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Siblings

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「「お姉ちゃん!」」
「え…?マサにユキやないの!どないしたんふたりとも!?」

「「もちろん!姉ちゃんに会いにきたんだよ!」」
「せやったんかぁ!うれしいわぁ~、ようココまでこれたなぁ~!」

母屋の井戸の前にて、感動の再会。これは実にシンプルかつストレートに行われた。

いや、だってさ。シャークと結月ちゃんも交えて秘密の作戦会議を開いたんだけど、オレの出した案はことごとく不採用だったのよ。

双子の兄弟が高い所から颯爽と登場!

というのは「危ないでしょ」と言われ却下。ではオレが超巨大猪の毛皮で怪人ケモジャゲルゲに扮装して仁菜さんを脅かし、そこに弟くんたちがカッコよく姉を助けにくるという演出も「なにその結婚式の余興みたいなの…」と一蹴されてしまった。

うん、まぁそういうのって周りが盛り上げようとしても、当人たちは却って白けちゃうか。ま、オレは友達の結婚式とか一度も呼ばれたことないから、テレビの面白映像大集合でしか知らんけど。

ともあれ再会を果たした姉と弟くんたちを見て、ホッと肩の荷がおりた感を漂わせているシャークと結月ちゃん。たしかに鍋さんを動かしてここまで弟くんたちを連れてくる段取りを組んだのはシャークだろうから、そこはよく頑張ったと褒めてやらねばだ。

「さて、シャークも雛形くんもここまでおつかれさま。よく仁菜さんの弟のことで動いてくれたな」

「そりゃスタンピードの時は、助けにきてもらったり学校を守ってもらった恩があるからな。これくらい当然だぜ」
「そうですね。といっても私はなにもしてないのについて来ただけで、すいません」

「ああいや。それはいいんだが、ところでふたりとも、学校の方は大丈夫なのか?」

仁菜さんの弟くんのために動いてくれるのはうれしい。が、それで学業の妨げになっても困るので、ふたりにその辺のことを訊いてみた。

「ああ。どうせまだ学校は避難者でいっぱいだし」
「それにあのスタンピードで絶望的になった人が子供を襲う事件なんかが各地で起きてて、全国的にもう早めに夏休みにしてしまおうって動きにもなってるんです…」

「なんと、世間では今そんなことが起きてたのか…」

う~む、コッチに来てから山狩りやダンジョン攻略にかかりきりで、すっかり情弱になってるな。仁菜さんが朝夕相場チェックをしてるから世間的に大きな動きがあれば教えてくれるだろうと、それに頼りきりだった。

しかし絶望したから子供を襲うとか、どういう精神構造なんだ?

もし暴れたりしたいなら、この辺の山みたいに探せばダンジョンから出てきた野良モンスターがいくらでもいるだろうに。それをモンスターは怖いから自分より弱い子供を襲いますってんなら、とんでもないクズ思考だ。

「むぅ、許せんな。オレはイジメや弱い者をいたぶるヤツが大嫌いなんだ」
「そうだよな!そんなヤツ視たらブッ飛ばしてやりたくなるぜ!」

そう腹立たしく鼻を鳴らしてみせると、シャークもいっしょになって憤ってくれる。ケンカ口調で鼻っ柱が強すぎるのが弾に傷。いや玉に瑕だが、こういうところは非常に好ましい。

とはいえ人類の歴史で一番多い死因は、戦争を含めた他殺ときている。

人間とはなんと業の深い生きものか。夕陽のなかで互いを慈しみ抱き合っているあの姉弟たちのようには、どうにもいかないらしい。
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