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training
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あれから40年。
て、これはもういいか。あれから3日後、結月ちゃんから合気道の基礎を学んだマサくんユキくんは大阪へと帰っていった。
ふたりは大好きなお姉さんの声援もあって、それはもう発奮し合気道に臨んでいた。
教えていた結月ちゃんからも「うちの道場に通ってる子達より覚えがいいですね」とお褒めの言葉を頂いていたし、筋もいいのだろう。うむ、覚えがいいのは仁菜さんと同じか。さすがは姉弟。それに双子は実力の同じ相手が練習相手なので、より上達も早いと思う。
そして仁菜さんもふたりを送り届けるのといっしょに、一度親に顔を見せてくるという。
そんな訳で3人は大阪に向け旅立っていった。それも電車やバスを乗り継ぐという、のんびりとした旅だ。きっと3人のいい思い出になることだろう。
ま、その支援の為にまたオレの財布は軽くなってしまった訳だが。でもその程度の金など、ちっとも惜しくはない。
なにせ仁菜さんには、返しきれぬほどの恩があるのだから。
そう、今オレがこうして楽しい時間を過ごせているのも、あの日あの時あの場所に、仁菜さんという存在がいてくれたからこそ。
オレと瑠羽が破局し、3人とも決別しようとしていた時。
仁菜さんは突如その場で自身の秘密を打ち明けるという、普通では考えられない機転で救ってくれたのだ。これにより重かった空気は一気に和み、秘密告白大会の様相を呈すことで、オレ達が腹を割って話す環境を整えてくれたのだ。
うん、あれは今でもすごいと思う。
あんなことオレには到底できっこない。まさに洞察力と人間の機微に長けた仁菜さんならではの行動、といえるのではなかろうか。
それでも後から気になって、どうしてあの時あんな告白をしたのかと訊いてみたら、「ふふ、あん時はコォチが女性になるなんて、とんでもないことになっとったやろ?ほんならウチが今まで誰にも話せんでいたこと打ち明けても、慰めと思ってもらえるやんか?きっとウチも、誰かに解かっとって欲しかったんやなぁ~」と、話していた。
うん、言い難いけど誰かに聞いて欲しいことって、あるもんな。
「ウチ男の人って絶対好きになれんのよ」なんて言い出されても、普通なら「なんで急にそんな重い話すんの?」とか思われちゃうし。オレの「よく人の死ぬ瞬間を目にします」ってのも、はたからソレ聞いたらおもいっきり「げ、何言ってんだコイツ!?」だし。
ただ、そういうのって当人にとっては結構ツライもんだ。
話せば周りから変に思われるのは間違いないからさ。なかなか吐き出せないで溜まっちゃうんだよな。そういった意味ではオレもまた怪談話にかこつけて吐き出せたので、だいぶスッキリした気分ではある。
…。
(よ、…と、ほ!)
そして、薪割の合間にも鍛錬を欠かさないオレ。今日は薪を何本も地面に立てて、その上を達人の足捌きで渡り歩くという鍛錬を行なっていた。
(ふふふ、いい調子だ。こうしていると、自分が功夫の達人にでもなった気分だな…)
薪は地面にただ立てただけなので、気をつけて体重移動を行なわなければ簡単に倒れてしまう。でも全く倒さずにできるようになると、これが物凄く気分良いのだ。
と、そこへ朝昼兼ねた食事のあとで仮睡をとっていたシャーク達が戻ってきた。
「なにやってんだジャング?お、面白そうだな!アタシもやる!」
「あ、おい待てシャーク!」
と、制止も聞かずに小走りに駆けてきたシャーク。薪の上に飛び乗ったもののカクリとズッコケ、盛大に尻もちをつく羽目に。
「うわぁ!?ふぎゃッ!!」
「きゃ!るりちゃん大丈夫!?」
「大丈夫かシャーク?だから待てって言ったろうに…」
「うぅ、いててぇ…。なんだよコレ?埋まってなかったのかよ~」
倒れた薪用の丸太をその手に拾い上げると、シャークは口を尖らせながらぼやいている。
「これはそういう鍛錬だ。丁寧な体重移動を心掛け、より精緻な体の動きができるようになるというな」
そう、カンフー映画の修行シーンに胸を熱くし、観終ったあとで真似してみてもてんで上手くいかなかった幼少期。そんな幼い頃の思い出がふと蘇ってきて「あ、今ならアレ出来るんじゃね?」と試してみたらサクッと出来た次第。
