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skill tournament / ejection 2

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運営スタッフにおことわりを入れ、早々に会場を去ることにしたオレ達。

理由としては試合によりちょっと体調が良くないのと、対戦相手に悪いことをしてしまったのでパーティーへの参加は自粛するとした。

とはいえ勿論それは方便で、よく知りもしない相手ばかりのパーティーで愛想笑いを浮かべているのが面倒だったから。そんなことをしているくらいなら、瑠羽たちと心からの笑顔でしゃぶしゃぶパーティーをした方が何倍も楽しいというモノだ。

なのでこのままみんなで瑠羽の家に行こうと言うと、結月ちゃんが心配そうな声を漏らした。

「あの、よく知らない私までお邪魔して、ご迷惑にならないでしょうか…?」
「大丈夫だよ。瑠羽姉ェも両親も、スッゲェ優しいし!」

するとそんな風に返すシャーク。

ああ、そういえば仁菜さんの双子の弟。マサくんとユキくんがしばらく瑠羽ん家に厄介になってたんだっけ。その兼ね合いでシャークも瑠羽の家に行ったりしてたんだな。

「大丈夫だよ雛形くん。それにマサくんユキくんをオレ達の元まで送り届けてくれたのは、シャークとキミじゃないか」
「それは、そうかもしれないですけど…」

それにシャークってば、瀬来さんにはよく反発してみせるけど瑠羽のことは瑠羽姉ェなんて呼んで慕ってるんだよな。まぁ瑠羽はひとに尖った接し方もせずありのままを受け入れるから、シャークもやりやすいんだろう。

一方で仁菜さんには、言葉でやんわりといなされたうえコロリと転がされるから、ちょっと苦手に感じているみたいだ。

「ふふ、そんなに心配しなくても大丈夫よ。それに美味しいモノは大勢で楽しんだ方がもっと美味しいのよ。ねェ師匠~」
「ああ、瀬来さんの言う通りだ。ま、それでも心配と言うなら、そのぶん料理のお手伝いをガンバってもらおうかな」

「その、なんだか色々と気をつかって頂いてすいません」
「そんなの気にすんなよ。…あ、師範?アタシだよルリ。うん、東京帰ってきた。でも友達のうちにお土産渡しにいって、そこで夕飯も食べてくからさ。うん、結月も遅くなる。…ああ、ダイジョウブ。帰りはジャングに送らせるから」

て、シャークめ会話の途中で電話をかけ始めたと思ったら、雛形師範に電話をしたのか。

でもおまえ、雛形師範にもそんな口調なの?よく怒られないな。まぁ言いたいことは他にもあるが、結月ちゃんはキチンとオレが送り届けよう。

…。

だが、そうして駐車場へとみなでワイワイ向かっていると、広めの通路に差し掛かったところでなぜかふたりの女性に行く手を阻まれた。

オレ達が来たのに気付くと、まず今まで腕を組んで壁にもたれかかっていた髪に赤いメッシュの入った女性が、進行方向を塞ぐように歩み出たのだ。

「フ…。背格好からすると、キミがゴールドインセクトのようだね…?」

そしてソレに続き、ロングストレートに青メッシュを入れた女性もまた道を塞ぐ。

「どうやらそのようね。フフフ…」

(ム、なんだコイツ等…?)

やけに芝居がかった口調、それにこの狙ったようなシチュエーション。いったい何者だ…?

「(江月さん。このふたり、Aリーグの選手よ…)」

と、不審を覚えていたオレに、瀬来さんが小声で相手のことを教えてくれた。


「おっと、失礼。ボクとしたことが自己紹介が遅れてしまったようだ。ボクの名は波利井、炎の使い手たるファイヤーナイトの波利井。と、覚えてくれるかい?」

しかしそんな瀬来さんの耳打ちが相手の耳にも届いたのか、自己紹介をはじめた。

(ふむ…、赤メッシュは炎の使い手で、ファイヤーナイト。か…)

確かに短めの髪に赤メッシュをいれた女性は鼓笛隊というかなんというか、赤と白を基調にした騎士服っぽい衣装に身を包んでいる。コスプレのようにも見えるが、オレのオタ知識をもってしても該当するキャラは特定できなかった。

「そしてコチラは―」


「わたしは水の巫女・堀田と申しますの…」

波利井と名乗った女性が手を優雅な仕草で右手の女性に向けると、今度は濃い紺のドレスに身を包んだ女性がスカートをつまみ堀田と名乗る。

(で、青メッシュの方は水の巫女ね。ほ~ん、そしたらふたり合わせてハリイ・ホッターやんか。…ブフッ!!)

「アラ、なにか可笑しかったかしら…?」

と、ここで噛み殺しきれなかった笑みを相手に見咎められてしまった。

「ゴホン、…ああいや。オレの知り合いも、キミたち程に見分けがつきやすければと思ったまでさ」
「そう…」

うん、そうなのです。整体学校の加藤も佐藤も、赤い加藤に緑の佐藤くらいにしてくれれば、簡単に見分けがつくのに。

「ところで、ゴールドインセクト」

と、ここでまたファイヤーナイト・波利井がオレをゴールドインセクトと呼ぶ。

だがムケーレのおっさんに呼ばれていた時もそうだったが、どうもゴールドインセクトという名はピンとこない。とはいえ本名で名を売るつもりもないので、ここはいつものようにジャングでいいか。

「ああ、オレの事はジャングとでも呼んでくれ」
「そうかい?…では、G.I.ジャング。トーナメントはまだ続いているというのに、どうしてもう帰ってしまうんだい?」

ん、G.I.…って、ああ。Gold.Insectだからか。

しかしなぜ略したうえに繋げた?それじゃ愛を救う為に戦う、どこぞの軍人さんみたいじゃないか。

「まぁすでに負けたうえ、オレのことなど誰も待ってはいないしな」
「だが閉会式のあとには、参加者を集めたパーティーがあるじゃないか。それもエスケープかい?」

「それこそ対戦相手にひどい怪我を負わせるような奴は、お呼びじゃないだろう?」
「フフ…そうだね。でも、だからこそボク達は、キミに興味を持ったんだ」

またも含みのある笑みを浮かべ、オレをみつめるファイヤーナイト・波利井。てか波利井も堀田も二十歳前後…、年頃としては瀬来さんたちと同じくらいか?

「良かったよ。あの戦い…。でもアレはダンジョンで死闘を続けていなければ、決してああはならない戦い方だよね?」
「それにあなた、前衛も後衛もこなせるんじゃなくて…?」

ああ、なんだ。コレは、アレだな。パーティーメンバーの募集だ。

「あ~、生憎とパーティーはすでに決まってるんだ。募集なら他をあたってくれ」

するとオレの返答に、ふたりを顔を見合わせアイコンタクトで思案する間をとった。

「…フフ。なぁに、今日はちょっとした挨拶だよ。この先、討伐案件で一緒になることもあるだろうからね」
「そう、今日はただのご挨拶…ね」

「ハハハッ、ならオレの早とちりだったか。まぁ何はともあれ、ファイヤーナイト・波利井と水の巫女・堀田の名は覚えておこう」

そう返すと、相手もまた満足したように頷いてみせた。

「ああ、近いうちにまた会うだろうしね…」
「そうね。その時はよろしく…」

「「G.I.ジャング」」

いやだからやめろってその呼び方。
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