまち地下2層にいたゴチたちが群がり、仲間の遺骸をガサガサワサワサと音を立てながらむさぼり食っていく。
「すまん…。おまえたちは魔力も小さいし、コレという感情といったものも感じ取れないから、どうすればいいのか分からなかった。だが今度からは、決して無為に死なせるような真似だけはしないと誓おう…」
そう言ってオレは、ゴキたちに向け静かに頭をさげたのだった。
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