すると楽しくて、つい止まらなくなってしまっていたのだ。
「ハハハ、どうだ。雛形くんも挑戦してみるか?あ、ところで瀬来さんの姿が視えないが?」
「いえ、今はそれよりも瞑想修行の方を。あと万智さんは、地元の方と電話で話してるみたいでした」
「ふむ、そうか…」
最近、といってもここ2・3日の話だが、瀬来さんの様子がちょっとおかしい。
どこかボーっと上の空だし、頻繁に誰かしら地元の友人が訪ねてきては、そんな友人たちに食料を渡している。もちろん食料を渡すのにはオレやお爺さんに了承もとっているわけで、その点については問題ないのだが。
でも「なにか悩み事?」と訊いても「うん、ちょっとね。でもそんなに心配しないで」と毎度答えをはぐらかされてしまう。
「では江月さん。そろそろ瞑想の指導をおねがいします」
「ああうん、そうだな。では始めるとするか」
「えぇ~!アタシはこっちの方がいいなぁ!」
「こら。そんなことばかり言ってたら、おまえいつまで経っても気の練り方が学べないぞ?」
「ちぇ~ッ、しょうがない。じゃあ、やるかぁ~」
双子の兄弟への合気道指導。
意外にもその対価として結月ちゃんが望んだのは、オレの瞑想指導だった。ピクシーともっと遊ぶのをおねだりされるかと思ったが、そこはやはり武道家の孫か。オーラパワーによる遠当てを目にし、自身でも体得したいと思ったようだ。
ふむ、これはもしかして女子高生の中に眠る武道家の魂を、オレが目覚めさせちゃったかな?
「(うふふ…、私も飛べるようになったらピクシーちゃんたちと…。うふ、うふふふ…)」
ああうん…。どうやらそれは、オレの勘違いだったようだ。
て、これはもういいか。あれから3日後、結月ちゃんから合気道の基礎を学んだマサくんユキくんは大阪へと帰っていった。
ふたりは大好きなお姉さんの声援もあって、それはもう発奮し合気道に臨んでいた。
教えていた結月ちゃんからも「うちの道場に通ってる子達より覚えがいいですね」とお褒めの言葉を頂いていたし、筋もいいのだろう。うむ、覚えがいいのは仁菜さんと同じか。さすがは姉弟。それに双子は実力の同じ相手が練習相手なので、より上達も早いと思う。
そして仁菜さんもふたりを送り届けるのといっしょに、一度親に顔を見せてくるという。
そんな訳で3人は大阪に向け旅立っていった。それも電車やバスを乗り継ぐという、のんびりとした旅だ。きっと3人のいい思い出になることだろう。
ま、その支援の為にまたオレの財布は軽くなってしまった訳だが。でもその程度の金など、ちっとも惜しくはない。
なにせ仁菜さんには、返しきれぬほどの恩があるのだから。
そう、今オレがこうして楽しい時間を過ごせているのも、あの日あの時あの場所に、仁菜さんという存在がいてくれたからこそ。
オレと瑠羽が破局し、3人とも決別しようとしていた時。
仁菜さんは突如その場で自身の秘密を打ち明けるという、普通では考えられない機転で救ってくれたのだ。これにより重かった空気は一気に和み、秘密告白大会の様相を呈すことで、オレ達が腹を割って話す環境を整えてくれたのだ。
うん、あれは今でもすごいと思う。
あんなことオレには到底できっこない。まさに洞察力と人間の機微に長けた仁菜さんならではの行動、といえるのではなかろうか。
それでも後から気になって、どうしてあの時あんな告白をしたのかと訊いてみたら、「ふふ、あん時はコォチが女性になるなんて、とんでもないことになっとったやろ?ほんならウチが今まで誰にも話せんでいたこと打ち明けても、慰めと思ってもらえるやんか?きっとウチも、誰かに解かっとって欲しかったんやなぁ~」と、話していた。
うん、言い難いけど誰かに聞いて欲しいことって、あるもんな。
「ウチ男の人って絶対好きになれんのよ」なんて言い出されても、普通なら「なんで急にそんな重い話すんの?」とか思われちゃうし。オレの「よく人の死ぬ瞬間を目にします」ってのも、はたからソレ聞いたらおもいっきり「げ、何言ってんだコイツ!?」だし。
ただ、そういうのって当人にとっては結構ツライもんだ。
話せば周りから変に思われるのは間違いないからさ。なかなか吐き出せないで溜まっちゃうんだよな。そういった意味ではオレもまた怪談話にかこつけて吐き出せたので、だいぶスッキリした気分ではある。
…。
(よ、…と、ほ!)
