437 / 613
silent as a forest
しおりを挟む
前回までのあらすじ。江月鳴人は悪の秘密結社バーフーンの魔の手に掛かり、その命を失った。しかし、精霊たちの力を借り正義の戦士ウンコマンとして復活したのだ。
「快便戦士!ウンコマンッ!!」
なんてな。まぁそれはともかく、あれから数日経つ。
が、やっぱりオレが死んだのは本当のことらしい。死んで、生き返った。そして助かったのは塩太郎とピクシークィーンのおかげ。さらにダメージを負っていた肉体に戻った際にも、すかさず介抱してくれたレッドスライムのおかげでもある。
こうしてオレは死の淵から蘇り、元気に過ごしている。
うん、そうなの。とっても元気。とてもついこのあいだ死んだとは思えないほどに。カラダも心もスッキリ軽やかだし、お通じだって快調。
なのでとにかく、なんの問題も無い。
(うむむ…。でもまぁ大穴牟遅神も死んで生き返る度に強くなったというし、人間も一度くらいは死んで生き返るくらいの方が良いのかもしれないな)
などとポジティブに考えてみる。
ともかく死んだことで何かがリセットされたみたいにして、心が軽い。目に映る景色も色鮮やかで、何を視ても世界が瑞々しく感じられる。
(もしかしたら、コレが塩太郎やピクシークィーンが視ている世界なのだろうか…?)
まぁそれをふたりに問うたところで、キョトンと小首を傾げられるだけだろうが。
ちなみに大穴牟遅神とは、大国主命がそう呼ばれるようになる前の呼び方。字ズラではちょっとどういう意味なのか解らないが、大穴の意はオオアナで大兄。つまりたくさんいる兄たち、八十神たちのことであろう。
さらにちなみになるが、八十柱いたから八十神な訳ではなく、数としてはそんくらい多いよ~ってなザックリな感じ。
ま、八百万と同じ解釈だから古代日本では、多い数を指す場合によく八を使っていたのだと考えられる。
だから八岐大蛇もおおよそで、実際にはその首の数が違っていた可能性もあるんだよな。
ともかく昔の日本人にとっては、八が数の最大値って価値観だったのかもしれない。でも8進数とも違うようだから、やはり日本人というのは感覚が独特だ。
まぁそれもともかくとして、続きの牟遅は貴い神を表す尊称。なので大穴牟遅神といったら、大勢の兄を持つ尊い神という意味になる。うん、これならちゃんと意味が通じるもんな。
…。
と、そんなこんなで死んだにも関わらずオレはお気楽に過ごせている訳だが、その一方で瀬来さんはかなりお悩みのご様子。頻繁に地元の友人たちが訪ねてきては、いっしょに何処かへ出掛けていく。
でもそうして戻ってくると、しきりに溜息ばかりついているのだ。
しかしそれを心配して声をかけても、大丈夫だから心配しないでと返されてしまう。また東京に戻る事も、もうすこし待ってほしいと頼まれている。
山のモンスターも片付けた事だし、もうお爺さんも安心。
警護にはまだ育つ途中だけどテイムした吸血人参や林檎精霊がいるし、元気になったコカトリスもいる。
なによりお爺さんに忠実で賢いダンジョン能力犬タロもいてくれる。これによりご実家の守りはとても強固なものとなったし、山には鹿たちの救世主マサルもいるので、討ち漏らしたモンスターがいたとしても片付けといてくれるだろう。
でも、瀬来さん待ってほしいと言うのなら、オレは待とう。
人には自分自身の力でやり遂げねばならない事というのが、必ずあるもの。それに今、瀬来さんが懸命に取り組んでいるのだと感じたから。
ならばオレのやることは、遠くからその後ろ姿を見守ってあげること。そしていざという時には、その背をしっかりと支えてあげることだ。
故にここでは風林火山。
徐なることライク・ア・フォレスト。厳しく父にしごかれる弟を木陰から見守る姉のように、そっと瀬来さんを見守るのだ。って、ここは接続詞のasを使って「fast as the wind.silent as a forest」の方が良いのだろうけど、まぁ気分よ。
で、なんてことを考えつつ薪割をしてたら、シャークが迎えにきた。
「ジャングぅ、今日も滝行いくんだろ?そろそろ出かけないか?」
「お、もうそんな時間か。じゃそろそろ出かけるか」
「うん、なら結月のヤツ呼んでくるよ」
「ああ、そうしてくれ」
瀬来さんを待つ間、オレはこうしてシャークと結月ちゃんの相手をしている。
農業体験をさせたり、川や山にも連れていき、夏の思い出作りのお手伝い。無論、結月ちゃんからお願いのあった瞑想修行も続けている。シャークも結月ちゃんと一緒にいることで、以前よりも真剣に取り組んでいて良い兆候がみえる。
ホント。こんな若い時分からしっかりと鍛えたなら、いったいどれだけ強くなれるんだか。末恐ろしくもあり、非常に楽しみなふたりだ。
「快便戦士!ウンコマンッ!!」
なんてな。まぁそれはともかく、あれから数日経つ。
