うちの冷蔵庫がダンジョンになった

空志戸レミ

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preparation

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「Yeah!haha!」
「Attack!attack!」

ジェロームたちの戦闘訓練がはじまった。

彼らは今、暴れアロエに見立てた動く板ベラの上にのせたダンボール箱に漁網を投げつけ、動きが鈍ったところで槍攻撃を見舞うといった訓練を繰り返している。

ちなみに板ベラに繋がったロープを手繰っているのは、オレだ。

「ヨシ、いいぞ!今のは連携が取れてたじゃないか!」
「レンカイ?」

「ん~と…ああ、ナイスフォーメーション&ナイスタイミングだ!」
「oh!guhpi@p@saw…!」

ジェローム・ミゲルタ・アブドゥルの3人では、どうしても先に日本に来てある程度日本語を理解できているジェロームに通訳してもらい、それをもって意思疎通してもらう他ない。

そんな訳でこの3人は一組で運用する以外の運用は、少々むずかしいのだ。

とはいえ建築物の解体作業という、危険を伴う仕事をしていた3人。そして言葉もあまり理解できていないぶん動きも慎重で、基本的な動作にはなんの問題もなかった。

ただ気になる点をいえば、『なんで俺達はこんなことをさせられてるんだろう…』といった疑問の眼差しを度々コチラに向けられるくらいか。

「ノーノー。ミゲルタ、アブドゥル。ダンジョン・イズ・ベリー・デンジャー!トレーニング・セイブス・ライフ!」

そしてオレに出来る事といえば、こうして片言の英語で彼らにダンジョンの危険性を伝えてやるくらいのモノ。

「ノ・プロブレム。アハブ・ガンケン。エニモアsap@w2te…!」
「いやいや調子に乗るなアブドゥルよ。ドンレット・ユアガード・ダウン!」

そう、彼らに都奈美さん護衛の報酬として渡したのは、冷蔵庫ダンジョン地下9層にいる巨大カメムシと巨大カマドウマのスキル、【頑健】と【跳躍】。

ジェローム
レベル:       3
種族:       人間
職業:       なし
能力   ALL20前後
技能:
【敏捷】・【頑健】・【跳躍】

アブドゥル
レベル:       3
種族:       人間
職業:       なし
能力   ALL20前後
技能:
【頑健】・【跳躍】

ミゲルタ
レベル:       3
種族:       人間
職業:       なし
能力   ALL20前後
技能:
【頑健】・【跳躍】

なので彼らのステータスを現すとするなら、今はざっとこんな感じになる。

ちょっと大盤振る舞いな気もするが、オレが誘った手前この仕事で大怪我でもされたら堪らない。そこで少々奮発したといった感じ。まぁ【頑健】と【跳躍】なら攻撃スキルという訳ではないので、そう悪事には利用できまいという判断もある。

ジェロームだけ【敏捷】もとって優遇されているが、これはふたりの面倒をしっかりとみさせるため。ま、見ていると、それも言われなくともやってくれそうである。

…。

と、そうして訓練を続けていると、サバゲフィールドの方へ行っていた提督と銚子が戻ってきた。

「やってみせ・言って聞かせて・させてみて・褒めてやらねば・人は動かじ。だな。まったくその通りだ」
「お、さすがは提督。提督もやはりその言葉をしってたか」

「ハハハ、仮にも提督などと呼ばれてるんだ。それくらいはな…。それにジャング、すこし休憩にしないか。それでコレを食べてみてくれ」
「ああ、コレっス」

そういって銚子が差し出したのは、なにかの入ったミニバケツくらいの網かご。

「ん、なんだそれ…?おお、これはもしかしてニンニクか?」

網かごを覗くと、そこには一片に小分けされた皮付きのニンニクがどっさりと。そこにオレが動きを止めたことでジェロームたちも集まってくる。

「この間、レストランでダンジョンの分解吸収作用で食品の加工ができると話していただろう?そこでコチラでもなにか作れないものかと、色々試していたんだ」
「おお、するとこのニンニクもか!」

「そうだ。いい具合に熟成出来たと思うから、味見してみてくれ」

そういうことならと手を洗い戻ってくると、みなでダンジョン熟成のニンニクを食べてみることに。まずはカサリと皮を剥くと、熟成により黒く小さく縮んだニンニクが姿をみせる。

「お…、これは良い香りだ。酒に漬けたフルーツみたいな香りがするな」
「ミスタ・ジャング。コレとてもオイシイ。テイスティ!」

先にニンニクを口に入れたジェロームは、その味を気に入ったようだ。

「ハハ、そうか。では食べてみよう」

そこでオレも口に含んでみると、噛み応えはねっとりもっちゃりとしていて、よく煮たサトイモのよう。でも味の方はとても甘く、ホントに酒に漬けたフルーツみたいだ。

「うむ、これは美味いな!そしてよくこんなのを思いついた!」
「へへ、うち親戚が畑やってるもんで、色々分けてもらって試してみたんスよ」

「ほう、そうだったのか。でも聞いた情報ですぐそれを実行に移し、かつ成果に結びつけるなんて、提督も銚子も優秀なんだな」
「フフフ…。商いとはそう、常に二手三手先を読んで行うモノだからな」

「ハハハ、なんとも頼もしい。じゃあコレで、この会社にはまた新たな商品が完成したというわけか」
「そういうことになるな」

こうして後に、ダンジョン熟成黒ニンニクは、株式会社・特異産業の看板商品となったのだった。
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