そして、薪割の合間にも鍛錬を欠かさないオレ。今日は薪を何本も地面に立てて、その上を達人の足捌きで渡り歩くという鍛錬を行なっていた。
(ふふふ、いい調子だ。こうしていると、自分が功夫の達人にでもなった気分だな…)
薪は地面にただ立てただけなので、気をつけて体重移動を行なわなければ簡単に倒れてしまう。でも全く倒さずにできるようになると、これが物凄く気分良いのだ。
と、そこへ朝昼兼ねた食事のあとで仮睡をとっていたシャーク達が戻ってきた。
「なにやってんだジャング?お、面白そうだな!アタシもやる!」
「あ、おい待てシャーク!」
と、制止も聞かずに小走りに駆けてきたシャーク。薪の上に飛び乗ったもののカクリとズッコケ、盛大に尻もちをつく羽目に。
「うわぁ!?ふぎゃッ!!」
「きゃ!るりちゃん大丈夫!?」
「大丈夫かシャーク?だから待てって言ったろうに…」
「うぅ、いててぇ…。なんだよコレ?埋まってなかったのかよ~」
倒れた薪用の丸太をその手に拾い上げると、シャークは口を尖らせながらぼやいている。
「これはそういう鍛錬だ。丁寧な体重移動を心掛け、より精緻な体の動きができるようになるというな」
そう、カンフー映画の修行シーンに胸を熱くし、観終ったあとで真似してみてもてんで上手くいかなかった幼少期。そんな幼い頃の思い出がふと蘇ってきて「あ、今ならアレ出来るんじゃね?」と試してみたらサクッと出来た次第。
すると楽しくて、つい止まらなくなってしまっていたのだ。
「ハハハ、どうだ。雛形くんも挑戦してみるか?あ、ところで瀬来さんの姿が視えないが?」
「いえ、今はそれよりも瞑想修行の方を。あと万智さんは、地元の方と電話で話してるみたいでした」
「ふむ、そうか…」
最近、といってもここ2・3日の話だが、瀬来さんの様子がちょっとおかしい。
どこかボーっと上の空だし、頻繁に誰かしら地元の友人が訪ねてきては、そんな友人たちに食料を渡している。もちろん食料を渡すのにはオレやお爺さんに了承もとっているわけで、その点については問題ないのだが。
でも「なにか悩み事?」と訊いても「うん、ちょっとね。でもそんなに心配しないで」と毎度答えをはぐらかされてしまう。
「では江月さん。そろそろ瞑想の指導をおねがいします」
「ああうん、そうだな。では始めるとするか」
「えぇ~!アタシはこっちの方がいいなぁ!」
「こら。そんなことばかり言ってたら、おまえいつまで経っても気の練り方が学べないぞ?」
「ちぇ~ッ、しょうがない。じゃあ、やるかぁ~」
双子の兄弟への合気道指導。
意外にもその対価として結月ちゃんが望んだのは、オレの瞑想指導だった。ピクシーともっと遊ぶのをおねだりされるかと思ったが、そこはやはり武道家の孫か。オーラパワーによる遠当てを目にし、自身でも体得したいと思ったようだ。
ふむ、これはもしかして女子高生の中に眠る武道家の魂を、オレが目覚めさせちゃったかな?
「(うふふ…、私も飛べるようになったらピクシーちゃんたちと…。うふ、うふふふ…)」
ああうん…。どうやらそれは、オレの勘違いだったようだ。
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