が、やっぱりオレが死んだのは本当のことらしい。死んで、生き返った。そして助かったのは塩太郎とピクシークィーンのおかげ。さらにダメージを負っていた肉体に戻った際にも、すかさず介抱してくれたレッドスライムのおかげでもある。
こうしてオレは死の淵から蘇り、元気に過ごしている。
うん、そうなの。とっても元気。とてもついこのあいだ死んだとは思えないほどに。カラダも心もスッキリ軽やかだし、お通じだって快調。
なのでとにかく、なんの問題も無い。
(うむむ…。でもまぁ大穴牟遅神も死んで生き返る度に強くなったというし、人間も一度くらいは死んで生き返るくらいの方が良いのかもしれないな)
などとポジティブに考えてみる。
ともかく死んだことで何かがリセットされたみたいにして、心が軽い。目に映る景色も色鮮やかで、何を視ても世界が瑞々しく感じられる。
(もしかしたら、コレが塩太郎やピクシークィーンが視ている世界なのだろうか…?)
まぁそれをふたりに問うたところで、キョトンと小首を傾げられるだけだろうが。
ちなみに大穴牟遅神とは、大国主命がそう呼ばれるようになる前の呼び方。字ズラではちょっとどういう意味なのか解らないが、大穴の意はオオアナで大兄。つまりたくさんいる兄たち、八十神たちのことであろう。
さらにちなみになるが、八十柱いたから八十神な訳ではなく、数としてはそんくらい多いよ~ってなザックリな感じ。
ま、八百万と同じ解釈だから古代日本では、多い数を指す場合によく八を使っていたのだと考えられる。
だから八岐大蛇もおおよそで、実際にはその首の数が違っていた可能性もあるんだよな。
ともかく昔の日本人にとっては、八が数の最大値って価値観だったのかもしれない。でも8進数とも違うようだから、やはり日本人というのは感覚が独特だ。
まぁそれもともかくとして、続きの牟遅は貴い神を表す尊称。なので大穴牟遅神といったら、大勢の兄を持つ尊い神という意味になる。うん、これならちゃんと意味が通じるもんな。
…。
と、そんなこんなで死んだにも関わらずオレはお気楽に過ごせている訳だが、その一方で瀬来さんはかなりお悩みのご様子。頻繁に地元の友人たちが訪ねてきては、いっしょに何処かへ出掛けていく。
でもそうして戻ってくると、しきりに溜息ばかりついているのだ。
しかしそれを心配して声をかけても、大丈夫だから心配しないでと返されてしまう。また東京に戻る事も、もうすこし待ってほしいと頼まれている。
山のモンスターも片付けた事だし、もうお爺さんも安心。
警護にはまだ育つ途中だけどテイムした吸血人参や林檎精霊がいるし、元気になったコカトリスもいる。
なによりお爺さんに忠実で賢いダンジョン能力犬タロもいてくれる。これによりご実家の守りはとても強固なものとなったし、山には鹿たちの救世主マサルもいるので、討ち漏らしたモンスターがいたとしても片付けといてくれるだろう。
でも、瀬来さん待ってほしいと言うのなら、オレは待とう。
人には自分自身の力でやり遂げねばならない事というのが、必ずあるもの。それに今、瀬来さんが懸命に取り組んでいるのだと感じたから。
ならばオレのやることは、遠くからその後ろ姿を見守ってあげること。そしていざという時には、その背をしっかりと支えてあげることだ。
故にここでは風林火山。
徐なることライク・ア・フォレスト。厳しく父にしごかれる弟を木陰から見守る姉のように、そっと瀬来さんを見守るのだ。って、ここは接続詞のasを使って「fast as the wind.silent as a forest」の方が良いのだろうけど、まぁ気分よ。
で、なんてことを考えつつ薪割をしてたら、シャークが迎えにきた。
「ジャングぅ、今日も滝行いくんだろ?そろそろ出かけないか?」
「お、もうそんな時間か。じゃそろそろ出かけるか」
「うん、なら結月のヤツ呼んでくるよ」
「ああ、そうしてくれ」
瀬来さんを待つ間、オレはこうしてシャークと結月ちゃんの相手をしている。
農業体験をさせたり、川や山にも連れていき、夏の思い出作りのお手伝い。無論、結月ちゃんからお願いのあった瞑想修行も続けている。シャークも結月ちゃんと一緒にいることで、以前よりも真剣に取り組んでいて良い兆候がみえる。
ホント。こんな若い時分からしっかりと鍛えたなら、いったいどれだけ強くなれるんだか。末恐ろしくもあり、非常に楽しみなふたりだ。
11
お気に入りに追加
158
あなたにおすすめの小説
勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
クラス転移、異世界に召喚された俺の特典が外れスキル『危険察知』だったけどあらゆる危険を回避して成り上がります
まるせい
ファンタジー
クラスごと集団転移させられた主人公の鈴木は、クラスメイトと違い訓練をしてもスキルが発現しなかった。
そんな中、召喚されたサントブルム王国で【召喚者】と【王候補】が協力をし、王選を戦う儀式が始まる。
選定の儀にて王候補を選ぶ鈴木だったがここで初めてスキルが発動し、数合わせの王族を選んでしまうことになる。
あらゆる危険を『危険察知』で切り抜けツンデレ王女やメイドとイチャイチャ生活。
鈴木のハーレム生活が始まる!
クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される
こたろう文庫
ファンタジー
日頃からいじめにあっていた影宮 灰人は授業中に突如現れた転移陣によってクラスごと転移されそうになるが、咄嗟の機転により転移を一人だけ回避することに成功する。しかし女神の説得?により結局異世界転移するが、転移先の国王から職業[逃亡者]が無能という理由にて処刑されることになる
初執筆作品になりますので日本語などおかしい部分があるかと思いますが、温かい目で読んで頂き、少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。
なろう・カクヨム・アルファポリスにて公開しています
こちらの作品も宜しければお願いします
[イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で学園最強に・・・]
性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。
狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。
街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。
彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
スマートシステムで異世界革命
小川悟
ファンタジー
/// 毎日19時に投稿する予定です。 ///
★☆★ システム開発の天才!異世界転移して魔法陣構築で生産チート! ★☆★
新道亘《シンドウアタル》は、自分でも気が付かないうちにボッチ人生を歩み始めていた。
それならボッチ卒業の為に、現実世界のしがらみを全て捨て、新たな人生を歩もうとしたら、異世界女神と事故で現実世界のすべてを捨て、やり直すことになってしまった。
異世界に行くために、新たなスキルを神々と作ったら、とんでもなく生産チートなスキルが出来上がる。
スマフォのような便利なスキルで異世界に生産革命を起こします!
序章(全5話)異世界転移までの神々とのお話しです
第1章(全12話+1話)転生した場所での検証と訓練
第2章(全13話+1話)滞在先の街と出会い
第3章(全44話+4話)遺産活用と結婚
第4章(全17話)ダンジョン探索
第5章(執筆中)公的ギルド?
※第3章以降は少し内容が過激になってきます。
上記はあくまで予定です。
カクヨムでも投稿しています。
S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります
内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品]
冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた!
物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。
職人ギルドから追放された美少女ソフィア。
逃亡中の魔法使いノエル。
騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。
彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。
カクヨムにて完結済み。
( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )
転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。
襲
ファンタジー
〈あらすじ〉
信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。
目が覚めると、そこは異世界!?
あぁ、よくあるやつか。
食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに……
面倒ごとは御免なんだが。
魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。
誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。
やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる